犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

三・一節記念式典 文大統領演説全文

2022-03-02 00:05:20 | 韓国雑学
2022年3月1日ハンギョレ(リンク、韓国語)

―大韓人、大韓へ―

 尊敬する国民の皆さん、海外同胞の皆さん、ついに国民のそばにそびえ建つことになった大韓民国臨時政府記念館で、開館式をかねて103周年3・1節記念式を開くことになり、非常に感慨深く思います。過去100年、われわれは3・1独立運動と臨時政府が夢見た民主共和国を立ち上げました。皆が自由で平等で、抑圧されない国、平和で文化的な国を作るために休むことなく走ってきました。

 3・1独立運動と大韓民国臨時政府は、先祖がわれわれに受け継いでくれた偉大な遺産です。民主共和国の歴史を記憶し、称えることは、今日の民主共和国をより堅固にすることです。

 私は就任した年の光復節記念辞で、大韓民国臨時政府記念館建立を約束したのに続き、その年の中国訪問時、大韓民国大統領としては初めて重慶の大韓民国臨時政府庁舎を訪れ、臨時政府記念館建立を先烈たちに誓いました。

 その約束と誓いがついに果たされました。3・1独立運動の精神と臨時政府の歴史、自主独立と民主共和国の自負心を国民とともに称えることができるようになり、とても意義深く思います。

 記念館の建立に長い間尽力いただいた臨時政府記念事業会とキム・チャドン会長、記念館建立委員会とイ・ジョンチャン会長、光復会と独立有功者、独立有功者の子孫、大切な資料を寄贈してくださった方々に深く感謝いたします。

 大韓民国臨時政府記念館は西大門独立公園に向き合っています。今日、苦難に屈しなかった独立運動家と先烈たちの魂が、臨時政府記念館と3・1独立宣言記念塔、殉国先烈記念塔を喜んで迎えてくれているようです。

 臨時政府記念館には、3・1独立運動の喊声が込められています。風餐露宿して(苦労して)国の独立に一生を捧げた志士たちの愛国心が込められています。われわれは民主共和国大韓民国の根を決して忘れません。

 国民の皆さん、われわれの歴史は平凡さが集まり、偉大な進展を遂げた真の民主共和国の歴史です。

 1919年3月1日、名もなき人々が集まって太極旗を手に取りました。万歳の声が満ちる街で、自分と同じく解放された世の中を夢見る人々に出会いました。非暴力の平和的な抵抗が新しい時代を開くことができるということを示しました。

 独立の喊声は鴨緑江を越え、太平洋を越えて、世界に響き渡りました。北間島、西間島、沿海州から、ハワイ、フィラデルフィア、サンフランシスコで、万歳の声とともに太極旗が翻りました。先祖たちは、植民地の民衆から民主共和国の国民へ、自らを高めました。

 その年の4月10日、ソウル、満州、沿海州、米国、日本から来た民族を代表する独立運動家たちが中国の上海に集まり、大韓民国臨時政府を樹立し、臨時議政院を構成し、国民が民主共和国の主人になったことを宣言しました。民主共和国、大韓民国が誕生する瞬間でした。

「われわれの運動は、主権回復を求めるだけではない。韓半島の上に模範的な共和国を建て、二千万が天然の福楽を享受できるようにするのだ」安昌浩先生は、臨時政府内務総長に就任し、このように言いました。

 1941年、臨時政府国務委員会は「大韓民国建国綱領」を発表し、光復後の新しい国の構想を提示しました。政治・経済・教育・文化において平等な生活を享受する民主共和国が目標であることが、あらためて明示されました。

 われわれは過去100年、その目標を一つ一つ成し遂げました。植民地と戦争を経験した貧しい国、大韓民国は、清渓川の小さな作業場で、ドイツの慣れない炭鉱や病院で、砂漠の焼けつくような日差しの中で、全国各地の産業現場で、国民一人一人が流した汗のしずくによって先進国となりました。外為危機をはじめとするあまたの国難も、危機の中でいっそう団結する国民の力で乗り越えることができました。釜山と馬山から、5月の光州、6月の広場とろうそく革命に至るまで、民主主義を守ったのも平凡な国民たちの力でした。

 わが政府も国民の力で誕生しました。名も無く犠牲になった方々の名前を見いだし、評価を受けられなかった方々の名誉を回復することを当然の責務と考えました。過去5年間に2,243人の独立有功者を見つけて褒賞しました。その中には、これまでまともに評価を受けてこなかった女性独立運動家245人も含まれています。まだ子孫が見つからず、勲章を渡せない独立有功者も多いです。政府は最後の一人まで、独立有功者とその子孫を見つけるために努力します。

