コメント(私見):
私の居住地の周辺の病院でも、産婦人科の閉鎖、分娩取り扱い中止が相次ぎ、社会的に大問題となってきています。今は、まだ産婦人科や小児科の問題だけが大きくクローズアップされている段階ですが、実際問題として存亡の危機に直面している診療科は、麻酔科、救命救急センター、外科、内科など、非常に多くの診療科に及んできつつあります。現状では、問題が解決に向かうような要素に乏しく、今後、ますます地域医療の状況は厳しくなってゆくものと予想されます。
最近の報道記事を読むと、これは当地域だけの特殊な事情ではなく、全国各地で同様に、地域医療が非常に厳しい状況に陥っているのがよくわかります。
この問題は、国全体の医師養成数の不足、病院勤務医の過剰労働、医事紛争の激増、女性医師の問題、新臨床研修制度、大学医局の医師派遣機能の低下など、国全体の現医療体制に起因する構造的な問題であり、一医師、一病院、一自治体、一医療圏の努力だけではなかなか解決できない非常に大きな問題です。
この問題の解決のためには、今後、日本の医療体制全体を抜本的に改革していく必要があると考えられます。
****** 共同通信、2007年7月23日
医師足りず、消える産科 「妊婦の不安何とかして」
「もし病院に間に合わず、車の中で生まれたら...」。徳島県海陽町の池内真喜子(いけうち・まきこ)さん(28)は、妊娠7カ月のおなかを見てため息をついた。近くの県立海部病院の産科が8月以降存続するかどうか分からず、車で1時間20分の阿南市の病院に転院したためだ。
徳島県牟岐町の県立海部病院は、人口計2万5000人の県南部三町で唯一の産科を持つ。だが、2人いた常勤産科医の1人が2005年3月に退職。残る1人も昨年7月で病院を去り、徳島大が1年に限って医師を交代で派遣してきた。その期限が間もなく切れる。
「なるべく自然分娩(ぶんべん)がいいけれど」。池内さんは陣痛促進剤による計画分娩も考え始めた。
派遣による存続はリスクと背中合わせだった。「この1年、12人のお産でたまたま急変がなかったが、医師1人体制で事故があったら大問題」と県の塩谷泰一(しおたに・たいいち)病院事業管理者。徳島大の苛原稔(いらはら・みのる)産婦人科教授も「常勤の小児科医がいないなど、お産に十分な体制ではない」と指摘する。
3人の子を持つ海陽町の中島育代(なかしま・いくよ)さん(35)はこの問題を機に、地元で妊婦サークルをつくった。妊婦自身がお産に関する知識を深めようと、消防署員を招いて緊急時の搬送の話を聞くなど活動を続けてきた。「産科がなくなったらもう次のお産はしないという人もいて残念。政治は、今いる妊婦の不安を何とかしてほしい」
深刻化する一方の医師不足。選挙を前に政府・与党は緊急医師確保対策を発表、5道県に7人の派遣が決まったが"焼け石に水"の状態だ。
孤軍奮闘する医師の負担を軽減し、高度な医療に対応できるようにするため、小さな病院を統合する「集約化」の動きも各地で進んでいる。
2度目の大地震に見舞われたばかりの新潟県魚沼地域。県は4つの県立病院を再編し、1つの基幹病院を新設する構想だ。新潟大と連携し、県外からの研修も招いて医師不足解消を狙う。
一方で1946年から高齢者の健康を支えてきた県立松代病院(十日町市)などは、統合後は県立病院ではなくなる。「少なくとも、今までと同じ治療が受けられるようにしてほしい」。お年寄りのささやかな願いだ。
(共同通信、2007年7月23日)
****** 毎日新聞、岐阜、2007年7月21日
医師不足 広がる地域格差
恵那市内で唯一、分べんを扱っていた「恵那産婦人科」を今年5月、22年間務めてきた1人の産婦人科医が辞めた。
一杉明員(あきかず)医師、60歳。「今夜、自分の身に何かあったら、患者はどうなるのか」。1人で24時間対応しなくてはならない緊張と体力が、還暦を迎えた自分にはなくなっていた。考え抜いた末の結論だった。
1人の産婦人科医が年間に扱う分べん数は100~150件が理想と言われる。一杉医師は平均約450件に及んでいた。一杉医師の退職で、同医院は閉院に追い込まれた。いま恵那市には、分べんできる産婦人科は存在しない。
◇
土岐市立総合病院は、唯一の常勤医だった産婦人科部長(39)の退職で、今年9月から産婦人科を休診することを決めた。後任が見つかり次第、再開する予定だが、医師確保の見通しは立っていない。飛騨市民病院でも今年4月、常勤医が11人から6人に減り、小児科の常勤医がいなくなった。
医師不足の進展にあせる県は同月、「県地域医療対策協議会」を設立し、医療関係者らとともに医師確保や病院支援などの議論を始めた。だが「国の医療費削減と医師数抑制政策が招いた結果。県や病院ができることはほとんどない」との声が上がる。
医師の卵が研修先を選ぶ「研修医制度」も医療の地域格差を招いた。医学部生は卒業後4年間、研修医として勤務するが、選ぶのは最先端の医療技術を学べる都市部の病院が多い。結果、地方には研修医が来ず、現場の医師の負担が重くなっている。土岐市立総合病院の加藤靖也事務局長は「地方の医師不足の波は止められない。ならば、地方の中核都市に医師を集めて手厚い医療体制を整える方が、医師の負担も減り患者にも充実した医療を提供できるのではないか」と話す。
◇
一杉医師は今年6月から、中津川市民病院(中津川市)で勤務を始めた。3人の医師が常勤している。「患者に責任ある医療を提供できる。恵那を辞めてよかった」と思うという。
今月、同病院で出産した母親は以前、一杉医師が恵那で取り上げた赤ちゃんだった。「赤ちゃんが母親になるまで、医師としてずっと成長を見守れる。地方医療だからこそ味わえる感動とやりがい」。自分の口から出た言葉と現実とのギャップに、一杉医師はうつむいてしまった。【中村かさね】
(毎日新聞、岐阜、2007年7月21日)
****** 毎日新聞、滋賀、2007年7月20日
医師確保、地方の努力で--「南高北低」、県内地域間で偏り
「元々、病院が少ない地方なのに、医師が不足しているのを知って、不安になりました」。公立高島総合病院(高島市勝野)で今月、次男を無事に出産した栗東市内の女性(24)は、しみじみと振り返った。この病院を選んだのは、夫(32)の実家に近いためだが、産婦人科をたった1人の医師が支える現状を見て、県内の「医療格差」を実感した、という。
同病院は昨年4月、産婦人科に1人しかいなかった常勤医師の退職で、出産の受け入れ中止に追い込まれた。新任の産婦人科医を何とか見つけ、今年5月下旬から再開したが、休診前と同様に1人の医師が昼間に15~20人の外来をこなし、急な出産に備えて連日24時間態勢で待機する。「明るく、気さくな先生に疲れがたまっているように見えました」。この女性は新任の医師を気遣った。
「できるなら、あと1人でも2人でも子どもがほしい」と願う。だが、医師不足で条件に合う出産の場が県内で見つかるか分からない。高島市内の友人が昨年、産科休診のあおりを受け、大きなおなかをさすりながら大津市まで片道1時間かけて通院する姿が浮かんだ。
◇ ◇ ◇
県内の「南高北低」問題は従来、雇用など経済的側面で語られる傾向が強かった。しかし、その地域間格差は医療分野にも広がっている。大津市や湖南地域など県南部は産婦人科医を確保できるが、他の地域は徐々に減り、湖東などの公立病院では最近、出産の受け入れ中止が相次いでいる。
市民病院を建て替え、昨年10月にオープンした近江八幡市立総合医療センター。民間資金などを活用した全国初のPFI方式の公立病院だが、産婦人科の常勤医師3人のうち2人が今月中に退職する。このため、既に予約している患者を除き、来年以降の出産の新規受け入れを先月下旬から中止。彦根市立病院でも4人いた産婦人科医が今年3月に1人になり、分べんの取り扱いを中止し、同市内の主婦らが「地域間の医療格差の是正」などを求める署名を県に提出する事態になった。
◇ ◇ ◇
