犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

脱北民の受難 2

2019-10-07 23:55:28 | 韓国雑学

スカイデイリー2019年9月30日(リンク

人権の死角地帯に追いやられた脱北民(中―青年)

飢えた脱北青年の命を守ってくれる、頼みの綱が切れた

脱北青年の就職難・生活苦深刻…文政権、対北支援は増やすのに脱北民支援は減らす


 文在寅政権発足後、青年手当のような福祉予算と、対北朝鮮支援金は大幅に増えているが、弱者階層の脱北民に対する支援は、ますます劣悪になっていることがわかった。特に、北朝鮮から来たという理由で就職差別受け、生活苦に陥っている脱北青年たちの場合、政府支援が減り、状況がさらに悪化していることが確認された。一部の脱北青年は、生活苦に耐えられず、法をおかして生計を維持していることがわかった。

 国民は、厳然たる韓国民である脱北民の状況がますます難しくなっているにもかかわらず、彼らに対する支援を減らし、対北支援は増やしている政府の矛盾した態度は理解できないという反応を見せている。国民の中には、文在寅政権が政治目的ばかり優先し、脱北民の人権を無視していると指摘する者もいる。「人が優先」という文在寅政権のキャッチフレーズが正しいかどうか疑う声も少なくない。

韓国に来た脱北民の人権弾圧被害

実効性のない支援策のせいで風俗店や不法行為に追いやられる

 人権蹂躙・弾圧問題が世界で最も深刻な国に指折られる北朝鮮を離れ、韓国で渡ってきた脱北民の数は、1990年代後半から着実に増加してきた。ソウル研究院の資料によると、1998年から今年の6月までに北朝鮮を離れ韓国に移住した住民は3万3022人である。

 北朝鮮から来た住民が増え、これまで、金泳三政府は1997年に「北朝鮮離脱住民の保護及び定着支援に関する法律」を制定し、北朝鮮離脱住民たちが韓国社会の一員として自立し定着するのを助ける支援策を実施した。

 最初の法案が提出された当時は、北朝鮮離脱住民の就職問題を解決するために、労働部と企業が協力するという程度のものに過ぎなかった。しかし、2014年5月までの四回の法律改正により、現在では離脱住民のために予備校設立、就労支援の強化、資産形成制度などが施行されている。

 現在、韓国に来た脱北民は、入国後、国家情報院、警察庁など関係機関合同の審問を受けたあと、社会に適応するための施設である「ハナ」で12週間の間、気持ちを落ち着け、韓国社会の理解を深め、今後の進路の指導・相談、基礎職業訓練などを受ける。

 ハナを修了した脱北民は、初期の定着支援として家族関係の調整、住居の斡旋、定着金などの提供を受ける。永久国民賃貸住宅(2年間の賃貸借契約、解約不可)への入居権と住宅支援金(1人世帯1600万ウォン、2〜4人世帯2000万円)も同時に与えられる。

 定着金は、基本金(1人世帯800万ウォン、2人世帯1400万ウォン、3人世帯1900万ウォン)のほか、地方居住奨励金、貧困階層保護加算金などが支給される。その後、住居を定めた脱北民は、自治体傘下の脱北民支援センター「ハナセンター」のサポートを受ける。

 ハナセンターは、脱北民に対し、生活の実地体験、就職の可能な者に就職斡旋、余暇の文化活動、精神科集団相談、地域社会の現場体験、教育進学支援、就労支援、生活支援、医療支援などを提供する。ハナセンターは、全国に25か所ある。

 これまで政府と自治体が脱北民支援政策を行ってきたが、実効性の面では落第点の評価を受けてきた。定着のための研修を3か月間受けるが、これらのプログラムを修了したあとも、質の低い仕事を転々とするのが常であった。さらに風俗店や不法行為に追いやられる場合も少なくなかった。

 国家統計局の調査の結果、北朝鮮離脱住民の80.7%が中下層以下の生活水準であることがわかった。賃金労働者の月平均賃金は、全国平均255万ウォンの74%の水準にとどまった。北朝鮮離脱住民の大多数が就職で困難を経験し、最終的に支援金が絶たれると生活苦にあえぐことになるということが裏付けられている。

