同居している孫がむずかっていたので、娘に聞きました。
「おっぱいは、やったの?」
「やだ、そんな言い方しないでよ。「やる」なんて、犬のえさみたい。「あげる」って言って」
「……」
「赤ん坊におっぱいをやる」という言い方は、娘にとって、許容範囲ではないようです。
「やる」と「あげる」について、辞書を引いてみました。
三省堂国語辞典第七版
やる:〔自分またはだれかが自分以外に〕あたえる。〔同等・目下の人、動植物などに使う〕「そんなにほしいなら、やるぞ」「子どもにこづかいをやる」「犬にえさをやる」「花に水をやる」
あげる:「やる」よりもていねいな言い方。〔それほどあらたまる必要のない相手に使う〕「いいものをあげるよ」「それあげますから持って行ってください」〔動植物や自分自身にも使うことがある。「はとにえさをあげないで」「自分にごほうびをあげる」〕
明鏡国語辞典第二版
やる:同等以下の人や動植物に物を与える。「家来に褒美をやる」「孫に小遣いをやる」「犬にえさをやる」「花に水をやる」
あげる:「やる」を上品に言う語。軽い謙譲の意を伴うこともある。「(景品ノ洗い粉ヲ)姉さんにあげましょう〈漱石〉」「君にこの本をあげるよ」。本来は動作の及ぶ人物を高めて言うべきものとされるが、今はむしろ同等またはそれ以下の人に使う。近年は、「金魚にえさをあげる」「花に水をあげる」など動植物に対してもいう。
日本語語感の辞典(岩波書店)
やる:同等以下の相手に与える意で、会話や軽い文章に使われる和語。「犬にえさをやる」「子供に小遣いをやる」「鉢植えに水をやる」。「あげる」よりぞんざいな感じがあり、近年このぞんざいな感じの響きを嫌って「あげる」を使う傾向が特に女性に強い。
あげる:「君にいい物をあげよう」のように「与える」意に使う場合は、「やる」に比べて謙遜の気持ちが含まれる。「やる」より丁寧な表現。近年、「子供にお年玉をあげる」「犬にえさをあげる」「花に水をあげる」のような用法が広がり問題になっている。
まず、「犬にえさをやる」について。
調べた3つの辞書のすべてに例文としてあげられています。「やる」の典型的な用法といえるでしょう。
近年の用法として、「動植物」に対しても、「あげる」を使うことがある、ということについても、3つの辞書は共通しています。
ただ、『語感』は、「そのような用法が広がり問題になっている」と記し、この用法が広がることを否定的に見ているようです。
つぎに、「赤ちゃんにおっぱいをやる」について。
辞書には、「子ども(孫)に小遣い(お年玉)をやる」という用例があります。
子どもや孫は、同等以下(目下)の人物の例でしょう。赤ちゃんも、同類と思われます。小遣い/お年玉は「お金」で、おっぱい(母乳)は「飲食物」であるという違いはありますが、「同等以下の人に物を与える」(明鏡)という定義に合致するところから、「赤ちゃんにおっぱいをやる」という表現も、正しいと思われます。
ただ、『語感』によれば、「やる」のぞんざいな感じの響きを嫌って「あげる」を使う傾向が特に女性に強い、とのことですから、女性である娘が、「やる」のぞんざいな感じの響きを嫌って「父親に訂正を求めた」ことも、近年の言語状況を正しく反映したものといってよいでしょう。
「おっぱいは、やったの?」
「やだ、そんな言い方しないでよ。「やる」なんて、犬のえさみたい。「あげる」って言って」
「……」
「赤ん坊におっぱいをやる」という言い方は、娘にとって、許容範囲ではないようです。
「やる」と「あげる」について、辞書を引いてみました。
三省堂国語辞典第七版
やる:〔自分またはだれかが自分以外に〕あたえる。〔同等・目下の人、動植物などに使う〕「そんなにほしいなら、やるぞ」「子どもにこづかいをやる」「犬にえさをやる」「花に水をやる」
あげる:「やる」よりもていねいな言い方。〔それほどあらたまる必要のない相手に使う〕「いいものをあげるよ」「それあげますから持って行ってください」〔動植物や自分自身にも使うことがある。「はとにえさをあげないで」「自分にごほうびをあげる」〕
明鏡国語辞典第二版
やる:同等以下の人や動植物に物を与える。「家来に褒美をやる」「孫に小遣いをやる」「犬にえさをやる」「花に水をやる」
あげる:「やる」を上品に言う語。軽い謙譲の意を伴うこともある。「(景品ノ洗い粉ヲ)姉さんにあげましょう〈漱石〉」「君にこの本をあげるよ」。本来は動作の及ぶ人物を高めて言うべきものとされるが、今はむしろ同等またはそれ以下の人に使う。近年は、「金魚にえさをあげる」「花に水をあげる」など動植物に対してもいう。
日本語語感の辞典(岩波書店)
やる:同等以下の相手に与える意で、会話や軽い文章に使われる和語。「犬にえさをやる」「子供に小遣いをやる」「鉢植えに水をやる」。「あげる」よりぞんざいな感じがあり、近年このぞんざいな感じの響きを嫌って「あげる」を使う傾向が特に女性に強い。
あげる:「君にいい物をあげよう」のように「与える」意に使う場合は、「やる」に比べて謙遜の気持ちが含まれる。「やる」より丁寧な表現。近年、「子供にお年玉をあげる」「犬にえさをあげる」「花に水をあげる」のような用法が広がり問題になっている。
まず、「犬にえさをやる」について。
調べた3つの辞書のすべてに例文としてあげられています。「やる」の典型的な用法といえるでしょう。
近年の用法として、「動植物」に対しても、「あげる」を使うことがある、ということについても、3つの辞書は共通しています。
ただ、『語感』は、「そのような用法が広がり問題になっている」と記し、この用法が広がることを否定的に見ているようです。
つぎに、「赤ちゃんにおっぱいをやる」について。
辞書には、「子ども(孫)に小遣い(お年玉)をやる」という用例があります。
子どもや孫は、同等以下(目下)の人物の例でしょう。赤ちゃんも、同類と思われます。小遣い/お年玉は「お金」で、おっぱい(母乳)は「飲食物」であるという違いはありますが、「同等以下の人に物を与える」(明鏡)という定義に合致するところから、「赤ちゃんにおっぱいをやる」という表現も、正しいと思われます。
ただ、『語感』によれば、「やる」のぞんざいな感じの響きを嫌って「あげる」を使う傾向が特に女性に強い、とのことですから、女性である娘が、「やる」のぞんざいな感じの響きを嫌って「父親に訂正を求めた」ことも、近年の言語状況を正しく反映したものといってよいでしょう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます