犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

フィリピン便り~たばこのない町

2020-01-06 00:24:49 | フィリピン
 イフガオの町で、「スモーキング・フリー」というポスターを見ました。

「タバコが無料なの?」

 ダニエルに聞くと、

「いえ、売ってないんです。『タバコがない』と言う意味です」

「売ってない?」

「モマがあるから、タバコは必要ないんだよ」


 隣から、ダニエルのおじさん(イフガオ人)が説明してくれます。

「モマ?」

「これだよ」


 地面の赤い染みを指さします。

「血ですか?」

「ハハハ、モマだよ。あとで教えてあげる」

 レストランに入ったとき、おじさんがモマを買ってきてくれました。

「あっ、檳榔(ビンロウ)ですね」

 台湾で見たことがありますが、試したことはありません。

 プドゥと呼ばれる植物の葉にモマ(ビンロウ)の実を乗せ、白い粉(石灰=タニシの殻をすりつぶしたもの)を振りかけて包み、口に放り込んで噛みしだく。唾液と混ざると、何らかの化学反応が起きて、赤い汁がにじんでくるが、これを飲み込むと体によくないらしい。モマをやっている人は、したがって、血のような唾をところかまわずペッペッと吐き、あたりは血痕だらけになる、というわけです。

 おじさんが示してくれたお手本に見習って、私もやってみましたが、苦くて、渋くて、とてもおいしいものではない。すぐに全体を吐き出しました。我慢して噛み続けると、体がポカポカし、陶酔感が得られるとのこと。麻薬の一種なのでしょう。

 かつてはマニラなどの低地でも好まれた嗜好品だそうですが、支配者のスペイン人、アメリカ人から嫌われ、今ではイゴロットにのみ残っているとのことでした。
昼食のとき、レストランのベランダに出てみると、床に赤い染みが。

「モマですね?」

「いや、これは
です」

「えっ、血?」

「この店は新しくできた店で、これからの店の発展を祈念して、ブタをさばいた時に、ブタの血を建物のいろいろなところに擦り付けておくんです」


(!!!)
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