ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

千葉科学大学の公立化の条件?

2024年08月27日 00時00分00秒 | 国際・政治

 このブログで、千葉科学大学の話題を3回取り上げました(「公立化は無理ではないか」、「千葉科学大学の公立化は難航することに」および「公立化か閉校か」)。

 公立化、より具体的には公立大学法人化されるのか、別の道をたどることになるのか。銚子市に「千葉科学大学公立大学法人化検討委員会」(以下、検討委員会)が設置され、これまで5回の会合が開かれました。その結果が2024年8月25日にまとめられ、市長に答申されました。東京新聞が、2024年8月25日の21時36分付で「『公立化は魔法の杖ではない』 千葉科学大の経営『加計学園による継続が望ましい』 銚子市検討委が答申」 (https://www.tokyo-np.co.jp/article/349651)として報じています。銚子市のサイトには検討委員会の記事があり、会議で配布された資料も掲載されていますが、第5回(2024年8月25日)の配付資料は掲載されていませんので、東京新聞の記事を参考にします。但し、方向性は第4回(2024年7月28日)に或る程度示されており、「会議概要」が公表されていますので、これも参照します。

 検討結果は、東京新聞の記事の表現を借りるならば「『公立化は大学再生の魔法の杖(つえ)ではない』として、最善策を『加計学園による経営継続』とし、次善策を『ほかの学校法人への事業譲渡』とした」、いずれも不可能であれば「公立化を考えるべきだとした」のですが「その場合でも、銚子市が経営主体となる前に現行の3学部6学科を2学部2学科に整理し、2210人の定員を10分の1以下の190人未満に減らすことなど、7つの条件を求め」、「運営資金の銚子市への譲渡も含めた」とのことです。

 2学部2学科への整理は、検討委員会の第4回会合でも示されていました。或る委員は、次のように発言しています。

 「まず学部としては、看護学部と危機管理学科を残すべきだと思う。今社会で求められているのは問題解決能力であり、様々な困難に直面したときに、それを打開するためには忍耐力、体力など様々な能力が必要となる。社会に出てから必要となる問題解決能力を身につけるための基礎を大学までの間に身につけるべきだと思う。危機管理学科ではそういうことが学べるように、今の時代に合った内容のカリキュラムにもう一度組み直してもらいたい。今の内容の延長とは考えていないということを付け加えておきたい。また、前回リスキリングの話をさせていただいた。学生だけでなく、社会人も、年齢や段階に応じて学び直す必要があると思っている。そういう機能を既存の学部学科内に作れるか検討していただきたい。」

 別の委員は「市民の方から意見が多かったのは、千葉科学大学は公立化して残してほしいということ。千葉科学大学があった場合となかった場合の経済効果を考えると、公立化して残していただいた方がよいということであった」とした上で、次のように発言しています。

 「何を残すかというスリム化の話では、まず看護学科は残していただきたい。公立化することで市立病院との連携がとりやすくなると思う。学生としても実習などの環境に恵まれるのではないか。地域のことを考えると、以前、外川地区で看護学科の学生と先生が地区を回って何年か時系列を追って実習をやっていただいた。そういうことがあると健康に対する意識が芽生えてくるというプラス効果がある。できればそういう形の看護学科を残していただきたい。危機管理に関しては、地域に根ざすのであれば、銚子沖の風力発電の点検にドローンを使うなど、若い人達に人気のあるような学科を作って、学生を集めるようなことをすれば、公立化になれば学費も安くなるし、集まりやすいと思う。なので、看護学科と危機管理学科、これは残していただきたい。その他の赤字の学科は赤字の金額が大きいので、難しいと思う。」

 委員の氏名が「会議概要」に示されておらず、ABC、甲乙丙などとも示されていないので、それぞれの発言の関連がよくわからないのですが、このような発言も記録されています。

