コメント(私見):
地元新聞の記事によると、『上伊那地域では、来年4月以降の里帰り出産を原則すべて断って、伊那中央病院の受け入れ分娩件数を現状よりも年間100件増やしたとしても、最終的に年間100件程度は分娩の受け入れ先が地域内で見つからなくなる(お産難民が発生する)見込み』と、記者会見で発表されたようです。
上伊那地域は、諏訪地域や飯田下伊那地域と隣接し、それぞれの地域中核病院とは中央自動車道で30分以内の距離にあり、地域の患者さんは必ずしも自医療圏内の医療施設だけを利用するとも限りません。
どの医療圏でも、万が一、隣の医療圏のお産難民が、突然、大量に流入してくるような事態となれば、対応は非常に難しいです。場合によっては、ドミノ倒し式に医療崩壊地域がどんどん拡がっていく可能性もあります。
従来の医療圏の枠にはこだわらず、隣接の医療圏同士でしっかりとスクラムを組んで、互いに協力しあう体制を構築していく必要があると思われます。
参考:
****** 信濃毎日新聞、2007年8月11日
里帰り出産受け入れ中止
伊那中央病院、来春から
伊那市の組合立伊那中央病院は10日、2008年4月から里帰り出産の受け入れを原則中止し、今年9月下旬から産婦人科の初診外来は医師の紹介状持参者に限定すると発表した。昭和伊南総合病院(駒ヶ根市)が08年4月からお産受け入れを休止するのに伴い、その分の受け皿を確保するためとしている。
記者会見した小川秋実院長は「それでもお産数が受け入れ可能件数を上回り、上伊那で『お産難民』が出るだろう」と指摘。里帰り出産が難しくなることを含め、行政を交えて産婦人科医の確保などの対策を講じることが急務になっている。
伊那中央病院は現在、産婦人科医4人で年間約1000件のお産を受け入れており、このうち里帰り出産が約2割を占める。08年4月から里帰り出産の受け入れを中止する一方、現在より約100件多い年間1100件のお産を受け入れる方針だ。
同時に、「可能な限りお産などの入院患者に尽力できる体制をつくるため」(小川院長)として、産婦人科の初診外来は医師の紹介状持参者に限り、妊婦の定期健診などの外来は産婦人科の開業医などに受け持ってもらうこととした。
昭和伊南総合病院が受け入れていた年間500件のお産のうち、里帰り出産は2割の約100件。伊那中央病院分と合わせ、計約300件の里帰り出産ができなくなる見通しだ。さらに、伊那中央病院が年間1100件を受け入れても、昭和伊南の里帰り出産以外の約400件のうち、約100件は受け入れ先が見つからない状況としている。
小川院長は「年間1100件以上のお産を受け入れるためには、産婦人科医の増員とともに、分娩室など施設の増築も必要」と主張。組合を構成する伊那市、箕輪町、南箕輪村以外の行政の支援などを求めた。
(信濃毎日新聞、2007年8月11日)
****** 中日新聞、2007年8月11日
里帰り出産を来春から制限
伊那中央病院が方針
伊那中央病院(伊那市)の小川秋實院長は10日記者会見し、ベッド数や分娩室といった施設不足などを理由に「異常分娩など緊急を要する患者を除き、来年4月以降、里帰り出産の受け入れ制限をしたい」との方針を発表した。また、今秋から産婦人科の初診は、他院からの紹介状持参者に限る-とした。
同病院によると、病院では現在30-40床のベッドを確保、4人の医師が年間1000件のお産(うち里帰り出産2割)を受け持っている。昭和伊南総合病院(駒ヶ根市)の産婦人科医師が来年3月末で引き上げ、同病院で扱う年間500件のお産の受け入れも予想され、小川院長は「分娩室や陣痛室、ベッド数などが整備されないと、現状でこれ以上の受け入れは難しい。里帰り出産を制限しないと対応できなくなる」とした。
(中日新聞、2007年8月11日)
****** 伊那毎日新聞、2007年8月11日
伊那中央病院が産婦人科診療を制限
郡外からの里帰り出産は遠慮してほしい
