ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

烏山線の話

2024年11月24日 00時00分00秒 | 社会・経済

 栃木県といえば、宇都宮ライトレールによるLRTの隆盛が最近の明るい話題と評価できるでしょうが、勿論、公共交通機関の状況が全県で良好という訳ではありません。

 同県におけるJR東日本の鉄道路線は、東北新幹線の他、東北本線、日光線、両毛線、水戸線および烏山線です。このうち、東北本線、両毛線および水戸線が幹線に、日光線および烏山線が地方交通線に分類されています。とくに烏山線は、県内のJR路線では唯一の非電化路線であるとともに(但し、電車が走っています。後に述べます)、1960年の時点で廃止が提言され、1960年代後半には赤字83線に指定されたほどです。しかし、それほど営業係数などが悪くなかったということなのか、以後は特定地方交通線に指定されることもなく、存続しています。

 そうは言っても、輸送人員が多いという訳でもなく、JR東日本が2024年10月29日付で発表した「ご利用の少ない線区の経営情報(2023年度分)の開示について」によると、烏山線(宝積寺〜烏山)の状況は次の通りです。

 運賃収入:6200万円

 営業費用:7億8900万円

 収支:7億2700万円の赤字

 営業係数:1265円

 収支率:7.9%

 1987年度の平均通過人員:2559

 2023年度の平均通過人員:1144

 1987年度の平均通過人員と2023年度の平均通過人員とを比較した場合の増減率:55%減

 平均通過人員の増減率が−90%以上となっている路線(奥羽本線の新庄〜湯沢が93%減、久留里線の久留里〜上総亀山が92%減、飯山線の戸狩野沢温泉~津南が90%減 )もあり、減少率が80%台や70%台となっている路線・区間も少なくないことからすれば、烏山線は健闘していると言えるかもしれません。ただ、赤字額は大きく、営業係数も4桁となっています。しかも、赤字額が2022年度より9300万円ほど増えていますし、営業係数も2022年度より悪くなっています。ただし、平均通過人員は2022年度より24人増えているそうです。

 そこで、沿線自治体である那須烏山市(鴻野山駅、大金駅、小塙駅、滝駅および烏山駅の所在地)は、乗客の増加に向けての取り組みを行っています。朝日新聞社2024年11月23日10時45分付記事「JR烏山線、23年度は7億2700万円の赤字 地元は乗客増へ催し」(https://www.asahi.com/articles/ASSCQ3R53SCQUUHB00HM.html)によると、那須烏山市は2023年秋には烏山線全線開業100周年記念イベントを実施しており、「利用客への助成金制度もつくった。小学生から高校生までを対象に通学定期券の料金の4分の1を補助したり、市民3人以上で利用すると運賃を全額補助したり。市はこうした取り組みが増客に奏功したとみる」とのことです。助成金制度がどの程度まで乗客増に貢献したかは検討の対象となるでしょうが、何もしないよりはよいということです。とくに、烏山線の場合、ほとんどの列車が宇都宮駅から烏山駅までの運行となっているため、那須烏山市の住民にとって同線は通勤通学のための重要手段であるということです。

 また、那須烏山市は、2024年6月に市長を委員長とするJR烏山線利用向上委員会を設置しており、11月8日に開かれた委員会では「助成金制度の条件を緩和して通勤定期券も対象にする案や、車両に自転車を持ち込める『サイクルトレイン』の導入案などを検討していくことが決まった」とのことです。

 私が気になるのは、烏山線で運行されているEV-E301系(通称ACCUM)という、蓄電池駆動電車です。これは、電化区間(東北本線)ではパンタグラフを上げて架線から集電し、非電化区間(烏山線)ではパンタグラフを下げて蓄電池でモーターを回して運行するというものです。ディーゼル車よりは環境に優しいと言えるかもしれませんが、現在のところ、電気自動車と同じで走行可能距離が短く、烏山駅には充電のための架線が張られているそうです。一体、どの程度の費用がかかるのか、気になっているのです。世界的には蓄電池駆動電車の例が増えているかもしれませんが、日本では、最初に営業運転を開始した烏山線の他、筑豊本線(とくに若松線という通称がある若松〜折尾)、男鹿線(但し、奥羽本線の秋田駅まで直通運転)および香椎線でのみ運行されています。第三セクターの鉄道では導入例がないことからしても、それなりのコストがかかるのではないでしょうか。那須烏山市は、JR東日本の協力を得ながらACCUM運行のための費用と効果との関係を調査する必要があると考えられます。

 

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南武線などで2025年春からワンマン運転開始

2024年11月07日 00時00分00秒 | 社会・経済

 以前から知っていた話ではありますが、共同通信社が2024年11月6日17時05分付で「常磐線、来春からワンマン運転 南武線も、JR東が省力化実現」(https://nordot.app/1226805176662900858)として報じていました。

 JR東日本が11月6日に正式に発表したことで、南武線の川崎駅から立川駅までの区間(どうして共同通信社は起点と終点を逆に書いているのでしょうか? 誰が考えても東海道本線の古い駅を起点にするでしょう。裏街道が起点で表街道が終点だって?)、常磐線の各駅停車が運行される綾瀬駅から取手駅までの区間において、2025年春からワンマン運転を開始するということです。

 南武線の浜川崎支線、すなわち尻手駅から浜川崎駅までの区間では、既にワンマン運転が行われています。これに対し、川崎駅から立川駅までの区間は、とくに川崎市内で混雑度も高く、本数も多いので、その割にはホームドアの設置率も高くないので、ワンマン運転を開始しようとすることには不安もあるのですが、省力化の動きは止められないということでしょう。今後、乗務員を確保することが難しくなることは確実であるためです。首都圏では今後予測される人員不足に対処するためのワンマン運転が広がっており、東京メトロ丸ノ内線などが代表例としてあげられるでしょう。

 東京メトロ、都営地下鉄、東急、横浜高速鉄道みなとみらい線で行われているワンマン運転では、ATO(自動列車運転装置)またはTASC(定位置停止装置)を採用しています。こうした路線で運行されている電車の運転席にはモニターが設置されています。JR東日本でもこうした仕様にするようです(ただ、ATSがベースになると思われます)。

 ワンマン運転は、今後も導入されるようです。2026年には横浜線(東神奈川駅から八王子駅まで)および根岸線(横浜駅から大船駅まで。但し、横浜線直通列車のみのようです)、2030年までには山手線、京浜東北線+根岸線、中央本線各駅停車+総武本線各駅停車、埼京線+川越線で実施される方向とのことです。

 ちなみに、私鉄でまだワンマン運転が行われていないところもあり、大手私鉄では小田急、相鉄および京浜急行の3社となっています。

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美祢線の復旧は困難か、本音は廃止か?

2024年11月02日 23時10分00秒 | 社会・経済

 平成筑豊鉄道の話を昨日(2024年11月1日)に取り上げましたが、同じ日にJR西日本美祢線に関する記事も朝日新聞社のサイトに掲載されていました。「美祢線復旧後の運営方式めぐり JR西、自治体と共同参画『不可欠』」(https://www.asahi.com/articles/ASSB03QQFSB0TZNB00FM.html?iref=pc_preftop_yamaguchi)です。

 10月31日に山陽小野田市で美祢線利用促進協議会の部会が開かれました。その席で、JR西日本は、美祢線を復旧するならば上下分離方式が不可欠という考え方を示しました。

 昨今の鉄道事情に多少とも関心のある方であれば「やはり」と納得されることでしょう。JR西日本は、美祢線を単独で鉄道路線として復旧し、運行することは困難であるという態度を既に示しています。また、部会において、JR西日本は同社単独で維持して運行を続ける際の経費などを明らかにしていません。これは、上下分離方式でなければ美祢線を捨てる、つまり廃線にするということを意味するものと考えて間違いないでしょう。

 強気な沿線自治体ならば、JR西日本に対して「あんたはタカリ屋か?」と尋ねるでしょう。「いい加減にしろ! ふざけるな!!」と、多少は態度を荒げてもよいでしょう。こういう自治体が一つでも二つでも出てくれることが望ましいとも思うのですが、いかがでしょうか。大なり小なり、鉄道会社にはこういう気質があるように思われますし、「走らせてやってるんだぞ!」という意識が行動などに見え隠れしています(昔の国鉄について度々指摘されていたことでもあります)。

 JR西日本は、次のような試算を示しました。意味がわからないところがあるので、上記朝日新聞社記事をそのまま引用しますと「同社単独で復旧させる場合では、自治体は4億円を負担するのに対し、上下分離方式を前提に復旧させる場合には、自治体の負担額は5.3億円に膨らむ」とのことです。何のことはない、JR西日本単独では復旧できないか復旧する意思がないということです(その後の維持管理はJR西日本が行うということでしょうが)。沿線自治体の費用が4億円か5億3000万円というのは、果たして適正な算定なのかという問題もありますし、取りも直さず財政規模に比して額が大きすぎるとも言えるでしょう。

 また、同社の試算には続きがあり、上下分離方式を作用した場合の1年あたりの維持費は、JR西日本が2億5000万円、自治体が3億円以上とのことです。思い切ってJR西日本から美祢線を分離したほうがよいのではないかとすら思えてきますが、どうなのでしょうか。

 美祢線の被害状況は甚大であり、復旧工事には5年程度が必要であり、第6厚狭川橋梁(正式な名称かどうかわかりません)の改築などが必要であるために少なくとも58億円が必要とのことです。1980年代に幹線に指定された理由でもある貨物輸送が現在も行われていれば、莫大な費用をかけてでも復旧する意味はありますが、その貨物輸送はほぼゼロです。ちなみに、10月29日にJR西日本は「利用者が特に少ないローカル線の2021〜23年度の平均収支」を発表しており、「美祢線は年度平均で4.3億円の赤字」であるとともに、同線の収支率(費用に対する収入の割合)は10.9%であったとのことです。

 上記朝日新聞社記事によれば、「JR西は部会で、『利便性と持続可能性を確保した地域公共交通の復旧は必要だ』と強調した」とのことです。JR西日本ではなく沿線自治体の台詞なのではないかとも疑ったのですが、JR西日本が代行バスを運行しているようなので、JR西日本の台詞だったのでしょう。

