以前、『フィリピンパブ嬢の社会学』という本を紹介したことがあります。
フィリピンパブ譲の社会学
この本はそれなりに好評だったようで、その後映画化もされました。
私の娘たち夫婦(夫がフィリピン人)は、ネットで観たそうですが、私は観ていません。
その後、その続編たる『フィリピンパブ嬢の経済学』(中島弘象著、新潮新書、2023年6月刊)が出ました。
娘が読み終わったというので、借りて読みました。
第一作は、著者が2011年にフィリピンパブ譲のミカと出会い、紆余曲折を経て2015年に結婚するまでを描いたもの。
続編は、結婚後、2016年に妊娠がわかり、17年7月に出産、2020年、コロナ禍下での第二子出産を経て、親子4人での日本生活がなんとか軌道に乗り始めるところまでが描かれています。
すべて著者の実体験を記したノンフィクション。
妊娠後の妊婦検診、母子手帳、出産後の各種手続きには日本語が必要。ところがミカは、フィリピンパブでの客との片言の会話はできるが、読み書きはまったくできない。病院や役所での説明も理解できない。夫がすべて通訳、翻訳、説明をしてやらないとならない。
私の娘の夫がフィリピンから来日したとき、役所の手続きや病気をした時の診察などを、娘がすべてサポートしていたことを思い出しました。
出産の5か月前、第一作『フィリピンパブ嬢の社会学』が話題になり、著者は新聞、ラジオ、テレビなどから取材を受け、講演会などに招かれることも。
当時、著者は日雇いの肉体労働をしていましたが、新聞記事を読んだある印刷会社の社長から、「うちに面接にいらっしゃい」と誘いを受け、晴れて「正社員」になります。
それまではミカのパブでの稼ぎに頼り、やはりパブ譲をしている姉の家に居候をしていたのですが、就職を機会にアパートを借りて家族3人の生活が始まります。
子育ては、フィリピンから駆けつけたミカのお母さん、著者のお母さんが手伝いに来てくれる。
さまざまな人の手を借りながら、ミカはなんとか異国での子育てをこなし、子どもはすくすくと育っていきます。
やがて子どもは幼稚園に入り、ママ友との交流などもあって、ミカの日本語力も上がり、ついに地元でのイベントで「外国人から見た日本での生活」というテーマで、日本語のスピーチをするまでになりました。
こうした自身の経験のほかに、第二作の執筆のために、何人かのフィリピン人ハーフを取材した内容が織り込まれていました。
フィリピンパブ嬢の多くは、「偽装結婚」をして日本のビザを得ます。その後、日本人と結婚し、子どもができても、うまく行かずに離婚することが多い。
子どもたちは、経済的に難しかったり、日本語がうまくできなかったり、ハーフだということで差別されたりしながら、薬物などの犯罪に手を染める者も出てくる。
そうしたハーフたちのさまざまな人生が描かれています。
私の孫娘もやはりハーフ。今のところ、保育園で差別されたという話は聞きませんが、小学校に上がって、いじめを受けないという保証はない。
もしそんなことがあっても、力強く、たくましく育ってほしいものです。
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