 特に、中年・壮年層に比べて就職戦線で競争力のある若者でも、普通の仕事にはつきにくいことがわかった。匿名希望の脱北民ハン・ジョンヒ(30代女性、)さんは、「大きな夢を抱いて北を脱出したが、韓国で生活するのはあまりにも厳しい」、「政府は脱北民が韓国に定着できるよういくつかの政策を行っているが、少しの間の生活の足しにしかならない」と訴えた。

 さらに、「ハナ院を終えたあと、永久賃貸アパートを抽選で割り当てるけれども、2年経って自活できるようになると、これも返さなければならない」、「さらに定着金をもって職探しのために、ソウルなどの大都市に出てで簡易宿舎を転々とする脱北民がとても多いが、ほとんどは職が見つからず、見つけたとしてもひどい処遇を受ける」と説明した。そして、「定着金の700万ウォンを使い切ると、道端暮らしになるか、違法なことをするしかないのが現実」と付け加えた。

 脱北民の韓国への定着を支援している北朝鮮正義連帯のチョン・ペテロ牧師は、「脱北民は、ほとんどが北朝鮮と韓国の文化的・言語的な違いなどの問題のために、ふつうの経済活動ができない」、「さらに脱北した若者の多くは日陰に追いやられ、女性はマッサージなど風俗業、男性は詐欺など違法な仕事に追いやられることが多い」と話した。

 専門家は、現在の脱北民支援政策は現実とかけ離れており、大幅に手を入れなければならないという意見で一致している。特に、脱北民にたんに経済的な支援をするよりも、就職など長期的な支援策を具体的に設けるべきだと助言する。

 カン・トンワン東亜大学政治外交学科教授は、「北朝鮮離脱住民たち社会主義下の仕事に慣れているため、資本主義経済に適応するのに苦労している」、「ハナ院での3か月では、職業研修ではなく、まず資本主義について理解させる研修に重点をおくことが必要」と述べた。

 イム・ジェチョン高麗大学統一外交学部教授は、「現在の脱北民に対する支援は短期的なもので、いったん仕事について適応できず、飛び出してきても、それ以上の支援はない」、「今後は、仕事を辞めても再就職のための支援を続けるという長期的な方法を準備しなければならない」と指摘した。

文在寅政権発足後、悪化する脱北民支援…「国民より金正恩が優先か


 文在寅政権発足後、脱北民を深刻な生活苦に追い込んだ有名無実な政府支援さえも、最近、さらに縮小されたことがわかり、論議を呼んでいる。親北宥和政策を掲げ、北朝鮮の顔色をうかがって、脱北民支援に消極的な姿勢をとった結果と分析されている。先月は、生活苦と就職難で悩んでいたある脱北青年が、飛び降り自殺する事件も起きた。

 今年、政府が予算化した脱北民定着支援金は1074億ウォンだ。 2015年以来、関連予算は、2015年1246億、2016年1229億、2017年1109億、2018年1125億ウォン。来年の予算案は1031億ウォンで、今年よりも43億減少した。

 毎年、定着支援予算が減るのと同時に、民間団体に対する支援予算も大幅に減っている。ユン・サンヒョン自由韓国党議員が統一部から得た資料によると、2014年、統一部は計24の民間団体に脱北民定着事業費4億1000万ウォンを支給したが、今年の予算は2億6000万ウォンに過ぎない。

 一方、北朝鮮に対する人道支援は毎年増えている。政府が発表した来年の統一部の予算は1兆4386億ウォン。そのうち南北協力基金は1兆2203億ウォンで、前年比10.3%増えた。統一部は南北協力基金を使って、北朝鮮に対するコメ支援を今年の2倍、20万トンを支援する予定だ。

 脱北民に対する支援は減らす一方で、北朝鮮への支援を増やす政府に対して、国民の多くは矛盾している、理解できないという声をあげている。ソウル在住のチョン・チュンギさんは、「報道を通じて脱北民の生活を見るとかわいそうでならない」、「韓国にやってきた脱北民の世話もまともにできないのに、金正恩の顔色をうかがって対北支援を増やす政府を見ると、あきれて物も言えない」と述べた。

 専門家は、政府が脱北民支援に消極的な理由は、金正恩国務委員長の顔色を窺っているからだと見ている。匿名希望のある北朝鮮専門家は「脱北民はもともと金正恩が嫌いで、国を離れてきた人々」、「このような脱北民に対する支援を増やすことについて、文在寅政権は、北朝鮮の顔色を窺っている」と打ち明けた。
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