今回も箱に入った盆です。
58.7㎝x36.0㎝、高(縁) 2.4㎝。江戸時代後期(文化14年)。
非常に大きな角盆です。素材は欅。表面は透き漆処理、裏面は黒漆塗です。
箱の裏底に、この品の由来が書いてありました。
文化十四丁丑五月有故求
得牛窓本蓮寺牀板之餘
使大工塩飽忠左衛門造此
器満藤喜平治
五品之内
文化14年5月に、牛窓(岡山県)本蓮寺の牀板の余りを使って、大工、塩飽忠左衛門がこの品を作った 満藤喜平治
本蓮寺は岡山県牛窓にある古刹です。寺の牀板(ゆかいた)の余りを利用して、5枚作られた盆の内の一つが今回の品です。
表面はむらむらとしています。
よく見ると、欅の木目です。
丸い木目(玉杢)がたくさん見られます。
少し大きめの玉杢も点在。
魚の鱗のように同心円がかさなっているので、魚鱗杢(如輪杢)と呼ばれている木目です。魚鱗杢は、数ある木目の中でも最高級のものとして珍重されます。
本蓮寺は、贅沢な材を床木に使っているのですね。寺は牛窓観光の中心地、瀬戸内海の眺めが最高だそうですので、機会があれば床板探しを兼ねて出かけてみたい・・・と思いながら、蓋の裏を眺めていると、無数の虫舐め跡があるではありませんか。
しかし、ぐぐっと目を凝らすと、どうも虫跡ではなく、人がつけた模様に見えます。
垣根、木枝、花が彫られているようです。
江戸時代、自分の名を刻めなかった大工が、そっと刻み込んだ知らせ鉋?(^.^)
ps. 先回の肥松盆の光透かしを写真に撮るとき、ライトを近づけすぎて、盆の表面に松ヤニが噴出したのは先回のブログ通りです。ところが、気が付いてみると、電球にもべったりと松ヤニが付いていました(^^;
魚鱗杢というものを初めて見せてもらいましたが、自然の造形は素晴らしいですね。見飽きないと思いました。
銘木について、漫然と解説書をよんでいてもさっぱり頭に残りませんが、自分の品をブログアップするとなると気が付くと必死になっています(^^;
おかげさまで、ブログを始めてこのかた、大分得るものがありました(^.^)
材料が良い、この材料を使っていた場所(有名な古刹)が良い、作った人の故事来歴等がしっかりと記されているのが良い、、、等々、良いこと尽くめですね!
「江戸時代、自分の名を刻めなかった大工が、そっと刻み込んだ知らせ鉋」まであり、歴史的資料としても貴重ですね!
このような木目は滅多に無いことを、テレビで放映されたことを覚えています。
後になるほど、どんどんと名品が登場してきますね!
松材には凄い生命力があるのですね。
何時までも生きているのですね。
それと、欅板の表面がツルツルです。こんなに滑らかにできる鉋を普通の大工が持っていたのも驚きです。やはり、江戸後期には、木工技術も相当すすんでいたんでしょう。
私のもっている盆の中では珍品の部類です(^.^)
ライトは直接接触したのですよね?
それとも気化した松脂(しますか?)が凝固したものとか?
NZでもカウリの樹脂(ガム)が有名ですが、熱に弱いと言われるのもわかります。
樹木の不思議。
ゴム、ウルシを含め、ほとんどの樹木は天然の樹脂を持っています。傷口を塞ぐためです。今回は、熱で傷口をつついたことになるかもしれません。木は生きている!?