 なお、今年12月には、代行バスについて、利用者や沿線住民を対象としたアンケート調査を行うことになるようです。その結果次第では、鉄道復旧は断念されるでしょう。

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平成筑豊鉄道に関して法定協議会が設置されるか

2024年11月01日 12時30分00秒 | 社会・経済

 平成筑豊鉄道が地域公共交通活性化再生法に基づく法定協議会の設置を要請したと報じられたのは、今年(2024年)の6月29日のことでした。それから4か月ほど経過して、平成筑豊鉄道の沿線自治体9市町村の首長が、昨日(2024年10月31日)、福岡県に対して法定協議会の設置を要請しました。朝日新聞社が、今日(2024年11月1日)の10時30分付で「平筑の今後を検討『法定協』設置へ 沿線自治体が県に要請」(https://digital.asahi.com/articles/ASSB04RXFSB0TIPE003M.html)として報じています。

 「ついに動いた」ということでしょうか。今年も平成筑豊鉄道は3億4000億円の経営安定化助成金の交付を受けているのですが、同鉄道が2億5000万円の追加支援を打診していました。しかし、9市町村がどのように対応するかが問われていました。助成金(補助金)の交付額は増加の一途となっていますので、とりもなおさず、平成筑豊鉄道の経営は危機的状況にあるということです。

 そこで、沿線9市町村(本社のある福智町、直方市、田川市、行橋市など)が法定協議会の設置を福岡県に要請したということなのです。これからも助成金(補助金)の増額が続くことが確実であるということからでしょう。田川市長が福岡県知事に「地域公共交通活性化再生法に基づく法定協の設置や地域公共交通計画の作成を求める要請書を」手渡しており、福岡県知事も「設置に向けて動く意向を示した」とのことです。平成筑豊鉄道に福岡県も出資している以上、当然と言えるでしょう。また、「設置されると、バスの運行実験など、新たな交通網整備を想定した調査などに国の補助金を利用できる。参加自治体は協議に応じ、結果を尊重することが求められる」ので、今後の動きが気になるところです。

 法定協議会が設置されるならば、存続するのか廃止されるのかが議論されることになりますが、JR西日本芸備線と異なり、存続一本槍とはならないと思われます。実際、上記朝日新聞社記事によると「現状からの変更案としては、①路線バス②バス高速輸送システム(BRT)③鉄道上下分離、の3案を中心に検討が進む見通しだ」とのことで、少なくとも現状維持は難しいのでないかと考えられます。もっとも、北陸鉄道石川線のように消極的選択として現状維持もありうるのですが、そうなれば9市町村の負担は増えるだけで、財政にも影響が出てくる可能性があります。「現状からの変更案」のいずれを選んでも最善の選択肢と言いうるかどうかはわかりませんので「どれを取っても……」ということになりかねません。

 一方、9市町村を通るということで、それぞれの市町村によって態度が異なるということもありえます。実際、上記朝日新聞社記事によると「沿線では、平成筑豊鉄道が観光の鍵となっている自治体もあり、鉄道存続の是非は自治体によって温度差が大きい」ようです。具体的に何処の市町村で、何線のことかは不明ですが、ありえないことではありません。平成筑豊鉄道には、かつての国鉄赤字ローカル線である伊田線(直方〜田川伊田)、田川線(行橋〜田川伊田)および糸田線(金田〜田川後藤寺)、北九州市が第三種鉄道事業者である門司港レトロ観光線(平成筑豊鉄道は第二種鉄道事業者)の4路線がありますが、記事の内容からして伊田線、田川線および糸田線の境遇が問題とされているのでしょう。

 これから本格的に議論が開始されることになるでしょうが、どのような選択をするにせよ、伊田線、田川線、糸田線、門司港レトロ観光線をひとまとめにするのではなく、線区別に考える必要があるでしょう。門司港レトロ観光線は特殊ですので脇に置いておくとしても、伊田線、田川線および糸田線の3路線は一体として考えられがちです。しかし、私がここにあげた全ての路線に乗った限りでは(一度しかないのですが)、それぞれ性格が異なるように思えます。とくに伊田線と田川線は、一体で運行されているとは言え、かなり性格が違います。伊田線は全線複線で開けた場所を通っているのに対し、田川線は山間地帯と言えるような場所を通り、しかもカーブが多く、伊田線より乗客が少なかったような記憶があります。そうは言っても、伊田線も乗客が多いという訳でもないので、さしあたりは単線化が現実的でしょう。

 ともあれ、今後の動きを注視していこうと考えています。

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久留里線の末端区間 廃止への布石か

2024年10月23日 12時40分00秒 | 社会・経済

 このブログでは久しぶりとなります。JR東日本の久留里線です。

 久留里線は木更津駅から上総亀山駅までの路線で、2022年度の平均通過人員が770となっています。2017年度の平均通過人員が1147となっていますので、COVID-19の影響も否定できないのですが、元々低い数値であったのがさらに低くなったということです。何せ、1960年代後半に赤字83線にあげられていました。1980年代の特定地方交通線には指定されず、検討の対象にもならなかったようなので、地方交通線となって存続しました。当時の平均通過人員の数値を知りたいところですが、少なくとも、2017年度の平均通過人員の数値は1980年代の数値の4分の1ほどまで落ち込んだということでしょう。本来であれば久留里線とつながる予定であった木原線が特定地方交通線に指定され、いすみ鉄道に移管されたことも、房総半島の交通事情を反映しているように見えます。

 全体の平均乗車人員の数値も低いのですが、JR東日本の公表データに従って同線を二つの区間に分けますと、末端区間というべき久留里駅から上総亀山駅までの区間で平均通過人員の数値が極端に低くなっています。2022年度で54なのです。これは、JR東日本では下から2番目ということになります。残る木更津駅から久留里駅までの区間では1074です。

 参考までに、JR東日本の路線・区間で平均通過人員の数値が二桁になっているところを示しておきましょう(2022年度のものです)。

 1.陸羽東線  鳴子温泉駅〜最上駅:44

 2.久留里線  久留里駅〜上総亀山駅:54

 3.花輪線  荒屋新町駅〜鹿角花輪:55

 4.山田線  上米内駅〜宮古駅:64

 5.磐越西線  野沢駅〜津川駅;70

 6.飯山線  戸狩野沢温泉駅〜津南駅:76

 7.山田線  全線(盛岡駅〜宮古駅):79

 8.津軽線  中小国駅〜三厩駅:80(但し、参考値)

 9.北上線  ほっとゆだ駅〜横手駅:90

 ちなみに、2022年度における、JR西日本芸備線の東城駅から備後落合駅までの区間での平均通過人員は20であり、JR西日本木次線の出雲横田駅から備後落合駅までの区間での平均通過人員は56です。

 さて、今回、久留里線を取り上げることとしたのは、東京新聞社のサイトに、今日(2024年10月23日)の7時31分付で「JR久留里線・久留里-上総亀山間 検討会議が報告書 『自動車中心』へ移行示す」(https://www.tokyo-np.co.jp/article/361985?rct=chiba)という記事が掲載されていたためです。なお、千葉日報社のサイトには10月21日20時11分付で「久留里-上総亀山間、『自動車交通』への移行示す JR久留里線、検討会議が報告書 君津」(https://www.chibanippo.co.jp/news/economics/1291644)という記事が掲載されていますが、非会員では全部を読むことができないので、東京新聞社記事をベースとします。また、それぞれの見出しに示されている「報告書」を読んでみたいのですが、今のところ、君津市のサイトにも千葉県のサイトにも掲載されていないようです(理由は後に示されます)。ただ、千葉県のサイトには、10月21日の14時から君津市保健福祉センター(ふれあい館)2階のコミュニティホールにて「第5回JR久留里線(久留里・上総亀山間)沿線地域交通検討会議」が開かれること、議題は「JR久留里線(久留里・上総亀山間)沿線地域交通検討会議検討結果報告書(案)について」であることが明示されています

 「報告書」をまとめた「JR久留里線(久留里・上総亀山間)沿線地域交通検討会議」(以下、検討会議)は、JR東日本千葉支社、君津市、千葉県、住民代表から構成されています(座長は日本大学理工学部交通システム工学科の藤井敬宏特任教授)。こうしたメンバーが、議論の結果として結論を出したということです。もっとも、これは暫定的なもので、今後、追加修正をした上で最終版を作成するというのですが、基本線は変わらないでしょう。最終版がまとめられるならば、公表される可能性が高いと思われます。

 「報告書」は一つの小前提を置いています。それは、久留里駅から上総亀山駅までの区間(以下、末端区間)が廃止されたとして、他の交通手段を考えるというものです。

 検討会議の事務局が示した報告書案によると、君津市の上総地区(同市東部南側)の移動需要は「平日最大15人程度、休日最大20数人程度と、それ以外の散発的な移動」でしかなく、久留里線の末端区間は「移動需要に対して輸送力が過大」であり、さらに現在同地区において「提供されている交通サービスでは移動需要に適していない」とのことです。それでは、どのような交通手段が望ましいのかと言えば「平日の朝夕や休日の日中をピークとした通勤通学や観光客など一定のまとまった移動需要には『バスを中心とした定時定路線型の交通手段』、買い物や通院などには『デマンド型の交通手段』が考えられるとした」とのことです。以上は上記東京新聞社記事を引用しつつ記しましたが、上記千葉日報社記事には「報告書は『自動車中心の交通体系への移行により、より利便性を有する地域公共交通が実現する』と指摘。通勤通学や観光客はバスを中心とした交通手段で対応し、買い物や通院など時間帯やエリアが散発的な需要には現在運行されているデマンドタクシー『きみぴょん号』の交通手段を挙げた」と書かれています。

 鉄道ファンや、地域公共交通の活性化を唱える方々からは批判を受ける内容であると思われるのですが、少なくとも両記事を参考にする限り、検討会議は現実的で妥当な結論を導き出したと評価すべきである、と私は考えています。検討会議は末端区間の廃止を大前提においていないらしいのですが、それは建前であって、本音は逆であるということではないでしょうか。

 そもそも、最近よく使われる、存続、廃止のいずれも前提にしないという言い回しは、なかなか巧妙な、悪い表現を使うならば狡猾なものです。最初から「存続を前提としない」と言い切ってしまうと、あちらこちらから反発を受けることなど簡単に予想されます。そのために、何らの前提も置かないというように中立を装うような表現が採用されたのでしょう。

