ネットでいろいろなニュースを見ていたら、フッと目に泊まる記事がある。
関心ごとのキーワードが私の中にいくつかあり、そこに響くのだ。
最近はカウンセリングの関連することの比重が増えている気がする。
この記事もそんな中のひとつ。
タイトルは
「怠け者」「脱落者」――うつ患者8割「職場に偏見ある」
(誠Biz.ID)
「うつ」とどう向き合うかという本人の問題も大事だが、周りがどう対応するかは結構間違った考え方が広まっている気がする。
そういう関心から「職場の偏見」というのは、カウンセリングの学びの中でいろいろ考えさせられる問題だ。
まず、回答者の意識に触れられている。
「あなたがうつ病になる可能性はあると思いますか」という質問に対し、診断経験も症状経験もない人でさえ、「うつ病になる可能性は、まったくない」と言い切る人は15%にとどまった。しかし、「身近に治療経験者がいるか否か」で回答者を分類すると傾向は大きく分かれる。家族や親しい友人に治療経験者がいる人は、48%が「自分がうつ病になる可能性は、大いに/ややある」と答える一方で、近親者に経験者がいないと74%が「あまり/まったくない」と回答した。
身近に「うつ」と診断された人の半分は自分も可能性があると考えており、回りに経験者がいないと74%が可能性が無いと答えている。
ひとつには、周りに治療経験者がいないと答えている人が持っている「うつ」のイメージがかなり深刻な「うつ」のことしかないんじゃないかと思う。
休職しなければならないほどの「うつ」をイメージして、「自分はそこまでならない」という意識なんだろう。
しかし、そこまで周りから見てそこまで深刻じゃなくても、「うつ」に悩んでいる人は多いはずだ。
一方では「仕事をしているなら、まじめにやれ」と「うつ」で困って通常の動きが出来ない人を思いやることが出来ておらず、その程度は「うつ」じゃないと判断している人がいるだろう。
もう一方で「『うつ』と見られたら困る」と、実際はしんどいのにそういう自分を受け止めず、無理をして、さらにしんどくなってしまう人がいるだろう。
「うつ」を正しく把握できない、周りであり、本人であり、その誤った認識が双方をしんどくさせている。
周りの正しい認識があれば、本人も「うつ」である自分とゆっくり向き合えるし、「うつ」と付き合いながらも仕事を続けていくことが出来る。
しかし、成果主義であり、深刻な不況の現在の社会では、ゆっくり立ち止まることを許してもらえない。
結局、無理に無理を重ねて「休職」を選ばざるを得なくなる。
それならばまだましで、「退職」を迫られる場合もある。
京都市がおこなった「ニート対策」の講習を受けたときに、若い時期にそういう「仕打ち」をうけた人たちの状況を聞いた。
とても大きな「心の傷」を負い、壁を作って閉じこもってしまう。
自分で自分が許せず、向き合うことを放棄して、無気力になってしまう。
周りはそれに困惑し、責める。
「うつ」でもいいんだよ、それが今のあなたの等身大の姿だから
と「今・ここ・わたし」を周りも自分も認めることが出来れば、そこから何かが始まるはずなのに。
「うつ病が快復しやすい職場像」としては、「快復したら復帰できると思える職場」「(過保護と思われるほど)周囲が“優しい”」といった意見が出た。
という話も出ているが、ここも少し間違った考え方がある気がする。
「周囲が“優しい”」ことが良いと思われているかもしれないが、ここに「腫れ物に触る」ような感じがあるのじゃないだろうか。
「触れないようにする」「理解に勤める」というのは、「『うつ』は駄目なこと」という考え方からスタートしているのじゃないだろうか。
きっと、「自分は『うつ』にならない」「『うつ』になると困る」という怖れの気持ちがあるんだろう。
「うつ」であるあなた(わたし)であっても、それが今の姿
と受け入れることと、それが駄目なことじゃないと言う認識。
それが偏見から抜け出すことじゃないだろうか。
じつは、程度の差があるだけで、みんな「うつ」の傾向はある。
周りと比べる「わたし」ではなく、いまのありのままの「わたし」をまず見つめてみて、その「わたし」を認めてあげてもいいんじゃないだろうか。
そうすれば、他の「わたし」も受け入れてあげられるはず。
そういう職場作りには、些細なことでも「聞いてくれる」「言っても良い」関係が大事なんだろうなと思う。
残念ながら、企業が求めるカウンセリングは職場復帰や現状回復を求めるカウンセリングで、短期間で結果が求められるもののようだ。
本当に、「そこに居る人」を大事に尊重するカウンセリングが必要だと思うのだけど。
少なくとも、真宗カウンセリングをともに研鑽している仲間からはそういう意識を教えてもらえる。(現実の難しさも教えてもらえるけど)
8月には北陸でワークショップがある。
第5回真宗カウンセリングワークショップ
いろんな方と、身を持ってそういう空間を味わってみたい。
最初は単独の話題として考え始めたけど、結局「尊重」のことが私の底辺にあるんだなと思い、このシリーズに組み入れることにした。
注)「うつ」と一口に言っても、精神状態の変化の一部の場合もあれば、身体的な問題の場合もありますので、ちゃんとした診断・治療は必要だと考えています。
「尊重」をめぐる話 -1
「尊重」をめぐる話 -2
「尊重」をめぐる話 -3 (法座編)
「尊重」をめぐる話 -4 「死別体験者への言葉かけ」を通じて
「職場とうつ」に関係する話題は、こちらでも書いています。
親子コミュニケーションのちょっとした心がけ 42