コメント(私見):
地元紙の記事を読むと、長野県・上伊那地域でも、産科問題に関する関係者間の協議が何度か実施されたようではありますが、市長や院長などのそれぞれの思惑が相当にかけ離れていて、『地域の周産期医療の危機的状況に対して、地域として今後どう対応していくのか?』についての具体的な対応策の協議を開始できる段階には未だ至ってないようです。
参考:
****** 信濃毎日新聞、2007年8月23日
上伊那の医師不足 3病院で対応協議
伊那中央行政組合は22日、伊那市役所で全員協議会を開いた。事務局側は、上伊那の医師不足について伊那中央(伊那市)、昭和伊南総合(駒ヶ根市)、辰野町立の3病院の院長や事務長が対応を協議していると説明した。
事務局によると、院長や事務局長は昨年から数回協議。3病院がそれぞれの診療科を現状のまま維持していくことは難しいとの方向では認識が一致し、今後について話し合っているという。ただ、「各病院の経営状態が異なり、理事者の意向もある。具体的な解決策は難しい」としている。
一方、組合長の小坂樫男伊那市長は全員協議会で産科医不足について「上伊那全体の問題」とした上で、「伊那中央が施設を増設することは住民感情としてどうか」と慎重姿勢を示した。お産の受け入れは、昭和伊南総合病院で医師がいなくなるため来年4月から中止するのに伴い、伊那中央病院が原則として里帰り出産を受け入れないなどの策を講じて対応する。
(信濃毎日新聞、2007年8月23日)
****** 信濃毎日新聞、2007年8月24日
南信の救命センター再配置
伊那市長「県に不信感」
南信地方の救命救急センターの再配置をめぐり、県が昨年、伊那中央病院(伊那市)への配置を打ち出しながら、最終的に昭和伊南総合病院(駒ケ根市)に残したことについて、伊那市の小坂樫男市長は23日、市議会全員協議会で「県に対する不信感をもっている。知事、副知事も交代したので、原点に返ってきちっと話し合うことを要望したい」と述べた。
伊那中央を運営する伊那中央行政組合によると同組合は2004年、46床の増床を県に要望。同時期に「県衛生部から、救命救急センター指定のため専用ベッド10床を用意するように言われた」(藪田清和事務局長)といい、高度治療用6床を含む10床を救急部専用に変更。経費が5000万~6000万円余計にかかったという。
しかし、県は前県政時代の昨年5月、昭和伊南側の要請に譲歩する形で、同病院のセンターを30床から10床に縮小して存続、20床は諏訪赤十字(諏訪市)と飯田市立(飯田市)に振り分けると決定した。小坂市長は全協で「はしごを外された」と不快感を表明。取材に対し「県は実態を見て対応してほしい」と述べ、今後、南信の救命救急センターのあり方を含め、県に話し合いを求めることも示唆した。
県は「これまでの経過もある。上伊那の実情を踏まえてどうするか、地域と一緒に考えていく」(望月孝光医療政策課長)としている。
(信濃毎日新聞、2007年8月24日)
****** 長野日報、2007年8月23日
上伊那の救急救命センター「指定替え必要」
医師不足に伴う上伊那地域の公立病院の連携について、伊那中央行政組合の小坂樫男組合長(伊那市長)は22日の組合議会全員協議会で、救急救命センターに昭和伊南総合病院(駒ケ根市)が指定されている現状を疑問視し、「この問題が解決できなければ、上伊那で協調していくことはできない」と、伊那中央病院(伊那市)への指定替えが必要との認識を示した。
小坂組合長は、連携の前提として救急救命センターの指定問題を指摘。伊那中央病院は「上伊那の救急の半分以上を占める。専門の医師もおり、24時間態勢」と実績を強調した上で「県の意向もくんで昨年、増床の際に救急対応の病床も新たにつくったが、ふたを開けてみたら3次救急の指定は昭和伊南病院」と述べ、県の方針を批判した。
前日の県衛生部長との懇談で、昭和伊南が来年4月から産婦人科を休止するのに伴い、伊那中央病院に医師を配置していく考えが示されたとし、「施設的に目いっぱいで、当然、増床しないとできないが、その金を伊那中央行政組合で出すのは納得いかない。他の地域の患者のために、特に産科は病気ではない。もしやるなら、県に(負担してもらいたい)」とも述べた。
さらに上伊那地域の医療体制について「信大病院長は、これからは中核病院としての伊那中央病院にしか(医師を)派遣できないと言っている。上伊那全体としてどういう形でいくのがいいか。きちんと今までの総括の中で、この問題をやっていかないといけない」とした。
組合側は、上伊那では伊那中央病院が事実上の救急救命センター事業を行っていると説明。昨年度決算ではセンター部門で約1億3000万円の赤字を出しており、センターの指定替えによる収入増が見込めない限り、構成市町村外の患者を受け入れている中で、構成3市町村だけで赤字を補てんしていることの妥当性も検討課題とした。センターに指定されると特定の症例で入院料が加算できるなど財政上の優遇措置がある。
