朴裕河教授起訴に対する抗議の声が、日本だけでなく、韓国でも続々と上がっています。
ハンギョレ新聞によれば、11月2日、イ・ナヨン中央大教授、ヤン・ヒョナンソウル大教授など70人余りが、「『帝国の慰安婦』問題に対する立場」という声明を出したそうです。
同じ日、キム・チョル延世大教授、作家のキム・ウォンウ、チャン・ジョンイルらがソウル・プレスセンターで記者会見を行い、検察起訴を批判して公訴取り消しを要求したとのこと。こちらの声明には、大学教授、作家、画家、出版人、弁護士など190人余りが署名しました。
韓国の言論界が、学問の自由、表現の自由にたいする最低限の認識を共有していることがわかり、ほっとしました。
ただ、上の二つの声明はやや立場が違うようで、「『帝国の慰安婦』問題に対する立場」のほうは、朴教授を起訴した検察を批判するだけではなく、朴教授の本の内容も批判している。そして、賛成派と反対派が公開の席で討論することを提案ているんだそうです。
「朝まで生テレビ」みたいなやつでしょうか。
個人的には、討論は書面の応酬にするのがよいように思います。面と向かって討論すると、特に朴教授を批判する立場の人は感情が抑えられずに、「力の行使」に出て、乱闘騒ぎになっちゃう予感がします。
そもそも、「『帝国の慰安婦』問題に対する立場」のほうの70余人は、ちゃんと朴教授の本を読んだんでしょうかね。
昔、『醜い韓国人』という本が世間を騒がせたとき、「私はこの本を読んでいないが…」という書き出しで、延々と本を批判している「大学教授」がいて、驚いたことがあります。
もし討論会をやるんなら、きちんと本を呼んだうえで、冷静な議論をしてほしいと思います。
以下はハンギョレの記事全文(→リンク)。
「朴裕河氏の本に問題は多いが、起訴は思想・学問の自由の締め付け」
『帝国の慰安婦』起訴に知識人ら、反対声明
『帝国の慰安婦』の著者、朴裕河世宗大学日本語日本文学科教授を起訴した検察決定を批判して、評価は学界と市民社会に任せろと訴える知識人の声明が、相次いでいる。パク教授の著作に問題があったとしても、司法的判断を求めるのは思想・学問の自由を締めつけることになるという意見だ。
イ・ナヨン(中央大)、ヤン・ヒョナン(ソウル大)教授など70人余りは、2日「『帝国の慰安婦』問題に対する立場」という声明を出し、検察の起訴決定と朴教授の本をともに批判し、賛否両陣営の公開討論を提案した。彼らは声明で、「私たちは原則的に研究者の著作に刑事責任を問うのは適切でないと考え」ているが、「単に学問と表現の自由という観点のみで『帝国の慰安婦』問題を取り上げようとする態度には深く憂慮せざるをえない」と述べた。
彼らは続けて「慰安婦問題の核心は日本国家の責任なのに『帝国の慰安婦』は十分な論拠を提示せずに、慰安婦被害者を「自発的売春婦」と規定して被害者に大きな痛みを与えた」と批判し、「近いうちに賛否両陣営による公開討論を開こう」と提案した。
これとは別にキム・チョル延世大教授、作家のキム・ウォンウ、チャン・ジョンイルらは、この日の午前、ソウル・プレスセンターで記者会見を行い、検察起訴を批判して公訴取り消しを要求した。彼らはクォン・ポドゥレ高麗大教授、作家のコ・ジョンソク、ユ・シミン、イ・ジェハら、画家のイム・オクサン、出版界のキム・キュハン、弁護士のクム・デソプなど、広範囲な文化人、190人余りが声明に署名したと明らかにした。
彼らは検察の起訴に対して「従軍慰安婦問題に対する世論を国家の統制下に置くことは、市民の思想と表現の自由を制限してもかまわないという反民主的慣例を産むことになる」として、公訴取り消しを要求し、「本の主張に議論の余地がないわけではないが、難しい事柄であるからこそ市民社会の多様な声が自由に表出され、競合するよう、許容すべき」と主張した。
