回転扉が目印の、そのカウンター・バーには
本来ちゃんとした別の名前があるのですが。
常連客達からはいつも「ニコニコBAR」と
勝手に呼ばれていました。
そのバーは東京、世田谷区の南の外れにひっそりとあって。
「アダ名」の通り、確かにいつもニコニコと屈託の無い笑顔をしている
オーナー・バーテンダーの「hiki」さんがいて、
黒い絞りの効いたジャケットを着てお店の切りもりをしています。
木製の細長いカウンターの上に広がる天井には
柔らかでモダンな照明が連なっていて、
全体的にはなんとなく洞窟のようなイメージを抱かせるお店。
そんな店に、ある夜、
40代のガッチリとした体型の男が1人入ってきました。
身長は180センチより少し低いくらい。
ボサボサとした無造作で長めの癖っ毛は少し茶色がかっていて、
服は最新のスポーツ用素材を使った、
鮮やかなオレンジ色のロングスリーブシャツ。
クラブ系のタイトなシェイプをしたそのシャツには
ダメージ系のジーンズが合わせられていて。
そのジーンズの足元には
履き古されたエイトホールの
ダークグリーンのブーツが見えていました。
一言で言えば......怪しい感じ。
職業は?何でしょうか?......そういった怪しさ。
見ようによっては美容師のようにも見えるし、
hikiさんと同じく水商売のようにも見えます。
スポーツ系?イヤイヤ、もしかしたら、一昔前なら探偵!?
とでも言われそうな、
そんな雑然として無愛想な空気を漂わせる男。
その男は店の回転扉をカラカラと回しながら店内に入ってくると、
hikiさんの立っているところの斜め前の椅子にノソッ、と座りました。
「いらっしゃいませ!(^^)ニコニコ」
「.......」
「カウンターしかない店なんですが、
すいません。(^^)ニコニコ」
「......」
「お水です。どぞ。(^^)ニコニコ」
「......」
「どぞ、どぞ(^^)ニコニコ」
「......初めてなんだよね.....俺、この店」
「そーですか。それはそれは。どぞどぞ(^^)ニコニコ」
「.......」
「お一人ですか?
今日はちょっと涼しいですが、、
もしどなたかいらっしゃるようでしたら
隣の席も空けておきますが(^^)」
「......ダイジョブ。一人で」
「わかりました(^^)
ご注文がお決まりになりましたら教えてください。
今日はお店スッキスキ!ですので、
どうぞカウンター、広く使ってください」
「アノ.......さ、
......ここ、ちょっと不思議な人が集まるバーなんでしょ?」
「??(^^)?」
「......うわさだけど、、うわさ.......」
「そーですか(^^)
客商売ですから、どんな噂でも話題に上るのは嬉しいですねぇ」
hikiさんはそう答えながら、
いつもの如く人を無条件にリラックスさせる笑みを浮かべ、
細長いコリンズグラスの水滴を
真っ白いタオルで丁寧に拭き取っていました。
「お客さんは、もしかして、、この店によく来る方のお知り合い?
とかではありません?よね!?(^^)ニコニコ」
「......やっぱり、噂通りだね......鋭い。わかるんだ。。」
「ええ。なんとなく(^^)ニコニコ」
「ココに来てる奴は何人かいるよ。
色々と話も聞いてるし。このお店と......あなたの......」
「そーですか(^^)なんだか嬉しいですね。
そのウチの常連さんというのは......もしかして、
失礼ですが、お客さんにはお姉様とか?いません?義理の」
「......」
「うちの常連さんの中とかにも。ええ。
キットそうでしょう。(^^)ニコニコ」
「......」
「????(^^)??」
「......アタリ。あたりだよ。そっか。流石だよ。」
「やっぱり!(^^)そう思ったのですよ。
皆が話している例の弟さん!じゃないかなっ?て。
不思議なチカラを持ったお姉様の。
やっぱりそうだったんですね」
「......」
「やっとお会い出来ました(^^)ニコニコ」
「......」
「お姉様や、お姉様のお友達の皆さんからは
貴方のお話はいつも色々と伺っていまして。
でも僕だけ会ったことがなかったので、
なんだか、ちょっと嬉しいのです。
やっとお会い出来ました。(^^)ニコニコ」
「皆にどんな話をされてたかは、なんとなく、、
想像がつくけど。ね」
「話を伺い聞く限り、色々タイヘンだったのではないでしょうか?