(長野日報、2007年8月23日)
****** 長野日報、2007年8月24日
「救急救命センター指定替え」発言論議 伊南行政組合議会
伊那中央行政組合の小坂樫男組合長が、22日の組合議会全員協議会で、昭和伊南総合病院と伊那中央病院の産科をめぐる連携に、昭和伊南から伊那中央への救命救急センターの指定替えが条件であるような発言をしたとして、23日の伊南行政組合議会8月定例会本会議で論議になった。中原正純組合長は、指定返上の話し合いなどは行われていない―とし、「本意の発言ではないと理解している」と述べた。
来年4月以降、昭和伊南の産科の存続が危ぶまれていることから、伊那中央から昭和伊南への医師の支援が検討されている。小坂組合長がこの支援に交換条件を出している―として、一般質問で馬場信子氏(駒ケ根市、共産)がただした。
馬場氏は、「小坂組合長の言葉は、伊南のことを考えていない身勝手な発言」と批判。救命救急センターについては、3次救急を担ってきた昭和伊南の体制は絶対必要―とした。
これについて中原組合長は、「上伊那の医療問題に協力して取り組んでいこうとしている中、公の発言ではないのではないか」と答弁。一方で、「救急指定と連携の問題は一緒の問題ではない」と述べ、上伊那の医療のためにリーダーシップを発揮するよう期待した。
千葉茂俊院長は、「連携強化病院になった以上、(県などに)伊那中央への医師の増員をお願いし、機能が果たせるようにしてほしい」と発言。連携強化病院としての責任の大きさを訴えた。
救命救急センターについて中原組合長は、「昨年10月から新たなスタートが切られ、ハイケアユニットも整備された。取り扱い患者数も増加している」と説明。8月から外科医師1人が着任していることも報告した。
(長野日報、2007年8月24日)
****** 伊那毎日新聞、2007年8月24日
昭和伊南病院と伊那中央病院の連携今後も
伊那中央病院を運営する伊那中央行政組合の小坂樫男組合長(伊那市長)が22日に、昭和伊南総合病院の救急救命センター指定が伊那中央病院に変更されなければ今後協調していくことはできない―などと発言したと一部で報道された問題について伊南行政組合の中原正純組合長(駒ケ根市長)は23日の議会定例会で「公の席での発言ではないと思う。本意は違うのではないか。信じられないし、あり得ない」と述べた上で「救急救命センターの返上は考えていない」とあらためて強調。両病院を中心とした連携体制はこれまで話し合ってきた通り進めていきたいとする考えを示した。馬場宣子議員(駒ケ根市)の質問に答えた。
昭和伊南病院の産婦人科に派遣されている信州大の医師2人が来年3月で引き揚げることにより、以降の同科常勤医師がゼロとなる問題について中原組合長は「助産師が分娩を行う院内産院の開設を検討しているが、現段階では来年4月の開院は大変厳しい状況にある」と述べた。引き続き県や信州大とともに解決に向けて検討を進めたいとした上で、住民の不安に対応するため「産科についての専門窓口を新たに病院内に設置し、市民の相談に乗れる体制をつくりたい」とする考えを明らかにした。
院内産院の見通しについて同病院の千葉茂俊院長は「医師がいないとリスクに対応できない。何かあった場合に伊那中央病院に医師の応援を要請するとしても5分、10分を争う時に30分もかかっていては難しい」とした上で「引き続き医師確保、伊那中央との連携、地域の医師を嘱託とするなどの方法を検討し、努力を続けていく」と述べるにとどまった。
(伊那毎日新聞、2007年8月24日)
****** 医療タイムス、長野、2007年8月20日
伊那中央病院 内科外来を一部制限
来年4月から里帰り出産も制限
伊那中央病院(小川秋實院長)は、7月末から内科の外来診療の一部を制限している。退職や引き揚げによる内科医の減少に伴うもので、他の医療機関から紹介状を持参した患者(急患を除く)か、7月以前から通院する患者のみを受け入れている。紹介状を持たない患者については、患者の自宅近隣の開業医を紹介していくという。
同院には、6人の内科常勤医がいたが、退職や引き揚げが相次ぎ、9月までに2人に減少する。新たな内科医の確保は見通しが立っておらず、同院では「知識や経験のある医師を中心に確保していきたい」としている。
また、同院では来年4月以降の里帰り出産についても、受け入れを制限する方針だ。上伊那地域における分娩件数は年間1600件で、このうち伊那中央病院が1000件、昭和伊南総合病院が500件受け入れている。しかし、信大が今年度末で昭和伊南総合病院に派遣している産婦人科医の引き揚げを決定。このため、伊那中央病院では分娩全体の2割を占める里帰り出産の制限や常勤産婦人科医の増員、分娩施設の増設、院内助産所を設置することで、昭和伊南総合病院の妊婦の受け入れに努める考えだ。
また、地域在住の患者を中心に診察していくため、10月からは産婦人科外来の初診の際は、患者に紹介状を持参するよう呼びかけている。
(医療タイムス、長野、2007年8月20日)