クリンの広場

たまっこくりんのおもいのたけ

『奏鳴曲』海堂尊・感想

2022-11-27 | 本と雑誌

前回、18世紀フランスの「不衛生」について お話しましたが、

19世紀の日本の「衛生史」をまとめた、こちらの本

『奏鳴曲(そうめいきょく)』(海堂尊・著)、

めっちゃくちゃ面白いです‼️

(きっかけは実家のお母さんが「今年読んだ本の中で一番面白かった」って言ってたから読んでみたのですが、
今年・2022年刊行のベスト小説に、クリンたちも、推します🐻

 主人公は、北里柴三郎(きたざとしばさぶろう)森鷗外(もりおうがい)

物語は、二人の幼少期から始まり、

北里は 世界的研究者として

森鷗外は 陸軍軍医のトップとして

 ともに「明治・大正の衛生学界」で巨大発言力を持って、

かげに、ひなたに、たたかいあう・・

というお話。

 作者が、二人のことを論文くらい細かく調べて書いているので

歴史的背景を知らないと 苦しくかんじるほど

登場人物など、ふくざつなのですが・・

うちのチット(歴女)なんかは、ひたすら楽しんでいました

お母さんは『前半はまあ義務で読んだようなもので、

後半の、北里と軍や官や帝大閥との闘いが凄かった』なんて言っていたけど、なんのなんの。

前半から面白いわ

と ほめちぎり、

 449ページを1日10時間×3日を費やして読み切って、

今、ちょっと「知恵熱」出しています

 ~ちょっとだけ・STORY~

熊本の庄屋出のきかん坊・北里柴三郎は、
津和野の典医のお坊ちゃま・森林太郎と、
時を同じくして、東大医学部に 入学します。

 真逆の資質でそれぞれ頭角をあらわした二人は、
やがて、ドイツ留学中もコッホ研究所に ともに籍をおき、
帰国後も
その人生を、複雑に絡ませていく・・

という展開です。

 全編が「激流の時代」を反映してドラマティックに 進んでいきますが

医学部時代に、すでに後の二人のライバル関係というか、天敵になってしまうだろう予兆が ふつふつ・たぎっていて 

キンチョ~しますし

 東大寮を仕切るバンカラ学生・北里の雄弁な演説を楽しみ

一方で、

後に文学の道に行くのが透けて見える細身のきりんじ(麒麟児)・森林太郎の ひねこび具合が、

まるで、ドキュメンタリーのように書かれているのを 読むうちに

 いつの間にか・・  明治という時代に 連れていかれる思いがする、

そんな本です。🐻

 クリンたち、森鷗外が軍医として、すごく大きなミスを犯した

というエピソードを 知っています。

彼が、かっけ(脚気)の根本原因を見抜けず、ビタミン不足の白米を食べさせつづけた結果、日清戦争・日露戦争で 陸軍の兵士たちが何万人も病死した。

っていう

つうこん(痛恨)話です。

でも・・

「なぜ、軍医・森林太郎が白米食にこだわったのか

読んでいて、よく分かりましたし、

北里柴三郎の、いまいち・よく知らなかった業績の数々も、

その「猪突猛進」な人柄とともに、はあく(把握)できました。

 主人公二人を振り回すモンスター同期・後藤新平

北里に惚れ込んでパトロンになった福沢諭吉

鷗外をねじ曲げ続けた軍人石黒 忠悳(いしぐろ ただのり)

など、

脇役も ごうかけんらん(豪華絢爛)で

 途中、「舞姫・エリス」とのいきさつが、キラリと心に落ちてきたのも

印象的でした。

 

【星5つ

 

 

コメント (16)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする