唐津の朝は早い、ではなく、今回は何故か最終日まで早起き。
本当はゆっくりしようと決めていたのに一人目が覚めました。
玄関に行くとまだ雨戸が閉まっています。玄関の外に雨戸、
という戸締まりの良さにも驚きですが、靴番さんを呼ばないと
外にも出られないのが、さすが人を招く宿屋と感心します。
少し手間取りつつも、朝は比較的遅い西の朝日を拝みに、
宿から歩いて3分の海岸へ。虹ノ松原は砂州に沿ってありますから、
もちろん砂浜もずっと長い。英語なら間違いなくLONG BEACHです。
走るともなく歩き、良くしまった走りやすいしまった砂だなどと感心して
下を見ると、波打ち際のラインに、この透明物体が朝日に輝いて、
点々と落ちています。
後で実験したのですが、海水をかけてやるとふくらむのですよ、この
クラゲたち。ゼリーはぷよぷよ、色の付いた中の筋は神経回路でしょうか?
個体個体で色が違い、とはいうもののほとんどサイケな色で目を引きました。
遊びすぎて、朝7時30分の朝餉にぎりぎり間に合う時間に旅館・洋々閣へ帰着。
食堂に向かうと、暖かい湯気立ち上るお膳が直ぐに配られます。
麦のおかゆに、小鉢がいくつか。昆布と青のり、山椒じゃこで舌を落ち着かせつつ、
茶碗蒸しと鰺の干物で腹を満たします。
食事は温かくておいしく、その上唐津焼の器が何とも品良く明るい感じを
盛り上げてくれました。
8時過ぎにごちそうさまをすると、出発までにそれほど余裕はありません。
今日も予定はぎっしり、しかも福岡空港から東京に帰らねばなりません。
女将さんにチェックアウトをお願いし、旦那さんに荷物を運んでもらって、
名残惜しく、落ち着きの宿を後にすると、今朝は一緒に行けなかった貝殻マニアな(めす)と
再度海岸へ。上にも書いたクラゲ水戻しなどもしつつ、海にさよならして
市街地にある唐津神社と曳山会館へ。
くんち祭りは名前こそ聞いたことがありますが、
ビジュアル的にもっと著名かもしれないこの、「めで鯛」山車が飾ってあります。
落ち着いていた江戸の豊かな時代に、町民が競って山車を作った中の一つで、
他にも赤獅子、青獅子、鯱や浦島太郎までありました。
唐津文化を味わった後は、スポーツにも敬意を表します。
唐津市陸上競技場は、ナビでは場所不明に陥りつつ、立派な全天候型トラック。
島原の陸上競技場に続き、中学生高校生と練習をします。
明日の東京での大会参加を前に、最後の調整。動的ストレッチやドリルで
体の反応帯域を広め、あとは流しを中心にしてキレを取り戻しておきます。
1時間ほどでオーバー。
昼を回ったくらいでお腹もすきますが、先を急ぎましょう。
南下しつつ、洋々閣の旦那さんに教えてもらった、山中にある
伝統の温泉に車を進めることにしました。
古湯温泉です。旅館の他に、外観がこのようなある時代の公共性を体現した
浴場があり、一人400円。地元の方がほとんどで、1時過ぎだというのに、
湯船は人が肩を接してしまいそうなくらいに混み合っています。
しかし、それも納得という、良い温泉です。源泉が2つあるのですが、
特に古い時代からあるという34度くらいのアルカリ泉が、静かにじんわり
しみこみ、目を閉じて10分や20分は使っていられる心地よさ。
肌をつやつやにしてくれる、お湯の張力もあります。
自分たちのことは棚に上げ、旅人がどういうきっかけで行くかは
なかなか想像がつきませんが、ご発展を願ってやみません。
というのは、いくつかの旅館が、黒川あたりをイメージしたような、
板張りの新装開店を目論んでいるようだからなのでありました。
減ったお腹が、お湯へのエネルギー放出でさらにぐーぐー鳴りますが、
もう3時近い。太宰府まではあと少し、しかもそこには大きなミッションが!!
と言うわけで空きっ腹のまま、九州自動車道に乗り、やや混雑を始めた
道路に不安を抱きつつ、まずは九州博物館へ。
え、っと思うくらいに立派な建造物。
九州の矜持といいましょうか、誇りの体現といいましょうか。
館内の展示も、まさに日本の礎、大陸からの稲作と文化の入り口をなったのは
九州である、ということを全面に押し出した出土品の数々が並びます。
弥生の稲作を支えた、農機具や石の道具、大陸由来の祭司の遺品。
奈良~平安の頃のストーリーは薄くなるのですが、その後は海のシルクロードなどの
交易が、海外への出入り口たる地政学の特別地域であることを証明する
ようでありました。
時代と大陸をつなぐ博物館は、太宰府にもつながります。こちらは実際的に。
実は博物館は一山を越えればすぐに太宰府となっており、トンネルの中を通る
エスカレーターが何とも時空をつなぐ回廊のような光のショーで迎えて
くれるのです。
すいたお腹を満たすのは、言わずとしれた梅が枝餅。
いや、茶店の数も多いですが、そのどこもかしこも名物と称して
できたての餅を供してくれるのです。あんこを包んだ餅粉団子を
熱く熱した挟み込み鉄板に置き、ジューっと上下から押さえ込んでやれば
見事できあがり。あんこまで一気にかじれば火傷間違いなしです。
日本で最も頭脳の誉れが高い神社は、伝説の梅木も立派に導き。
私たちもお守りなどをいただき、頭を垂れてお参りを済ませました。
4泊5日の九州旅行もこれで終止符です。