黒猫 とのべい の冒険

身近な出来事や感じたことを登載してみました。

じっと手を見る

2016年11月16日 11時58分56秒 | ファンタジー

 ヒトの手なら、手首のところでぐるりと回転させてじっと手を見ることができるが、ネコの場合、手のひらを自分の顔に向けるのは、肉球をなめて掃除するときくらい。なので、ネコは、働けど働けど楽にならない生活を嘆くような感傷にふけることはない。手を見る暇があったら、せっせと食い物を探すかねだるかする強靱な生き方に、私もあやかりたい。
 ところで、この前の日曜の午後、前日の慣れない冬囲いの疲れからか、急な体のだるさと悪寒に襲われソファーに倒れ込んだ。ちょっとだけと思った休憩が三時間もの長時間に及び、おまけに寝起きに変な夢を見た。
 夢とはこんな感じだった。
 数人して、職場の車で集会所のような雰囲気の簡素な建物に乗り着ける。建物の中では、かなり大勢の男たちが宴会をやっている。席に着き飲食を始めたが、周囲に知った顔はない。ちょっと離れたところに昔の職場の数名の顔がチラッと見えた気がしたが、すぐ見失ってしまう。急に、向かいに座った男が私に向かって、そこはお前の席ではないから別の席に行け、と言う。しぶしぶ席を立つ。その男は、私が手をつけた料理に目をやって、空いている席の料理と交換しなきゃならないな、と渋い顔をする。寸分の隙もない座卓の周りをうろうろするが、どこにも知った顔も席もない。私は、ふてくされて部屋の隅に寝転んでいるうちに眠ってしまう。目が覚めたとき誰もいない。どうやって帰ろうか帰れるのだろうか、とものすごい寂しさに襲われる。すると、夢の場面が切り替わり、私は見知らぬ家に帰り着いている。狭い玄関から、見覚えのある人がテーブルに向かう後ろ姿が見える。はなの気配はしない。私はそれ以上、中に入れない。
 そのときソファーの上で夢から覚めた。体から汗が吹き出している。汗を拭く余裕もなく居間に急ぐと、家族はそろってだらだらしていた。はなの頭や耳を黙ってなでると、彼女は微笑み返してきて、私の手をやさしくなめた。(2016.11.16)


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