面白古文書『吾妻美屋希』の3回目、「かねもちになる伝授」です。
これまでの面白瓦版と異なり、金持ちになるための方法を伝授するというものです。
項目は大変少なく、金銭、着物、諸道具、家宅、用心、女房、命、堪忍、遊芸、不実、食物、酒、桶類、印判、下人、下女・丁稚、色欲、商売についてです。相変わらず、赤が多いです。ただ、赤ばかりで、全くお手上げの項目は無し。何となく、著者の言わんとすることがぼんやりと浮かんできます。
4つに分けて、右上から順に。
かねもちになる伝授
金銭 銭かねハ神ほとけのやう二をもひあだくつかへハばちあたりとこころへすこしもつかふ事なかれ
(銭金は、神仏のようにも思い、徒く使えば罰当たりと心得、少しも使うことなかれ。)
着物 きものハせんだく物よしとおもふべしよきものをきれハ◎つかふはじめなり長そでハ別なり
(着物は洗濯物を良しと思うべし。良き物を着れば銭使う始めなり。長袖は別なり。)
【◎(内側の小〇は□)】銭
諸道具 身ぶんさうおふのものがよしみせのどうぐハかぎるべしその外ハ○○○○○しんぼうすべし
(身分相応の物が良し。店の道具は限るべし。その外は○○○○○辛抱すべし。)
家宅 あまりひろきハあしせまきを惟なり又家ハよき家ヽ作るべしあしけれバわざわひをまねく○○から○あし
(あまり広きは悪し。狭きを惟なり。又、家は良き家々作るべし。悪しければ災いを招く。○○から○悪し)
用心 大の○第一しまりハじやうぶにするがよしあんヤラハ○てまる也そう〇〇て損なり
(大の○第一締まりは丈夫にするが良し。あんヤラハ○て〇也。そう〇〇て損なり)
女房 かヽにハまかれるよしずいぶん大事ニかくべしあしき事あらバいヽきかすべしいふ事きかねばさるべし
(かかには巻かれるが良し。ずいぶん大事にかくべし。悪しき事あらば言い聞かすべし。いう事聞かねば去るべし。)
命 千年も万年も生をふしとをもふべし死するといふ事思ふべからず金銀たまらぬなり
(千年も万年も生を不死と思うべし。死するという事思うべからず。金銀たまらぬなり)
堪忍 できぬかんにんハせぬがよしかんにんしすぎるとなんぎおこるなりい○○事ハしあんしてよくいふべし
(出来ぬ堪忍はせぬがよし。堪忍しすぎると難義起こるなり。い○○事は思案して、よく言うべし)
遊芸 おぼつる事無○もし覚るならばへたがよしニ一手になるべからずゆふげいあがれバしんしやうさがるなり
(覚つる事無〇。もし覚るならば下手が良しに一手になるべからず。遊芸上がれば身上下がるなり)
不実 ものヽ○○のしやうぶすべてに事そんのはしなりとかく正直がとくなり又いやな事ハ早く即いふ惟なり
(ものの○○の勝負すべてに事損のはしなり。とかく正直が徳なり。また、嫌な事は早く即、言うが徳なり。)
喰物 けんやく第一なれどもくいものハ下人も主人も同じやうにすべし上よく下あしけれバ家内○○○んせずそん也
(倹約第一なれども、食いものは下人も主人も同じようにすべし。上良く下悪しければ家内○○〇んせず損なり)
酒 のむ事無用なりもしのむならバ酒にのまれぬやうにのむべししかしひるのうちハのむべからず
(飲む事無用なり。もし飲むならば酒に飲まれぬように飲むべし。しかし、昼の内飲むべからず)
桶類 おけのるいあるひハふろなどハねだんの高ひのを用ふべし安いのハくさりはやくおおそんなり
(桶の類或は風呂などは、値段の高いのを用うべし。安いのは腐り早く、大損なり。)
印判 古ル印ばん又ハ生に合ぬはんもつべからず大二そんぶ立なり名のりをたゞしてもつべし
(古印判又は生に合わぬ判持つべからず。大いに損部立つなり。名乗りを正して持つべし。)
心得 人ハ一切何事もたより二おもふべからず我身より外〇かたなしと思ふへしとかく銭かねを〇〇〇〇べし
(人は一切何事も頼りに思うべからず。我身より外〇かたなしと思うべし。とかく銭金を〇〇〇〇べし。)
下人 めしつかいの者ハわか手足と思ふへし我と下人と同じやう二身を働べし下人の○つかいわが身○べからずそんのはじめ也
(召使いの者は、我が手足と思うべし。我と下人と同じように身を働くべし。下人の〇使い我身〇べからず。損の始めなり。)
下女、丁稚 下女ハふきりやうのをつかふべしあるしもかヽもししんどいすくなしでっちハふぜき二○を付べし
(下女は、不器量のをつかうべし。主もかかもしんどい少なし。丁稚はふぜき二○を付べし。)
色欲 いろ事第一つヽしむべしばい女ハひへのうれひあり下女をつまべば金のむしん何事もミなそん也
(色事、第一慎むべし。売女はひへの憂いあり。下女をつまべば金の無心、何事もみな損なり。)
商売 坂にくるまをおす之こころへゆだんなく○〇〇〇べし。其内朝ハ早くおきるべし例えば一日ニ五ト(分の崩し字)〇ちがへハ一月十五匁の違一年ニ百八十目の〇・・・・・・・・・・・・・○
(坂に車を押すの心得、油断なく○〇〇まるべし。其内朝ハ早くおきるべし。例えば一日に五分〇違えば一月十五匁の違、一年に百八十目の〇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○)
【ト】分の崩し字
【目】匁