無知の涙

おじさんの独り言

ぼくの夏休み 2

2018年07月21日 | 入院

謎だらけの診療を終え、なにか薬出すかい?と聞かれる。

それこちらがイニシアチブを取って良いものでしょうか。

とりあえず痛くて寝られないという事態は避けたいので、痛み止めをもらう。

帰宅して痛み止めを服用するが、どうにも良くなる感じはない。良くなるどころか朝を迎える頃にはだいぶ痛みが増してる。

仕方なく仕事を休み、近くの内科へ行くことに。開院したばかりで人がいなかったのですぐに診てもらえた。

診てシコリを触った瞬間に、これダッチョウだね、と先生。

ダッチョウ??俺がやります、俺がやります、いや俺がやります!どうぞどうぞ、のあれ?

完全に頭に?マークが着いてる僕に若干引きながらも親切に字にしてくれる先生。

脱腸。

一瞬、脱糞見えてしまうのは普段の環境のせいなのか・・・

更に分かりやすく図解にしてくれる。

穴があり、そこに腸が入ってしまっているシンプルな図。昨日の最先端医療より100倍分かりやすい。

で、この穴ってなに?誰にでもある穴なの?

肥満体になるとこういう穴ができたりするんだよ、と先生。

確かに太り始めて出べそになった気がしたが、よもや穴が開いていたとは。

そのマクー空間に囚われた腸が出てこない。このまま出てこないといずれ血液が流れなくなり、腸が腐って千切れて、汚物垂れ流しで感染して死亡。そんな未来予想図。い、いやすぎる。

すると、おもむろにそのマクー空間を力任せに押し始める先生。

おげぇぇぇ!

「うーん、昨日ならまだ押し戻せたんだけど、完全にキャッチされちゃってるね。こりゃダメだね」と先生。そんなポケモンみたいに。

こりゃダメだね・・・ダメだね・・ダメだこりゃ・・

俺のマクー空間を最先端医療機器で覗きながら、顔に見えるね!とかのたまってたアイツの顔が浮かぶ。

ガンジーでも伝説のスーパーサイヤ人に目覚めるレベルの怒りを感じたが、でもあの時点で何かヤバいという事は自分自身で分かってたわけだし、医者もあんな調子で全くアテにならんと分かってたんだから、そのままの足でセカンド・インパクト的なアレをすべきだったのだ。最近よく聞くやつ。

まだ時間はあったのだ。人のせいにする前に猛省すべきである。でも病院って、運要素も結構あるよね。


そして病院を移り、そのまま手術。

よくドラマで見るランプが点灯する部屋に通される。担当の方がお二人待ち構えていて挨拶される。そのまま色々な手順の説明が始まる。

あれ?なんか今生の別れみたいな感じになってきた。誰にも何の連絡もしてないけど、考えてみればこのまま一生目を覚まさない可能性もゼロではない。

そんなこと考えてるうちにベットに寝かせられ、麻酔を打たれ、アレヨアレヨと深い眠りへ。

人が死ぬときって意外とこんな呆気ない感じなのかしらん。

次の瞬間には名前を呼ばれて目を覚ます、というよく見聞きするシーンそのままの展開。

えらい子供の頃に寝た次の瞬間、まどろむとかそういうグレーな部分が一切ない、本当に寝た次の瞬間が朝!という事があったが、まさにその感じ。

寝かされたまま集中治療室のような所に運ばれた。どうやら今夜はここで1泊らしい。

集中治療室のわりに2、3人同じ空間にで寝てる気配がするので、集中治療室ほどの大袈裟な部屋ではないのかもしれない。

絶えず何かしらの電算機器が動いていて、ピーやら、ペーやら音がする。

常に痛み止めを背中に注入され、腕には点滴。この点滴のお陰なのか空腹感は皆無。いろいろ麻痺してて分からん。

身動き取れず、聞こえるのは機械の音のみ。こんな状況で寝られるものかと思ったが、あっさり寝付く。



入院2日目。
昨日は痛すぎて家を出てくる際にきちんと準備して来なかったことに、今さら気がつく。何も持ってない。

まずスマホがない。もうスマホ依存性は疑う余地のないレベルで、ほんとスマホがないと何もできない。

とりあえず社用の携帯で必要最低限の連絡は済ませる。集中治療室内はもちろん電磁波機器使用禁止なので、室内にいる間は電源をOFFにして、数十分起きに歩いて電話使用可エリアに行って電源を入れなければならない。

まだ身体を動かすと術後の傷がけっこう痛むので、あまり動きたくないのだが仕方ない。

看護婦さんも何度も起きては部屋を出ていく僕を不思議そうに見ている。

仕方ない。夏休みでは、ないのである。