今年は雪虫(ユキムシ)を見ていない。この地域では昔から、雪が降り出す数日から一週間くらい前に、必ずと言っていい確率で、この小さな虫が飛ぶ姿を目にする。真っ白な真綿を背負ったような可憐な姿で、ふわふわというか、ふらふらというか、あまりにも頼りない飛び方をするので、雪が来るのは嫌なのだが、この虫を見ると何だか心が癒やされる。
一匹も見ていないと思っていた矢先、口伝てに、雪虫が飛ばない年は雪が少ないという話を聞いた。そもそもアブラムシの一種の彼らは、樹木の上で数年かけて成虫になるという。成虫の証が白い綿なのだそうだ。雪が降らなければ、成虫になって産卵しても意味がない、つまり育たないのだろうか。それとも、自然環境の変化などが原因で、そもそも成虫になるべき幼体の虫がいなくなったということなのか。とにかく一冬越せば何となく事情が見えてくるだろう。
彼らが雪を予感する能力を持つという説はひじょうに興味深い。この「黒猫とのべい」ブログの冒頭の記事、「ハクセキレイ」を書いたのも、動物たちの予知能力に驚いたのがきっかけだった。この家に「はな」がやって来る直前の早春、ハクセキレイたちは、玄関の庇の上に何度も巣作りを試みながら、まだ見ぬネコの姿に怯えるかのように、結局、前年の巣を放棄した。
今朝、久しぶりで駅まで二十分ほどの道を歩いた。舗装されていない地面には霜柱が立っていた。靴底から土と氷のぶつぶつとした感触が伝わってきて気持ちがよかった。(2014.11.21)
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