ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

坂本龍一の作曲のバックボーンは

2024年06月03日 00時00分00秒 | 音楽

 2024年6月2日、池袋の東京芸術劇場に行きました。

 日本フィルハーモニー交響楽団の第255回芸劇シリーズ、「作曲家坂本龍一 その音楽とルーツを今改めて振り返る」が開かれたためです。昨年亡くなった坂本龍一さんの作品を中心にしたプログラムで、次の通りです。

 指揮:カーチュン・ウォン

 監修:小沼純一

 前半

 ドビュッシー:「夜想曲」(合唱:東京音楽大学)

 坂本龍一:「箏とオーケストラのための協奏曲」(箏:遠藤千晶)

 後半

 坂本龍一:「The Last Emperor」(映画「ラストエンペラー」より)

 武満徹:「組曲『波の盆』」より「フィナーレ」

 坂本龍一:「地中海のテーマ」(ピアノ:中野翔太、合唱:東京音楽大学。1992年バルセロナ五輪大会開会式音楽)

 アンコール

 坂本龍一:「AQUA」

 一言で記せば、非常に興味深い内容でした。私がイエロー・マジック・オーケストラの1978年から1981年までの音楽に馴染んでいたからでしょう。

 坂本さんがドビュッシーの影響を受けたという話はよく語られるところです。しかし、最近、その話が拡大されているように思えます。彼がグレン・グールドに惹かれていたということも知られていますから、当然、グールドによるバッハの曲の演奏も坂本さんに少なからぬ影響を与えているはずです。曲によっては、ドビュッシーよりもグールドの演奏を通じたバッハなどの演奏の影響のほうが大きいように思えます。

 また、世代的にジャズの影響を受けていることは間違いなく、それは今回の「地中海のテーマ」においてよく表されていました。1960年代後半から1970年代前半までのフリー・ジャズ、とくに山下洋輔トリオを思い起こさせるような部分があったのです。ピアノとパーカッションのアブストラクトで、かつ強力な演奏はフリー・ジャズの影響でしょう(クセナキスなども考えられますが)。何故か見落とされがちですが、坂本さんは「千のナイフ」よりも前に土取利行さんとのコラボレーションで「ディスアポイントメント-ハテルマ」を発表されていますし、(録音などが残っているかどうかは不明ですが)川崎市川崎区が生んだあの不世出のサックス奏者、阿部薫(坂本九の甥)とも共演していました。ちなみに、坂本さん自身によるフリー・ジャズ的な、あるいは現代音楽的なピアノは、デイヴィッド・シルヴィアンの「Secrets of the Beehive」に収録されている「Mother and Child」で聴けます(「Camphor」でもリマスター版として聴けます)。

 今回のコンサートで特に興味深かったのが「箏とオーケストラのための協奏曲」でした。2010年に初演されていますが、今回が実に14年ぶりの演奏であるとのことでした。

 この協奏曲を聴くと、坂本さんの音楽的バックボーンがかなり広範なものであるということが推察されます。とくに、第3楽章の「firmament(夏)」は、ミニマル・ミュージックやドローンの色彩が濃く、スティーヴ・ライヒ、ラ・モンテ・ヤング、テリー・ライリー、あるいはブライアン・イーノからの影響がうかがえます。聴きながらすぐに思い出したのが、すぐに思い出したのが、細野晴臣さんの言葉でした。彼は、YMOの或る時期に坂本さんが現代音楽などを次々にメンバーに紹介したという趣旨を語っていたのです(細野晴臣さんと北中正和さんの『The Endress Talking』をお読みください)。また、第4楽章の「autumn(秋)」では、チャイコフスキーか、他のロシアの作曲家の作品からの影響と思える低音が響き渡りました。

 和楽器とオーケストラといえば、武満徹さんの「ノヴェンバー・ステップス」が代表的ですが、この曲の場合は尺八と薩摩琵琶です。一方、箏ということでは高橋悠治さんの作品に何曲かあるようです。また、坂本さんと高橋悠治さんは何度か共演していますし(「千のナイフ」に収録されている「グラスホッパーズ」など)、坂本さんのキャリアなどを見る限り、高橋悠治さんからの影響を見落とすことはできないでしょう。