 「1番よいのは、加計学園の経営で千葉科学大学が現状のまま残ることが第一希望だと思う。第1回会議では、現状のままでは募集を停止するという話であったので、次に考えるべきは、別の学校法人に引き継いでもらって、現状のまま若しくは現状の規模で経営してもらう、これが第二希望であろうと思う。現在の規模のまま公立大学法人化して引き受けるというのは、将来市民に財政的負担をお願いするという覚悟があれば可能だと思うが、それは市の財政状況から難しい。そうなると、引き受けるとすれば財政負担のリスクを下げるべきで、これは固定費を削減する以外にない。固定費には建物もあるが、この場合は教員が何人くらい必要となるかということになる。学科の数を増やすと必要とされる教員の数が増えてしまう。1学科作ると最低でも10人以上の教員がどうしても必要になってくる。現在6学科あるので、かなりの規模で教員が必要ということになる。そうすると、学科の数を減らすというのが基本的な路線だろうと思う。銚子市の人口規模を考えると、2学科か3学科、3学科にすれば将来市民に財政負担が生じる可能性が上がる。その覚悟を持って3学科を残すというのは、1つ市民の方の判断だろう。2学科であれば、例え上手くいかなかったとしても、それほど大きな財政負担ではないと思う。(中略)残すならば、固定費の少ない学科を残さないといけない。理科系の多くの設備を必要とする学科、教員を多く必要とする学科は固定費が高く、入学定員から下振れをしたときの赤字幅が大きくなることから、それは避けたい。しかし、公立大学法人にすると逆の面があって、国からもらえる地方交付税交付金は、理科系に手厚い。わかりやすくするためにビジネスの話に例えると、文系の学科は利幅が薄いけど、コストがかからない。理系の学科は固定費が多くリスクが高いけど、利幅が厚い。どうするかというと、固定費の高い学科を1つ残し、もう1つは固定費の低い文系の学科を残した方がよいということになる。2学科を前提にすると、1つは地元からは看護学科のニーズが非常に強い。看護学科を残すとすれば、もう1つは固定費が低くて融通の利く文系の学部、典型的にはビジネス系の学部となる。危機管理学部危機管理学科という名前だが、実質的にビジネス経営学科として運用することは可能であり、ドローンがどうしても必要という話であれば、ドローンの専門家が1人いれば、危機管理の枠の中で含めることができる。ということで2学科体制となる。今ある6学科をどれだけ減らすかというときに、看護学科が必須であれば、もう1つは文系の学科を残すとよいというロジックで、大体皆さんの意見は収束している。与えられた条件の中で常識的に考えると、結論の方向性は大きく違わない。看護学科を残して、危機管理学科を文系のビジネス経営学科のように運用するというのが現実的なセットだろうと思う。」

 そして、委員長(「会議概要」には示されていませんが、淑徳大学地域創生学部長の矢尾板俊平氏です)が委員長が次のように発言しています。

 「皆さんから意見をいただき、看護学部と危機管理学部危機管理学科、学科では2学科、という組み合わせが皆さんの意見となったと思う。高校生のアンケートを見ると、経済経営はそれなりに学生のニーズは高い。看護もそれなりに高い。全国的な傾向も同じである。懸念としては、危機管理学科という名前のままでは0.4パーセントなので、募集のことを考えると、学科名称については、答申の後、公立大学の設計をしていくときに、留意しておく必要があると思う。内容としては、現在の危機管理学科の内容と看護学科の内容というところでスリム化を図っていくということを答申の素案として、今後、答申案を調整していきたいと思う。」

 最後まで公立大学法人化の可能性が残されているということで、委員間の意見の違いも見えてきそうですが、それは脇に置いておきましょう。まずは加計学園による経営の継続、次に別の学校法人への譲渡という結論は、或る程度予想されたことでもあり、常識的な結果と言えるでしょう。しかし、検討委員会の答申には法的拘束力がないはずで、最終的には銚子市長の判断に委ねられていると言えます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする