犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

文在寅は犬公方?

2021-11-09 00:53:09 | 犬のいる生活
 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の一言で、犬の食用禁止の法制化の議論が起こっていることは以前お伝えしました。

 文大統領は何も突然このようなことを言い出したわけではありません。すでに大統領になる前の2017年4月、韓国日報の記者の質問に「犬の食用禁止のための段階的な政策を実現する」と答えていて、事実上の公約とみなされていました。(リンク、韓国語)

 文大統領の公約をまとめたサイトには、以下の項目があります(リンク、韓国語)。

54. 人と動物がともに暮らす健康的な生命国家を作ります。
233. ペットの飼い主の負担を軽減するための診療体制改善
234. 飼い犬の遊び場拡大
235. ペット支援センター設立と訓練専門家育成
236. 捨て犬・捨て猫の里親探し推進
237. 野良猫への給食、去勢・不妊手術事業支援
238. 普遍的な動物福祉畜産基準の設定
239. 動物福祉畜産農場を増やす
240. 動物実験の規制、代替技術の支援
241. 学校での動物保護教育強化
242. 政府・地方自治体に動物保護部署を設置


 文大統領はプライベートでも愛犬家として知られていて、大統領就任後は自宅で飼っていた犬を青瓦台(大統領府)に連れていきました。

韓国ハフィントンポスト2017年5月27日(リンク

 文在寅大統領が慶尚南道梁山の私邸で育ててきた伴侶犬(=ペット)の豊山犬「マル」が、青瓦台に入城し「ファーストドッグ」になった。

 …文大統領は以前、梁山の自宅に帰ったとき、身辺を整理し、マルも連れてこようと思ったが、キム・ジョンスク夫人が10年以上も育て、「老犬」になったマルの健康を心配して動物病院で検診を受けるなどしたため、やや時間がかかったそうだ。


 大統領夫人を「ファーストレディー」と呼ぶように、飼い犬を「ファーストドッグ」と呼んでいます。青瓦台(大統領府)に引っ越したことを「入城」と表現するあたり、江戸時代の犬公方、徳川綱吉の「お犬様」顔負けです。

 記事に出てくるマルは文大統領の愛犬で、豊山犬(プンサンケ)という韓国固有の犬種です。文大統領の家族(両親と姉)は、朝鮮戦争時に北朝鮮の咸興(ハムフン)から南に逃れてきました。豊山郡は咸興の南方にあります。文大統領は巨済島(コジェド)で出生しましたが、両親の故郷を偲んで北朝鮮原産の犬を飼っているのかもしれません。

 私が子供のころに飼っていた犬も「マル」という名前だった(ただしメス)ので、なんか親しみを感じます。

 その後、2018年9月に南北首脳会談があったとき、北朝鮮の金正恩は文在寅が犬好きであることを知り、マルと同じ豊山犬の雌雄1匹ずつを贈りました。

 今年2月には、青瓦台で飼われているペットたちの近況を伝える記事が出ました(リンク、韓国語)。

2021年2月12日付news1

「トリ」と「チンチギ」は元気か?

 文在寅大統領が今年就任5年目に入り、就任当初から青瓦台で生活をともにしてきた「ファーストドッグ」、「ファーストキャット」の近況にも関心を注いだ。

 動物愛護家として知られる文大統領は当選前から慶尚南道梁山(ヤンサン)の私邸でいろいろな伴侶動物(=ペット)を育てていて、2017年5月に就任した直後、私邸で飼っていた「マル」と捨て猫の「チンチギ」を青瓦台に呼び寄せた。同じ年の7月には捨て犬「トリ」を引き取り、青瓦台で育てている。

 その後、2018年9月に金正恩北朝鮮国務委員長から文大統領に豊山犬の雌雄、「ソンガン」、「コミ」を贈られたため、青瓦台に住むペットの数はさらに増えた。

 青瓦台関係者は、12日、「北朝鮮から来た豊山犬も含め、みな健康に過ごしている」、「大統領はときどき自分で散歩をさせている」と語った。

 文大統領のペットの中で国民にもっとも知られているのは、捨て犬から「ファーストドッグ」になった黒犬の「トリ」だ。2015年に京畿道南楊州(ナムヤンジュ)のある廃屋から短い綱でつながれた状態で発見されたあと、「黒い犬は不吉だ」と考える「ブラックドッグ症候群」のために約2年間、引き取り手がいなかった。

