何も悪いことをしていないのに、自転車泥棒扱いされたD(三女の夫、フィリピン人)を慰めるため、土曜日の夜、二人で飲みに行きました。
といっても、飯能の飲み屋は、私よりもDのほうがよく知っている。私は、コロナ前から、職場のある都内では飲んでも、自宅の近くで飲むことはなかった。
Dは、1年半前に来日してから、街の探検がてら、居酒屋やバーを一人で巡っていたようです。
Dに連れられて行ったのは、Bar Stranger than Paradiseという、アメリカンスタイルのバー。
階段を上っていくと、鰻の寝床のようなレトロな空間が広がります。
手前にカウンター、奥にテーブルが一つ、その向こうにジュークボックスがあります。
「1年ぐらい前、一度だけ来たことがあるんです」
お酒は、スコッチとバーボンの種類が豊富。
「おっ、知らないお酒がいっぱいある」
手始めにカリラをストレートで注文。
マスターは、20年ほど前からこのお店をしているそうです。音楽もやるらしく、店の壁にはレトロなギターが飾ってあり、流れる音楽も1960~70年代のブルースなど。
私はその手の音楽に詳しくないのですが、Dはおじいさんの影響で、古い歌をけっこう知っていて、マスターとも音楽の話をしたりしています。
「奥のジュークボックスは現役ですか」
「ええ、動きますよ。1950年頃のモデルで、製造されたのは80年代です」
「今も、メインテナンスできるんですか」
「一人、直せる人がいます。でも、遠くにいるから、出張で修理を頼むと1万5000円ぐらいかかっちゃうんですよ。あの人も80歳を越えてるから、あと何年修理できるかわかりません」
「その、ドクロマークがついているお酒、なんですか?」
「これですか。アイラの酒で、けっこうスモーキーで美味しいです。度数は高いですが」
ボトルを見ると、スモークヘッド ハイボルテージとありました。度数58度!
「それ、お願いします」
「ストレートでいいんですか?」
「はい、私は昔、マッカランのカスクストレングスをよく飲んでましたが、それも60度ぐらいありました。マッカラン、最近置いている店が少ないですね」
幻の酒
「マッカランは少ないし、値段が高いんで手が出ないです」
「なんで高くなったんでしょうね」
「中国人が買い占めているからとか言いますけど、わかりません」
大量生産品のブレンデッドウイスキーは別として、生産量が決まっているシングルモルトなどは、需要が増えたからと言って簡単に増産はできない。
お店に別の常連さんが来て、マスターはそちらのほうに。
「ところでこの店の名前はどういう意味?」
Dに聞きました。
「Strangerは知らない人、thanは~よりも、 Paradiseはえーっと」
「知ってるけどさ、天国よりもっと知らない人ってどういうこと」
「ハハハ、そうですね」
酩酊が進んできたので、12時を過ぎたころに帰路につきます。
家に帰ってから調べると、Stranger than Paradiseは1980年代のアメリカ映画の題名でした。
邦題はわかりませんが、Stranger は名詞(異邦人)ではなく、形容詞strangeの比較級で、「天国より奇妙な」という意味かもしれません。
今度行ったとき、マスターに聞こうと思います。
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