神様に呼ばれ、アチコチ動いたりするのは。(^^)ニコニコ」
「......う....ん...ま、ぁ......」
「僕なりによくわかります。ええ。ほんとに。
よくわかります。(^^)ニコニコ」
「......あなたは......ま、そういう感じなんだろーね......
俺もよくわかるわ。あなたのこと」
「ええ。ええ。僕も時折呼ばれるのです。
最近はずっと落ち着いてますけど。
なので、気持ちはよくわかるつもりです。(^^)ニコニコ」
ぷらりとお店に入ってきたその男とhikiさんは、どうも、
会った瞬間からどこか心通じるところがあり、
まるで旧知の仲のような雰囲気で会話をしていました。
「最近もまた呼ばれていたのですよね!?
なんとなくお姉様たちからも聞いてます。ええ。
皆さんよくこの店に寄ってくれますので。(^^)ニコニコ」
「だね......」
「今度は、、、諏訪の後ですよね?
その後は西の鹿児島、開聞岳。
そこから東は茨城の香取神宮や鹿島神宮。
伊勢とかにも行っていたとお姉様達からは伺っていますし。
だとすると日本列島の横の線、いわゆる “中央構造線” でしょうか。
そこからは縦、、って、そんな感じでしょうか。(^^)ニコニコ」
「.......」
「縦はフォッサマグナ、でしょうか、ね。(^^)ニコニコ」
「ホンンンンット、すげーね。あなた。
まだろくに話してないのに。
この店、変な人が集まるわけだ。そりゃ。
名前はヒキさんでいいの?
みんなからはそう聞いてるんだけど」
「はい(^^)hikiです。
よろしくお願いします」
「よろしく。ヒキさん。
俺はai。アイって名前。よろしく。
いつもネーサン達が世話になってまして。ありがとう。
でも、噂どうりスゲー人だね。すぐ分かるわ。
俺もこれからタマに来させてもらってもいい?
愚痴を聞いてもらいに、とかだけど」
「もちろんです!
うちのお客さんには愚痴のプロも沢山いますし(^^)ええ。
takiさんとか。ええ。
是非に」
「そっか。よかった。
......何だか良い店だね。
気もイイ。
良い場所見つけてるよね。
確信犯でしょ」
「そうですか?(^^)ニコニコ」
「わかるよ。それくらい」
「オーダー、どうしましょ?
多分、今日はとても面白い話が聞けそうな気がするので、
その前にノドを潤しておいた方が良いのではないでしょうか?
ね。(^^)ニコニコ」
「あぁ、そだね。ゴメン。
hikiさんが面白いからつい忘れちゃったよ。
じゃ、ビールもらおうかな......
レーベンブロイの生あるんだ。珍しいね。
ソレ。好きなんだ。一番」
「わかりました。(^^)ニコニコ」
「ぷぁぁーーー......うまいね。これ。
やっぱりサイコーだ」
「僕も大好きで、それでメニューに入れてるのです(^^)ええ。
それで、話は戻りますが、
この店ではかなりの噂だった諏訪の一件の後はヤッパリ?
フォッサマグナ、縦の線、ですか?」
「そーだね。そのトーリ」
「お話、楽しそうですね(^^)」
「............................コレ...........ね、、、」
aiさんはそう言って、
ポケットからスマートフォンを取り出し、
カウンターの上にポンと置きました。
そして画面にGoogleマップを立ち上げ、
そこからポンポンと指を走らせ日本列島を表示させると、
そこから二本の指先を広げながらピンチアウトし。
列島の地図から北陸、
能登半島から富山県のあたりを大きく拡大して写していきました。
「これ。能登半島と富山湾。わかる?よね。
噂のヒキさんだもんね。
で、ここ。ココね。
富山湾のど真ん中。
日本有数の深い湾の底から佐渡島との間を通って、
大陸へ向けてニョロニョロと走るこの長い線。
青森の沿岸あたりまで延々と伸びてるの。
わかるよね。ココ......」
aiさんが指先で差したのは、深い深い富山湾の海の中。
いわゆる「富山深海長谷」と言われる部分。
「富山トラフ」と呼ばれる海底盆地の中を南北に蛇行しながら走る、
長い海溝のような、深い海底の谷を表す線でした。
<つづく。。>
お久しぶりの「ニコニコ(^^)BAR」
記事中のテキストリンクにもありますが、
過去記事「1」~「8」はこちらから。
お時間のある時やコーヒーブレイクにでも。
ドゾドゾ(´▽`)
本来ちゃんとした別の名前があるのですが。
常連客達からはいつも「ニコニコBAR」と
勝手に呼ばれていました。
そのバーは東京、世田谷区の南の外れにひっそりとあって。
「アダ名」の通り、確かにいつもニコニコと屈託の無い笑顔をしている
オーナー・バーテンダーの「hiki」さんがいて、
黒い絞りの効いたジャケットを着てお店の切りもりをしています。
木製の細長いカウンターの上に広がる天井には
柔らかでモダンな照明が連なっていて、
全体的にはなんとなく洞窟のようなイメージを抱かせるお店。
そんな店に、ある夜、
40代のガッチリとした体型の男が1人入ってきました。
身長は180センチより少し低いくらい。
ボサボサとした無造作で長めの癖っ毛は少し茶色がかっていて、
服は最新のスポーツ用素材を使った、
鮮やかなオレンジ色のロングスリーブシャツ。
クラブ系のタイトなシェイプをしたそのシャツには
ダメージ系のジーンズが合わせられていて。
そのジーンズの足元には
履き古されたエイトホールの
ダークグリーンのブーツが見えていました。
一言で言えば......怪しい感じ。
職業は?何でしょうか?......そういった怪しさ。
見ようによっては美容師のようにも見えるし、
hikiさんと同じく水商売のようにも見えます。
スポーツ系?イヤイヤ、もしかしたら、一昔前なら探偵!?