 異国に埋葬された独立有功者の遺骸の奉還にも力を入れました。 2019年、中央アジアのカザフスタンで桂奉瑀(ケ・ボンウ)志士夫妻、黃雲傳(ファン・ウンジョン)志士夫妻を奉還し、2021年の光復節には洪範図(ホン・ボムド)将軍の遺骸を故国に祀りました。政府は生活が苦しい独立有功者の子女、孫に生活支援金を支給し、国家有功者の名牌を自宅に飾っています。昨年末までに独立有功者と国家有功者46万家庭に名牌を飾り、今年も10万家庭に名牌を飾ります。

 政府は過去5年間、危機の克服とともに未来への挑戦を続けました。日本の輸出規制に対抗して素材・部品・装備の自立化への道を開拓しました。危機の克服を越え、革新と成長を牽引する原動力を、国民とともに作り上げました。

 国民の成熟した市民意識は、コロナのトンネルを抜け出すための一等功臣でした。防疫の成果をもとに、昨年、わが国の経済は4%の成長率を達成し、一人当たり国民所得3万5000ドル時代を開きました。ジニ係数、5分位配率、相対的貧困率という3大分配指標がすべて改善されつつあり、「危機が不平等を育てる」という公式も打ち破ることができました。

 困難な状況の中でも献身的な医療スタッフと防疫陣、黙々と共同体の日常を守ってくださっている基盤労働者、誰よりも苦痛が大きかった小商工人と自営業者、日常生活の不便を我慢してくださった国民たちは、いずれも危機克服と新しい大韓民国を開いていく主役です。深く感謝します。われわれは、幸せになる資格のある国民です。国民全員の努力が無駄にならないよう、任期が終わる瞬間まで最善を尽くします。

 国民の皆さん、われわれは今、誰も見下げることのできない富強な国になりました。世界が公認する先進国になりました。何よりも胸が高鳴るのは、大韓民国が水準の高い文化の国になったことです。3・1独立宣言書で先烈たちは、独立運動の目的が「豊かな独創性を発揮して輝く民族文化の実を結び」、「世界文化に資する機会」を持つことにあると明言しました。大韓民国臨時政府主席、白凡金九(ペクポム・キム・グ)先生も「ひとえに限りなく備えたいのは文化の力だ。文化の力はわれわれ自身を幸せにし、さらに他人にも幸せを与えることができるからだ」と言いました。はるかに遠い夢のように感じられたことです。

 しかし今日、われわれはやり遂げつつあります。わが国の文化芸術は、伝統と現代文化を韓国という器に一緒に入れて新たに変化させました。一世紀前、先烈たちが望んだ夢を叶え、世界を感動させています。Kポップに代表される韓流が世界を包んでいます。BTSブームについて『フォーブス』は「新しい標準」と言いました。映画「パラサイト」はカンヌとアカデミーを席巻しました。ゲーム、ウェブトゥーン、アニメが世界で愛され、「イカゲーム」などのわが国のドラマが連続ホームランを打っています。クラシック音楽やバレエのような分野でも韓国人の才能が世界から激賞されています。各分野の文化芸術家たちの情熱と魂が一つになった結果です。

 わが国の文化芸術をこのように発展させた力は、断然、民主主義です。差別したり抑圧したりしない民主主義が、文化芸術の創造力と自由な想像力に翼をつけました。最初の民主政府だった金大中政府は、自信を持って日本文化を開放しました。わが国の文化芸術は、多様性の中で力を育て、むしろ日本文化を圧倒するほど競争力を持つようになりました。英国の月刊誌「モノクル」は、わが国のソフトパワーをドイツに次ぐ世界2位に選定しました。わが国の文化芸術の魅力が、わが国の国際的地位を大きく高めているという事実を、私は海外歴訪のたびに確認することができました。「支援するが干渉はしない」というのは、歴代民主政府が立てた確固たる原則です。創造と表現の自由は民主主義の中で広がり、強くなります。わが国の民主主義が前進し続ければ、わが国の文化芸術は絶え間なく世界を感動させるでしょう。私たちに大きな誇りを与えてくれている文化芸術家たちと文化芸術を大事にしてくれた国民に、限りない敬意を表します。

 国民の皆さん、コロナ危機の中に国際秩序が揺れています。デジタルとグリーンの革新(イノベーション)が加速し、技術競争が熾烈に展開されています。力で覇権を握ろうとする自国中心主義もまた首をもたげています。新冷戦の懸念も大きくなっています。しかし私たちには、暴力、差別、不義に抗議し、覇権的国際秩序を拒否した3・1独立運動の精神が流れています。大韓民国は、世界10位の経済大国、世界7位の輸出貿易強国、総合軍事力世界6位、革新指数世界1位の堂々たる国となりました。

