コメント(私見):
新聞の記事を読むと、「若い産科医を1人でも確保できれば、お産は続けられる」というような県側のコメントもあったようですが、万一、そんな中途半端なマンパワーで分娩の取り扱いを再開していたら、この先、産科医の誰かが妊娠したり退職したりする度に、分娩取り扱いを即刻中止していかざるを得なくなってしまいます。
1人の産科医が抜けただけで維持が困難となってしまうシステムにこそ、一番の問題があると思われます。
持続可能な地域の周産期医療システムを作ることこそが一番重要で、そのために、今、我々は何をしなければならないのか?を地域のみんなで考えていく必要があると思います。
****** 信濃毎日新聞、2007年8月28日
県立須坂病院 来年度以降、お産の扱いを休止
県立須坂病院(須坂市)は27日、産婦人科の常勤医2人のうち、けがでお産を担当できない1人の代替要員確保が難航しているのを受け、来年度以降、お産の扱いを休止すると正式に発表した。妊婦の検診や出産後の外来診療は続けるが、来年4月以降に予定する出産は受け付けず、隣接地域の出産施設の情報を提供する。新たな医師が見つかれば、できるだけ早い時期にお産の扱いを再開する方針だ。
同病院で会見した斉藤博院長は、現在、月に30数件のお産を実質1人で担当している内藤威副院長の負担が過大となっているとして「このままでは安全な産科医療の維持が困難」と説明。「産科医自体が少なく、応援の医師を確保することも難しい」と述べた。内藤副院長も「お産には(医師も)大変なエネルギーを使う上、深夜や明け方の出産もある」とし、理解を求めた。
斉藤院長は県の産科・小児科医療対策検討会が3月に報告した提言で、重点的に医師を配置する「連携強化病院」に須坂病院が含まれなかったことについて「自分たちで医師を集めてくる仕組みをつくるしかない。地域の方にも情報を寄せてほしい」と訴えた。
須坂病院で扱うお産は年間約420件。県の調査では、隣接する長野市や中野市などでさらに約700件のお産受け入れが可能とする。ただ、同病院は須高地区で唯一の出産施設でもあり、住民からは出産に対応できる環境の早期整備などを求める声が出ている。
同病院で双子を出産した須坂市内の主婦(40)は「難しい出産でも、総合病院であればいろいろなケアをしてもらえる安心感がある。この地域で安心して出産できる環境を維持してほしい」。2児を産んだ高山村内の主婦(34)は「自分は陣痛が始まってから出産までの時間が短い体質。須高にお産ができる施設がなくなるのは非常に不安」と話していた。
(信濃毎日新聞、2007年8月28日)
****** 朝日新聞、2007年8月28日
出産取り扱い休止へ 県立須坂病院
県立須坂病院(須坂市)は27日、来年4月から産婦人科で出産の取り扱いを休止すると発表した。2人いる常勤医のうち、1人が交通事故によるけがのため、出産の扱いができなくなり、1人の医師に負担が集中、「安全な産科医療の維持が困難と判断した」と理由を説明している。(柳川迅、長谷川美怜)
同病院は須高地区で唯一の出産施設で、昨年度扱った出産件数は423件。同病院によると、今年6月上旬に産婦人科の男性医師(48)が、交通事故で右肩を骨折し、出産の扱いができなくなっているためという。
同病院はその後、県立こども病院や千葉大から産科医を臨時に派遣してもらったが、数回にとどまっている。現在も月30件以上の出産があるが、土日、夜間の出産も産婦人科医の内藤威副院長(61)に負担が集中し、「年齢的、体力的に厳しい」状態だという。
斉藤博院長は会見で「出産の場が地域からなくなるのは残念。続けたいが、医師の確保が難しい」と述べた。従来、同病院で扱っていた年400件余りの出産については、約700件の受け入れが可能な北信・長野地域の出産施設で対応できる、と説明した。
来年3月まですでに月30件前後の出産の予約が入っており、年度内は出産の扱いを続ける。来年度4月以降は産婦人科は外来診療のみになるという。内藤副院長は「私もあと数年で退職。婦人科もなくなってしまうかもしれない」と話している。
同市の子育て支援NPO「へそのお」代表の倉石知恵美さん(43)は、自身も県立須坂病院で出産した。「子どもを産み、命を育む場所があるということが地域として大事。しかも出産はリスクが伴うからこそ、総合病院の中に産科があることが重要です。産科の休止は本当に困ります」と話している。
◇
産科は時間外勤務や拘束時間が長く、分娩(ぶん・べん)をめぐる訴訟が増加していることなどから敬遠される傾向にあり、県内の産科医は01年の189人から06年12月には162人に減少し、医師不足が深刻だ。また、分娩を取り扱う産科施設数も01年の68カ所から07年1月には50カ所に減っている。
産科医の減少で1人当たりの負担が増加し、労働環境がますます過酷になっている現状を受け、県は昨年10月「県産科・小児科医療対策検討会」を設置。今年3月には、「緊急避難的に、地域の中心的な病院にある程度の医師を確保する『集約化・重点化』が必要」との提言を出した。
県立須坂病院は、提言の中で「連携病院」と位置づけられ、同じ二次医療圏内で「強化病院」とされた長野赤十字病院や厚生連篠ノ井総合病院に、救急や入院の機能を移される可能性がすでに示されていた。
会見で斉藤博院長は、「都内などの医局からは、数名いるところでなければ派遣できないと断られた」と明かし、医局から医師を派遣する段階ですでに集約化が進んでいる状況を指摘した。
(朝日新聞、2007年8月28日)
****** 毎日新聞、2007年8月28日
県立須坂病院(斉藤博院長)は27日、来年度から産婦人科での分べんの受け入れを休止することを明らかにした。現在、分べんを担当できる医師が1人しかおらず、負担が大きい上、医師の増員が見込めないことから休止を決めた。年間約420件のお産を扱い、須高地区で唯一の分べん施設だけに地域に与える影響は大きい。
同病院の産婦人科は56年9月から診療を開始した。常勤医2人のうち、一人は6月に交通事故で骨折し、分べんを担当できる医師は、産婦人科部長の内藤威副院長(61)だけとなった。そのため、県立こども病院(安曇野市)や千葉大から応援を受けるなどして対応してきた。
しかし、月約35例の分べんを診るため、休みは6月以降数日だけ。妊婦の容体急変にも対応する内藤副院長にかかる負担は大きかった。斉藤院長は「医師確保も困難で、内藤副院長の年齢などを考慮すると限界だ。安全な医療を保証できない」と話している。
同院では今年度末まではお産の取り扱いを行い、来年4月以降も妊娠8カ月までの妊婦検診や産後の外来の診療は行う。内藤副院長は「私が来た84年ごろは周りにお産できる施設は数カ所あったが、今はここだけ。扱う件数は2倍近く増えた。医師不足の流れがいよいよ須坂にも来てしまったのかという思いだ」と話した。 【谷多由】
(毎日新聞、2007年8月28日)
****** 読売新聞、2007年8月28日
お産の扱い休止へ 県立須坂病院、来年度から
県立須坂病院(須坂市須坂)は27日、2008年度から、お産の扱いを休止すると発表した。お産をサポートできる常勤医が1人となり、新たな医師の確保が難しいのが理由。斉藤博院長は「このままでは1人に過度の負担がかかり、安全な産科医療の維持が困難」と理解を求めた。
同病院によると、産婦人科の常勤医は2人いるが、6月初旬にうち1人が交通事故で右肩を骨折した際に神経を痛め、出産に対応できない。現在は県立こども病院(安曇野市)や千葉大、地元の開業医の協力を得ているが、新たな常勤医の獲得は見込めないという。
同病院は須坂市、小布施町、高山村の須高地区では唯一お産を扱っている。分娩数は年間約420件。同病院では既に2008年3月まで月に約30件のお産の予約が入っている。来年度以降も週4日の産婦人科の外来は受け付ける予定。
県によると、長野市や北信地域で年間700件のお産を受け入れる余裕があるため、同病院は県と協議し休止を決定した。
県内の病院で産婦人科を休廃止したのは、2005年度に6病院、2006年度に3病院。2007年4月から、諏訪中央病院(茅野市)がお産を一時中止しているという。
(読売新聞、2007年8月28日)
****** 中日新聞、2007年8月28日
来年度から出産受け入れ休止 須坂病院、常勤医確保めど立たず
須坂市の県立須坂病院は二十七日、来年四月から出産の扱いを休止すると発表した。常勤の産婦人科医二人のうち一人がけがをして、再び出産を担当できる時期が不明な上、新たな医師確保のめどが立たないため。斉藤博院長は会見で「一人の医師に過大な負担がかかっており、安全な医療の維持が困難と判断した」と説明した。
斉藤院長によると、六月上旬に産婦人科の男性医師(48)が交通事故で右腕を骨折。現在、職場に復帰しているが、リハビリ中で出産に立ち会える状態ではないという。
病院側は県内外に医師の派遣を依頼し、求人活動を実施。しかし安曇野市の県立こども病院や千葉大などから数回程度派遣を受けただけで、常勤医の応募はなく、産婦人科部長の内藤威副院長(61)がほぼ一人で月間三十数件の出産に対応。副院長は外来診療をこなし、週末も緊急時の呼び出しに備える状態という。
須高地区(須坂市、小布施町、高山村)で唯一の出産施設である同病院が扱う出産は年間約四百二十件。長野市など周辺の北信地域の医療機関で約七百件の受け入れは可能とする県の判断で、来年度からの休止を決めた。来年三月までは引き続き出産を扱い、来年四月以降も妊娠期、出産後の診療は行う。
県によると、県内で出産を扱う医療施設は二〇〇一年の六十八カ所から、八月十五日現在で五十一カ所に減少。また県産科・小児科医療対策検討会のまとめでは、県内の病院勤務の産婦人科医は〇四年から〇六年の三年間で二十九人が離職している。 【吉岡潤】
(中日新聞、2007年8月28日)
以下、8月29日分の記事を追加
****** 信濃毎日新聞、2007年8月29日
県全体で医師確保を 須坂市長要望
須坂市の三木正夫市長は28日の定例記者会見で、県立須坂病院(同市)が産科医不足のため来年4月から出産の扱いを休止する方針を決めたことについて「県全体で医師確保に取り組み、お産を再開してほしい」と要望した。
三木市長は「総合病院でお産をしたいとの市民の要望は強い」と指摘。お産の扱い休止は須坂病院や担当課だけの問題ではないとし、「県立病院から産科がなくなるのは健康長寿の長野県のイメージにも影響する」と述べた。
(信濃毎日新聞、2007年8月29日)
****** 毎日新聞、2007年8月29日
県立須坂病院:分べん休止計画 医師確保へ、市PR方針
県立須坂病院(斉藤博院長)が来年4月から産婦人科での分べんの受け入れを休止することを受け、須坂市の三木正夫市長は28日、同病院の医師確保に向けて広報誌や市のホームページでPRする方針を示した。三木市長は「須高地区1市2町村の出産場所がなくなることは非常に厳しいことだ。あらゆる機会を通して協力していきたい」とした。
県衛生部によると、県内の産婦人科の休廃止数は05年度が6病院、06年度が3病院。07年度は4月から諏訪中央病院(茅野市)が一時休止したほか、9月には国立松本病院(松本市)が休止。来年度からは昭和伊南総合病院(駒ケ根市)も休止する。 【谷多由】
(毎日新聞、2007年8月29日)