 今回のコンサートのプログラムで、小沼さんは、坂本さんが「学生のころ、武満徹批判をするビラを配ったというようなエピソード」に言及されています。間章の影響だったのかなどと邪推しますが(間章著作集に、激烈な武満徹批判の文章が掲載されています)、実は或る種の若気の至りだったそうですし、高橋悠治さんとの共著『長電話』でも「純粋な作曲家は武満徹くらいなのかもしれない」という趣旨の発言をしています(高橋悠治さんの発言かもしれません。記憶が曖昧です)。YMOの「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」に収録されている「キャスタリア」は武満作品からの影響を受けているという話は、YMOファンなら聞いたことがあるでしょう。武満徹さんもドビュッシーからの影響を受けていますし、映画音楽の分野でも優れた作品を残しました(今回はテレビドラマの音楽ですが)。

 2時間ほどのコンサートでしたが、色々なことを考えていました。

 ※※※※※※※※※※

 実は、カーチュン・ウォンさんが指揮する日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートに行ったのは、今回で3回目です。最初が5月10日(サントリーホール)、次が5月26日(サントリーホール)、そして6月2日(東京芸術劇場)でした。

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再び、マーラーの交響曲第9番を生演奏で聴く

2024年05月11日 00時00分00秒 | 音楽

 2024年5月10日の夕方、六本木駅の近くで夕食をとってからサントリーホールに向かいました。日本フィルハーモニー交響楽団の第760回東京定期演奏会のためです。

 演奏曲目はグスターフ・マーラーの交響曲第9番で、指揮は首席指揮者のカーチュン・ウォン氏です。このブログにも記したように、私は2022年10月15日、ヘルベルト・ブロムシュテット氏が指揮するNHK交響楽団による演奏をNHKホールで聴いています同年11月6日にはNHKのEテレの「クラシック音楽館」でも放送されました。勿論、私は見ました)。そして、2023年11月9日に記したように、ウォン氏の指揮の下で日本フィルハーモニー交響楽団がマーラーの交響曲第9番を演奏するという話を仕入れており、たしか2023年の12月に予約を入れました。

 指揮者も違う。交響楽団も違う。会場も違う。私がこれまで買ってきたCDでも、マーラーの交響曲第9番は全く違います。期待と不安が入り乱れました。

 私はサントリーホールに入り、2階席の右側、ヴィオラやコントラバスを見下ろせるような位置に座り、聴きました。

 開演前は不安のほうが高まりました。日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートではプレトークがあるのですが、正直なところ、今回のプレトークは不要であるとしか言えなかったのです。今日の演奏曲と全く関係のない、今後の日フィルのコンサートの予定に関する話ばかりで、ハッキリ言えばどうでもよい内容でした。肝心のマーラーの交響曲第9番については最後にほんの数秒で終わったのではないでしょうか。NHK-FMのクラシック番組以外の音楽番組などで聞かれるような無駄話は(最近は何処かの店で流されているものを聞かされる程度であるためによくわかりませんが、昔のFM東京の音楽番組は特にひどく、ライヴ・アンダー・ザ・スカイの中継は15分くらい無駄なしゃべりで中身に入らなかったことをよく覚えています)、やめて欲しいものです。日本フィルハーモニー交響楽団には、真剣に再検討をお願い申し上げます。

 さて、19時を過ぎて開演ということで、第1楽章(Andante Comodo)が始まった途端に、2022年10月15日と2024年5月10日とでは全く違うという印象を受けました。「会場の違いか」、「私が座った席のせいか」とも思いましたが、それだけではないでしょう。

  2022年10月15日のほうは、事情によって氏が着席して指揮をしていたためか、淡々と進むような様子でした。演奏は淡々としていなかったのですが、2024年5月10日ほど管楽器の音量が大きくなかったような気もしました。ブロムシュテット氏とウォン氏とでは指揮のスタイルが全く違うので、演奏も違うのでしょう。

  2024年5月10日のほうは、第1楽章から第3楽章までは音量も大きく、速く進んでいきました。第2楽章および第3楽章は、ブロムシュテット氏指揮の演奏よりもウォン氏指揮の演奏のほうが、かなり荒々しかったという印象です。但し、第2楽章はIm Tempo eines gemächlichen Läntlers. Etwas täppisch und sehr derb、第3楽章はRondo-Burleske: Allegro assai, Sehr trotzigとなっているので、荒々しいくらいでよいのでしょう。