 3・1 独立運動の精神が今日のわれわれに与える教訓は、強大国中心の国際秩序に振り回されず、わが国の歴史をわれわれが主導していくことのできる力を持たなければならないということです。わが国は今、危機を機会に変え、新たに跳躍しています。コロナ危機のど真ん中で始まった韓国版ニューディールは、世界をリードする大韓民国の未来戦略となりました。デジタルとグリーンのニューディールで新しい産業を興し、より良い職を作りつつあります。ヒューマン・ニューディールで雇用のセーフティーネットと社会のセーフティーネットを拡充し、地域均衡ニューディールで国家均衡発展時代を開き、革新的包容社会に向けた確かな転換を始めました。経済が安全保障である時代、グローバル・サプライチェーンの困難さも拡大しています。世界最高の競争力を持つわが国の半導体と電池産業は、グローバル・サプライチェーンをリードしています。

 今や、わが国には、多国間主義に基づいた連帯と協力をリードする力量が備わりました。G7首脳会議に2年連続で招待されるほど、地位が高まりました。ASEANを中心とした新南方政策、ユーラシア諸国との新北方政策、中南米と中東まで拡張した外交で経済協力と外交・安保の地平を広げました。世界最大のFTA、RCEPが先月発効し、わが国は世界のGDPの85%に達するFTAネットワークを備えることになりました。わが国の経済領域がそれほど広くなったのです。

 われわれがより強くなるためにぜひ必要なのが、韓半島の平和です。3・1独立運動には南も北もありませんでした。さまざまな勢力が臨時政府といっしょになって、左右を統合する連合政府を作り上げました。抗日独立運動の大きな幹は、民族の大同団結と統合でした。臨時政府傘下で、ついに一つに統合された光復軍は、抗日独立運動史に輝く足跡を残しました。1945年11月、故国に戻ってきた臨政要人(臨時政府の幹部)は分断を防ぐために最後の力をふり絞りました。いつか、3・1独立運動の熱望のように、その日の名もなき主役たちの息子と娘の中から、統一を念願する喊声が蘇ることでしょう。

 まず、われわれがやらなければならないことは平和です。韓国戦争とその後にわれわれが経験した分断の歴史は、対決と敵対ではなく、対話だけが平和をもたらすことができるという事実を教えてくれました。

 わが政府は、発足当時の北核危機の中で劇的な対話を通じて平和を成し遂げることができました。しかし、われわれの平和は脆弱です。会話が途絶えたからです。平和を持続させるための対話の努力を、続けなければなりません。戦争の暗雲の中で、平昌冬季オリンピックを平和オリンピックにすることを夢見たように、私たちが意志を失わなければ、対話と外交を通じて韓半島の非核化と恒久平和を必ず成し遂げることができます。われわれは、100年前の苦痛を決して繰り返しません。平和を通して民族の生存を守り、民族の自存を高め、平和の中で繁栄していきます。

 韓日両国の協力は、未来世代のための現世代の責務です。わが国の先祖たちは3・1独立運動宣言で「昔の恨み」と「一時的な感情」を克服し、東洋の平和のためにともに歩もうと日本に提案しました。今のわれわれの気持ちも同じです。いろいろ困難が多い今、近くの隣人である韓国と日本は、「かつて不幸だった過去の歴史」を踏みしめ、未来に向けて協力できるはずです。韓日関係を超えて、日本が先進国としてリーダーシップを持つことを、心から願っています。

 そのためには、日本は歴史を直視し、歴史の前で謙虚でなければなりません。「かつて不幸だった過去」のために、時折悪化する隣国民の傷に対して共感できるようになったとき、日本は信頼される国になるでしょう。

 韓国政府は、地域の平和と繁栄はもちろん、コロナと気候危機、そしてサプライチェーン危機と新しい経済秩序に至るまで、世界的な課題への対応で協力するために、常に会話の扉を開いています。

 尊敬する国民の皆さん、海外同胞の皆さん、われわれは大韓民国臨時政府で活躍した方々を臨政要人と呼んできました。臨政要人という言葉には、われわれの子孫への尊敬が込められています。これまで韓国民はすべて経済発展と民主主義の主役として活躍し、それぞれの場所で大切な人となりました。今やわれわれは、先導国家という新しい大韓民国に向けて出発しました。その道では、国民一人一人が臨政要人と同じです。誰もが先駆者であり、誰もが重要な使命を持っています。

 今や誰も大韓民国を揺さぶることはできません。今や誰も国民主権を奪うことはできません。今や誰も一人の人生をおろそかにすることはできません。ここ大韓民国臨時政府記念館は、平凡さが成し遂げた偉大な大韓民国を記憶する場所であり、国民にいつも勇気と希望を与える里程標になるでしょう。独立の熱気で熱く燃え上がった1919年の春、苦難と栄光の道を堂々と歩き、ついにわれわれ全員の偉大な歴史となった先烈たちに、深い尊敬の気持ちを捧げます。ありがとうございました。

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