先月26日には村山富市前総理、大江健三郎など、日米の知識人54人が韓国検察の朴教授起訴に抗議する声明を発表したばかりだ。
検察は朴教授を日本軍慰安婦に対する名誉毀損の疑い(虚偽事実提示)で、先月18日、在宅起訴した。この事件を捜査したソウル東部地検刑事1部(クォン・スンボム部長)は報道資料で、検察は国連調査資料、憲法裁判所の決定、米連邦下院決議文、日本の河野談話など、客観的資料をもとに、朴教授の本の内容が虚偽事実で、日本軍慰安婦被害者の名誉を傷つけたことを確認した」と述べた。
検察は、朴教授が自身の本で、日本軍慰安婦の「慰安」は「売春的強姦」だった、慰安婦が「奴隷的」でもあったが軍人とは基本的に「同志的」関係だった、慰安婦を「強制連行」したのは日本軍ではなかった、「強制連行」という国家暴力が朝鮮人慰安婦では確認されたことがないといった主な内容は、客観的資料に反し、虚偽事実に該当すると判断した。検察は、去る6月、慰安婦被害者11人の告訴で、この事件捜査に着手した。
論議の高まりを受け、慰安婦被害ハルモニが住む「ナムヌの家」のアン・シングォン所長は、「ハルモニたちは「出版物による名誉毀損の疑い」で朴教授を告訴したのではなく、学問の自由を口実にして、個人の人権を踏みにじった行為を処罰してほしいと言ったものだ」、「日本軍の蛮行の被害者を「自発的」「売春婦」などと表現したことは、学問と良心の自由を離れ、弱者に対する人身攻撃なので、処罰を受けて当然だ」と述べた。
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> 『帝国の慰安婦』は十分な論拠を提示せずに、
> 慰安婦被害者を「自発的売春婦」と規定して被害者に大きな痛みを与えた」と批判し、
> 「近いうちに賛否両陣営による公開討論を開こう」と提案した。
一番ぞっとしたのはここですね。
件の本には「十分な論拠を提示せずに」と言いながら、
慰安婦が自発的売春婦ではない十分な論拠は示されない。
犬鍋さんの仰るように公開討論なんざ無意味で、
徹底的に資料集めて、公開の場で淡々と議論し、
何を採用すべきかを判断しない限り、結局単なるショーの繰り返し。
朴裕河教授のこの本の論理には、飛躍もかなり出てきますが、
少なくとも資料を引いてもう少しまともに実態を考えようという姿勢があります。
それへのリアクションが提訴と無茶苦茶な擁護じゃあ、
やはり韓国側からこの問題の解決の可能性は無いとしか思えません。
しっかし本気で誰も、実際の慰安婦の実際の救済を考えていないとは。
私自身は、慰安婦が全員自発的売春婦だったとは到底言えず、誰かからの強制を受けた人もいただろうし、そもそも慰安所制度という悪手と、その運営を中途半端にしか管理しなかった責任が、日本政府に継承されていると考えています。同時に、その責任は少なくとも韓国との間では、請求権協定で解決済みだとも。
そして、挺対協が主導してきた「ある日軍人がやってき少女を攫って」などという嘘と、日本の右派などから出る「慰安婦はみんな幸せな高給取りの自発的売春婦」という嘘が、両方公式に検証され社会から消えていかない限り、結局まともな前進は無いまま燻り続けるだけ、と考えています。
まあ、無理だろうなあ。
朴教授は著書の中で、日本の責任(植民地支配の責任)をはっきり追及しています。
批判する学者たちが、本を読んでいないか、読解力が低いかのどちらかでしょう。
著書の主張の一つは、慰安婦といっても多様なので、そのさまざまな声に耳を傾けるべき、というもの。
「慰安婦は全員こうだった」というような断定をすべきではない、ということです。