 そんな中、文大統領が選挙運動をしているとき、「偏見と差別から自由である権利は、人間も動物にも等しくある」という考えから、トリの引き取りを約束し、当選後、実際にトリを青瓦台に迎え入れた。



マルとトリ

 韓国では黒い犬は不吉、と見られているようです。

 また、記事タイトルにあるチンチギは大統領になる前に引き取った捨て猫で、青瓦台に来たときすでに13歳、今年17歳になる老猫です。

 ところで、2018年9月に金正恩から贈られた雌犬のコミは、その2か月後に6匹の赤ちゃんを出産します。韓国に来たときにすでに妊娠していたのですね。

 そして今年の6月、コミは二度目の出産をしました。今度は7匹です。

 文大統領は7月3日のフェイスブックで「北朝鮮から来た豊山犬のコミが、もともと飼っていた豊山犬マルとの間に、7匹の仔犬を産んだ」、「生後4週間ほど経った」、「みな健康に育ち、もう離乳食を食べ始めているが、難産だった1匹がまだ食べないので、牛乳を少しずつ飲ませている」と書き込み、自ら授乳している写真(記事冒頭)も公開しました。(ソウル経済新聞、2021年7月3日付、リンク

 もともと文大統領が飼っていた雄犬のマルと、北朝鮮から贈られたコミの間に赤ちゃんができたことで、マスコミは南北友好の象徴として大騒ぎしました。

 もしこれが事実とすれば、すごいことです。

 マルが青瓦台に来た2017年の記事に、「キム・ジョンスク夫人が10年以上も育て、「老犬」になったマルの健康を心配して動物病院で検診を受けた」とありますから、マルは現在14歳以上です。

 豊山犬のような大型犬は寿命が10~12歳。14歳なら、人間で言えば80歳ぐらいです。そんな高齢犬が子どもを作ったとは驚きです。そんなことが可能なんでしょうか? 交尾は、雄犬の体に負担がかからないのでしょうか? もしそんなことを強要したら、それこそ動物虐待ではないでしょうか?

 私は詳しくないので、もしこのブログの読者の中に犬に詳しい方がいらっしゃったら、教えてほしいです。

 今私が飼っている犬は今年で16歳。目は見えず、足腰も弱っていて、排せつのときによろめいて横倒しになったりするほどよぼよぼです。(去勢しているので交尾はできません)

 もしかして青瓦台御用達の獣医たちが韓方(韓国では漢方を韓方と書きます)の知見を総動員して、特別な精力剤を調合したのかもしれません。

 実際には、北朝鮮から来た雄犬のソンガン(2017年生まれ)の子どもなんだけど、「南北友好」の象徴とするために、あえてマルの子どもだと発表しているのではないか。これまでの青瓦台の前科を考えると、ありえなくもない。

 韓国ドラマお得意のDNA鑑定でもすれば、マルとソンガンのどちらが父親かわかるはずですが、たぶんしないでしょうね。

 今のところ、この件について疑問を投げかける報道は見当たりません。

 ちなみに、生まれた7匹の仔犬の名前は、

アルム、ダウン、カンサン、ポム、ヨルム、カウル、キョウル

で、つなげて読むと、

아름다운 강산 봄 여름 가을 겨울(美しい江山、春夏秋冬)、

だそうです。

 また、これらの仔犬たちは希望する自治体に譲るということです。

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2 コメント

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両親が北朝鮮の咸興から (skanno)
2021-11-09 12:51:51
<……文大統領は朝鮮戦争時に家族とともに南に逃れてきましたが、その前に住んでいたのが北朝鮮の咸興(ハムフン)。……>
文大統領は1953年生まれなので、両親が北朝鮮の咸興から逃れてきた、とするのが正しいとおもいます。
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ありがとうございます! (bosintang)
2021-11-09 13:21:40
ご指摘の通りです。早速修正します。
返信する

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