前回、18世紀フランスの「不衛生」について お話しましたが、
19世紀の日本の「衛生史」をまとめた、こちらの本
『奏鳴曲(そうめいきょく)』(海堂尊・著)、
めっちゃくちゃ面白いです
(きっかけは実家のお母さんが「今年読んだ本の中で一番面白かった
今年・2022年刊行のベスト小説に、クリンたちも、推します🐻)
主人公は、北里柴三郎(きたざとしばさぶろう)と森鷗外(もりおうがい)。
物語は、二人の幼少期から始まり、
北里は 世界的研究者として、
森鷗外は 陸軍軍医のトップとして
ともに「明治・大正の衛生学界」で巨大発言力を持って、
かげに、ひなたに、たたか
というお話。
作者が、二人のことを論文くらい細かく調べて書いているので
、
歴史的背景を知らないと 苦しくかんじるほど
登場人物など、ふくざつなのですが・・
うちのチット(歴女)なんかは、ひたすら楽しんでいました
「
お母さんは『前半はまあ義務で読んだようなもので、
後半の、北里と軍や官や帝大閥との闘いが凄かった』なんて言って
前半から面白いわ」
と ほめちぎり、
449ページを1日10時間×3日を費やして読み切
今、ちょっと「知恵熱」出しています ~ちょっとだけ・STORY~
熊本の庄屋出のきかん坊・北里柴三郎は、
津和野の典医のお坊ちゃま・森林太郎と、
時を同じくして、東大医学部に 入学します。 真逆の資質でそれぞれ頭角をあらわした二人は、
やがて、ドイツ留学中もコッホ研究所に ともに籍をおき、
帰国後も
その人生を、複雑に絡ませていく・・
という展開です。 全編が「激流の時代」を反映してドラマティックに 進んでいきますが
、
医学部時代に、すでに後の二人のライバル関係というか、天敵にな ふつふつ・たぎっていて
キンチョ~しますし
東大寮を仕切るバンカラ学生・北里の雄弁な演説を楽しみ
、
一方で、
後に文学の道に行くのが透けて見える細身のきりんじ(麒麟児)・森林太郎の ひねこび具合が、
まるで、ドキュメンタリーのように書かれているのを 読むうちに、
いつの間にか・・ 明治という時代に 連れていかれる思いがする、
そんな本です。🐻
クリンたち、森鷗外が軍医として、すごく大きなミスを犯した
というエピソード
彼が、かっけ(脚気)の根本原因を見抜けず、ビタミン不足の白米を食べさせつ
っていう
つうこん(痛恨)話です。
でも・・
「なぜ、軍医・森林太郎が白米食にこだわったのか」
読んでいて、よく分かりましたし、
北里柴三郎の、いまいち・よく知らなかった業績の数々も、
その「猪突猛進」な人柄とともに、はあく(把握)できました。
主人公二人を振り回すモンスター同期・後藤新平や
、
北里に惚れ込んでパトロンになった福沢諭吉、
鷗外をねじ曲げ続けた軍人石黒 忠悳(いしぐろ ただのり)
など、
脇役も ごうかけんらん(豪華絢爛)で、
途中、「舞姫・エリス」とのいきさつが、キラリと心に落ちてきたのも
印象的でした。
【星5つ】