『源氏物語』第48帖「早蕨」の和歌を刻んだ輪島塗沈金四方盆です。
21.6 x 21.5 ㎝、高 2.2㎝。明治ー戦前。
和歌と蕨が入った籠が沈金技法で描かれています。
みねの
さわらひ
このはるハ
たれ
にか
みせん
かたみに なき人の
つめる
「この春は たれにか見せむ 亡き人の かたみに摘める 峰の早蕨 」
『源氏物語』第48帖「早蕨」は、源氏の子、薫、源氏の外孫、匂宮と宇治八の宮の娘、中君の間の微妙な関係のお話しです。この和歌は、48帖の冒頭の部分、中君の父の師、阿闍梨からの早蕨に添えられた和歌を巡る部分です。
時は早春。父八宮と姉大君の両方(母は幼少時に死亡)を亡くした中君のもとへ、阿闍梨から例年通り、蕨と土筆が送られてきました。傷心の中君を慰めようとの心遣いです。
添えられた歌は、
「君にとて あまたの春を つみしかば 常を忘れぬ 初蕨なり」
(八宮の君のためにと、年毎の春に摘んできました。今年も例年通りの初蕨です)
この歌に対する中君の返歌が、今回の盆に刻まれた和歌です。
「この春は たれにか見せむ 亡き人の かたみに摘める 峰の早蕨 」
(この春は、誰に見せましょうか。亡き人の形見に摘んだ峰の早蕨を)
この場面を描いたのが次の源氏絵です。
源氏絵「早蕨」:22.0 x 25.7 ㎝。江戸中期。
中君、脇に女房が座っています。その前には、蕨の入った籠が置かれています。
中君は、文を読んでいます。籠に入っていた蕨、土筆に添えられた阿闍梨からの手紙です。慰みの言葉とともに、「君にとて」の歌が 添えられていました。中君は、阿闍梨に返事を書きます。この時に添えられた歌が、「この春は たれにか見せむ 亡き人の かたみに摘める 峰の早蕨 」です。
このように、静かな宇治の里で傷ついた心を癒していた中君ですが、都へ出て匂宮と結婚します。そして、匂宮の後見人、薫と・・・・・例によっての展開となるわけです(^^;
第48帖「早蕨」の冒頭部は、そんなどろどろとした物語を予感させない静かな展開です(^.^)
歪みもなく、鏡のようですね(^_^)
文字も、バランスを考えてか、最後の「峰の早蕨」は省略されているんですね。もっとも、それは、籠に盛られた蕨から連想してくださいということでしょうか(^_^)
平安時代の散らし書きには、このようなものがあるらしく、全く迷います(^^;
散らしの規則があるのかどうかしりませんが、当時の遊びであったことは確かでしょう。
こういう気の利いた遊びに疎いと、男性も女性もモテなかった、というより、おいてきぼりをくうことになったらしいです。
平安時代に生まれなくて良かったです(^.^)
こんな調子では、平安時代なら、相手にされなかったですね(><)
ホント、平安時代に生まれてなくてよかったです(^-^*)