 10月21日で検討会議は終了し、今後は君津市地域公共交通会議で議論が続けられるようですが、今回の報告書暫定版で末端区間の廃止への布石は打たれたと評価すべきではないでしょうか。

 
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第2回芸備線再構築協議会が開かれた

2024年10月18日 22時00分00秒 | 社会・経済

 2024年10月16日、岡山市内で第2回芸備線再構築協議会が開催されました。朝日新聞社が2024年10月17日付で「広島・安芸高田市 芸備線再構築協に参加」(https://www.asahi.com/articles/ASSBJ4511SBJPPZB00BM.html)として報じています。

 今回は、8月下旬に参加の意向を示していた安芸高田市が協議会の構成員として加わることなどが決まったとのことです(規約が改正されることになり、承認を受けました)。また、2024年度内に実施する調査事業の予算(2000万円)も承認されました。調査は野村総合研究所に委託されるようです。

 この協議会において協議の対象とされているのは、芸備線の起点である備中神代駅(岡山県新見市)から備後庄原駅(広島県庄原市)までの68.5キロメートルの区間です。そのため、岡山県、広島県、新見市および庄原市が構成員に入っているのは当然です。しかし、広島県三次市と広島市も構成員となっているので、安芸高田市が不参加であったのが不思議でした。安芸高田市にある甲立駅、吉田口駅および向原駅は三次駅から下深川駅までの区間の平均通過人員は、2022年で988、2023年度で998です。微増とはなっていますが1000を下回っているので、1980年代の国鉄改革の水準であれば確実に第一次か第二次の特定地方交通線に指定され、廃止のための議論の対象になるところです(当時は路線が単位でしたので、単純な比較はできません)。

 ともあれ、これからは沿線全体で協議するという体制が整えられたことになります。

 また、記事には「JR西日本は、同区間の2023年度の輸送密度(1キロあたりの1日平均乗車人数)が62人で、コロナ禍だった20年度の47人と比べわずかに回復したことを報告した」と書かれています。おそらく、全国から鉄道ファンが訪れたからでしょう。YouTubeにたくさん動画がアップされているくらいですから。しかし、数値が上がったと言っても、鉄道路線として持続可能とは到底言えない水準であることに変わりはありませんし、鉄道ファンにしか見向きもされない区間であるとも言えます。芸備線の部分廃止が与える影響を算定しなければならないとは言え、存続することにどの程度の意味があるのかわからない話になっています。いかに沿線自治体が騒ごうが、住民はとうの昔に見捨てているということです。沿線自治体も、建前と本音はどうなのか、というところでしょう。

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東京地下鉄株式会社(東京メトロ) 10月23日に上場する

2024年09月21日 06時00分00秒 | 社会・経済

 朝日新聞社のサイトに、2024年9月20日19時4分付で「東京メトロ、来月23日上場へ 時価総額6400億円規模」(https://www.asahi.com/articles/ASS9N35PGS9NULFA01PM.html?iref=comtop_Business_04)という記事が掲載されていました。

 この話はかなり前から気になっていたので、どうなるのかと思って見ていました。何せ、帝都高速度交通営団から東京メトロに変わったことにより、それまでの東京急行電鉄を抜いて資本金、輸送人員数などがトップという大手私鉄になったのですから。

 東京メトロ(正式には東京地下鉄株式会社です)は、東京証券取引所に対し、プライム市場への上場を申請していました。東京証券取引所が承認したのが9月20日であったということです。その上で、上場予定日が10月23日になるとのことです。

 東京メトロの株式上場は予定路線でした。東京地下鉄株式会社法(平成14年法律第188号)附則第2条は「国及び附則第11条の規定により株式の譲渡を受けた地方公共団体は、特殊法人等改革基本法(平成13年法律第58号)に基づく特殊法人等整理合理化計画の趣旨を踏まえ、この法律の施行の状況を勘案し、できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする」と定めていますし、2021年には東京地下鉄株式会社法附則第11条によって帝都高速度交通営団から国および東京都に無償譲渡された東京メトロの株の一部について売却の準備をすることが国と東京都との間で合意されていたからです。

 現在、東京メトロの発行済み株式の保有割合は、国が53.4%、東京都が46.6%となっています。株式上場によって国および東京都が株式を売却することにより、保有割合は国が26.7%、東京都が23.3%になるとのことです(国および東京都が保有する株式が全て売却される訳ではないので、東京地下鉄株式会社法が廃止されるのはまだ先のことでしょう)。また、売却による収入のうち、国の分については「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平成23年法律第117号。以下、記事に合わせて復興財源確保法と記します)第72条第3項により、東日本大震災に関連する償還費用に充てられることとなります(上記記事には「国の売却分は東日本大震災の復興財源に充てられる」と書かれていますが、不正確です)。参考までに、規定を引用しておきましょう(漢数字の一部を算用数字に替えました)。

 

 (復興特別税の収入の使途等)

