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この平穏退屈な日々にもそれなりに感動って在るもの。

最近読んだ本〜2023年読書の秋に寄せて

2023-10-06 19:46:06 | 私の読書日記
最近読んだ本諸々を一挙紹介。

「中央駅」キム・へジン著
ホームレスになって中央駅で暮らす男とそこで出会った年上の女、駅にも、主人公たちにも敢えて名前はない。世界中どことも置き換えられる共有感、このどこから読んでも哀しい話を見事なくらい上手に描いた作者の力量のなんと凄いことか。訳者も素晴らしい。

「君という生活」キム へジン著
短編集。いろんな君との生活が語られる。どの話も面白い。

すっかりキム へジンにはまっていく。
昨年から、韓国人作家の小説が私の中で熱い。面白いのが来てるんだけど、どれもこれも本当に素晴らしい。本好きならぜひ読んでほしい。

「説教師」カミラ レックバリ
スウェーデン発のミステリー。シリーズもの、「氷姫」に続く第2弾。
主人公たちのことと、事件と両方楽しめる。さらには、あまり知らないスウェーデンの暮らしについても垣間見れる。北欧の国は福祉国家で揺り籠から墓場までなんて言われて幸福度の高い理想の国のような印象があったけど、この小説を読んでいると、そうでもないんじゃないかなという実態が見えてくる。
やっぱり、どんな国にも不満はあるものなのだね。

「パールストリートのクレイジー女たち」トレヴェニアン
以前にもちらっと紹介したかな?
1930年代NY州オールバニーでの日々を、覆面作家として知られるトレヴェニアンが自身の子供時代を振り返って描いた作品。クレイジーな人々ばかりなんだけど、どこかもの悲しくて、秋の夜長にぴったりの作品。しみじみつくづく素晴らしい小説。出会えてよかった。

「さよなら、ながいくん」川上弘美
川上弘美の東京日記シリーズ、大好きなの。久々に読めて嬉しい。外で読んでると可笑しくてニマニマしてしまう。

秋の夜長も読書の秋も、夏が終わって秋からクリスマス、お正月までの季節が私一番好きなのかもしれない、と昨日スーパーの帰り、自転車乗りながら突然閃いた。






レモンの実、パールストリートのクレイジー女たち、

2023-06-18 08:56:17 | 私の読書日記
バラの花が終わったと思ったら、また新しい葉が育ち、そこにまた小さな蕾を発見。
嬉しくなる。
去年は実をつけなかったオリーブも今年は実をつけているし、レモンもご覧の通り。
去年は出来なかったのに、今年は。う、嬉しい😂




2021年11月末に実をつけていたのを買ってきて以来、花が咲いて、こうして実になっていったのを見たのは今回が初めて。
日々、ベランダグリーンの成長に一人ほっこりする私です。

ところで、スウェーデンの推理小説「氷姫」に続き、今度は「パールストリートのクレイジー女たち」トレヴェニアン著、江國香織訳を読み始めている。

第二次対戦前のニューヨークパールストリートに暮らす人々を少年の目線で描いた半自伝的小説のようだけど、これがもう、とても面白い。はじめ、時代背景が古いからどうかな?と躊躇したが、読み始めたら、返ってそこが興味深く、江國香織の訳も素晴らしくいい。多分、彼女の訳だから、より一層面白く読めているのだと思う。おススメです。


人生に、いつか辿り着く理想の島なんてないんだというお話。

2022-11-17 20:52:32 | 私の読書日記
先日、図書館に寄ったら、10月の月間おすすめ図書が、マインドフルネス的なテーマで、マインドフルネスという言葉にともかく弱い私。もうすっかり読み飽きたはずのドミニック ローホーの本を懲りずに借り、もう1冊、リフォーム会社を経営するリブコンテンツという会社の代表、田原由紀子さんが書いた「愛せるキッチン 愛する暮らし 50代からの私らしい住まいと暮らし方」という本を借りてみたのです。

その、軽くパラっとするだけくらいの気持ちで手に取った田原さんの本が今回結構目から鱗で、その文章を思わずノートに書き留めたのです。

それは、田原さんが必死で仕事に家庭にと頑張っていた時期、その当時おそらく50代くらいの人生にもお金にも余裕のありそうな田原さんの顧客のマダム達が田原さんに言い放った言葉。

当時、田原さんの目にはそのマダム達がもうすっかり満たされて毎日が南の島で寛いで過ごせるような人生を送っているように見えたという。でも、そのマダム達に言わせると、田原さんが想像しているようなそんな理想の島なんて人生に存在しないという。人間幾つになっても、そんな理想の島に辿り着けることを目指して舟を漕ぎ続けるだけなのだという。実際、そのだいぶ余裕のありそうなマダム達も、未だに必死に漕ぎ続けているというのだ。

40代も半ばに近づきつつある私、ままならない思春期息子にヒーヒーしている日々で、50代は何だか、いろいろ終わって、余裕も生まれて、案外いいものなんじゃないかな、と私も多分その頃の田原さんと同じような気持ちでいたのだけど、そんな島なんて存在しないんだよ、と言われてみて、そうだったのかあ、、と妙に納得してしまった。そして、実際田原さんもそんな50代を迎えてみて、改めて島なんてないんだということに気付いたという。田原さんが言うには、だからこそ、自分の乗っている舟をなるべくなら、心地よくメンテナンスして、これから先も気持ちよく漕ぎ続けていこうじゃないか、と。死ぬまでずっとえっちらおっちら小舟を漕ぎ続ける人生。理想の島にたどり着くことを夢見て。



かいつまんで言ったら、そう言うことが書いてあって、意外なほど、為になる本だった。なので、おすすめです。ほんとに。



もう本屋さん大賞は信じない

2022-08-26 22:19:33 | 私の読書日記
「ベルリンは晴れているか」に続いて、めちゃくちゃ読むのが苦痛だった作品、勝手に期待していただけに脱力。「そして、バトンは渡された」・・・・・。

娘が読んでる少女漫画の世界なら、百歩譲って許せるような内容。内容がないのにページ数は無駄にある。おいおい、いい加減にしろよ、、が結局最後まで続いた。
そもそも、これよく出版できたなあ。。。そして、よく映画化までしたなあ。


本屋大賞って書店員さんが選んだその年のベスト10的な賞なんだよね??書店員さん、ふだん一体どんな本を読んでるのよ??

今年の夏休みもあとちょっと。



本当に奇跡も魔法も感じられたよ。伊坂幸太郎の「アイネクライネナハトムジーク」

2022-07-19 21:35:42 | 私の読書日記
伊坂幸太郎は若い頃、友達にすすめられてたのに、今の今まで読んだことがなく、愛鳥に出ていかれて、落ち込んでいた時に図書館で、「アイネクライネナハトムジーク」をたまたま手にし、奇跡、魔法のような短編集との裏書きに半ばすがるような思いで読み始めた。

そしてこれが、めーーっちゃくちゃ面白くて通勤を魔法の時間に変えてくれた。

ささくれだってた心にぽっと灯がともる。そんな小説だった。
読み終わって、早速斎藤さんを聴いちゃったよ♪

絶対他のも読んでみる〜。あとがきによると、毛色が違うらしいけど。
男の人なのに、かなり上手に女性を描けるんだなあと思った。

大好きな江國香織の雑多な登場人物が出る話を読んだ後だから、特にそう思った。
江國さんには、自分の世界のままに作品を描いてほしいなあ。やっぱりちょっと浮世離れしてるから、普通の人たちを描くことにはちょっと違和感しかなくて残念だった。






『ミカンの味』を読んで

2022-06-19 10:21:51 | 私の読書日記
チョ・ナムジュさんの「ミカンの味」を読み終えた。

思春期の女の子4人の物語だ。どうやら、著者の娘さんも思春期。うちの息子も思春期。思春期って特別なんだ〜と反抗真っ盛りの息子に手を焼く毎日に、この物語がちょうど刺さった。

終わり方も秀逸だし、タイトルが「ミカンの味」となった場面もみずみずしく美しい。

韓国の進学状況がわかるように、解説も丁寧にされていて、同じく高校受験を考える母親としては格別興味深い。

作者のあとがきも素晴らしくて、ちょっと電車の中で泣きそうになったんだけど、そこに以下の文章があって、

成長はときに手に負えなくて、孤独なことのようです。「誰でもみんな経験することだよ」「あなたは一体何が不満でそんなふうなの?」という言葉に、そうは言っても大変なものは大変なのだと、そういうこともあるんだと答えたかったのです。
                   ミカンの味 作者あとがきより

成長はときに手に負えなくて、孤独なことのようです」この言葉こそが私が探していた思春期についての答えのように思えて、ポストイットに書きつけてトイレの壁に貼り付けた。






「ルワンダでタイ料理屋をひらく」を読んで

2022-04-03 10:09:02 | 私の読書日記
普段はいつも予約した本をカウンターで受け渡ししてもらうだけで、特に忙しくもないくせに、忙しく図書館を出ていた私だけど、たまにぐるりとゆっくり一周すると、そりゃあ素晴らしい本に出会うことができる。

それがこの本、「ルワンダでタイ料理屋をひらく」だ。
著者の唐渡千紗さん(ステキな苗字だなあ)は30歳くらいまで日本の大手企業で働いていたシングルマザーで、脱サラをして、ルワンダでなぜかタイ料理屋を開こうと、その奮闘の日々を描いた本だ。

作家としては素人なのに、文章が上手い。そして、知る機会のなかったアフリカの内陸国ルワンダのこと、中身が新鮮で実に面白い。
勿体無いので、大事に大事に読んでいる。
こんな素敵な本に出会えるんだから、やっぱり図書館は一周してみるもんだ、とつくづく思った。

いつかルワンダに行って、アジアンキッチン(著者の店)でパッタイ食べてビール飲みたい!!!!

それにしても、この著者の経営力、人間力、頑張りがすごくって、大手企業でバリバリ働いた人って、30歳でこんなにしっかりしちゃうもんなんだなあと、ただただ感心してしまう。私なら、すぐに逃げ出して日本に飛んで帰ってる、著者の根性はとんでもなく逞しい。



「長いお別れ」〜ロンググッバイ〜を読んで・・

2022-03-24 21:20:22 | 私の読書日記
最近どハマりしている中島京子さんの「長いお別れ」を読んだ。
通勤時間を楽しみに変えてくれる作家さん。

物語は、認知症を発症した元中学校校長の昇平とその妻、3人の娘たちそれぞれの暮らし、共に歩んだ10年間(その間に3.11が挟まれる)が描かれている。
ともすれば、暗くなりがちな話なのに、根っから明るい妻陽子を軸にしんみりさせすぎることのない、当たり前の(実際壮絶とも言える日々だが)日常がそこには広がっている。

終わり方がまた秀逸で、作者の筆致の見事さに電車の中で涙を堪えるのに必死だった。

タイトルの長いお別れ、10年間の日々を想うとその通りだなあと思ってたんだけど、実際アメリカで、認知症のことを文字通り、ゆっくりお別れをするという意味で、ロンググッバイと呼ぶらしい。

映画化もされているみたいなので、いつか見てみたいな♡


チョ ナムジュさんの「彼女の名前は」 2021年一番感動した本

2022-01-07 23:28:20 | 私の読書日記
ここ最近どハマりしているのが、韓国フェミニズム文学。

「82年生まれ、キム・ジヨン」がとても面白かったのと、VOGUEで紹介されていたのが始まりだ。

「彼女の名前は」は、「82年生まれ・・」の作者チョ ナムジュさんの作品。
彼女の元に届いた実際の韓国女性たちの声を元に作られた本だ。
そこには、若い女性から壮年女性まで、様々な声が寄せられている。

去年1年間で読んだ本の中で、どれが一番と聞かれたら、迷いなくこの本の名前をあげる。

仕事に行く行き帰りに楽しみに読むんだけど、どの話もウルウルきてしまう。
泣かせようとして書かれたわけではもちろんない。
全編、女たちの哀しみがどうしようもなくそこに横たわっているのに、でも力強い希望もそこには確かにあって。
どの話も胸に染み入る。
それと、外国文学に欠かせないのが翻訳者の仕事ぶり。この本にしてこの訳者あり。素晴らしい。

そこから今度は「ヒョンナムオッパへ 韓国フェミニズム小説集」を読み始めた。
チョ ナムジュさんの作品が「ヒョンナムオッパへ」で、他の作者の話もどれもずっしり重く、だけど面白くて、これからますます追って読んでいくことになると思う。


お正月には、「小さいおうち」や「夢見る帝国図書館」でどハマりした中島京子さんの「ムーンライトイン」を読んだ。こちらは、軽〜い読み物で、主人公の拓海君の年齢が35歳というのが最初から最後までちょっと引っかかった。キャラ的に、28歳くらいが妥当なのでは??

それと同じく中島京子さんの「妻が椎茸だったころ」を今読み始めて、短編集のようだけど、最初の「リズ・イェセンスカのゆるされざる新鮮な出会い」この話、最高!!!!だった。
うわあ、こう来たか〜って。めっちゃ面白かった。
他の話も楽しみ〜。



時折読み返したい1冊 『ワイルドサイドをほっつき歩け』

2021-09-07 10:17:05 | 私の読書日記
ブレイディみかこさんの本はどの本も相当に面白い。

この「ワイルドサイドをほっつき歩け」は著者自身が暮らすイギリスでの友達、とりわけ”オッサン”にスポットを当てて紹介した本だ。
これがどのエピソードも大変面白くてマッチョな労働者階級のオッサンの行動に笑ったり、ほろりとさせられたり。人間味があって、何度でも読み返したい1冊になった。

例えば、こんまり(断捨離の)にハマったおっさんが家中を断捨離するんだけど、その時にこんまりを信望するあまり、日本という国もさぞ断捨離された美しい国なんだろうなと著者に尋ねるんだけど、その著者が日本を評していう言葉にうんうんと深く頷いた。↓

「たとえばあの国は街の景観のプランニングなんかしていないので、色も形も建築様式もバラバラな建物が雑然と並んでいる風景を見ただけで、「整理整頓」の精神などないことがわかると思う。あれほどいろんなことがとっ散らかってる国は世界でも珍しいのではないか。」

オリンピック前に読んだ本だから、こんな思いを抱きながら、日本を訪れる外国人よ、日本の現実を見よ、と思ったら、結局無観客になった・・

それから「女たちのポリティクス」今は「何とかならない時代の幸福論」を読み始め中!!