遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

朱塗猫脚花台に陶胎七宝大花瓶

2022年02月22日 | 漆器・木製品

堆朱ではありませんが、朱塗の漆器ですので、ここで紹介します。

29.9㎝ x 22.7㎝x 4.7㎝。昭和。

蓋(右)と左の朱箱に分かれます。

さらに、左の箱は蝶番で二つに合わさっています。

中には、脚が四本。

クサビ型の合せ部を差し込みます。

ピッタリとはまります。

他の脚をつければ、

猫脚のテーブルのできあがり。

先ほどの蓋をのせれば、完成。

幅45.8cm、奥行き28.2cm、高さ25.6cmの大きさです。

これは花台ですね。

「花台なんていくらでもあるのに!」と文句を言われました。ごもっとも。活花好きのご先祖様がわんさと花器を残していて、今さら花台でもないのですが、昔の物は唐木の物がほとんど。もう少しモダンで使い勝手の良い品がないものかと探していたところ、いきつけの骨董屋で見つけました。

平たい弁当箱のような箱が、花台に変身するのも面白い。

 

実は、陶胎七宝大花瓶を飾りたかったのです(^.^)

目の良い方はお気づきかも知れません。透明テグスを花瓶に掛け、四本の脚に固定しています。せめてもの地震対策です。

故玩館に数多ある脆いモノのうちで、まがりなりにも対策をしてあるのは、この品だけです。あとは、運を天にまかせて(^^;

でも、この品も、花台ごと転がったらオシマイでしょう。

「テグスで固定」も「手薄で怖い」(^^;

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堆朱禅語松竹梅香箱

2022年02月20日 | 漆器・木製品

今回は、江戸時代の日本の堆朱です。

かなり年季のはいった、小さな桐箱に入っています。

ボロボロの薄絹布に包まれていたのは・・・

小さいながらも凛としたたずまいの品です。

10.0㎝ x 11.7㎝、高 8.4㎝。江戸中期。

2段の箱の高さは、上段3.2㎝、下段4.0㎝で、下段が少し高くなっています。

木箱の蓋、側面を削り模様をつけて、その上に朱漆が塗ってあります。

内側、底は黒漆塗りです。

かすかに木目が見られます。

箱の裏には、明和7年(1770)に、伊勢国、栢禪和尚から賜った、と記されています。

四方の彫りを、左回りに見ていきます。

少し斜めから見ると、彫りの様子がよくわかります。

 

 

 

彫りの深さは、上面が1-2㎜、側面、2-3㎜です。

この品は、中国製、それとも日本製?

中国製ならば、分厚く塗った漆層を削って模様を出すでしょう。木胎に彫刻模様を施し、朱漆を塗る方法は、やはり日本のものだと思います。この品は香箱なので、さらに日本の品の可能性が高いです。また、下段を少し大きくして安定感を出した段重は、上手品にしばしばみられます。

このような事から、今回の品は、中国の堆朱に憧れてつくられた日本流の堆朱だろうと推定されます。

明治以降、◯◯堆朱のような特産品が量産されるようになったので、木胎彫刻朱塗の日本流堆朱は多く残っています。しかし、江戸時代の物、特に年代がわかる品となると極端に少なく、今回の品は資料的に貴重だと思います。

表面に大きく彫られた文字「中有風露香」。

これは、中国北宋時代、蘇軾(蘇東坡)の詩「黄葵」にある言葉です。

「弱質困夏永,奇姿蘇曉涼。低昂黃金杯,照耀初日光。檀心自成暈,翠葉森有芒。古來寫生人,妙絶誰似昌。晨妝與午醉,真態含陰陽。君看此花枝,中有風露香。」

君看此花枝,中有風露香。」(君看よ此の花枝、中に風露の香あり)
(花枝をみてごらんなさい。そこに香りを感じることができます。)

「中有風露香」は、禅語のひとつです。

花枝と同じで、人間も姿形をこえた中に、心や人間性を感じることができる。つまり、 物事は目に見えるものの奥に真実がある。

大変、含蓄のある言葉ですね。その言葉が、江戸中期に、日本の堆朱の香箱に彫られていることに感慨をおぼえます(^.^)

 

 

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堆朱?楼閣山水文箱(仙台堆朱)

2022年02月18日 | 漆器・木製品

前回に引き続き、今回も堆朱の文箱です。

18.0㎝ x 24.4㎝、高 5.5㎝。戦前ー現代。

前回に紹介した堆朱と形、大きさなどがよく似た品です。

やはり、内側と底は黒漆塗りです。

全面に、細かな模様が浮き出ています。

蓋の裏を光に当てて角度を調整すると、

かすかに木目が浮かび上がり、木胎であることがわかります。

立体模様の厚さは1-3mm。上の写真の橋など、立体感がうまく出ています。地模様も細かいです。

しかし!

模様に何となくキレがない。分厚い堆朱層を削ったにしては、妙にまるいのです。

目を凝らすと、朱色の中に白い部分が所々にあることがわかります。

顕微拡大してみると・・・

朱色の皮が剥がれ、白、灰色のブツブツがいっぱい見えます。

まるで、小砂利混じりのコンクリートのようです。

同じように朱が剥がれて、内部がむき出しになった所があちこちにあります。朱模様の間の黒く見える部分には、繊維がたくさん見えます。

下方に、大きな欠けを見つけました(写真の白い部分)。少量を削り取って(もはや惜しくはありません(^^;)、水をつけて揉むと、ヌルヌルと溶けるではありませんか ・・・・こっ、これは~~~~!

近代の仙台堆朱は、明治末期、新潟、村上堆朱の職人、川崎栄之丞が仙台から来て開発しました。型押しで浮き模様のシートを作り、木胎の上に貼り付け、朱漆を塗った物です。東華堆朱ともよばれます。生地を精細に彫る手間が省け、量産が容易となりました。原料は、穀類の粉、石膏、木粉、繊維などで、これを糊で練り、型に入れて固めてあるのです。

朱漆で表面が覆われている限りは良いのですが、傷がついて内部がむき出しになると、水で糊が溶け出すのですね(^^;  また、凹部には朱漆が塗られておらず、黒っぽい色です。おそらく墨をってあるのでしょう。ですから、長年の間に、固められたものがほつれてきて、繊維が表面に出てくるのだと思われます。顕微観察で地の部分に見えていた繊維はこれだったのです。

仙台堆朱には、村上堆朱のように木胎を彫って朱漆を塗った品物もありますが、主流は今回のような型押し製品です。しかも、今回の楼閣山水文庫はその代表格。

うーーーーーん、これを堆朱と言って良いのでしょうか(^^;

 

ps. 同じまがい品なら、樹脂を型押しした中国の品物の方が、はるかに精巧で堆朱らしい出来です(^^;

 

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堆朱花鳥文箱(村上堆朱)

2022年02月17日 | 漆器・木製品

これまで、中国の堆朱を紹介してきましたが、今回は日本の堆朱です。

18.0㎝ x 24.4㎝、高 5.5㎝。戦前ー現代。

全面に堆朱が施された文箱です。

彫りは、1-2㎜と浅いです。

内側と底は黒漆塗りです。内には、黒の板が入っています。

岩、牡丹、鳥が彫られています。

 

 

地にも細かな彫りがなされています。

黒漆塗りの部分には、木目が出ているので、木胎であることがわかります。

ところが、よく見ると、朱漆の部分にもかすかに木目らしき筋がみとめられます(電灯が写っている部分、縦に筋)。

これは、分厚い朱漆層を彫った本来の堆朱ではなく、彫りを施した木胎に朱漆を塗った物ですね(^^;

堆朱は、室町時代に中国から日本へ多くの品が渡ってきたと言われています。その後、日本では、一部の作家の品を除けば、木のボディに彫刻を施した物に朱漆を塗った倣堆朱が主に生産されました。村上堆朱や仙台堆朱です。鎌倉彫りもこの系統に入ると言えます。

今回の品はその一つ、おそらく村上堆朱(新潟県)ではないかと思われます。

それにしても良くできています。

予備知識がなければ、本物の堆朱で通ってしまいますね(^.^)

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堆朱牡丹鳳凰紋飾棚

2022年02月15日 | 漆器・木製品

大きな堆朱飾り棚です。

 

 

幅 93.7cm、奥行 34.9㎝、高 98.3㎝。現代。

中国製の堆朱棚です。しっかりとした造りで、重いです。

全面に牡丹が彫られています。

天板の中央には、鳳凰があしらわれています。

天板左:

天板右:

天板中央:

彫りの深さは、2-3mmほどです。

少し横から見ると、牡丹と鳳凰が浮き上がって見えます。

 

 

 

左右両側面にも、牡丹が彫られています。

 

 

 

前面には、抽斗が4個。

そこにも、牡丹が彫られています。

 

この堆朱棚は、大きな牡丹が11個、鳳凰が1羽配された、たいへん目出度い品ということになります。

現代の工芸品ですが、真面目な造りの実用品です。堆朱の色も落ち着いた朱色で、どぎつさを感じません。

いつもの骨董屋で、店主がうれしそうに搬入してきたのに遭遇し、そのまま故玩館へ連れて帰りました。こういう品の相場は、不明です。金額が妥当であったかどうか、ずっと気になっていました。

ところが、数年前、ネットオークションに同手の品が出品されました。予想に反してどんどんはね上がり、最終的に私の購入価格の4倍もの値になりました。店舗の価格よりも、ネットオークションの方が高くなるのは、本当に稀です。この品は、それなりの品だったのですね(^.^)

この棚には、普段、品物がワンサとのっています。ちょっとやそっとでは掃除ができません。今回、写真を撮るために、全部の品を移動しました。おかげで、彫りの間の細かい部分もきれいにすることができました。ブログの効用です。

 

堆朱飾り棚は、元の通り、陶胎七宝などを満載したゴチャゴチャ状態に戻りました。これ以上詰め込むのは、無理ですね(^^;

コメント (2)
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