犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

脱北民の受難 3

2019-10-10 23:02:01 | 韓国雑学
スカイデイリー2019年9月30日(リンク

人権の死角地帯に追いやられた脱北民たち(下-政府の政策)

脱北民母子の餓死は、文政府の親北がもたらした人為的惨事だ

脱北民たち、「ハン・ソンオクさん母子事件は、政府によるあきらかな他殺」と憤る


 「6月30日に水道が止められました。水道料金を払えなかったためです。生活に最も必要な水を止めておいて、誰も様子を見にこないんです。一か月過ぎた7月31日、管理事務所の検針員が検針をし、人が住んでいる気配がないのに異臭がするので覗いたところ、母子の遺体を発見しました。母が先に死亡し、子供は食べ物を探して歩き回った末、母親から3~4メートル離れたところで、結局死んでしまったのです」

 「文在寅政権は、この事件を隠しました。遺体発見の13日後になって初めて、マスコミの報道で知られるようになった。今回の事件は、文在寅政権が北朝鮮によく見られようと、北朝鮮の同胞問題を後回しにしたために起こったことです。公務員も同じです。大統領が北朝鮮に好意的だと見るや、下部組織である地方自治体の公務員たちも、脱北民にたいしてきちんとした管理をしようとしないんです。へたに手を出すと、上から睨まれますから」

 去る7月末、遺体で発見された脱北民、故ハン・ソンオクさん母子の餓死事件が、韓国社会に大きな波紋を起こしている。今回の事件をきっかけに、国内3万3000人の脱北民の劣悪な福祉・人権政策を再点検すべきだという声が高い。

 ソウル光化門交差点焼香所で会った、「故ハン・ソンオク母子の死因究明、再発防止のための脱北民非常対策委員会」(以下、脱北民非常対策委)のホ・グァンイル委員長も、今回の事件を「政府による他殺」と規定し、憤りを隠さなかった。特に脱北民の多くは、文在寅政権になって、脱北民福祉・人権政策、実態調査に対する公務員社会の無関心がひどくなっただけでなく、脱北民団体の活動もしにくくなったと述べている。

自由を求めて命がけの脱出を試みた脱北民たち、文在寅政権発足後、異邦人の身の上に転落

 現在、国内に居住する脱北民は3万3000人とされる。ほとんどの脱北民は、施設で12週間の社会適応教育を受け、事実上、韓国資本主義の競争社会に一人で放り出される。十分な適応期間なしに社会に出ることになる脱北民は、当然のように競争に負け、福祉・人権の死角地帯に追いやられることが多いことがわかった。

 統一研究院の資料によると、2018年脱北民労働者の月平均賃金は189万9000ウォンで、一般国民の242万3000ウォン(2017年)に比べて50万ウォン以上少なかった。年間世帯収入は1000万ウォン未満が17.2%、1000万ウォン~2000万ウォンが23.1%だった。職種は、単純労働が22.5%、サービス業が18.1%で、一般国民のそれぞれ13.0%、11.0%に比べて格段に高かった。脱北民の約半分は、潜在的基礎生活保護対象者の状態だ。

 低賃金と雇用不安は、経済指標でも確認される。2018年脱北民の経済活動参加率(64.8%)と雇用率(60.4%)は、一般国民(63.1%、60.7%)と同水準だが、失業率と生活保護受給率は大きな違いを見せた。脱北民の失業率と生活保護受給率はそれぞれ6.9%、23.8%だが、一般国民は3.8%、3.4%だった。

 脱北民の多くが低賃金、単純労務、雇用不安など、経済的リスクにさらされているが、文在寅政権発足後、脱北民の福祉は悪化したことがわかった。一例として、故ハン・ソンオク母子が住んでいた再開発の賃貸マンションの賃借料滞納の情報は、SH公社から福祉死角地帯の発掘システムに共有されなかった。脱北母子世帯の健康保険料滞納の情報は福祉死角地帯の発掘システムに共有されたが、訪問調査の対象に選ばれず、自治体には通知されなかった。