 「もしかしたら、第2楽章および第3楽章の荒々しさはかなりの意図が込められていたのではないか」と思ったのは、第4楽章(Sehr langsam und noch zurückhaltend)に入ってすぐのことでした。落差という表現をとってもよいくらいに、極端なくらいに違うのです。第4楽章は弦楽器が中心であり、速度もかなり遅くとられていました。2022年10月15日よりも遅かったのではないでしょうか。他の方はどうであるのかわかりませんが、私は、マーラーの交響曲第9番といえば第4楽章を好み、この変ニ長調の最終楽章のみを聴くこともあるくらいですし、第4楽章を基準に判断しますので、2024年5月10日の第4楽章は良かったと思いました。何小節目かは覚えていませんが(実家に置いてあるはずのミニスコアを持参すればよかったと後悔しました)、私が「ここだ!」と思う所があり、その部分のテンポが絶妙でした。軽いリタルダントがなされた後にDes、C、Bと弾かれる部分で、一種の「ため」のようなものが必要と考えられるところです。

 第4楽章の最後は、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラおよびチェロだけで演奏されます。そして、指示通りに消え入るように終わりましたが、やはりかなり長い余韻がありました。その後、割れんばかりの拍手が起こり、それが鳴り止まなかったのでした。10分以上は続いたでしょうか。何しろ、指揮者が3回、指揮台に登場して挨拶し、楽団員が退席する間も拍手が鳴っており、全員がステージから去っても鳴り続き、最後にはウォン氏、今回のソロ・コンサートマスターの田野倉雅秋氏、そしてもう一方の女性の演奏者(ハープ奏者の松井久子氏ではなかったしょうか)の3人のみが再びステージに現れました。演奏が終わったということで多くの方がスマートフォンで撮影をしており(開演前に、終演後であればステージを撮影してもよいとアナウンスされていたので)、私も3枚撮影しました。ただ、ここに載せるべきではないでしょう。載せてもよいのであれば載せますが、許可はいただけないでしょうし、私から許可を申し出るつもりもありません。

 そう言えば、2022年10月15日の時も拍手はなかなか鳴り止まなかったことを思い出しました。私も立って拍手したのです。そして2024年5月10日も。

 この交響曲が演奏されたら、アンコールの演奏は要りません。下手な選曲では雰囲気をぶち壊しますし、余程の人でなければアンコールの曲を選べないでしょう。生涯最後に聴いた曲がマーラーの交響曲第9番であってもよいほどなのですから。そのようなことを考えながら、六本木一丁目駅から南北線・目黒線、大井町線、田園都市線を乗り継ぎ、うちに帰りました。

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六本木のサテンドールが2024年6月末日をもって閉店!

2024年05月03日 00時00分00秒 | 音楽

 このブログに「六本木のサテンドールが2020年12月末日をもって閉店!」という記事を載せたのは2020年11月21日のことでした。

 その後、実際には貸切専門で営業を続けている旨がサテンドールのサイトに示されており、2021年2月17日に「ライブレストラン営業再開の御案内」が同サイトに掲載されました(現在は閲覧不能)。その後、実際に営業を再開しましたが、昨日(2024年5月2日)の朝に、何となくサイトを開いたら、先月に「六本木 サテンドール 閉店のお知らせ」という文書が掲載されていたことを知りました。

 閉店の理由は「諸般の事情」としか書かれていません。ただ、COVID-19以前よりライヴは少なくなっていたようですし、苦しい状況が続いていたのでしょうか。すぐ近くの六本木五丁目再開発計画と何らかの関係があるのかなとも思いましたが、おそらく違うでしょう。

 サテンドールは1974年に神戸市の北野町で開業したそうで、1976年に六本木に移転したようです(六本木サテンドールのロゴにはsince 1976と書かれています)。私がスイングジャーナルを読んでいた1980年代には銀座にもサテンドールがあり(銀座のほうが先に開店したのかもしれませんが、詳しいことはわかりません)、ライヴスケジュールが掲載されていたことを覚えています。銀座のほうに行ったことはないのですが、いつの間にか六本木のみになっていました。何度か移転しているようで、私が知る限りでは六本木四丁目の俳優座劇場の真裏、同じく六本木四丁目で東京ミッドタウンの近く、そして六本木六丁目の現在地です。このうち、現在地だけ入ったことがありません(すぐそばを何度か通っているので場所は知っています)。

 2020年の時には事業を受け継ぐ会社があったということでしょうが、今回はどうでしょうか。再復活はないかもしれません。ただ、サテンドールが続けられるとしても、六本木にこだわる必要はないという気もします。

