犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

インドネシアの言語事情

2016-09-24 00:19:54 | 言葉

 大阪に戻ってから、中津(梅田から地下鉄で1駅)にあるインドネシア料理屋に行きました。2か月ぶりぐらいです。

 このお店は、日本に10年以上いるインドネシア人の店長さんと、大阪の大学に留学中のアルバイト男性の二人でやっています。

 留学生は、大学で「測地学」という難しそうな学問を勉強中。日本語学校から大学に入学したときは、授業の日本語のスピードが速すぎてついていけないと言っていました。

「大学の授業、どう?」

「ええ、なんとかやっています。今はドローンを勉強してます」


「ドローン?」


「ええ、災害復旧の授業で、ドローンを使って支援物資を運ぶんです」


「でも、あまり重いものは運べないでしょう?」


「いえ、ドローンも進化してますから」


 インドネシアも地震や津波、火山の噴火など災害の多い国ですから、母国に帰ったらきっとすぐに役立つことでしょう。

「そういえば、家族がインドネシアを旅行したよ」

「インドネシアのどこですか」


「ムンジャンガン」


「ああ、バリ島のね。よく知ってるよ」


と店長。

「ぼくの出身はジャワ島だけど、ムンジャンガンはジャワ島から海を渡ってすぐだよ。きれいだったでしょう?」

「いえ、ぼくは行ってないんですよ。妻と娘が二人。ダイビングをしたみたい」


 アルバイトの学生のほうは、ムンジャンガンをあまり知らない様子。

「彼もジャワ島だけどね、ぼくは田舎だから方言。ぜんぜん通じない、ハハ」

「バリ島の言葉も違うんですよね」


「違う。でも、ぼくは少しわかる」


「インドネシアの国語はインドネシア語ですよね」


「そう。学校に入ったら習う。インドネシア人はみんなインドネシア語ができるよ」


 インドネシアは500を越える言語があると言われます。最大の言語はジャワ島のジャワ語。しかし、インドネシアが独立したとき、国語をジャワ語にすると、ジャワ人だけが特別に有利になるため、あえてジャワ語を国語にしなかった。だからといって、二番目に大きいスンダ語にすると、スンダ人が有利になる。それで、だれの母語でもない「マレー語」を国語にするという大胆な言語政策をとったのです。

「インドネシア語とマレー語は同じ?」

「うーん、似てるね。でもちょっと違うよ。聞けばわかるけど」


「じゃ、家ではジャワ語なの」


 アルバイトの学生に聞いてみました。


「そうです。学校ではインドネシア語。高校に入ると授業は英語になります」


「へぇー。今は日本語もできるから、ジャワ語、インドネシア語、マレー語、英語、日本語で5つの言葉ができるんだ?」


「中国語も少し。大学のときに習いました」


「すごい」

「犬鍋さんも、インドネシア語を勉強したらどうですか」

「いや、ミャンマー語で手一杯だよ」

「インドネシア語は易しいですよ。文法がないから」
「文法がない? そんなことはないでしょう」

「本当です。動詞が活用しないんです」

 彼の言う文法とは、動詞の活用のことのようです。となると、やはり動詞の活用のない中国語、タイ語も文法がないことになってしまう。

「確かに文字はアルファベットだから、勉強しやすそうだね」

 タイ語とミャンマー語は、文字が大きな壁となって学習者の前に立ちはだかります。

「ところで、ジャワ語とインドネシア語は、どっちが得意なの?」

「そうですね。ジャワ語かな」


「じゃ、本を読むときはジャワ語の本?」


「それは無理です。ジャワ語は難しすぎて。若い人で、正しく書ける人はいないと思います」


「そうなんだ」


 インドネシアの言語事情は複雑そうです。


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