水の門

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歌集『カインの祈り』

澤本佳歩歌集『カインの祈り』
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一首鑑賞(15):三浦光世「眠りまた奇しき御業と思ひつつ」

2015年09月01日 06時36分45秒 | 一首鑑賞
眠りまた奇(く)しき御業(みわざ)と思ひつつ目つむる時に帰る平安
三浦光世『妻 三浦綾子と生きた四十年』より


眠れることは神様の恵み――眠剤を服用している私にとって、これは日々の実感だ。
三浦光世氏のこの歌の体感は、ご自身のこととしても勿論あったろうが、抗パーキンソン薬の副作用として幻覚幻想の症状が強く発現した妻の綾子さんの晩年を看病しながら、痛切に感じていたことでもあるのだろう。詩編4編9節に「平和のうちに身を横たえ、わたしは眠ります。主よ、あなただけが、確かにわたしをここに住まわせてくださるのです 」という御言葉があるが、眠りとは本当にそのようなものだと思う。
不眠に悩まされていた歌人は少なくないようだ。少し引いてみる。

  熱ありてねむれぬわれは仕方なく妄想(まうざう)をたどり夜明を待たむ/吉野秀雄『苔径集』
  二時すぐるもねむりならねばあきらめて朝を待たむとこころ定めつ

  錠剤の切れゆくままにわたくしの夢も解かれてさむき朝なる/永井陽子『小さなヴァイオリンが欲しくて』
  春あはき日暮れのやうなかなしみに目ざめぬ薬剤の効果も切れて

  はかなごと夢に揺らして明けゆけば声移りつつ遠鳴く烏/さいかち真『浅黄恋ふ』

私の場合、薬剤の効き目が切れて深夜の二時頃にきっぱりと目が冴えてしまうと要注意である。明け方再びうつらうつらする頃に、夢とも幻聴ともつかない「声」に苛まれるからだ。そんなとき私は、ペトロの手紙一5章7節「思い煩いは、何もかも神にお任せしなさい。神が、あなたがたのことを心にかけていてくださるからです」の聖句をおぼろげな頭で思い出す。以前はこうした暁の疲れが尾を引き、仕事を休んでしまうことも少なからずあったが、最近は何とか態勢を立て直して出かけられるようになった。それもまた恵みと思う。
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