とでも言われそうな、
そんな雑然として無愛想な空気を漂わせる男。
その男は店の回転扉をカラカラと回しながら店内に入ってくると、
hikiさんの立っているところの斜め前の椅子にノソッ、と座りました。
「いらっしゃいませ!(^^)ニコニコ」
「.......」
「カウンターしかない店なんですが、
すいません。(^^)ニコニコ」
「......」
「お水です。どぞ。(^^)ニコニコ」
「......」
「どぞ、どぞ(^^)ニコニコ」
「......初めてなんだよね.....俺、この店」
「そーですか。それはそれは。どぞどぞ(^^)ニコニコ」
「.......」
「お一人ですか?
今日はちょっと涼しいですが、、
もしどなたかいらっしゃるようでしたら
隣の席も空けておきますが(^^)」
「......ダイジョブ。一人で」
「わかりました(^^)
ご注文がお決まりになりましたら教えてください。
今日はお店スッキスキ!ですので、
どうぞカウンター、広く使ってください」
「アノ.......さ、
......ここ、ちょっと不思議な人が集まるバーなんでしょ?」
「??(^^)?」
「......うわさだけど、、うわさ.......」
「そーですか(^^)
客商売ですから、どんな噂でも話題に上るのは嬉しいですねぇ」
hikiさんはそう答えながら、
いつもの如く人を無条件にリラックスさせる笑みを浮かべ、
細長いコリンズグラスの水滴を
真っ白いタオルで丁寧に拭き取っていました。
「お客さんは、もしかして、、この店によく来る方のお知り合い?
とかではありません?よね!?(^^)ニコニコ」
「......やっぱり、噂通りだね......鋭い。わかるんだ。。」
「ええ。なんとなく(^^)ニコニコ」
「ココに来てる奴は何人かいるよ。
色々と話も聞いてるし。このお店と......あなたの......」
「そーですか(^^)なんだか嬉しいですね。
そのウチの常連さんというのは......もしかして、
失礼ですが、お客さんにはお姉様とか?いません?義理の」
「......」
「うちの常連さんの中とかにも。ええ。
キットそうでしょう。(^^)ニコニコ」
「......」
「????(^^)??」
「......アタリ。あたりだよ。そっか。流石だよ。」
「やっぱり!(^^)そう思ったのですよ。
皆が話している例の弟さん!じゃないかなっ?て。
不思議なチカラを持ったお姉様の。
やっぱりそうだったんですね」
「......」
「やっとお会い出来ました(^^)ニコニコ」
「......」
「お姉様や、お姉様のお友達の皆さんからは
貴方のお話はいつも色々と伺っていまして。
でも僕だけ会ったことがなかったので、
なんだか、ちょっと嬉しいのです。
やっとお会い出来ました。(^^)ニコニコ」
「皆にどんな話をされてたかは、なんとなく、、
想像がつくけど。ね」
「話を伺い聞く限り、色々タイヘンだったのではないでしょうか?
神様に呼ばれ、アチコチ動いたりするのは。(^^)ニコニコ」
「......う....ん...ま、ぁ......」
「僕なりによくわかります。ええ。ほんとに。
よくわかります。(^^)ニコニコ」
「......あなたは......ま、そういう感じなんだろーね......