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Last Days 坂本龍一 最期の日々

2024年04月08日 00時00分00秒 | 音楽

 いつもの日曜日の夜はNHKのEテレですが、昨日(2024年4月7日)の21時からはNHKスペシャルを見ました。タイトルに示した「Last Days 坂本龍一 最期の日々」です。

 妻と一緒に、一気に見通したという感じです。

 坂本龍一の日記などを基にして構成されており、ナレーション、坂本龍一の肉声、生前の画像を時系列に並べたようになっています。ニューヨークの自宅、東京の仮住まい、往年の名機であるProphet-5、東北ユースオーケストラ、2023年1月に亡くなった高橋幸宏……。

 余計なものが一切入っておらず、さすがNHKだと感じます。静かながら迫力のある番組でした。こういう番組は、民放では作れないでしょう(余計なものを足すからです)。

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かなり心配

2024年03月31日 17時55分05秒 | 音楽

 今月中頃だったでしょうか、渡辺香津美さんがいくつかの公演をキャンセルしたというニュースを耳にしていました。昨日(2024年3月31日)の夕方に、Yahoo! Japan Newsでさらなるニュースを読み、香津美さんのオフィシャルサイトを確認したところ、「2024年2月27日軽井沢の自宅にて倒れ、緊急入院いたしました。 精査の結果、意識障害を伴う脳幹出血と診断され、医師の診断に基づき本年度予定されていたすべてのアーティスト活動を中止し、治療に専念いたします」と書かれていました。

 これまで時々書いてきたところからおわかりかもしれませんが、私は香津美さんの演奏をCDで、あるいは生演奏で何度となく聴いてきました。初めて知ったのは1980年頃、YMOのサポートメンバーとしての演奏と、日立Lo-DのCMで流れた「ユニコーン」でした。本格的に聴き始めたのは中学校1年生の時です。それから現在まで、全部ではありませんがほとんどのLPやCDを購入し、聴いてきました。

 一日も早い回復、そして復帰を。

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武満徹「ノスタルジア」

2024年02月21日 21時00分00秒 | 音楽

 2024年2月18日(日曜日)の21時から放送された「クラシック音楽館」は、先日逝去された小澤征爾さんの追悼番組でした。

 21時から23時30分まで見ていましたが、とくに私がよかったと思ったのが、武満徹作曲の「ノスタルジア〜アンドレイ・タルコフスキーの追憶に」(1987年)でした。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮はもちろん小澤征爾、ヴァイオリン独奏はアンネ・ゾフィー・ムターです。

 旧ソ連の映画監督であるアンドレイ・タルコフスキーへの追悼のために書かれ、彼の監督作品である「ノスタルジア」と同じ名前が付けられた曲は、ヴァイオリン独奏と弦楽合奏のための曲で、武満の初期の作品(1950年代後半)にして出世作である「弦楽のためのレクイエム」と編成が似ており(独奏ヴァイオリンがあるかないかで違いますが)、曲風も似ているように思えます。

 私は、これまで武満徹の作品を(決して多くはないのですが)聴いてきました。ヴィオラ独奏の「ア・ストリング・アラウンド・オータム」(1989年)、尺八および薩摩琵琶と管弦楽団のための「ノヴェンバー・ステップス」(1967年)などを耳にする度に、これほど自然に聞こえてくる音楽はないのではないかと思っていました。「ノスタルジア〜アンドレイ・タルコフスキーの追憶に」も同種の音楽で、独特の浮遊感が独奏ヴァイオリンと弦楽合奏から漂ってくるような感じなのです。あるいは、空間に漂っている音を捕まえ、響かせた、というようにも思えてきます。

 そして、先程記した各曲などを聴く度に思い出すのが、1996年2月21日付の毎日新聞夕刊に掲載された、詩人の大岡信による追悼記事にあった「音を自由に呼吸させてやる」という言葉です。読んだ瞬間に「なるほど」と思いました。

 

 追記:偶然なのでしょうが、朝日新聞2024年2月22日付朝刊1面14版△の「折々の言葉」に、武満徹の言葉が紹介されていました。「政治とか科学とかが凄く極端に進んできているときに、時どきそれを引き戻すのが、音楽の役割だと思うよ」というものです。

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カウントダウンにふさわしい曲は

2023年12月14日 00時35分00秒 | 音楽

 昨日(2023年12月12日)、田園都市線の電車に乗っていたら、毎年テレビ中継で見ている東急ジルヴェスター・コンサートの中吊り広告がありました。東急の車両だったからでしょう。

 今年のカウントダウンはチャイコフスキーの交響曲第5番第4楽章と予告されています。

 チャイコフスキーの交響曲では、第6番「悲愴」ほどではないとはいえ名曲ですが、少々疑問もあります。

 昨年のカウントダウンはドヴォルザークの交響曲第9番第4楽章でした。これにも首を傾げました。

 一昨年かその前の年のカウントダウンはベートーヴェンの交響曲第5番第4楽章でした。言わずと知れた「運命」ですが、第1楽章ではなく第4楽章(実は第4楽章がNHKのEテレ「クラシック音楽館」の冒頭で使われていたりします)というところにセンスを感じました。暗闇を抜け出して光明へ、というイメージに合うのです。

 ぼくは、何年も前に渋谷のNHKホールでシューベルトの交響曲第8番「ザ・グレート」(ドイツ語でDie Große)を聴いたことがあり、そのことをふと思い出して、第8番の第1楽章か第4楽章がカウントダウンにふさわしいのではないかと考えました。とくに第4楽章は力強く、それでいて表情が豊かな曲です。さりげなく、ベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章が少々形を変えて引用されていますし、コーダで最強音のC音4連打(?)はあらゆるモヤモヤを消してしまうほどです。新年を迎えるには打ってつけとも思えます。

 ただ、難点は演奏時間でしょう(技巧の面もあるはずですが)。第1楽章も第4楽章もかなり長い曲です。第1楽章は700小節を超えない程度であり、第4楽章は1000小節を超えます。テレビ中継のことを考えると、プログラムを組むのが難しくなるでしょう。でも、実現して欲しいところです。開演の12月31日22時から中継すれば良いのに……。

 シューベルトの交響曲第8番が「ザ・グレート」と呼ばれるのは、交響曲第6番もハ長調であり、区別をするためです。第6番が小規模、第8番が大規模ということで、第6番が小ハ長調交響曲、第8番が大ハ長調交響曲と言われます。もっとも、聴いてみれば「偉大な」という意味も込めたくなるのは理解できるところでしょう。後世の交響曲に多大な影響を与えたくらいですから。

 シューベルトのハ長調と言えば、最晩年に書かれた弦楽五重奏曲という大傑作もあります。この曲の第2楽章は20世紀の名指揮者の一人であるカール・ベームの葬儀の際に演奏されたそうで、「なるほど」と思わせられました。ぼくは、大学院生時代に六本木WAVEでエマーソン弦楽四重奏団とムスティスラフ・ロストロポーヴィチの演奏によるCD(ドイツ・グラモフォン)を見つけ、購入しました。一体何度聴いたことやら。

 そう言えば、結局は購入しなかったのですが、六本木WAVEの輸入盤バーゲンで、シューベルトの交響曲第7番(有名な未完成交響曲)と弦楽五重奏曲のカップリングというCDを見つけました。ただの時間合わせであったのか、或る年代の名演を詰め合わせたのか。今も意味がよくわかりません。

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やはりマーラーの交響曲第9番第4楽章

2023年12月10日 23時05分00秒 | 音楽

 今日(2023年12月10日)の21時から放送された「クラシック音楽館」(NHKのEテレ)の後半で「2022〜2023最も心に残ったN響公演&ソリスト結果発表」というコーナーがありました。何ヶ月か前に投票のようなものを行うというアナウンスがあり、出してみようかな、などと思いながら、やはりあの曲が選ばれるであろうと予想していました。

 やはり、2022年10月15日のNHKホール、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮、NHK交響楽団の演奏によるマーラーの交響曲第9番の第4楽章が放送されました。投票で第一位であったそうです。2022年11月6日の「クラシック音楽館」でも放送されており、勿論、見ました。生で一度、テレビで二度ということになりますが、何度であろうが良いものは良い訳で、CDかDVDが出たら買うつもりです(両方出たら両方とも)。