県が昨年8月、県内7保健所ごとの各医療圏で、産婦人科医の配置状況を調査すると、前回(03年)に比べ、大津市が3人増の32人に増加。湖南は現状維持の23人のままだったが、湖東は15人から9人に激減。湖西は3人から1人、湖北は8人から7人に減っていた。
県医療制度改革推進室は、04年の「新臨床研修制度」導入により、研修医が都市部の大病院などに偏ったと分析。「県内の地域間でも医師の配置バランスが崩れている」と危機感を強めている。
このため、同室は今年4月、「医師確保支援センター」を新設。「安心できる医療を各地域で実現するため、県として医師不足は看過できない」として、医師確保の情報収集や、出産などで退職した女性医師の復職支援に乗り出した。
しかし、県や各市町にも医療格差を解消する有効な手だては見えていない。ある公立病院の関係者は「国の医療政策に翻弄(ほんろう)される地方は、経営の合理化や地道な医師確保の努力で踏ん張り続けるしかないんです」と言葉に力を込めた。【近藤修史】
(毎日新聞、滋賀、2007年7月20日)
**** 朝日新聞、香川、2007年7月19日
病院・医師の努力限界/県内の医師確保
曜日ごとの外来診察の医師名を知らせる掲示板に「医大医師」のプレートがかかる。坂出市文京町1丁目にある同市立病院の産婦人科窓口。本来なら他科と同じく、具体的に個人の担当医師名を紹介するところだ。
昨年6月末で常勤医師が退職し、年に約200件あった分娩(ぶん・べん)など産科診療を取りやめざるをえなくなった。今は香川大の医師に非常勤で週2回程度来てもらい、婦人科外来のみ続けている。
体調を崩して同病院に入院した長男(2)に寄り添っていた市内の主婦辻日出未さん(22)は現在、妊娠3カ月。長女も長男もここで産んだが、3人目はほかの病院を探さないといけない。市内に別の産婦人科もある。だが、早産体質なので、いざというとき自宅から遠いと不安だ。「少子化の時代に頑張って産んでいるのに。どうしよう」
県内の医師数は増えてはいるものの、産婦人科をはじめ、いくつかの診療科は減少傾向にある=表参照。新しい産婦人科の常勤医を探している砂川正彦院長(55)だが、「大学の医局にも、どこにも医師がいない」と話す。
勤務医の仕事が年々激務になっているうえ、福島県の病院で昨年、帝王切開した女性を死亡させたとして産婦人科医が逮捕された影響も大きい、とみる。「一生懸命やっても逮捕される。飲酒運転で死亡事故を起こすよりも裁判で賠償額が多いこともあった。社会状況が医師には非常にマイナスに働いている」
■
県立中央病院(高松市番町5丁目)の救命救急センターは、救急患者の最後のとりでだ。年間約3100人(05年)が救急車で運ばれてくる。その救急専従医2人が退職し、今年4月からゼロに。今は麻酔科、外科などの医師5人がチームを組んで救命に当たる。
センターで昨年3月、心肺停止患者の受け入れを拒否したことが問題になった。そのとき松本祐蔵院長(61)は、改善策として「センターの人員態勢を強化したい」とコメントした。でも現実は逆行している。
大学の医局に派遣を再三かけ合ったが、補充のめどはたっていない。大学頼みではおぼつかないと、今秋にも今いる医師が救急専門医の資格をとることを検討している。松本院長は「若い救急医を病院自ら何とか育てていかないと、どうしようもない」と話す。
■
参院選を前に、政府は緊急医師確保策を打ち出した。その一つが国がプールした医師の派遣。ただ、第1陣の7人が派遣されたのは北海道、岩手など。「香川には来てもらえないでしょう」「そんなに(派遣の)医師を集められるのか」と県の担当者や医療関係者は冷ややかだ。
医療費抑制の流れの中で医師数は簡単には増えそうにない。診療機能の分担・集約化を図ろうにも、既得権の調整は容易ではない。「県内医療がどうなるのか、もうギリギリの段階。県民のみなさんに医療の現状をもっと知ってほしい」(県立中央病院の松本院長)、「一人の医師の頑張り、一病院の努力ではどうにもならなくなっている」(坂出市立病院の砂川院長)。現場は悲痛な叫びを上げている。【東孝司】
(朝日新聞、香川、2007年7月19日)