俺もよくわかるわ。あなたのこと」
「ええ。ええ。僕も時折呼ばれるのです。
最近はずっと落ち着いてますけど。
なので、気持ちはよくわかるつもりです。(^^)ニコニコ」
ぷらりとお店に入ってきたその男とhikiさんは、どうも、
会った瞬間からどこか心通じるところがあり、
まるで旧知の仲のような雰囲気で会話をしていました。
「最近もまた呼ばれていたのですよね!?
なんとなくお姉様たちからも聞いてます。ええ。
皆さんよくこの店に寄ってくれますので。(^^)ニコニコ」
「だね......」
「今度は、、、諏訪の後ですよね?
その後は西の鹿児島、開聞岳。
そこから東は茨城の香取神宮や鹿島神宮。
伊勢とかにも行っていたとお姉様達からは伺っていますし。
だとすると日本列島の横の線、いわゆる “中央構造線” でしょうか。
そこからは縦、、って、そんな感じでしょうか。(^^)ニコニコ」
「.......」
「縦はフォッサマグナ、でしょうか、ね。(^^)ニコニコ」
「ホンンンンット、すげーね。あなた。
まだろくに話してないのに。
この店、変な人が集まるわけだ。そりゃ。
名前はヒキさんでいいの?
みんなからはそう聞いてるんだけど」
「はい(^^)hikiです。
よろしくお願いします」
「よろしく。ヒキさん。
俺はai。アイって名前。よろしく。
いつもネーサン達が世話になってまして。ありがとう。
でも、噂どうりスゲー人だね。すぐ分かるわ。
俺もこれからタマに来させてもらってもいい?
愚痴を聞いてもらいに、とかだけど」
「もちろんです!
うちのお客さんには愚痴のプロも沢山いますし(^^)ええ。
takiさんとか。ええ。
是非に」
「そっか。よかった。
......何だか良い店だね。
気もイイ。
良い場所見つけてるよね。
確信犯でしょ」
「そうですか?(^^)ニコニコ」
「わかるよ。それくらい」
「オーダー、どうしましょ?
多分、今日はとても面白い話が聞けそうな気がするので、
その前にノドを潤しておいた方が良いのではないでしょうか?
ね。(^^)ニコニコ」
「あぁ、そだね。ゴメン。
hikiさんが面白いからつい忘れちゃったよ。
じゃ、ビールもらおうかな......
レーベンブロイの生あるんだ。珍しいね。
ソレ。好きなんだ。一番」
「わかりました。(^^)ニコニコ」
「ぷぁぁーーー......うまいね。これ。
やっぱりサイコーだ」
「僕も大好きで、それでメニューに入れてるのです(^^)ええ。
それで、話は戻りますが、
この店ではかなりの噂だった諏訪の一件の後はヤッパリ?
フォッサマグナ、縦の線、ですか?」
「そーだね。そのトーリ」
「お話、楽しそうですね(^^)」
「............................コレ...........ね、、、」
aiさんはそう言って、
ポケットからスマートフォンを取り出し、
カウンターの上にポンと置きました。
そして画面にGoogleマップを立ち上げ、
そこからポンポンと指を走らせ日本列島を表示させると、
そこから二本の指先を広げながらピンチアウトし。
列島の地図から北陸、
能登半島から富山県のあたりを大きく拡大して写していきました。
「これ。能登半島と富山湾。わかる?よね。
噂のヒキさんだもんね。
で、ここ。ココね。
富山湾のど真ん中。
日本有数の深い湾の底から佐渡島との間を通って、
大陸へ向けてニョロニョロと走るこの長い線。
青森の沿岸あたりまで延々と伸びてるの。
わかるよね。ココ......」
aiさんが指先で差したのは、深い深い富山湾の海の中。
いわゆる「富山深海長谷」と言われる部分。
「富山トラフ」と呼ばれる海底盆地の中を南北に蛇行しながら走る、
長い海溝のような、深い海底の谷を表す線でした。
<つづく。。>
お久しぶりの「ニコニコ(^^)BAR」
記事中のテキストリンクにもありますが、
過去記事「1」~「8」はこちらから。
お時間のある時やコーヒーブレイクにでも。
ドゾドゾ(´▽`)
去年の始め頃に、CD屋さんで、中島みゆきさんの「糸」を聞いて、泣いてしまった意味が、今わかった感じです。
あの時から始まっていたのですね。
音楽1つ、海底の谷の筋1つ、蝶の羽ばたき1つ。。
「ニコニコBAR」は意外にも大長編になってきましたね。