 特に故ハン・ソンオクさんは基礎生活保護を2回申請したが、管轄の冠岳区庁は繰り返し「中国人の夫との離婚証明書を持って来なさい」と言った。故ハン・ソンオクさん母子は、これまで基礎生活を受けたことがあり、離婚した片親家庭であり、子供がてんかんであるにもかかわらず、「危機世帯」と見なされていなかった。

 匿名希望のある脱北民は「インスタントラーメンを買うお金もない人に、中国に行って離婚証明書をとってこいというのにはあきれる」、「公務員は規則一辺倒で、ハン・ソンオクさんの事情を汲もうとしなかった」と批判した。さらに「ハン・ソンオクさんの息子はてんかんを患っており、彼女の家計はさらに切迫していただろう」と涙をこらえた。

「北の金正恩のご機嫌をうかがう大統領に期待するより、自分で権益を守る」

 ソ・ジェピョン脱北者同志会事務局長は、「ハン・ソンオクさん事件は、ふつうならありえないこと」、「福祉政策が間違っているというより、福祉業務にあたる公務員の机上行政がもたらした惨事だ」と指摘した。さらに「ハン・ソンオクさんが韓国に来て10年経ったが、5年間中国にいたため、韓国社会と断絶していた」、「ハン・ソンオクさんは、人のネットワークや社会の支援を求めるのが難しい状況にあった」と述べた。

 ソ事務局長は「ハン・ソンオクさんと同じ境遇に置かれている脱北民家族が多いが、社会福祉の助けは全く受けていない状態だ」とし「脱北民の70%以上が女性であり、片親家庭が多く、政府の積極的な福祉サービスが必要ですが公務員は(社会・経済的弱者である脱北民に対し)マニュアル的な対応しかしない」と批判した。

 ホ・グァンイル委員長は、「脱北民のうち福祉の死角地帯に置かれている人がどのくらいいるのか、統計さえない」とし、「関連団体で働いている人たちの話を聞くと、福祉と人権の死角地帯に置かれている脱北民は数えきれない」と述べた。

 脱北民支援事業を管掌している統一部傘下の南北ハナ財団への批判も出ている。ハナ財団のメンバーに占める脱北者の割合が徐々に減少し、脱北民政策が、脱北民の福祉・人権を中心というより、行政の都合によって作られているという指摘だ。

 脱北民の団体に対する政府の支援、関心が薄れつつある。現在、脱北民の団体は100ぐらいあるが、大半が1~2人の活動家で構成されている。脱北民の団体に対し、一部のグループから脅迫が繰り返されるなど、身辺への危険が高まり、登録した住所と、実際の事務所の住所を別にするケースも珍しくないことがわかった。福祉・人権の死角地帯に置かれた脱北民の実態把握に取り組むべき脱北民の団体の活動は、事実上、停止に追い込まれている。

 チョ・ジョンジン北韓学博士(世界日報論説委員)は、「脱北民がハン・ソンオクさん母子の死について、最も憤慨しているのは、すべてが本人のせいだとみなされていることだ」、「(政府が脱北民を)放置しているというレベルではなく、露骨に弾圧している」と懸念した。また、「南北ハナ財団が役割を果たせていないため、脱北民の困難が深刻化し、死角が生じている」、「脱北民が互いに情報交換できるネットワークを整えることが必要だ」と指摘した。

 脱北民非常対策委は、故ハン・サンオクさん母子死亡事件をきっかけに、全国的な脱北民ネットワークを作る必要があると決議し、非常対策委を仮称「脱北人自治総連合会」に再編することにした。そのために、現在、統一部と交渉中で、△緊急コールセンター運営・運営費支援、△ハナ財団職員の30%を脱北民から採用する、こと、を含めた脱北民支援対策を要求していることがわかった。
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