今回は、最初の一件が行政罰に関する判決、他は行政手続(法)に関する判決です。再掲載のものもあります。
●最二小判昭和39年6月5日刑集18巻5号189頁
事案:この事件の被告人らは、別の裁判で住居侵入等被告事件の証人として出廷し、宣誓を行ったが、裁判官からの尋問に対し、正当な理由がないのに証言を拒んだ。そのため、被告人らは刑事訴訟法第160条による過料に処された。その後、同第161条違反として起訴された。第一審は被告人らに免訴を言い渡したが、第二審は第一審判決を破棄し、事件を差し戻す判決を下した。そのため、被告人らが上告したが、最高裁判所第二小法廷は上告を棄却した。
判旨:刑事訴訟法第160条は「訴訟手続上の秩序を維持するために秩序違反行為に対して(中略)科せられる秩序罰としての過料を規定したものであり」、同第161条は「刑事司法に協力しない行為に対して通常の刑事訴訟手続により科せられる刑罰としての罰金、拘留を規定したものであって、両者は目的、要件及び実現の手続を異にし、必ずしも二者択一の関係にあるものではなく併科を妨げないと解すべきであ」る。これらの規定は憲法第31条および第39条後段に違反しない。
●最一小判昭和46年10月28日民集25巻7号1037頁(個人タクシー事件)
事案:Xは新規の個人タクシー営業免許を申請した。陸運局長Yはこれを受理し、聴聞を行ったが、道路運送法第6条に規定された要件に該当しないとして申請を却下する処分を行った。Xは、聴聞において自己の主張と証拠を十分に提出する機会を与えられなかったなどとして出訴した。東京地判昭和38年9月18日行集14巻9号1666頁はXの請求を認め、東京高判昭和40年9月16日行集16巻9号1585頁も原告の請求を認めた。最高裁判所第一小法廷も原告の請求を認め、本件の審査手続に瑕疵があったとしてYの申請却下処分を違法と判断した。
判旨:「本件におけるように、多数の者のうちから少数特定の者を、具体的個別的事実関係に基づき選択して免許の許否を決しようとする行政庁としては、事実の認定につき行政庁の独断を疑うことが客観的にもつともと認められるような不公正な手続をとつてはならないものと解せられる」。道路運送法第6条は「抽象的な免許基準を定めているにすぎないのであるから、内部的にせよ、さらに、その趣旨を具体化した審査基準を設定し、これを公正かつ合理的に適用すべく、とくに、右基準の内容が微妙、高度の認定を要するようなものである等の場合には、右基準を適用するうえで必要とされる事項について、申請人に対し、その主張と証拠の提出の機会を与えなければならないというべきである。免許の申請人はこのような公正な手続によつて免許の許否につき判定を受くべき法的利益を有するものと解すべく、これに反する審査手続によつて免許の申請の却下処分がされたときは、右利益を侵害するものとして、右処分の違法事由となるものというべきである」。
●最一小判昭和50年5月29日民集29巻5号662頁(群馬中央バス事件)
事案:X(バス会社)は営業路線の延長を求めて免許を申請した。東京陸運局長は聴聞を行い、運輸審議会に諮問した。同審議会も公聴会を開き、原告や利害関係人などの意見を聴取して、Xの申請を却下すべしとする答申を陸運局長に対して行った。これを受け、陸運局長は却下処分をした。これに対し、Xは訴願を提起せずに直ちに出訴した。東京地判昭和38年12月25日行集14巻12号2255頁はXの請求を認めたが、東京高判昭和42年7月25日行集18巻7号1014頁はXの請求を棄却している。最高裁判所第一小法廷もXの上告を棄却した。
判旨:「一般に、行政庁が行政処分をするにあたつて、諮問機関に諮問し、その決定を尊重して処分をしなければならない旨を法が定めているのは、処分行政庁が、諮問機関の決定(答申)を慎重に検討し、これに十分な考慮を払い、特段の合理的な理由のないかぎりこれに反する処分をしないように要求することにより、当該行政処分の客観的な適正妥当と公正を担保することを法が所期しているためであると考えられるから、かかる場合における諮問機関に対する諮問の経由は、極めて重大な意義を有するものというべく、したがつて、行政処分が諮問を経ないでなされた場合はもちろん、これを経た場合においても、当該諮問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法規違反があることなどにより、その決定(答申)自体に法が右諮問機関に対する諮問を経ることを要求した趣旨に反すると認められるような瑕疵があるときは、これを経てなされた処分も違法として取消をまぬがれないこととなるものと解するのが相当である。そして、この理は、運輸大臣による一般乗合旅客自動車運送事業の免許の許否についての運輸審議会への諮問の場合にも、当然に妥当する」。
●最大判平成4年7月1日民集46巻5号437頁(成田新法事件)
事案:新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法(いわゆる成田新法。現在は成田国際空港の安全確保に関する緊急措置法)の第3条第1項に定められた工作物使用禁止命令の合憲性が問われたものである。この規定には、命令の相手方に対する告知、弁解、防御の機会を与えるという趣旨が盛り込まれていない。Y(運輸大臣)は、毎年、Xに対し、空港の規制区域内所在のX所有の小屋につき、暴力主義的破壊活動者の集合や活動などへの供用を禁止する処分を繰り返した。Xは処分の取消および国家賠償を求めて出訴したが、千葉地判昭和59年2月3日訟月30巻7号1208頁は、取消請求については却下し、国家賠償については棄却した。東京高判昭和60年10月23日民集46巻5号483頁は、千葉地方裁判所判決の一部を変更したものの、やはりXの請求を一部却下し、一部棄却した。最高裁判所大法廷も、Xの請求を一部却下し、一部棄却した。
判旨:「憲法三一条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない」が、「同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である」。
園部裁判官の意見:一般的に不利益処分については原則として法律に弁明や聴聞など適正な事前手続の規定を置くことが必要であるものの、具体的な規定の仕方については立法裁量に委ねられる、という趣旨を述べている。
可部恒雄裁判官の意見:憲法第31条説によりつつ、本件の場合については財産権に対する重大な制限に該当するかが疑問であるとして、合憲という判断を示している。
〔なお、この最高裁大法廷判決の多数意見と同じ趣旨を述べるものとして、最一小判平成4年10月29日民集46巻7号1174頁(伊方原子力発電所訴訟)、最三小判平成5年3月16日民集47巻5号3483頁(家永第一次教科書訴訟)などがある。〕
●最三小判昭和47年12月5日民集26巻10号1795頁
事案:法人Xは法人税について青色申告の承認を受けていたが、事件当時は解散しており、清算手続をしていた。Xが確定申告をしたところ、Y税務署長は増額更正処分(本件更正処分)を行った。しかし、その通知書には理由が書かれているとはいえ、金額が記載されているにすぎなかった。これを不服としたXは、国税局長への審査請求を経て出訴した。Yは、更正処分の理由が審査請求に対する裁決書において明確にされたと主張したが、大分地判昭和42年3月29日行集19巻1・2号320頁はXの請求を認めて本件更正処分を取り消した。福岡高判昭和43年2月28日行集19巻1・2号317頁はYの控訴を棄却し、最高裁判所第三小法廷もYの上告を棄却した。
判旨:
(1)本件更正処分に付記された理由から「更正理由を理解することはとうてい不可能であり、その記載をもってしては、更正にかかる金額がいかにして算出されたのか、それがなにゆえに被上告会社の課税所得とされるのか等の具体的根拠を知るに由ないものといわざるをえない」ので、「処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに処分の理由を相手方に知らせて不服申立の便宜を与えることを目的として更正に附記理由の記載を命じた前記法人税法の規定の趣旨にかんがみ、本件更正の附記理由には不備の違法があるものというべきである」。
(2)「処分庁と異なる機関の行為により附記理由不備の瑕疵が治癒されるとすることは、処分そのものの慎重合理性を確保する目的にそわないばかりでなく、処分の相手方としても、審査裁決によってはじめて具体的な処分根拠を知らされたのでは、それ以前の審査手続において十分な不服理由を主張することができないという不利益を免れない。そして、更正が附記理由不備のゆえに訴訟で取り消されるときは、更正期間の制限によりあらたな更正をする余地のないことがあるなど処分の相手方の利害に影響を及ぼすのであるから、審査裁決に理由が附記されたからといって、更正を取り消すことが所論のように無意味かつ不必要なこととなるものではない」から、「更正における附記理由不備の瑕疵は、後日これに対する審査裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、それにより治癒されるものではないと解すべきである」。
●最三小判昭和60年1月22日民集39巻1号1頁
事案:Xは、Y(外務大臣)に対してサウジアラビアを渡航先とする一般旅券の発給を申請した。Yは拒否処分を行ったが、その際、「旅券法13条1項5号に該当する」という理由を付した。Xはこの処分の取消と国家賠償を請求して訴訟を提起し、拒否処分に付された理由が単に根拠条文をあげているだけで具体的な理由が何も記されていないことが違法である、などと主張した。大阪地判昭和55年9月9日行集33巻1・2号229頁はXの請求を認容して拒否処分を取り消した。Yが控訴し、大阪高判昭和57年2月25日行集33巻1・2号217頁は大阪地裁判決を取り消してXの請求を棄却した。Xが上告し、最高裁判所第三小法廷は大阪高裁判決を破棄してYの控訴を棄却した。
判旨:
(1)「外国旅行の自由は憲法22条2項の保障するところであるが、その自由は公共の福祉のために合理的な制限に服するものであり、旅券発給の制限を定めた旅券法13条1項5号の規定が、外国旅行の自由に対し公共の福祉のために合理的な制限を定めたものであつて、憲法22条2項に違反しない」(最大判昭和33年9月10日民集12巻13号1969頁を参照)。
(2)「一般に、法律が行政処分に理由を付記すべきものとしている場合に、どの程度の記載をなすべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきである」(最二小判昭和38年5月31日民集17巻4号617頁を参照)。
(3)「旅券法が(中略)一般旅券発給拒否通知書に拒否の理由を付記すべきものとしているのは、一般旅券の発給を拒否すれば、憲法22条2項で国民に保障された基本的人権である外国旅行の自由を制限することになるため、拒否事由の有無についての外務大臣の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、拒否の理由を申請者に知らせることによつて、その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものというべきであり、このような理由付記制度の趣旨にかんがみれば、一般旅券発給拒否通知書に付記すべき理由としては、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して一般旅券の発給が拒否されたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に発給拒否の根拠規定を示すだけでは、それによつて当該規定の適用の基礎となつた事実関係をも当然知りうるような場合を別として、旅券法の要求する理由付記として十分でないといわなければならない。この見地に立つて旅券法13条1項5号をみるに、同号は『前各号に掲げる者を除く外、外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者』という概括的、抽象的な規定であるため、一般旅券発給拒否通知書に同号に該当する旨付記されただけでは、申請者において発給拒否の基因となつた事実関係をその記載自体から知ることはできないといわざるをえない。したがつて、外務大臣において旅券法13条1項5号の規定を根拠に一般旅券の発給を拒否する場合には、申請者に対する通知書に同号に該当すると付記するのみでは足りず、いかなる事実関係を認定して申請者が同号に該当すると判断したかを具体的に記載することを要すると解するのが相当である」。
●最一小判平成4年12月10日判時1453頁116頁
事案:Xは、東京都公文書の開示等に関する条例に基づき、警視庁から東京都に提出された文書(個人情報実態調査に関するもの)の開示を請求した。これに対し、東京都知事は、この文書が同条例第9条第8号に該当するものとして非開示とする決定を行った(その際、理由として「本条例9条8号に該当」と記載されていたのみであった)。Xは非開示決定の取消を求めて出訴した。
東京地判平成3年3月1日行集42巻3号371頁はXの請求を棄却したが、東京高判行集42巻11・12号1806頁は東京地裁判決を取り消し、非開示決定を取り消した。東京都知事が上告したが、最高裁判所第一小法廷は上告を棄却した。
判旨:
(1)「一般に、法令が行政処分に理由を付記すべきものとしている場合に、どの程度の記載をすべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法令の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきである」(前掲最二小判昭和38年5月31日を参照)。
(2)「本条例が右のように公文書の非開示決定通知書にその理由を付記すべきものとしているのは、同条例に基づく公文書の開示請求制度が、都民と都政との信頼関係を強化し、地方自治の本旨に即した都政を推進することを目的とするものであって、実施機関においては、公文書の開示を請求する都民の権利を十分に尊重すべきものとされていること(本条例1条、3条参照)にかんがみ、非開示理由の有無について実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してそのし意を抑制するとともに、非開示の理由を開示請求者に知らせることによって、その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものというべきである。このような理由付記制度の趣旨にかんがみれば、公文書の非開示決定通知書に付記すべき理由としては、開示請求者において、本条例九条各号所定の非開示事由のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものでなければならず、単に非開示の根拠規定を示すだけでは、当該公文書の種類、性質等とあいまって開示請求者がそれらを当然知り得るような場合は別として、本条例7条4項の要求する理由付記としては十分ではないといわなければならない」。
(3)「公文書の開示の請求は、開示を請求しようとする公文書を特定するために必要な事項を記載した請求書を提出してしなければならないとされている(本条例6条3号)ので、当該公文書の非開示理由として本条例九条八号に該当する旨の記載のみによって、開示請求者において、当該公文書の種類、性質あるいは開示請求書の記載に照らし、非開示理由が同号所定のどの事由に該当するのかをその根拠とともに了知し得る場合があり得るとしても、同号に該当する旨の記載だけでは、開示請求者において、非開示理由がいかなる根拠により同号所定のどの事由に該当するのかを知り得ないのが通例であると考えられる。これを本件についてみるに、被上告人によって前示のとおり特定された本件文書の種類、性質等を考慮しても、本件付記理由によっては、いかなる根拠により同号所定の非開示事由のどれに該当するとして本件非開示決定がされたのかを、被上告人において知ることができないものといわざるを得ない。そうであるとすれば、単に『東京都公文書の開示等に関する条例第9条第8号に該当』と付記されたにすぎない本件非開示決定の通知書は、本条例七条四項の定める理由付記の要件を欠くものというほかはない」。
(4)「公文書の非開示決定通知書に理由付記を命じた規定の趣旨が前示のとおりであることからすれば、これに記載することを要する非開示理由の程度は、相手方の知、不知にかかわりがないものというべきである」(最一小判昭和49年4月25日民集28巻3号405頁を参照)。「また、本件において、後日、実施機関の補助職員によって、被上告人に対し口頭で非開示理由の説明がされたとしても、それによって、付記理由不備の瑕疵が治癒されたものということはできない」。
●最三小判平成23年6月7日民集65巻4号2081頁
事案:原告X1は一級建築士としてX2社に勤務していたが、建築基準法に定められた基準に適合しない建築物が設計され、建築されたなどとして、国土交通省北海道開発局長による聴聞手続(建築士法第10条第1項による懲戒処分のための)を受けた。その結果、X1は、国土交通大臣より建築士法第10条第1項第2号・第3号に該当するとして一級建築士免許取消処分を行った。本件の争点はいくつか存在するが、その一つが理由不備の違法であり、X1は、国土交通大臣が該当する懲戒事由および処分ランクを理由として付記すべき義務があるのに、本件においては処分ランクが告知されなかったことが理由不備の違法であると主張した。札幌地判平成20年2月29日民集65巻4号2119頁はX1の請求を棄却し、札幌高判平成20年11月13日民集65巻4号2138頁もX1の控訴を棄却した。最高裁判所第三小法廷は、札幌高裁判決を破棄し、X1に対してなされた一級建築士免許取消処分を取り消した〔一裁判官の反対意見(一裁判官が同意)、一裁判官の補足意見がある〕。
判旨:
(1)「行政手続法14条1項本文が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして、同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは、上記のような同項本文の趣旨に照らし、当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである」。
(2)「建築士に対する上記懲戒処分に際して同時に示されるべき理由としては、処分の原因となる事実及び処分の根拠法条に加えて、本件処分基準の適用関係が示されなければ、処分の名宛人において、上記事実及び根拠法条の提示によって処分要件の該当性に係る理由は知り得るとしても、いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって当該処分が選択されたのかを知ることは困難であるのが通例であると考えられる。(中略)本件免許取消処分は上告人X1の一級建築士としての資格を直接にはく奪する重大な不利益処分であるところ、その処分の理由として、上告人X1が、札幌市内の複数の土地を敷地とする建築物の設計者として、建築基準法令に定める構造基準に適合しない設計を行い、それにより耐震性等の不足する構造上危険な建築物を現出させ、又は構造計算書に偽装が見られる不適切な設計を行ったという処分の原因となる事実と、建築士法10条1項2号及び3号という処分の根拠法条とが示されているのみで、本件処分基準の適用関係が全く示されておらず、その複雑な基準の下では、上告人X1において、上記事実及び根拠法条の提示によって処分要件の該当性に係る理由は相応に知り得るとしても、いかなる理由に基づいてどのような処分基準の適用によって免許取消処分が選択されたのかを知ることはできないものといわざるを得ない。このような本件の事情の下においては、行政手続法14条1項本文の趣旨に照らし、同項本文の要求する理由提示としては十分でないといわなければならず、本件免許取消処分は、同項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法な処分であるというべきであって、取消しを免れないものというべきである」。