古来からの手法 2017年5月11日
天平時代の色の再現を試み続けている番組を昨晩観ました。
4代目の故吉岡常雄さんの頃は、高度成長期の真っ只中であり、ヨーロッパの産業革命、そして、日本の明治維新以降、質よりも量を賄うことが先決で、化学染料が中心となっていきました。4代目がその状況に危機を感じ、染めの原点に立ち返り、そこから現在の5代目がその仕事を研究し貫き通してきたのです。
4年前から6代目になるお嬢さんが染めた紅染めの和紙を奉納し、東大寺修二会の椿「糊こぼし」に使われています。
1987年に出版された「別冊太陽・源氏物語の色」は、4代目が文章を書いており、私のバイブル的本として大事にしてきました。
昨日は、別冊太陽を捲りながら、番組を堪能させていただきました。
英国博物館が56色の染め物を永久保存することとなり、仕上がった反物を手に取るイギリス人のキューレターの美しい感性に心動かされました。
その様子を見ながら、私は、「真善美のどれかから思索する」という概念を私の心理学の師匠に教えたオックスフォード大学宗教心理学の教授の言葉を思い出していました。
私自身、四半世紀にわたり、正麩糊だけで仕立てる表装を習い、まだまだ修業の身ですが、やればやるほど、本物の手すきの和紙が恋しくなり、其の相性を確かめるべく、材料にどんどんとのめり込んでいます。
修復以外、ほとんどの工房が科学糊に切り替えられているのを知るたびに、本物を扱う職人の手が消えていくのを感じてしまうのです。
最初から科学糊を使ってしまうと、正麩糊が扱えなくなるので、頑なに正麩にこだわり続けています。
たまたま美大の同窓生が正麩糊だけで表装する工房を持っており、それが希望になって孤独感が薄れているのは確かです。
古来からの手法が、いつか役に立つことを意識しつつ、低空飛行でもやめたらおしまいだと心に決めて、作業を淡々と続けようと、番組で力を頂いた次第です。
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