****** 毎日新聞、岡山、2007年7月9日
医療制度の変化が生んだ医師不足
「病院が頑張って呼ぶしかない」
20畳ほどの座敷で、十数人の母親たちが幼い子どもを遊ばせ、育児話に花を咲かせている。
備前市の子育て支援拠点事業「わくわくるーむ」。NPO法人「ひこうせん」が委託を受け運営し、乳幼児を抱いた母親が集まる。女性たちの多くは、岡山市、兵庫県赤穂市の病院に通い、出産した。備前市内には産婦人科がないためだ。
第二子を妊娠中の30代主婦は、結婚を機に備前市に移り住んだ。初めての妊娠の時、市内に産婦人科がないのに気付き、他の母親はどうしているのか市役所まで聞きに行ったという。岡山、赤穂両市にある病院は、車で20~30分かかる。「初めての出産だと、急な痛みが正常なものか、それとも異常なのか判断がつかない。一刻も早く診てほしかった」と振り返る。「産婦人科が市内に3軒くらいあれば。最低でも1軒はほしい」というのが母親たちの理想だ。
地域の中核、市立備前病院にも産婦人科はない。竹中史朗事務長は「産婦人科医の派遣も求めていない」という。どういう事情なのか。「激務に加えて、医療事故のリスクも高いため、産婦人科医そのものが減っている。頼んでも来てもらうのは無理だろう。出生率の低下に加え、民間のサービスと競争するのは経営的に苦しい面もある」
県の調べでは、05年は県内29市町村のうち、5市と全14町村すべての医療機関が出産を扱った経験がなかった。
もっとも、医師不足に悩むのは産婦人科だけではない。「地方の病院は、あらゆる診療科で医師の確保に追われている」と話すのは、県西部にある公立病院の事務長だ。その原因は、04年から始まった卒後臨床研修制度にあると指摘する。これまで大学の医局が中心だった研修先を、学生が自由に選べるようになったため、医局員が減少。大学から医師の派遣が期待できなくなったという。
長年、医局人事に携わってきた岡山大の内科臨床教室の教授は、「医局が担っていた医師派遣の役割は徐々に薄れ、今後は教育機関としての性格が強くなっていく。これからは地域や病院が頑張って医師を呼ぶしかない」と予測する。
岡山大大学院医歯薬学総合研究科などは06年、医師免許取得後の初期臨床研修(2年)を終え、後期研修に入る医師を対象に研修プログラムを紹介するNPO「岡山医師研修支援機構」を設立した。現在、主に中四国の約350病院が加入しプログラムを売り込む。教授によると「30代前半ぐらいまでの若手には、専門医の資格が取れる施設が魅力。そのためには指導医と整った医療設備が必要」という。
とはいえ、医師にとって魅力的な研修プログラム、加えて報酬など待遇面を充実させるのは、地方の病院にはなかなか厳しい。前出の公立病院は県中心部の病院と研修プログラムで連携しているが、研修医が居着いてくれるかは未知数だ。
事務長がつぶやく。「病院は命を守るところ。あってはいけないところに格差がある。3年だけでも地方勤務を義務付けられないのだろうか」
(毎日新聞、岡山、2007年7月9日)
****** 産経新聞、2007年6月1日
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/54654/
参議院議員、国際政治学者・舛添要一
2007年を医療ルネサンス元年に
無過失補償制度など態勢整備へ一歩
≪医師を増やせばいいか≫
日本各地で、医療ミス、医師不足、産婦人科の閉鎖などが話題となり、医療をめぐる訴訟も急増している。私たちにとって最も大切なのが健康であり、不幸にして病に罹(かか)ったり、けがをしたりしたときには、いかにして早く回復させるかを考えねばならない。政治の課題もそこにある。
私は、ふるさとの北九州市に住む認知症(当時は痴呆(ちほう)症と呼んでいた)の母を7年間にわたって遠距離介護した体験があり、それがきっかけで政治家に転身した。そこで、国民の健康を守ることを自分の政治活動の主軸に据えてきたし、教育と医療については、貧富の差による差別が絶対にあってはならないと考えている。
母を看取った現在は、子育てに奮闘しているが、それだけに介護問題とともに、産婦人科や小児科をめぐる諸問題にも積極的に取り組んでいる。医師不足の問題については、自民党の特命委員会や政府・与党協議会のメンバーとして対策案の取りまとめに当たっているし、自民党の参議院選挙公約でも、医師不足対策は特筆される予定である。
しかし、問題は単に医師の数を増やせばよいというほど、単純ではない。日本の医療体制全体にメスを入れて抜本的に改革することが不可欠であり、医療サービスの受け手、つまり患者にとっても、また提供側、つまり医師や看護師にとってもプラスとなるような改革を模索する必要がある。いわば、日本の医療ルネサンスという夢を皆で協力して実現させたいと思う。
≪産科・小児科の深刻事態≫
2006年2月18日、福島県立大野病院の産婦人科医が医療事故に関して業務上過失致死罪および医師法違反容疑で警察に逮捕され、全国の医師たちに衝撃を与えたことは記憶に新しい。この医療事故とは、2004年12月17日に、患者が帝王切開中に大量出血して死亡した件である。この事故は、癒着胎盤という極めてまれなケースで事前診断が困難であり、かつ予想外の大量出血であり、医療ミスではない。このような患者に対して適切な対応ができないシステムこそを問題とすべきなのである。
≪「医療崩壊」の現場から≫
この事件以来、産婦人科医や分娩(ぶんべん)実施施設の数が激減しており、極めて深刻な事態となりつつある。産婦人科と並んで問題なのが小児科であり、医師不足問題の中でもこの2つの科が目立っている。医師不足問題の背景には、病院勤務医の過剰労働と賃金面でも恵まれない状況がある。当直勤務が多く、夜間や休日に患者が集中する状態は過酷である。患者の生命を救うという医師の使命感にのみ頼るには限界がある。さらには、近年における医療紛争の激増はいつ訴えられるかわからないという不安を増大させ、医師になる気を喪失させてしまう。最近は女性医師がとりわけ産婦人科や小児科で増えており、彼ら自らが出産・育児で離職することも医師不足に拍車をかけている。また、大学の医局の医師派遣機能も低下している。
以上は、医療提供者側から見た諸問題であるが、医療サービスの受益者側からみても多くの問題がある。たとえば、3時間待って3分しか診てもらえない。単なる風邪なのに山ほど薬をもらうといった不満からはじまって、適切な治療が提供されているのだろうかといった根本的な疑問すら抱かせるような医者の対応もある。医療事故に遭った人たちは(1)原状回復(2)真相究明(3)反省謝罪(4)再発防止(5)損害賠償-という5つの願いを持っている(「医療被害防止・救済システムの実現をめざす会」資料)。このような願いを実現させるためにも、医療ルネサンスが必要なのである。
昭和大学医学部産婦人科主任教授の岡井崇氏が、産婦人科の現場の深刻な実態を『ノーフォールト』(早川書房)という書で告発している。広範な国民に理解してもらいたいという気持ちで、小説の形で「医療崩壊」の現場をリポートしている。
岡井教授も提案しているように、無過失補償制度を導入することも一つの解決策である。政府・与党は昨年度の補正予算と今年度予算で、とりあえず産科について無過失補償制度を創設する前提となる調査を開始できるように1億2000万円の予算措置を講じたところである。さらには、医療事故に関わる死因究明制度の検討のため1億3000万円の手当てをした。
これらは端緒にすぎないが、多角的に問題を検討して、2007年を日本の医療ルネサンス元年とすべく全力をあげたいと思う。(ますぞえ よういち)
(産経新聞、2007年6月1日)<script src="http://www.assoc-amazon.jp/s/link-enhancer?tag=tyamablogocnn-22&o=9" type="text/javascript"></script> <noscript></noscript>