全国的な医師不足で、伊那中央病院は10日記者会見し、産婦人科の診療を制限したいと発表した。来年4月、昭和伊南総合病院(駒ケ根市)の産婦人科常勤医師がゼロになる見込みで、中病は▽来年4月以降、郡外からの里帰り出産は遠慮してほしい▽産婦人科初診は紹介状を持参してほしい―の2点を挙げる。
上伊那の出産件数は年間1600件。内訳は中病が千件、昭和病院が500件、助産院など100件。
中病は医師の勤務体制のほか、診察室や分べん室など施設面からも、昭和病院の出産をそのまま受け入れるのは難しい状況にある。
里帰り出産は全体の20%を占めており、診療を制限することで昭和病院分をカバーする。
紹介状の持参は産婦人科外来の「パンク状態」を解消するため、10月ごろから始めたいという。ここ数カ月、外来受診は増加が顕著に表れ、6月は1624件だった。
小川秋実院長は「地域医療を守るため、制限しなければ対応できない」と理解を求める。
地域住民らに対しては、中病や各市町村の広報などで周知していく。
(伊那毎日新聞、2007年8月11日)
****** 長野日報、2007年8月11日
「里帰り出産」自粛を
伊那中央病院が来年4月から
伊那中央病院(伊那市)の小川秋実院長は10日、記者会見し、来年4月以降、妊婦が実家に帰って出産する「里帰り出産」について自粛を求めていく方針を明らかにした。昭和伊南総合病院(駒ケ根市)が来年4月から産科診療を休止するのに伴い、伊那中病が新たな受け皿になることが予想され、現状の医療体制で対応するための苦肉の策。
小川院長によると、上伊那地域のお産の取扱件数は年間約1600件。このうち伊那中病約1000件、昭和伊南約500件、残りは開業医や助産所など。
伊那中病は産科医が4人いるが、一般的に産科医1人の取扱件数は年150件が理想とされるのに対し、250件となっており、小川院長は「現状でもぎりぎり。昭和伊南の500件をそっくりそのまま引き受けるのは難しい」と強調。医師の増員や分娩室など施設面の増設なしに取扱件数を大幅に増やすことは困難とした。
そこで、全体の2割を占める里帰り出産の数を減らすことで、受け入れ枠を少しでも確保したい狙い。ただし、異常分娩や緊急を要する患者は対応するという。
また、患者数が増加傾向の産婦人科について秋以降、整形外科などと同様に初診は紹介状の持参を求める方針も示し、「外来を減らし、入院患者にエネルギーを注ぎたい」とした。
産科医の不足は全国的に深刻で、嫁ぎ先でのお産も困難な状況が予想され、期待した効果が見込めるかは不透明。現状では、里帰り出産がゼロになっても、”お産難民”の発生は避けられないとみられる。
小川院長は「院長の立場としては上伊那は一つとして(患者の)優先順位は付けずに受け入れていく」と話した。
(長野日報、2007年8月11日)
****** 長野日報、2007年8月9日
昭和伊南病院の産科休診問題で子育てグループが会合
県の方針による医師引き揚げで、駒ケ根市の昭和伊南総合病院が来年4月から出産を取り扱えなくなる可能性が出ている問題で8日、市内の子育てグループが 市ふれあいセンターで会合を開いた。9月に、病院関係者を招いて公開の勉強会を聞き、グループとしてできることがないかを探っていくことなどを確認した。
子育てサークル連絡会のメンバーで、ファミリーサポートぐりとぐら代表の須田秀枝さんらが呼び掛けた。出産難民を出してはいけない―と、連絡会の他のメンバーや市民有志13人が集まった。
助産師も出席し、来春までに市内に新たに2カ所の助産院開院の計画があることを報告。若い母親たちに助産師への正しい認識を深めてもらい、病院の助産師たちにもモチベーションを保ちながら働いてもらえるような支援も必要―とした。
この問題をめぐって病院側は、県内ではまだ行われていない院内産院を設置できるか検討しているとした。病院によると、「伊那中央病院も含めた医師の配置体制次第」というが、須田さんらも「これから出産する若いお母さんたちに自分の出産を自分で考えてほしい」と訴える。
今後の活動は勉強会を踏まえて行っていくが、請願や陳情などで市議会に訴え、同病院の医師確保と産科診療の維持を求めていくことも考えている。
(長野日報、2007年8月9日)