 第72条 平成24年度から令和19年度までの間における復興特別税の収入は、復興費用及び償還費用(復興債(当該復興債に係る借換国債を含む。次条、第74条第1項及び附則第18条において同じ。)の償還に要する費用(借換国債を発行した場合においては、当該借換国債の収入をもって充てられる部分を除く。)をいう。以下同じ。)の財源に充てるものとする。

2 平成24年度から平成27年度までの間における第3条の規定による財政投融資特別会計財政融資資金勘定からの国債整理基金特別会計への繰入金及び平成28年度から令和4年度までの間における第三条の二の規定による財政投融資特別会計投資勘定からの国債整理基金特別会計への繰入金は、償還費用の財源に充てるものとする。

3 次に掲げる株式の処分により令和9年度までに生じた収入は、償還費用の財源に充てるものとする。

 一 第4条第1項の規定により国債整理基金特別会計に所属替をした日本たばこ産業株式会社の株式

 二 特別会計法附則第208条第4項の規定により国債整理基金特別会計に帰属した東京地下鉄株式会社の株式

 三 第5条の規定により国債整理基金特別会計に所属替をした東京地下鉄株式会社の株式

 四 第5条の2及び特別会計法附則第12条の2の規定により国債整理基金特別会計に所属替をした日本郵政株式会社の株式

 五 特別会計法附則第12条の3の規定により国債整理基金特別会計に所属替をした日本郵政株式会社の株式

4 前3項に規定する収入のほか、平成23年度から令和9年度までの各年度において、国有財産の処分による収入その他の租税収入以外の収入であって国会の議決を経た範囲に属するものは、復興費用及び償還費用の財源に充てるものとする。

 

 既に、財務省は国の売却収入が1700億円程度になるという見通しを、2024年度予算の編成時に示していました。想定売り出し価格が1株につき1100円で、上場時の時価総額がおよそ6400億円程度になるとも記事に書かれています。

 ここで、現段階で思い付いたことを記しておきましょう。

 第一に、おそらく上場初日は御祝儀相場ということになると思われますが、このところの平均株価の動きを見ていると、想定通りの売却収入になるか否かという懸念があるかもしれません。それよりも、上場以後の株価の推移が問題になるかもしれません。

 第二に、東京メトロの株式上場により、東京の地下鉄網の統一は完全に夢物語で終わるということです(東京都が筆頭株主になれば話は変わってくるかもしれませんが)。

 元々、帝都高速度交通営団は、当時の東京市にあった東京地下鉄道および東京高速鉄道の地下鉄路線(いずれも現在の銀座線の前身)を一体的に経営するために、昭和16年、西暦に直せば1941年に作られた特殊法人です。この年号からおわかりのように、帝都高速度交通営団は、戦時体制に入っていた日本の経済統制の産物でもありました。戦後、各種の営団は解散しましたが、帝都高速度交通営団のみは存続します。この際に帝都高速度交通営団が解散していたならば、東京の地下鉄は全て東京都交通局が経営することになっていたかもしれませんが、様々な理由なり思惑なりがあって実現しなかったのでした。その後、東京都交通局は自ら1号線(浅草線)などを建設し、運行します。

 このように帝都高速度交通営団と東京都交通局という複数の主体によって地下鉄網が作られていった理由については、今後調べてみたいと考えていますが、私のように東京メトロ線と都営地下鉄の双方を利用する者にとっては、運賃だの何だのが面倒なことになります(もっとも、複数の鉄道会社を利用することによる運賃などの問題は、別に東京の地下鉄に限った話ではないのですが)。東京以外の都市、例えば大阪市、名古屋市などにおいては地下鉄と言えば公営でしたが(現在、大阪市の地下鉄は大阪市高速電気軌道によって運営されています)、他の都市と違い、東京の場合は山手線の中に限定すれば地下鉄網は帝都高速度交通営団、東京都交通局のいずれかに統一しやすかったはずです(現に、路線バスはほぼ都営バスに統一されています)。東京の地下鉄が東京メトロと都営地下鉄に分かれている点は、鉄道に詳しい人を除けば首都圏以外の場所に住む人にとって、あるいは首都圏に住む人にとってもわかりにくいものです。私も何度か他のお客さんに尋ねられたことがあります。外国人観光客にとってはもっとわかりにくいでしょう。やはり、私も何度か尋ねられましたし、駅の運賃表を怪訝な顔つきで眺めている観光客を見たこともあります。

 第二の話が長くなりましたので、第三に移ります。東京地下鉄株式会社法の廃止、すなわち(とは言えないかもしれませんが)完全民営化が実現するかどうかです。あるいは、完全民営化が望ましいかどうかと考えたほうがよいかもしれません。東京メトロの株式上場は、帝都高速度交通営団の解散と東京メトロの発足が行政改革の一環であったことを想起すれば、完全民営化は望ましいことでしょう。しかし、それが交通政策にとって良いことであったということは、全く別の話となります。東京メトロも、御多分に漏れず、COVID-19による極端な乗客減に苦しめられましたが、そのようなことが二度と発生しないとは考えないほうがよいですし、そうでなくとも今後は緩やかながらも乗客は減少していきます。公共交通を誰が支えるかが久しく問われていますが、東京の地下鉄についても妥当する日が来る可能性はあると言えるでしょう。

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交通空白地の解消に向けた新たな取り組みが設けられるか

2024年09月07日 00時00分00秒 | 社会・経済

 朝日新聞2024年9月5日付朝刊9面13版Sに「『交通空白地』解消へ 官民マッチング 国交省が枠組み新設 配車効率化」という記事が掲載されていました。興味深い内容なので、取り上げておきます。

 このブログでも「2024年問題」を取り上げてきました。実際には2023年から、運転士あるいは乗務員の不足などのために、多くのバスや鉄道で減便が行われています(その最も極端な形が金剛バスの全廃でした)。さらに記すならば、公共交通機関の衰退はこの数年に限られた話でもなければCOVID-19によって引き起こされた事柄でもなく、長期的に続く現象なのです。

 そうなれば「交通空白地」が増えてくるのも当然のことです。「交通空白地」をどのように解消するのかが問題となりうる訳ですが、国土交通省が本格的に取り組もうとしているのです。

 上記朝日新聞社記事には書かれていないのですが、実は2024年7月16日に国土交通省が「『交通空白』解消本部」を設置しています(同日付の「国土交通省『交通空白』解消本部の設置に関する訓令」(国土交通省訓令第72号)を参照してください)。第1回の会合が7月17日に開かれており、第2回の会合が9月4日に開かれました。議事録がまだ公開されていませんので詳しいことはわかりませんが、資料などは国土交通省のサイトに掲載されていますので、御覧いただきたいと存じます。

 ここで「交通空白地」は、国土交通省によると「国交省は半径1キロ以内にバス停や駅がなく、タクシーを呼んでも配車に30分以上かかるような地域」です。この地域に「タクシーやライドシェアが不足する自治体と配車の効率化に取り組む企業をマッチングさせるなどして、地域交通の拡充を図る」ために「交通空白解消・官民連携プラットフォーム」(仮称)という枠組みを作り、2024年内に立ち上げることにしているようです。この枠組みには、国、地方公共団体、交通事業者、さらに配車アプリ事業者などの参加が見込まれているようです。そして、2025年度予算の概算要求にはおよそ331億円が盛り込まれています(関連費用も含まれています)。

 「『交通空白』解消本部」の第2回会合における資料「『地域の足』『観光の足』対策の取組状況等」(公共交通政策部門、物流・自動車局、観光庁)によると、現在、324の自治体においてライドシェアなどの普及が進んでいないとのことです。そこで、今後、タクシー会社管理型の「日本版ライドシェア」が全都道府県で運行されるようにすることなどが目指されており、国土交通大臣が同趣旨を指示しています(既に22都道府県で導入されているとのことです)。

 ただ、ライドシェアがどこまで普及するのかは、正直なところよくわかりません。また、最近の傾向なのか何なのか「日本版」という冠がついていますが、タクシー会社管理型では需要を満たせない地域が多くなるのではないかという懸念があると考えられます。

※※※※※※※※※※

〔東急5000系5105F。田園都市線青葉台駅(DT20)にて撮影。〕

〔同じく東急5000系5105F。田園都市線(大井町線)溝の口駅(DT10、OM16)にて撮影。〕

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安芸高田市が芸備線再構築協議会に参加する意向

2024年08月29日 00時00分00秒 | 社会・経済

 市長が代わると政策が変わるということはあります。赤字ローカル線についても同様なのでしょう。安芸高田市が、芸備線再構築協議会に参加する意向を示しました。朝日新聞社が、今日(2024年8月27日)の10時15分付で「芸備線の再構築協議会、不参加だった安芸高田市が参加の意向」(https://www.asahi.com/articles/ASS8V4TFJS8VPITB009M.html?iref=pc_preftop_hiroshima)として報じています。

 このブログに、2024年1月13日0時0分0秒付で掲載した「芸備線について再構築協議会の設置が決定された」において記しましたが、芸備線についての再構築協議会には、存廃議論の対象になっていない区間も含めた全区間の沿線自治体が参加しています。具体的に記せば三次市と広島市です。しかし、芸備線の路線を基準とすると三次市と広島市との間にある安芸高田市は参加していないのです。三次駅から下深川駅までの区間にある甲立駅、吉田口駅および向原駅が安芸高田市に所在するのですが、この区間の平均通過人員は2022年度で988、2023年度で998であり、決して高くありません。何故に再構築協議会不参加という判断がなされたのかはわかりませんが、今年の3月には広島市、三次市および安芸高田市が再構築協議会とは別の任意協議会を設置することが報じられているだけに〔NHKのサイトに2024年3月14日8時24分付で掲載されている「JR芸備線沿線の広島市・三次市・安芸高田市が新たな協議会」(https://www3.nhk.or.jp/hiroshima-news/20240314/4000025325.html)によります〕、再構築協議会への不参加の理由が知りたいところです。

 さて、上記朝日新聞社記事の内容に戻りましょう。安芸高田市長は、8月26日の定例記者会見において再構築協議会への参加について「前向きに考えたい」と述べました。この「前向きに……」というフレーズは曲者の公務員用語であると言われることもありますが、定例記者会見における「前向きに考えたい」は素直に解釈してよいもののようです。市長は、情報収集の観点からしても協議会への参加が同市にとってプラスである旨を語ったようです。最終的には、再構築協議会での協議において決定されるようですが、安芸高田市の参加を拒否する積極的な理由が見当たらないと思われるので、今年中に同市の参加が認められるものと考えられます。

 2023年の地方公共交通活性化再生法改正によって法定協議会としての位置づけが与えられた再構築協議会ですが、現在のところ、設置されたのはまだJR芸備線のみについてであり、今後、他に設置されるかどうかはわかりませんが、芸備線について様子を見てから、ということなのかもしれません。

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日本最東端の鉄道駅が廃止される?

2024年08月24日 01時00分00秒 | 社会・経済

 時々、日本最▲端の駅は何処か、というようなクイズが出されたりすることがあります。▲には方角を示す漢字一文字が入ります。

 最南端:赤嶺駅(沖縄都市モノレール)

 最西端:那覇空港駅(沖縄都市モノレール)

 最北端:稚内駅(JR北海道の宗谷本線)

 最東端:東根室駅(JR北海道の根室本線)

 今回は東根室駅の話です。私も先程知ったばかりで驚いたのですが、Yahoo! Japan Newsに、2024年8月23日20時30分付で「<独自>日本最東端の北海道・東根室駅、来春の廃止検討 根室駅が新たな最東端に」という記事(https://news.yahoo.co.jp/articles/3926fe1b8ced24a1d3ac7754b87f45216b7f6044)が掲載されています。これは北海道新聞社のサイトに2024年8月23日20時00分付で掲載された「日本最東端の東根室駅、来春の廃止検討 根室駅が新たな最東端に」(https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1053915/)からの転載であるようです。また、Yahoo! Japan Newsには、やはり2024年8月23日の22時28分付で「日本最東端の駅、来春ダイヤ改正での廃止検討 根室本線 東根室駅(北海道根室市)」(https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f8f7339e08ed30a9573c6b82e9de242105934cac)という、鉄道ライターの清水要さんによる記事が掲載されています。

 北海道新聞社の記事は有料記事であり、会員でないと全部を読めないようですが、Yahoo! Japan Newsに転載された記事を読む限りでは短いものであるようです。経費削減のためにJR北海道が「廃止する方向で検討していることが」判明したという趣旨でした。

 清水さんによる記事には、東根室駅について「ホームだけの無人駅で、駅舎や待合室はない」が「駅周辺には住宅街が広がっており、決して『秘境』などではない」と書かれています。たしかに、地図で見る限りは市の中心街とまでは言えないものの市街地にあるようです(私は根室市を訪れたことがありませんので、詳しいことは知りません)。清水さんは「令和4(2022)年度の一日平均乗車人員は10.8人と、JRが廃止の目安としている3人を大きく上回っている」と書かれていますが、これはJR北海道が2018年から2022年までの5か年平均による平均乗車人員の数字です(残念ながら、現在ではWayback Machineでしか読めません)。ちなみに、JR北海道のサイトにある「駅別乗車人員」には、2019年から2023年までの5か年平均による各駅の乗車人員が示されており、それによれば東根室駅の一日平均乗車人員は3人超10人以下とされています。また、根室市が公表している「根室市地域公共交通計画現状整理編」18頁に「根室駅の1日当たり乗降客数の推移」という図が掲載されていますが、そこには「根室駅以外は無人駅のため、数値公表なし」と書かれています。

 一日平均乗車人員が10人以下であるというのは、鉄道駅としての存在意義が十分に問われるべき数字であるとも言えます。ただ、北海道の場合は、地理的条件などを念頭に置けば10人超であっても存続の必要性があるとも考えられますから、結局は駅周辺の住民の意向にも留意しなければならないということなのでしょう。2025年3月に廃止される見通しであると報じられた抜海駅(宗谷本線にある、日本最北の無人駅)にしても、存廃についてかなりの議論がなされていたのですから。

 これまで、JR北海道は毎年のようにいくつかの駅を廃止しています。一概には言えないものの、これまで廃止されてきた駅の多くは、一日平均乗車人員が3人未満であるようで、所在地の地方公共団体が管理することによって維持されてきたような駅も存在します。根室本線の末端区間というべき釧路駅から根室駅までの区間には花咲線という通称が用いられていますが、その花咲線にあった駅のうち、糸魚沢駅が2022年3月に、初田牛駅が2019年3月に、そして花咲駅が2016年3月に廃止されています。今後も増える見込みはないでしょうし、除雪、野生動物などのことを考えると、経費削減のために廃止される駅は今後も出てくることでしょう。宗谷本線がその状態であり、近いうちに特急停車駅以外の駅がなくなるのではないかとも言われています(とくに名寄駅から稚内駅までの区間がそうで、既に挙げた抜海駅の他に雄信内駅と南幌延駅が2025年3月のダイヤ改正時に廃止されると報じられていますし、今年の3月には初野駅と恩根内駅が廃止されています)。

 人口が減少することによって地域公共交通の役割が問われています。維持する必要があるという声が時に持続可能性と言い換えられたりして高く叫ばれていますが、むしろ、地域公共交通の存在意義を低めているというのが現実的な見方なのでしょう。少なくとも、これまでの鉄道、バスなどという形態での維持は難しくなる一方ですし、こだわりを捨てる必要があるのかもしれません。

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