遅生の故玩館ブログ

中山道56番美江寺宿の古民家ミュージアム・故玩館(無料)です。徒然なる日々を、骨董、能楽、有機農業で語ります。

面白古文書『吾妻美屋希』2.「諸道具寄合ばなし」

2023年07月10日 | おもしろ古文書

今回は、面白古文書『吾妻美屋希』の2回目、「諸道具寄合ばなし」です。

これまでの見立て番付と異なり、いろいろな日用道具に裏話を語らせ、日ごろのうっ憤を晴らさせようという趣向です。

取り組んでみると、予想に反して、かなりの難物でした。とにかく項目が多いです。不明の赤、多数(^^;

 

 諸道具寄合ばなし 
 
つるべがいふてゐる めうとの中か水くさい
(釣瓶が言うている 夫婦の仲が水くさい)

火ふき竹がいふてゐる くらがりて尻ねぶられる
(火吹き竹が言うている 暗がりで尻ねぶられる)

ふきのとふがいふてゐる お客がないとふミつぶす
(フキノトウが言うている お客がないと踏みつぶす)

尻しきがいふてゐる わしハおいもが大きらひ
(尻敷が言うている わしはお芋が大嫌い)【尻敷】野外で腰をおろす時下に敷く物。

とくりがいふてゐる さかさまごとのないやうに
(徳利が言うている 逆さま事の無いように)

ぬか袋がいふてゐる 首すじ計りおいやじやへ
(糠袋が言うている 首筋ばかりお嫌じゃえ)
 
どびんがいふてゐる 今ならぽぴんふいてミせふ
(土瓶が言うている 今ならポピン吹いて見せう)
【ポピン】ポッピン、ビードロ。吹きガラス製のおもちゃ。吹くと底の薄ガラスが、ペコン、ペコンと鳴る。
【見せふ】見せよう
 
まごの手がいふてゐる わしにねからちんくれぬ
(孫の手が言うている わしに根から賃くれぬ)
【根から】ねっから、まったく。
 
お市の毛がいふてゐる ゆふべのもつれといてほし
(お市の毛が言うている 夕べのもつれ解いてほし)

連ん木がいふてゐる としがよるほどちそうなる
(連木が言うている 年が寄るほど小そうなる)
【連木】すりこぎ
 
はけがいふてゐる かミがこわいとけきれする
(刷毛が言うている 紙がコワいと毛切れする)
 
石うすがいふてゐる  わしがはたらきやへそかくす
(石臼が言うている わしが働きゃへそ隠す)
【へそ】石臼で二つの丸石を組み合すための突起。回すと目立たなくなる。

火ばしががいふてゐる やもめになつてあそびたい
(火箸が言うている ヤモメになって遊びたい)

 

とりもちががいふてゐる まだはいらずがゆへぬそな
(トリモチが言うている まだ蠅入らずが結えぬぞな)
【蝿入らず】蝿帳。蠅などが入るのを防ぎ、また通風をよくするため、紗や金網を張った戸棚。
【結う】繕う 

そら豆がいふてゐる しらはの時はほめられた
(そら豆が言うている 白歯の時は誉められた)
注:そら豆のおはぐろの部分が黒くなると豆が堅くなる。それ以前、おはぐろがまだ白い時(白歯)は柔らかい。

酒の通がいふてゐる むかしのやう二おもふてか
(酒の通が言うている 昔のように思うてか)・・意味?
 
しゆびんがいふてゐる よるの六時ハ○○まゐ
(酒瓶が言うている 夜の六時は○○まい) 

盃がいふてゐる こひもむじやうもわしがせい
(盃が言うている 恋も無常もワシがせい)


生づけがいふてゐる おまへが〇やしいかヽの事
(生漬が言うている おまえが〇やしいかヽの事)
 
のぶろがいふてゐる 山でいふてもおなじ〇
(野風呂が言うている 山で言うても同じ〇)

有りあけがいふてゐる きへるやうには下女がした
(有明が言うている 消えるようには下女がした)
【有明】有明行灯。枕元に置いて、夜明けまで灯し続けた行灯。

毛ぬきがいふてゐる 此八の字がどふなろふ
(毛抜きが言うている 此の八の字がどうなろう)
 
馬がいふてゐる しかでかぐらを上ケてミせふ
(言うている 鹿で神楽を上げてみせう)・・意味?