 一部のクラシックファンの間では第九といえばベートーヴェンではなくマーラーだ、という話があるとかないとか。

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楽しみにしよう

2023年11月09日 07時30分00秒 | 音楽

 とある筋から話を聞いたのですが、2024年の5月、日本フィルハーモニー交響楽団がカーチュン・ウォンさん指揮の下でマーラーの交響曲第9番を演奏するそうです。

 忘れもしない2022年10月15日、ヘルベルト・ブロムシュテットさんが指揮をされたNHK交響楽団の演奏をNHKホールで聴きました。当日にミニスコアを持って行かなかったことだけは後悔していますが、最初に聴いた大学院生時代の時から何かと聴き続け、一体何セットなのかと思うほどにCDを購入し(今年の9月に山田一雄さん指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団による演奏をCDで手に入れています)、第4楽章を「人生最後の瞬間を迎える際に聴きたい」と思い続けてきた私は、期待と不安の双方を抱えつつ、余程のことがなければ、2024年の5月に予定されているコンサートに行こうと思っています。ピエール・ブーレーズ指揮の演奏のように第4楽章が速いのでは台無しなだけなので(このCDは「買って損をした」と思わされました)、いかに遅く演奏されうるのかを楽しみにしていましょう。

 2022年10月15日の演奏は同年11月6日21時からの「クラシック音楽館」(NHKのEテレ。うちでは日曜日の20時から23時過ぎまでは原則としてEテレですし、8時から10時までも同じです)で放送されており、それも視聴している私は、DVDでもBlu-rayでもよいので購入したいと思っています。

 ※※※※※※※※※※

 日曜日のEテレと記したついでに。

 私は日曜日の朝と夜に、余程のことがなければ日曜美術館を見ています。姜尚中さんと中條誠子アナウンサー(歴代の「ダーウィンが来た!」担当女性アナウンサーで最もよかったのが中條さんではないでしょうか? 他の番組を含めての器用さには驚かされましたから)が担当されていた時(今はない六本木ラピスラズリに行くと、日曜美術館の録画を見ることができました)から毎週のように見ていますが、散発的という程度でよいならば小学生時代か中学生時代か高校生時代からかよく覚えてはいないものの見ていて(檀ふみさん、織作峰子さん、緒川たまきさんが担当されていた時は覚えています)、画面と音楽のコラボレーションにいつも感心しています。勿論、毎回の美術作品も期待していますし、この番組(アートシーンも含めて)を見てから国立新美術館、森美術館、山種美術館などへ行ったりしたことも何度かあります。

 現在は小野正嗣さんと柴田祐規子アナウンサーが担当されていますが、お二人とも結構長く担当されています。私としては続けていただきたいと思ってはいるのですが、番組の性質からすれば交替は難しいかもしれません。芸術についての見識などがない人などでは日曜美術館の司会などを担当することはできないでしょうし、仮に担当されたのでは番組の価値が下がってしまいます。

 また、日曜美術館を担当されたアナウンサーの顔ぶれを見ると、実力派ばかりであることに驚かされます。日曜美術館、クラシック音楽館、NHK-FMのクラシック音楽の番組などを聴いていると、アナウンサーの実力は芸術関係の番組でわかるのかもしれない、などと思うのです。ただの藤四郎(言うまでもなく、素人の逆さ言葉ですね)の考えだろうと思われてもよいのですが、私も一応は人前で話をする大学教員という稼業に就いていますので、アナウンサーや落語家、漫談家の話術には関心を持っているのです。私がその水準に遠く及ばないことくらい自覚していますし、どうかすると大学教員は話し下手と思われていますから。

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Peter Brötzmann氏が死去

2023年07月13日 00時29分00秒 | 音楽

 今日(2023年7月13日)になってから知ったのですが、6月22日にPeter Brötzmann氏が死去していました。

 日本のメディアでどの程度報じられていたのかは知りませんが、御存知ない方のほうが多いと思われます。ドイツ出身のリード奏者で、サックス、クラリネットなどを演奏していました。フリー・ジャズ、あるいはフリー・ミュージックの分野で活躍していた人です。

 私は、10代後半から20代前半にかけて、六本木WAVEでFMP(Free Music Production)のLPを探しては買っていました。最初に買ったのはAlarm(FMP 1030)で、これには近藤等則氏も参加していました。それからしばらくして、少なくともヨーロッパのフリー・ジャズでは最高傑作であるといえるMashine Gun(FMP 0090)を購入しました。CDで再発された時も購入したくらいで、一体何度聴いたことでしょう。一時期は車を運転する時に流していたくらいでした。この他、FMP 0130なども繰り返し聴いていたくらいです。

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