ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

医師の時短 国が支援…勤務工夫の病院に補助金

2007年08月26日 | 医療全般

コメント(私見):

産婦人科の場合、24時間体制でいつでも緊急に対応できるような勤務体系を組み立てる必要があります。

従って、科に所属する医師が2~3名しかいないような場合は、どんなに工夫しようが、過剰労働になってしまうのは当然です。

所属する医師が10名以上になれば、いろいろと工夫することによって、当直明けは朝から完全に休めるような勤務体系を導入したり、昼夜完全交代制とか週休2日制などを実現することも可能となります。

要するに、現時点で常勤医師数に相当な余裕があり、もともとの医師の勤務環境がかなり良好な病院でないと、今回の新制度で補助金交付の対象となるような勤務体系を導入することは不可能です。

あるいは、現時点で数施設に2~3名づつ分散している産婦人科医を、将来的に1つの施設に集約化し、その施設の常勤医が10名以上に増えれば、その時点では補助金交付の対象となるような勤務体系を導入することも可能となります。もしかしたら、この新制度の本来の目的はそこにあるのかもしれません。

****** 読売新聞、2007年8月24日

医師の時短 国が支援…勤務工夫の病院に補助金

 過酷な労働環境に疲れ切っている勤務医の負担を減らすため、厚生労働省は、交代制や変則勤務の導入など医師の勤務時間を短くする工夫をした病院を支援する制度を設ける方針を決めた。

 補助金交付のほか、将来的には診療報酬で優遇することも視野に入れている。特に、夜間救急の多い小児科や産科などでは、医師の長時間労働が常態化し、過労死や医療ミスにもつながっているとの指摘もある。同省では、新制度の創設により、医師の病院離れや医療事故を予防する効果も狙っている。

 まず手始めに来年度、全国約100か所(各都道府県2か所程度)の病院を選んでモデル事業をスタートさせる。各病院では、昼と夜の交代制勤務のほか、子育て中で都合のいい時間帯だけ働ける医師や夜間だけ働ける医師など非常勤医師も組み合わせる変則勤務の導入などにより、勤務時間短縮に知恵を絞ってもらう。これに必要な経費は、国、都道府県、病院で3分の1ずつ負担する予定で、同省は国負担分として来年度の概算要求に約4億2000万円を盛り込む方針だ。

 同省は、モデル事業の結果を分析し、具体的な制度のあり方を検討。制度の運用が本格化した後は、工夫をしている病院に診療報酬を手厚くするよう改定することも検討する。

 同省によると、医師の勤務時間を短縮した先進例としては、2002年4月から交代制勤務を導入した「徳島赤十字病院」(徳島県小松島市)がある。同病院では従来、医師4人が平日の日勤をこなしたうえ、夜間の緊急対応、土日出勤を交代で担当していた。しかし、この体制では、宿直勤務や夜間の緊急対応があった場合、連続36時間勤務となるほか、休日も月3~4日程度しか取れなかった。

 そこで、常勤を3人、非常勤を1人増やして、午前8時半~午後5時10分までの日勤、午後4時20分~翌朝9時20分までの夜勤の完全2交代制を導入。その結果、勤務はどんなに長くても1日16時間に減り、週休2日が可能になった。1人あたりの勤務時間が軽減され、病院の受診患者数は2倍程度に増えた。

国も見過ごせぬ過酷な勤務実態

 厚労省が医師の勤務体制にまで踏み込んだ新制度を導入するのは、勤務医の過重労働が、国としても見過ごせないレベルに達しているからだ。

 今年2月、北海道労働局が時間外勤務が月100時間を超えていた男性小児科医(当時31歳)の突然死を労災認定した例など、勤務医の過重労働による死は枚挙にいとまがない。日本医療労働組合連合会の調査でも、1か月間休みを取れない勤務医が3割近くいることが判明している。

 ただ、今回の制度にしても、そもそも増員分の医師をどこから確保するのか――など検討すべき課題は多いが、今、手を打たなければ事態の悪化は免れない。疲れ切った医師が治療に当たり、不利益を被るのは患者だ。医師の心身の健康を守るために、国を挙げて取り組む時が来ている。【社会部 岩永直子】

(読売新聞、2007年8月24日)

****** 朝日新聞、2007年08月21日

医師の交代勤務を支援へ 導入病院に補助金 厚労省

 厚生労働省は医師不足対策として08年度から、医師の交代勤務制を導入した病院に補助金を出す制度を新設する方針を固めた。08年度予算の概算要求に5億円を盛り込む。過剰労働が医師の病院離れの一因となっているため、当直明けに休みが取れるような勤務態勢を整えた病院を支援する。

 新たな補助制度では、日中と夜間で医師が全員入れ替わる交代勤務にしたり、当直明けの医師が必ず休める勤務体系を導入したりして、医師の労働環境改善に取り組む病院に補助する。

 ただ、医師数に比較的余裕がある病院でなければ交代勤務を導入するのは難しく、医師不足が深刻な地方の公立病院などでは、補助対象となる勤務体系を導入できるかは不透明だ。

 厚労省によると、30~40代男性の病院勤務医の1週間の平均勤務時間は約50時間で、同年代の診療所医師より10時間近く多い。当直明けの勤務医がそのまま通常の診察などを行う勤務体系が多くの病院で常態化しており、過剰労働に耐えきれずに開業医に転身する医師が後を絶たない。

 同省では、交代勤務を導入した病院に対し、こうした補助金だけでなく、診療報酬の上乗せも今後検討する。

(朝日新聞、2007年08月21日)