木魚がいふてゐる 胎がなにかやけつたいな
(木魚が言うている 胎が何かやけつたいな)
 
ふとんがいふてゐる まいばんわしがきヽづらい
(布団が言うている 毎晩わしが聞きづらい)
 
せつたのかねがいふてゐる せめて一度ハ世にでたい
(雪駄の金が言うている せめて一度は世に出たい)
【かね】後金。雪駄の底につける金具。

布ふろしきがいふてゐる しハのばすまもないこのミ
(布風呂敷が言うている 皺伸ばす間もないこの身)

 

車よけがいふてゐる たひがほどけりやちんぽミる
(車よけが言うている 足袋がほどけりゃちんぽ見る)
【車よけ】江戸時代、敷地の角などに置かれた石

茶だいがいふてゐる こひの手引を二度さした
(茶台が言うている 恋の手引きを二度さした)
 
ひびぐすりがいふてゐる きうぎんきけハきのどくな
(ひび薬が言うている 給銀聞けば気の毒な)
【給銀】給金

とびがいふてゐる とほ目がきいてゑようする
(鳶が言うている 遠目が利いてゑようする)

けぬきがいふてゐる ようもないのにこしつかふ
(毛抜きが言うている 用も無いのに腰使う)
 
こたつがいふてゐる ワしが仲人してあげた
(炬燵が言うている ワシが仲人してあげた)

わらばいがいふてゐる 冬ハゐんきにをもりしてる
(藁灰が言うている 冬ハ陰気にお守りしてる)

ちんほがいふてゐる こちのとなりの御もんつき
(ちんほが言うている こちの隣の御紋付)・・意味? 

釣りかんばんがいふてゐる いた〇てこちやしつたかい
(釣看板が言うている いた〇てこちやしつたかい)

竹しやうぎがいふてゐる しりつめるのもできごころ
(竹床几が言うている 尻詰めるのもでき心)
【竹床几】竹で作った縁台。三四人で腰かけて涼む。

きき徳利がいふてゐる とんと土俵てあふこヽろ
(きき徳利が言うている とんと土俵で会う心)

からかさがいふてゐる ふるになつてもぬれがきく
(唐傘が言うている 古になっても濡れがきく)

犬はりこがいふてゐる 月に七日ハおれもねる
(犬張子が言うている 月に七日は俺も寝る)・・意味?

きせるがいふてゐる のどがつまるとやけとさす
(煙管が言うている 喉が詰まると火傷さす)

とく里がいふてゐる おれがじぎせにやはてがない
(徳利が言うている 俺が辞儀せにゃ果てがない)

たこがいふてゐる 若い入ばかきのどくな
(蛸が言うている 若い入歯が気の毒な)

そろばんがいふてゐる 用事すむとなげらるヽ
(ソロバンが言うている 用事が済むと投げられる)

かうせんがいふてゐる たま/\でるとはぢをかく
(香煎が言うている たまたま出ると恥をかく)・・意味?

てつぽうがいふてゐる でるときひとに目をふさぐ
(鉄砲が言うている 出る時人に目をふさぐ)

風の神がいふてゐる わしがきらへハ金だらい
(風の神が言うている わしが嫌いは金盥)

ふんどしがいふてゐる かねのおになりや根元カまれる
(褌が言うている 金の鬼なりゃ根元噛まれる)

つけ木がいふてゐる なんのおいどに花があろ
(つけ木が言うている 何のおいどに花があろ)・・意味?
【つけ木】付木(つけぎ)。杉や檜などの薄い木片の端に硫黄を塗りつけたもの。火を移し点じる時に用いた。

げびつがいふてゐる 十夜袋がおそろしい
(下櫃が言うている 十夜袋が恐ろしい)
【下櫃】米びつ
【十夜袋】秋の十夜法要に、檀家に配られる袋。それに新米を入れてお供えをする。

まきがみがいふてゐる こひしい度にみじこなる
(巻紙が言うている 恋しい度に短こなる)

筆のさやがいふてゐる わしも少しハきれ物じや
(筆の鞘が言うている わしも少しは切れ者じゃ)

野つぼが いふてゐる おり/\わしをふろにする
(野壷が言うている 折々わしを風呂にする)

しつが穴がいふてゐる もらひまつりがミてミたい
(しつが穴が言うている もらい祭りが見てみたい)

せんち虫がいふてゐる こちやれきくのお○○
【せんち虫】便所のうじ虫

 

 

コメント (3)
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