犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

飯能のBar

2023-07-05 23:13:43 | 飲む

 何も悪いことをしていないのに、自転車泥棒扱いされたD(三女の夫、フィリピン人)を慰めるため、土曜日の夜、二人で飲みに行きました。

 といっても、飯能の飲み屋は、私よりもDのほうがよく知っている。私は、コロナ前から、職場のある都内では飲んでも、自宅の近くで飲むことはなかった。

 Dは、1年半前に来日してから、街の探検がてら、居酒屋やバーを一人で巡っていたようです。

 Dに連れられて行ったのは、Bar Stranger than Paradiseという、アメリカンスタイルのバー。

 階段を上っていくと、鰻の寝床のようなレトロな空間が広がります。

 手前にカウンター、奥にテーブルが一つ、その向こうにジュークボックスがあります。

「1年ぐらい前、一度だけ来たことがあるんです」

 お酒は、スコッチとバーボンの種類が豊富。

「おっ、知らないお酒がいっぱいある」

 手始めにカリラをストレートで注文。

 マスターは、20年ほど前からこのお店をしているそうです。音楽もやるらしく、店の壁にはレトロなギターが飾ってあり、流れる音楽も1960~70年代のブルースなど。

 私はその手の音楽に詳しくないのですが、Dはおじいさんの影響で、古い歌をけっこう知っていて、マスターとも音楽の話をしたりしています。

「奥のジュークボックスは現役ですか」

「ええ、動きますよ。1950年頃のモデルで、製造されたのは80年代です」

「今も、メインテナンスできるんですか」

「一人、直せる人がいます。でも、遠くにいるから、出張で修理を頼むと1万5000円ぐらいかかっちゃうんですよ。あの人も80歳を越えてるから、あと何年修理できるかわかりません」




「その、ドクロマークがついているお酒、なんですか?」

「これですか。アイラの酒で、けっこうスモーキーで美味しいです。度数は高いですが」


 ボトルを見ると、スモークヘッド ハイボルテージとありました。度数58度!

「それ、お願いします」

「ストレートでいいんですか?」

「はい、私は昔、マッカランのカスクストレングスをよく飲んでましたが、それも60度ぐらいありました。マッカラン、最近置いている店が少ないですね」

幻の酒

「マッカランは少ないし、値段が高いんで手が出ないです」

「なんで高くなったんでしょうね」

「中国人が買い占めているからとか言いますけど、わかりません」


 大量生産品のブレンデッドウイスキーは別として、生産量が決まっているシングルモルトなどは、需要が増えたからと言って簡単に増産はできない。

 お店に別の常連さんが来て、マスターはそちらのほうに。

「ところでこの店の名前はどういう意味?」

 Dに聞きました。

「Strangerは知らない人、thanは~よりも、 Paradiseはえーっと」

「知ってるけどさ、天国よりもっと知らない人ってどういうこと」

「ハハハ、そうですね」


 酩酊が進んできたので、12時を過ぎたころに帰路につきます。

 家に帰ってから調べると、Stranger than Paradiseは1980年代のアメリカ映画の題名でした。

 邦題はわかりませんが、Stranger は名詞(異邦人)ではなく、形容詞strangeの比較級で、「天国より奇妙な」という意味かもしれません。

 今度行ったとき、マスターに聞こうと思います。

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