大学の医局制度には、過疎地の病院にも半ば強制的に医師を配置してきた側面があり、医師配置の不均等を是正する機能があったことは間違いありません。そして今も、(当科を含む)地域の公立病院の多くが、医師供給を大学医局人事に依存しているのも事実です。
しかし、この大学医局制度では、医局の都合次第で医師の派遣や引き揚げが決まるシステムなので、医局に所属する医師の数が減れば、必然的に地域への医師供給も減ることを意味します。また、医療法上、大学は地域医療に対する義務も権限も持っていません。
地域の医師供給システムがこうした不安定な基盤の上に乗っていて、大学医局に従来通りの医師供給を期待できなくなってきたとすれば、地域の病院側でも、発想を大転換していく必要があります。
すなわち、従来通りに医師供給を大学医局人事のみに依存していたんでは、今後、地域の医師数はますます減っていく一方です。従って、地域の病院が今後も生き残って機能していくためには、既成概念にとらわれず、医師供給元をできる限り多様化し、ありとあらゆる手法を用いて医師を確保していく必要があります。
****** 読売新聞、2007年7月2日
医療の地域格差「拡大している」が87%…読売世論調査
読売新聞社が6月16、17日の両日に実施した「地域医療」に関する全国世論調査(面接方式)で、都市部に医師が集中し、町村部とでは偏りがあるなど医療の格差が広がっていると思うかどうかを聞いたところ、「どちらかといえば」を合わせ「そう思う」人が87%に上った。「そうは思わない」は計10%だった。
医療の面でも「地域格差」を感じている人が多いことがわかった。
住んでいる地域で「医師不足」を感じたことがあるかどうかでは、31%が「ある」と答えた。「ない」は67%に上ったが、3人に1人近くが医師不足を実感していた。「ある」を都市規模別に見ると、「町村」が41%で最も多かった。
医師不足の原因と思われることを挙げてもらったところ(複数回答)、「便利な都市部に住みたいと思う医師が多い」が40%でもっとも多く、「仕事が忙しすぎる」(39%)、「医師を確保するための国や自治体の対策が不十分」(38%)「訴訟を起こされるリスクを恐れる医師が多い」(25%)などが続いた。
実際に医師不足を感じたことがある診療科(同)は、「産婦人科」が43%で1位で、「小児科」が37%で2位だった。
(中略)
新たな研修制度 都市部に人気集中 偏在に拍車の見方
地域や診療科によって、医師不足が生じている背景に、新しい研修制度があると指摘する声が多い。
新研修制度では、研修医が原則自由に研修先を選べるようになったため、症例が豊富で待遇も良い都市部の民間病院に人気が集中した。これに伴って、地方の大学病院などで医師不足に陥り、自治体病院などに派遣していた医師を次々と引き揚げた。
さらに、研修で各科を回るようになったことで、産科や小児科が他の診療科より勤務が過酷だという実態が明白になり、敬遠する新人医師が増えたとされる。地域医療問題に詳しい済生会栗橋病院の本田宏副院長は「産科や小児科を希望していても、勤務実態を知らない研修医は多い。それが現実が分かって避けてしまう」と指摘する。
こうした現状を踏まえ、厚生労働省は、研修医の都市集中を是正するため、臨床研修の指定病院の定員のバラツキを見直す方針だ。ただ、新制度導入が医師の偏在に拍車をかけたとの指摘には、「地方の病院でも人気を集めているところはある。各病院で研修医が魅力を感じるような研修プログラムを作ってほしい」(医事課)としている。
(以下略)