父しゃんは、正月早々の諸行事を済ませてしばらくたっても、胃の調子がイマイチ良くならないみたいだ。ぐずぐず独り言が、はなの耳に数日間、聞こえていた。実は、父しゃんは昨年9月、年一度の健康診断で胃カメラを飲んで、再検査を言い渡されていた。しかし、猜疑心が人一倍強い父しゃんは、精検の紹介状をほったらかしにしていた。検査医療機関がマスコミの批判をかわすため、何でもかんでも精検に回して責任回避している、そんな連中の言いなりになんてならないと言いながら、胃カメラの写真のポリープとネットで検索した腫瘍をこっそり何度も見比べているのを、はなはちゃんと見ていた。
とうとう自覚症状が出た父しゃんは、やっぱり精検受けとけばよかったかな、という不安げな顔を見られないように、そそくさと町の総合病院へ行った。病院から戻り、組織を検査に回されたとポツリと言った顔は明らかに青ざめていた。それでもなお、医者は、検査機関の指摘があったので念のためと言っていたと、自分の不安を打ち消そうとするのだ。ホントに意気地がないんだから。
その日から、父しゃんは、「飲まないようにしてます」と会う人会う人にちょっと神妙な顔でしゃべっている。
「ウソだよん」
父しゃんは自発的にそうしているみたいに言っているけれど、母しゃんの目があるから我慢してるだけ。一人のときは、「ちょっとだけなら大丈夫」と、半分心配しながら、酒の誘惑には抵抗しきれない。ホントに軟弱なんだから。母しゃんに言いつけちゃうぞ、父しゃん!(2018.1.23)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます