ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

実証実験を行う意味はあるのか

2025年02月01日 07時00分00秒 | 社会・経済

 2025年1月29日に、芸備線再構築協議会の第4回幹事会が広島市で開かれました。朝日新聞社のサイトに、2025年1月30日の10時15分付で「『運行本数増やして実証事業を』芸備線の再構築協で自治体側が主張」(https://www.asahi.com/articles/AST1Y4GXWT1YPITB00BM.html?iref=pc_preftop_hiroshima)として報じています。以下、引用文は全てこの記事によります。

 幹事会において、沿線自治体は「運行本数を増やした上で、芸備線の潜在的可能性を追究する実証事業を実施するべきだと主張した」とのことです。記事によると、この主張を切り出したのは広島県の地域政策局長で、芸備線の運行本数が少ないために「実証事業を考えるうえでの『ボトルネック(支障)になっている』」と述べたそうです。当たっている部分もありますが、逆に、今、実証実験を行う意味があるのか、と考えてしまいます。JR西日本は、設備などの制約をあげています。つまり、JR西日本は増便に消極的であるということでしょう。ただ、このあたりはどうなるのかわかりません。芸備線再構築協議会は、目下、アンケートや経済効果の試算を進めており、2024年度中にとりまとめた上で20205年度より実証事業を行う意向であるためです。国土交通省中国運輸局は、実証事業の具体的な中身として(勿論、試案です)「駅とバス・タクシーなど二次交通との連携強化や、観光客誘致など」をあげています。芸備線沿線の状況、事情をよく知りませんが、「二次交通との連携」を強化するとしても、バスの本数を確保できるのでしょうか。類似のことはタクシーについても言えます。

 3月に再構築協議会が開催されるとのことなので、実証実験が行われるのか、行われるとしたらいかなるものであるのか、注目です。

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川崎市でも自動運転の実証実験を

2025年01月29日 15時15分00秒 | 社会・経済

 人口減少で公共交通の先行きに暗雲が垂れ込める中、日本でも自動車の自動運転についての実証実験が行われることが多くなりました。川崎市でも、2025年1月27日または28日に実証実験が始まりました。朝日新聞社が、今日(2025年1月29日)の10時45分付で「路線バスの自動運転 川崎で実証実験開始 東京・大田区結ぶルートも」(https://digital.asahi.com/articles/AST1X4Q1CT1XULOB018M.html)として報じています。

 この実証実験ですが、2027年度から、自動運転のうちの上から2番目であるレベル4での営業運転を目指すというものです。もっとも、いきなりレベル4で始める訳ではありません。

 まずは川崎市川崎区内のルートで、川崎病院線(川崎駅東口〜市立川崎病院)、レベル0です。国土交通省によると、レベル0は「自動運転を実現するための技術(運転自動化技術)が何もない状態」です。つまり、川崎病院線では自動運転は行われないということです。これが実証実験なのかと疑いたくなりますが、どうやらデータの蓄積が目的であるようです。

 次に、川崎市から東京都大田区までのルートで、多摩川スカイブリッジを経由する羽田連絡線(大師橋駅〜天空橋駅)、レベル2です。やはり国土交通省によると、レベル2は「アクセル・ブレーキ操作およびハンドル操作の両方を、部分的かつ持続的に自動化した状態。自動運転ではなく運転支援」です。厳密な比較ではないですが、都営三田線などで採用されているATOと同じようなものでしょうか。

 なお、車両は国から全額補助を受けた上で川崎市がおよそ9900万円で購入したものであり、最新型EV車両、しかもバッテリーの性能も高められています。高度な3次元地図情報、センサー技術も搭載され、最高速度は自動運転時で35km/hです。少し遅いような気がしますが、仕方のないところでしょう。運行は川崎鶴見臨港バスが担当するとのことです。

 2月までの実験の結果によって、自動運転のレベルを上げていくということでしょう。実証結果が公表されるかどうかはわかりませんが、公表されるべきでしょう。そうでなければ、交通安全への不安が高まるだけですから。

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ニュータウンを通る私鉄が不便になっていく……

2025年01月14日 00時00分00秒 | 社会・経済

 2025年1月12日の夕方に、京阪神地区の交通事情に関する記事で気になる記事2本が朝日新聞社のサイトに掲載されていたことは、昨日(2025年1月13日)に書きました。今回はもう1本の記事、「ニュータウン最寄りの私鉄でも異変 直通運転消えて『乗り換えが…』」(https://digital.asahi.com/articles/AST162JWVT16OXIE030M.html)を取り上げます。

 この記事の舞台は、大阪府最北端の駅、妙見口駅が所在する豊能町と、大阪府最南端の岬町です。

 まずは豊能町です。阪急宝塚線の川西能勢口駅(兵庫県川西市)を起点とする能勢電鉄の妙見線が通り、妙見口駅も同町にあります。2023年12月に、妙見口駅から少し離れた場所にあった黒川駅を起点とした妙見の森ケーブルが廃止されたことを御記憶の方もおられるでしょう。

 能勢電鉄を利用したことがないので、よくわからなかったのですが、2022年12月のダイヤ改正で能勢電鉄の運行系統が大きく変わりました。これが、豊能町のニュータウンの住民に少なからず衝撃を与えたようです。

 先程、妙見線は川西能勢口駅から妙見口駅までの路線である旨を記しました。現在も正式な路線区間に変わりはありません。また、能勢電鉄には、妙見線の山下駅から日生中央駅までの日生線という支線があります。このような路線図を見れば、少なからぬ人は、妙見線の全線通し運用が中心であろうと思うでしょう。

 しかし、2022年12月のダイヤ改正により、現在は妙見線が山下駅を境に分割されているような実態となっています。すなわち、川西能勢口駅発着の普通列車の大部分は川西能勢口駅から日生中央駅までの運行であり、一方で妙見口駅発着の普通列車の大部分は山下駅までの運行となっています。これでは、日生線が川西能勢口駅から日生中央駅まで、妙見線が山下駅から妙見口駅までであると勘違いされるかもしれません。

 能勢電鉄のサイトで確認してみたところ、妙見線の全線を通して運行される電車は、下りが平日に2本(川西能勢口駅5時18分発および23時54分)、土曜日・休日に1本(川西能勢口駅23時50分発)のみ、上りが平日に3本(妙見口駅5時10分発、5時28分発および5時47分発)、土曜日・休日に2本(妙見口駅5時10分発および5時32分発)のみとなっています。原則として、川西能勢口発日生中央行きの普通列車は山下駅で妙見口行きの普通列車に接続することになっていますが、時刻表をよく見ると接続のない列車もあります。妙見口発山下行きの普通列車も同様であり、原則として山下駅で日生中央発川西能勢口行きの普通列車に接続しますが、そうでない列車もあります。

 このような運行系統の変更のため、豊能町にある光風台、ときわ台の住民にとっては妙見線の利便性が失われることとなりました。川西能勢口駅で阪急宝塚線に乗り換える必要はあるものの、大阪梅田駅まで1時間もかからないからでしょう。

 しかし、能勢電鉄の乗降客は1990年代後半以降、減少が続いています。ニュータウンと言っても建設当時にnewであっただけで、しばらく経てば住民の高齢化が進みます。また、ニュータウンで育った若年層がそのニュータウン、さらに言えば郊外を出てしまうのでしょう。近畿地方にはニュータウンが限界集落に近づいてしまうという現象もあるようです。

 そうなると、鉄道会社としても従来の運行本数を維持できず、減便ダイヤということになります。能勢電鉄の場合は、日生線の利用客が多いということで、川西能勢口駅を起点または基準としてそちらへの直通運転が優先されたということでしょう。しかし、妙見線の光風台駅やときわ台駅の周辺に居住する人にとっては不便になったという訳です。また、山下駅での接続時間も、人によっては足りないという意見があります。

 能勢電鉄の沿線ではない場所にあるニュータウンも、大同小異というところでしょうか。

 上記朝日新聞社記事には岬町も登場するのですが、こちらはニュータウンの話ではありません。南海本線のみさき公園駅から多奈川駅までの多奈川線が取り上げられています。私はこの路線に乗ったこともないので、詳しいことは知りません。ただ、多奈川線の途中に深日港(ふけこう)駅があり、かつては淡路島への航路、徳島までの航路がありました。また、南海本線の起点である難波駅から多奈川駅まで直通急行が走っていたとのことです。しかし、大鳴門橋、明石海峡大橋のために航路はなくなりました。それが1999年のことで、多奈川線の利用客の減少が続くことになります。

 そのためでしょう、2023年10月に南海電気鉄道がダイヤ改正を行い、多奈川線についてはおよそ4割減というダイヤのスリム化を行いました。岬町議会は見直しを求めて南海電気鉄道に対して要望書を提出したのですが、ダイヤの決定権はあくまでも南海電気鉄道にあります。多奈川線の利用実績が向上しない限り、岬町が望む方向でのダイヤ改正は行われないでしょう。

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大阪府の路線バス事情の一端

2025年01月13日 11時00分00秒 | 社会・経済

 昨日(2025年1月12日)の夕方に、京阪神地区の交通事情に関する記事で気になる記事2本が朝日新聞社のサイトに掲載されていました。いずれも「ニュータウンのいま」という連載の中の記事です。今回はそのうちの1本、2025年1月12日16時0分付の「路線バス廃止は大阪の郊外でも 『お金では解決できない』その事情」(https://digital.asahi.com/articles/ASSDW23GNSDWOXIE01ZM.html)を取り上げます。このブログで金剛バスを何度も取り上げた者としては、気になる事柄です。また、首都圏でも同様のことは起こりうるのです。

 上記記事で取り上げられているのは、まず大阪府の交野市です。京阪交野線とJR片町線(一般には学研都市線と言われていますが、正式には現在でも片町線です)が通っています。記事には「京阪電鉄やJRが走り、大阪市中心部まで20~30分」と書かれていますが、これは片町線のことでしょう。同線の終点は大阪環状線との乗換駅である京橋駅ですし、その京橋駅からJR東西線に直通し、北新地駅で降りれば大阪駅や梅田駅との連絡扱いで他社線と乗り換えられるからです。交野線であれば、枚方市駅での京阪本線との乗り換えが必要になります。

 それはともあれ、交野市には京阪バスが運行されており、京阪の交野市駅やJRの河内磐船駅を起終点にする路線があります。しかし、京阪バスは、同市内の路線のうち、4つを2025年3月に廃止することとしています。京阪バスのサイトには、東急バスと異なって営業所毎の路線図がないので(京阪バスの場合は分割されたりしています)よくわからないのですが、交野南部線(JR片町線の星田駅や京阪の交野市駅から妙見口のほうに向かう路線)が廃止の対象になっていることは確実のようです。

 京阪バスの路線図と交野市の地図とを見比べると、交野市の南部に妙見東、南星台など、いかにもニュータウンという場所があるのがわかります。その辺りの路線バスがなくなってしまうのは、住民にとってはたまったものではないでしょう。寝屋川市に向かう路線や急行バスは残るそうですが、路線の数が減るということは本数も減るということですから、不便になるのは変わりがありません。

 同市のニュータウンは1970年頃に開発されたそうですから、こうした所の分譲地を購入して居住した人が20代であったとすると今は70代、30代であったとすれば今は80代となります。地形のためか、自家用車の利用率は高かったようです。これは首都圏の多摩ニュータウンなどでも同じでしょう。しかし、住民が高齢になれば、自家用車の運転を控える、あるいは控えざるをえなくなります。路線バスが当たり前のように走っていた時には自家用車を利用する住民が多かったが、高齢化していよいよ路線バスが必要になった時には路線バスが廃止されるというのは皮肉でもありますが、実は因果応報的な話です。失礼な表現と思われることは承知していますが、記事に書かれている民生委員経験者の女性のコメントを読めば誰でもそう考えることでしょう。親孝行と路線バスは似たようなものである、とも言えるかもしれません。

 京阪バスが4つの路線を廃止するのは、御多分に漏れず、運転士不足です。実は過去に、採算が合わないために廃止するという話があったのですが、交野市は支援などをしていました。つまり、不採算であるだけなら沿線自治体による補助金などの支援が得られる可能性も高いし、実際に沿線自治体が支援をして路線バスを維持させてきたのですが、運転士不足ではどうしようもないということなのです。2024年8月に京阪バスが交野市に対して路線の廃止を通告した際に、交野市都市まちづくり部の次長氏は、記事の表現を借りるならば「『交渉で何とか存続できる次元ではない』と悟った」、「お金を出せば解決する話ではなくなってしまった」と語っています。そう、金さえあれば何でもできるということにはならないのです。

 京阪バスの運転士不足は慢性的なもので、別に京阪バスに限らず、日本全国のバス会社の多くに共通しています。京阪の場合は、2016年度末において運転士が990人でしたが、2024年度末には829人に減ります。新規採用も難しい状況で、京阪バスの「運転手の平均年齢はこの8年間で47.7歳から52.3歳に上昇するという」のです。ここまできたら、交野市だけで解決できるような問題ではなくなります。まして、働き方改革による残業時間規制が重なっているのです。

 なお、京阪バスが2025年3月に廃止するのは、交野市だけでなく、枚方市、守口市、門真市、八幡市(京都府)の路線の一部も含まれています。京阪本線の各駅から枝分かれするようにバス路線を伸ばすという、従来であれば当たり前であった交通体系は完全に過去のものになりつつある、と言わざるをえません。また、ついでなのか何なのかよくわかりませんが、記事には「阪急バスも24年9月で大阪府に接する京都府大山崎町で路線の大部分を廃止した」と書かれています。

 さらに、記事には寝屋川市の事情も書かれています。ここからは自家用有償旅客輸送の話になるので、このブログでは取り上げません。ただ、自動車運転免許を所持する者、とくに公務員であれば、誰でも自家用有償旅客輸送の担い手となりうることは記しておきましょう。今後、市町村の公務員になるためには普通自動車運転免許の所持が必須となる時代も来るかもしれません。

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運転士不足で減便ダイヤ まだまだ続く

2025年01月09日 00時00分00秒 | 社会・経済

 RKK(熊本放送)の2025年1月8日11時32分付「熊本電鉄 運転士不足で “2月から減便” 始発最大30分繰り下げ・終電最大55分繰り上げに」(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rkk/1653961?display=1)で知ったのですが、熊本電気鉄道のサイトに「『列車』ダイヤ改正のお知らせ(2025年2月3日)」(https://www.kumamotodentetsu.co.jp/news/202501072315.html)という記事が掲載されており、やはり2024年問題あるいは2023年問題は続いていると思いました。

 熊本電気鉄道の記事には「今回のダイヤ改正は、運転士の退職に伴い、現行ダイヤの維持が困難となったことから現行ダイヤから便数を減らしたダイヤでの運行を行う必要が生じたものです」と書かれています。RKKの記事にはもう少し詳しく書かれており、2024年に7人在籍していた常勤の運転士のうち、3人が今月と来月に相次いで退職するため、減便せざるをえなくなったということです。7人という数字も厳しいものと考えられるのですが、3月までには4人しかいない訳です。RKKの記事の書き方では非常勤の運転士がいるようにも読めるのですが、どうなのでしょうか(あまり聞いたことがないのですが)。熊本電気鉄道の記事によれば、3年ほど前から定数(これが何人かは不明です)を「下回る運転士での運行を行って参りました。その間、採用活動を行い補充を行うも採用した運転士を上回る離職者が発生し、慢性的な運転士不足の状態となっておりました」、「2024年12月に入り、新たに運転士からの退職の申し出があり、現行ダイヤの維持が難しくなったことを受けダイヤを改正する必要が生じたものです」とのことです。また、「例年2月に入ると通学のお客様の一定数が登校されなくなることを受け、ご利用のお客様への影響を最大限軽減する必要があることから、2月よりダイヤを改正するものです」とも記されています。おそらく、沿線にある大学(熊本大学、崇城大学、九州ルーテル学院大学)を念頭に置いているのでしょう。

 一方、熊本電気鉄道の記事には「現行ダイヤではコロナ禍以後、お客様の回復に合わせ慢性的な遅延が発生していることを受け、ダイヤの間隔に余裕を持たせることで適正な運行を目指し、列車の安全運行を更に向上させることも併せて行います」とも書かれています。

 その上で、2025年1月7日付で熊本電気鉄道のサイトに、熊本電気鉄道株式会社鉄道事業部名義の「『列車』のダイヤ改正について」(https://www.kumamotodentetsu.co.jp/news/uploads/eeabc6991fe61e22b63e05199bc2e8cf5381cf04.pdf)という文書(以下、文書とのみ記します)が掲載されており、内容が書かれています。全部を引用する訳にもいかないので、一部のみを紹介します。

 まず、藤崎宮前駅から御代志駅までの運行系統(厳密には、藤崎線全線と菊池線の北熊本駅から御代志駅までの区間)ですが、「朝ラッシュ時(6時30分~9時)と夕ラッシュ時(16時~20時)」については、現行の15分間隔から20分間隔に、「昼間(9時~16時)と夜間(20時~21時)」については、現行の30分間隔から40分間隔に変わります。

 次に、上熊本駅から北熊本駅までの運行系統(菊池線の残りの区間)ですが、こちらは終日、現行の30分間隔から40分間隔に変わります。但し、13時台のみ30分間隔が維持されます。これは「北熊本駅での接続列車調整のため、30分間隔」とのことです。

 始発電車、終電車については詳しく触れませんが、基本的には始発電車は繰り下げ、終電車は一部を除いて繰り上げです。

 やはり気になるのは運行本数です。次のようになります。

 平日(月曜日〜木曜日):159本から121本に減ります。

 金曜日:161本から121本に減ります。

 土曜日;148本から97本に減ります。

 日曜日・祝日:120本から91本に減ります。

 付け加えて、藤崎宮前駅から御代志駅までの運行時間も、現行の26分から31分に変わります。他方、上熊本駅から北熊本駅までの運行時間は9分のままです。

 さて、減便ダイヤが実施された後に、果たして増便されることはあるのでしょうか。文書には「現在、新たな運転士や運転士見習い者の募集を行っているものの、運転士の応募がなく、更に運転士見習い者が免許を取得するには 1 年以上の日数を要することから、当面の間は今回の新ダイヤの継続が必要と考えております。その後、運転士の補充が完了した場合には改めてダイヤの構成を検討するものです」と書かれています。熊本市周辺は、最近、豊肥本線の乗客増も増えたと報じられていますので、熊本電気鉄道の乗客も増えたのでしょうか。私が熊本電気鉄道を利用したのは一度か二度しかないので、詳しいことはわかりませんが、あまり乗客はいなかったと記憶しています。このブログには、2003年3月23日に上熊本駅で撮影した写真2011年8月8日に藤崎宮前駅で撮影した写真同日に上熊本駅で撮影した写真を掲載していますので、この両日に利用しているはずです。

 文書を読んで「?」と思ったのは、「今回の2月時点でのダイヤ改正に伴う減便によるお客様の積み残し等は発生しないと考えており、今年度中の代行バスの運行等、代替え輸送の予定はございません」と書かれている点です。先程の熊本電気鉄道の記事には、再び引用させていただくならば「現行ダイヤではコロナ禍以後、お客様の回復に合わせ慢性的な遅延が発生していることを受け、ダイヤの間隔に余裕を持たせることで適正な運行を目指し、列車の安全運行を更に向上させることも併せて行います」とも書かれています。「慢性的な遅延が発生している」ということは、積み残し等はないということでしょうか。また、減便ダイヤ実施後に積み残しはないとしても遅延はないのでしょうか。2月および3月は、大学の講義期間ではないので通学客は減るでしょう。ただ、4月以降はどうでしょうか。

 今回は熊本電気鉄道を取り上げましたが、既に他の私鉄で同様の減便ダイヤが実施されましたし、今後も生じる可能性が低くないものと思われます。

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名鉄広見線の新可児駅〜御嵩駅の区間の行く末は

2025年01月05日 00時00分00秒 | 社会・経済

 昨日(2025年1月4日)になってから知ったのですが、2024年12月12日19時40分付で、 NHKが「名鉄広見線の県内一部区間 名鉄が財政支援協定更新せず」(https://www3.nhk.or.jp/lnews/gifu/20241212/3080014776.html)として報じていました。

 名古屋鉄道、略して名鉄は、かつて日本で2番目に営業キロ数が長い私鉄でしたが、断続的に鉄道路線の廃止を行っており、現在は3番目の私鉄となっています(1番目が近鉄、2番目が東武)。その分、採算が合わない鉄道路線をたくさん抱えていると言えます。また、関東の大手私鉄を見慣れている者からすれば「何故?」、「本線でこんなに編成が短いの?」、「利便性が低いんじゃないの?」と首を傾げたくなるようなことも少なくありません(鉄道ファンの間でよく取り上げられる名鉄名古屋駅など、私に言わせれば利便性の低さを象徴している大規模駅です。私は何度か利用しましたが、これほどわかりにくくて面倒な駅は他にないと感じました。これではJR東海道本線を使うか自動車を運転するかのどちらかを選択したくなる気持ちも理解できます)。さらに言えば、日本の大手私鉄でもとくに無人駅が多いことも注目すべき点です。

 さて、現在、名鉄の中でも存廃問題の渦中にあるのが、広見線の新可児駅から御嵩駅までの区間です。同線は犬山駅から御嵩駅までの路線ですが、歴史的経緯によってスイッチバックとなっている新可児駅を境に、実質的には犬山駅から新可児駅までの区間と新可児駅から御嵩駅までの区間は別の路線と言ってもよいでしょう。やはり、末端区間が廃止の瀬戸際にあるということです。

 原因は様々でしょう。名鉄の路線網は、大手私鉄の中では飛び抜けて高度な自動車社会となっている地域にあります。また、名古屋市やその近郊は良いとして、その他の地域では人口減少が進んでいると考えられます。また、広見線の末端区間の場合、明智駅から分岐して八百津駅までの路線であった八百津線の廃止も理由になっているかもしれません。八百津線は、富士重工製のLE-Carの試運転が行われ、そのままLE-Carを使い続けていたほどの鉄道路線でしたから、相当の赤字路線であった訳ですが、それでも八百津線が廃止されることで広見線の新可児駅から明智駅までの区間の乗客も減少したことでしょう。

 ともあれ、新可児駅から御嵩駅までの区間は典型的な赤字ローカル線です。そのため、名鉄は沿線自治体(市町村としては可児市および御嵩町)から年間で1億円の財政支援を受けていました。これは2010年度以降、名鉄が可児市から年間3000万円、御嵩町から年間7000万円の財政支援を受けるという協定が結ばれていたためです。しかし、名鉄は、2024年夏に、2025年度限りでこの協定を更新しない旨を可児市および御嵩町に伝えていました。このことは、12月11日に開かれた御嵩町の定例議会で町長が明らかにしたのでした。

 名鉄が協定を更新しないと伝えたということは、おそらく、名鉄はこの区間を廃止する意向であるということでしょう。しかも、御嵩町に対して、仮に新可児駅から御嵩駅までの区間を維持とするならば、15年で17億6000万円という追加支援が必要であると説明していたらしいのです。

 それでは、今後の広見線の末端区間はどうすべきなのでしょうか。選択肢としては、上記NHK記事の表現を借りるならば「名鉄が土地や車両の所有権を保有したまま、沿線の自治体が維持管理費を負担する方式」とするか(これは現在とほぼ同じである、またはあまり変わらないと言えます)、上下分離方式を採用して鉄道路線として維持するのか、鉄道路線の存続を断念してバス路線化するか、ということになるでしょう。可児市と御嵩町の意向は鉄道路線の存続ということでしょうが、そうなると財政の問題が浮上します。住民の意向にもよりますが、維持しうるのでしょうか。名鉄は、2025年6月に結論を出すようです。

 困ったことに、名鉄には、存廃問題が他にもあります。西尾線の西尾駅から吉良吉田駅までの区間と蒲郡線の全線(吉良吉田駅から蒲郡駅まで)です。この付近では三河線の碧南駅から吉良吉田駅までの区間が2004年4月1日に廃止されており、鉄道離れが顕著だと感じさせる地域になっています。

 もう少し書きましょう。存廃論議にはなっていませんが、知多新線も失敗路線として話題になることもあり、今後、議論の対象となりうるのではないかと考えています。

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鉄道は通学需要の面からも見放されるか

2024年12月26日 07時00分00秒 | 社会・経済

 JR東日本にも赤字の鉄道路線は多く存在します。関東地方、甲信越地方および東北地方に路線網を拡げるJR東日本ですから、或る意味では当然のことでもあります。ただ、ここに来て極端なくらいに輸送密度が低い路線が増えており、いわゆる内部補助によってどうにかできるような状況ではなくなっています。

 今回は、北関東の群馬県の話です。朝日新聞社が2024年12月25日10時45分付で「JR吾妻線に並行バス運行なら…高校生ら『利用』7割超 検討会議」(https://www.asahi.com/articles/ASSDS41TTSDSUHNB001M.html)として報じており、「これはもしや?」と思わされたので、紹介しておきます。

 吾妻線は、上越線の渋川駅から嬬恋村の大前駅まで、55.3kmの路線です。JR東日本が公表している「路線別ご利用状況(2019~2023年度)」によると、渋川駅から長野原草津口駅までの区間の平均通過人員は1987年度に4506人/日であったのが2023年度に2468人/日まで落ちており、長野原草津口駅から大前駅までの区間の平均通過人員は1987年度に791人/日であったのが2023年度に260人/日となっています。つまり、2023年度の平均通過人員は、渋川駅から長野原草津口駅までの区間で1987年度の約59%、長野原草津口駅から大前駅までの区間で1987年度の約33%にすぎないということになります。少子高齢化、人口減少が大きな要因ではあるものの、それだけはないでしょう。

 JR東日本は「ご利用の少ない線区の経営情報(2023年度分)の開示について」も公表しています。吾妻線については長野原草津口駅から大前駅までの区間しか掲載されていませんが(平均通過人員が2000人/日未満の路線・区間を対象としているためです)、それを見ると、かなり厳しい数字が並んでいます。2023年度については、次の通りです。

 運賃収入:1700万円。

 営業費用:5億1200万円。

 収支:4億9400万円の赤字。

 営業係数:2870円。

 収支率:3.5%。

 こうした状況では、JR東日本も存続か廃止かを決定せざるをえないということになるでしょう。

 問題の長野原草津口駅から大前駅までの区間について、JR東日本の高崎支社が、2024年12月24日、長野原町役場で検討会議を開いたそうです。この検討会議の場で、高校生およびその家族を対象としたアンケート調査の結果が報告されました。何故、対象者が高校生およびその家族かというと、この区間の主な利用者は高校生であり、およそ8割を占めているからです。つまり、他のローカル線と変わらない訳です。

 アンケート調査は、今年の7月から8月にかけて「JR吾妻線(長野原草津口・大前間)沿線地域交通検討会議」が実施したもので、長野原町および嬬恋村に居住する高校生およそ330人およびその家族、県立長野原高校および県立嬬恋高校の在校生およそ80人およびその家族に対して、利用状況、および別の交通手段の利用意向などを尋ねています。

 回答率が低く、高校生146人で36%、家族177人で44%にすぎませんが、参考にはなります。主な交通手段は高校生の約8割(回答者の約8割ということでしょう)が鉄道であり、しかも通学に2時間以上をかけている生徒が半数以上になっていました。

 このアンケートには、仮に長野原草津口駅から中之条駅や渋川駅までをノンストップで結ぶバスが運行されたら利用するか、という趣旨の設問が入っていたようです。すると「回答者の7割以上が利用する意向を示したことが明らかになった」とのことでした。もう少し厳密に言えば、是非とも利用したい、あるいは「ちょうど良い時間に運行していれば利用してみたい」という回答を合わせると7割以上であったということです。是非とも利用したいという回答と「ちょうど良い時間に運行していれば利用してみたい」という回答は、毛色が多少とも違うのではないかと思われるのですが、いかがでしょうか。

 また、検討会議は長野原草津口駅から大前駅までの区間について検討する場のはずですが、何故に長野原草津口駅から中之条駅や渋川駅までをノンストップで結ぶバスを想定し、質問したのでしょうか。意図がわからないという部分もあるのですが、長野原草津口駅から大前駅までの区間が、通勤需要どころか通学需要の面からも見放されているからでしょうか。少なくとも、同区間の廃止が前提となっていなければ、渋川駅から長野原草津口駅までの区間についてノンストップのバスを走らせることなど想定しないでしょう。場合によっては吾妻線の全区間を検討の対象とするのでしょうか。記事には「アンケート結果を受けて、今後は作業部会を設けて交通体系のあり方を協議することになった」と書かれていますので、気になるところです。

 もっとも、一つの記事だけではわからないのも当然のことです。注意しなければならない点は多いでしょう。ただ、事情によっては、鉄道路線が高校生の通学需要に合わない、あるいは需要から外されているということなのかもしれません。

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錦川鉄道錦川清流線の存廃論議はどうなるか

2024年12月06日 20時30分00秒 | 社会・経済

 1980年代の国鉄改革で特定地方交通線が指定され、廃止が議論されました。この時は、住民などの意見に流されず、比較的に徹底して廃止が行われました。ただ、少し甘いとも考えられました。第三セクター化による存続の方法が残されていた上に、除外要件もあったからです。俎上に上がった路線の全てを完全に廃止していれば、現在も再び存廃論議になることはなかったでしょう。もとより、日本全体で人口が減少しているので他の鉄道路線の多くについても存廃論議の対象になったでしょうが、今ほど少なくはなかったはずです。

 このブログで錦川鉄道錦川清流線の話題を取り上げたのは、2023年9月9日7時0分0秒のことです。それから1年以上が経過し、2024年11月29日10時30分付でに朝日新聞社が「岩国・三セク錦川鉄道の清流線 存廃どうなる 沿線住民は『存続を』」(https://digital.asahi.com/articles/ASSCX3R1XSCXTZNB019M.html)として報じていました。月が変わってから気付きました。

 さて、2023年9月の時点においては、錦川鉄道錦川清流線の存廃を2024年度中に岩国市長が決定する旨が報じられていましたが、1年延びたのでしょうか。上記朝日新聞社記事によると、2024年度末に報告書がまとまり、2025年度に結論を出すとのことです。

 岩国市は、2023年5月から錦川鉄道錦川清流線の在り方を見直すことにして検討プロジェクトチームを設置しました(副市長がトップに立っているとのことです)。また、有識者会議も設置しており、2024年11月14日の有識者会議(第3回)において市が具体案を示したのでした。

 その具体案は、一部を上記朝日新聞社記事の表現を借りるならば、①現状維持、②「鉄道の運行・管理方法を見直して全線を存続させる」、③「路線の一部をバスに代替させて存続させる」、④完全バス路線化です。

 岩国市は、廃線ありきではないという立場を採ると言っていますが、これは表面的な態度なのでしょうか。錦川鉄道の経営状況も悪いでしょうし、岩国市の財政状況も悪いはずで、第三セクターが地方公共団体の懐に悪影響を及ぼしかねないことは、いくつかの住民訴訟が提起されたことからしても明らかです。1988年度の輸送人員が584,170人であったのに対し、2023年度の輸送人員は130,643人でした。つまり、2023年度の輸送人員は1988年の輸送人員の約22.4%でしかないということです。過疎化、少子化、自家用車社会化という御馴染みのセットで、一度も黒字になったことがなく、鉄道経営対策事業基金の取り崩しで何とか維持されているという状況ですが、その基金の残高も錦川鉄道設立時には6億6190万円であったのが、2023年度には3378万9千円にまで減りました。つまり、2023年度の残高は当初残高の5.1%にまで減った訳です。赤字額も2017年度に1億円を超えており、さらに岩国市が過疎債を起債しています。これでは廃止が検討されてもおかしくありません。

 上記朝日新聞社記事には、住民アンケートのことが書かれています。中学生以上4500人を対象としており、回答は2086人、率は46.4%でした。

 このような記事を読む度に思うのですが、住民アンケートにどの程度の意味があるのでしょうか。むしろ有害にしか思えません。

 理由は簡単です。存続を求めることが多数となるからです。また、設問の仕方によって回答は変わりうるものですし、回答者の住所などにも左右されます。例えば駅から半径500メートル以内に住む人と、半径3キロメートル超に住む人とでは、利用の頻度なども変わってきます。

 アンケートで存続を求める意見が多かったとしても、実際に利用する人が一定の水準を超えなければ、存続する意味はありません。

 よくあることで、私が最も憤りを感じるのが、次のような住民の意見あるいは態度です。

 自分は乗らない(利用しない)けれど、鉄道路線は必要である。

 無責任以外の何物でもありません。自分にとって要らないのであれば、素直に廃止を選択しなさい。

 こと鉄道路線の存廃については、住民アンケートを行わず、客観的なデータだけで決定する。住民や鉄道ファンの意見に流されず、むしろ存続を求める意見ほど当てにならないものはないことを常に念頭に置く。

 これこそ基本線にすべきことです。

 また、上記のアンケートでは、回答率が半数に達していないことにも注意を向ける必要があります。

 アンケートの回答では、存続を求めるとする人が50.8%、廃止もやむをえないとする人が49.2%だったそうです。拮抗しているとしか言いようがないのですが、46.4%の中の50.8%と49.2%であるということを忘れてはなりません。結局、アンケート対象者全体からすれば、存続を求める意見は23.5%、廃止もやむをえないとする意見は22.8%、その他は無回答なのです。せいぜい参考意見程度にすぎないことがわかります。

 そして、岩国市には、全体的な交通政策の見通しを立てることが求められるでしょう。その際、錦川清流線を抜きにして検討することも必要になります。大正時代の鉄道敷設法、赤字83線、特定地方交通線。この三つの要件が錦川鉄道錦川清流線に揃っています。『鉄道ほとんど不要論』(中央経済社)という本において、福井義高教授は、1980年代の時点で赤字ローカル線は全て廃止すべきであったと記しています。2023年には極論と考えていましたが、2024年12月においては極論ではなく、全ての路線に妥当する訳ではないものの、多くの路線について正論であると認めざるをえません。

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弘南鉄道大鰐線の廃止は確定のようです

2024年11月28日 02時00分00秒 | 社会・経済

 昨日(2024年11月27日)の19時50分0秒付で「久留里線と大鰐線(メインは大鰐線)」を掲載しましたが、今回は続編です。

 やはり、大鰐線の廃止は事実上決まったようです。東奥日報社が昨日付で「弘南鉄道大鰐線廃線へ/27年度末で運行休止」として報じているのですが、全文を読むには会員登録が必要な記事でしたので、仕方がなく、Yahoo! Japan Newsに掲載された同タイトルの記事を参照しておきます。

 弘南鉄道が昨日の協議会(非公式の会合であったようです)において表明した大鰐線の運行休止の方針は、やはり廃止の方針と同じことであったようで、沿線自治体である弘前市および大鰐町のほうから異論は出されなかったとのことです。2027年度末で運行休止としたのは、2025年の春に高校に入学する生徒たちが卒業するまで交通手段を確保したいからとも表明されています。大鰐線には弘高下駅、弘前学院大学前駅、聖愛中高前駅および義塾高校前駅と、学校名に由来する駅名が4つもあるからでしょう。

 ただ、2028年3月まで維持できるのかという疑問は残ります。弘南鉄道の本線級路線である、というより本来の弘南鉄道の路線である弘南線でも輸送人員が減少し、赤字を計上するようになっています。弘南線の営業状況が良くなるのであれば大鰐線の維持も可能かもしれませんが、それも大鰐線次第であることに変わりがありません。実際、弘南鉄道の社長はCOVID-19の勢いが減っても利用客が戻らなかった旨を述べています。既にモータリゼイションが進行している地域ですから、公共交通機関から自家用車や自転車にシフトしていてもおかしくありません。

 東奥日報社記事によると、大鰐線の利用客は1974年度がピークで390万人ほどでしたが、2023年度には27万1777人でした。つまり、2023年度の利用客は1974年度の約7%しかいないということです。また、非常に乱暴な計算ではありますが、2023年度の利用客を単純に365日で割ると、1日あたりで744.6人しか利用していないということになります。これでは、廃止もやむをえないでしょう。

 気になる赤字額は、2023年度で1億3068万円でした。この数字は、沿線自治体からの支援の存続のための条件を満たしていないものです。このブログでは詳細がわからなかったので記さなかったのですが、2020年に沿線自治体などが維持活性化のための基本方針を定めていました。それによると「2023年度末の営業成績で中長期計画に基づく収支改善がなされない場合、支援は2025年度までとする」となっていたそうです(東奥日報社記事およびYahoo! Japan News記事によります)。とりあえず、2025年度までは沿線自治体が支援するということですが、2026年度および2027年度については未定ですが、弘前市および大鰐町は支援を決定するかもしれません。ただ、市議会および町議会では議論が行われることでしょう。休止の時期が早まる可能性も否定できません。

 私にとってまだよくわからないのは、2027年度末で休止し、その後に廃止に向けた手続を進めるとしていることです。何らかの理由なり事情なりがあるのでしょう。休止予定日まであと3年以上もありますし、休止した後の再開も考えられていないようですから、2027年度末で廃止、より正確には2028年4月1日廃止としてもよいように思われるのです。あるいは冬季の輸送手段としての意義も考慮されているのかもしれませんが、わざわざ休止期間を置く必要もないのではないでしょうか。

 いずれにしても、東北地方から、また、一つの私鉄の路線が消滅することとなります。

 やはり、東急東横線や田園都市線に馴染んでいる私としては、弘南鉄道を走っている初代東急7000系を見に行こうか、などと考えました。10年程前には福島交通飯坂線で初代東急7000系に乗りましたし、5年前には養老鉄道養老線で初代東急7000系の改造車である東急7700系に乗っています。

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久留里線と大鰐線(メインは大鰐線)

2024年11月27日 19時50分00秒 | 社会・経済

 今日は三題噺ならぬ二題噺です。二題ともこのブログで取り上げたことがあります。

 まずはJR東日本の久留里線です。2024年11月27日、つまり今日、JR東日本千葉支社長が記者会見の場で例の久留里線の末端区間について発表しました。内容は「鉄道運行を取りやめる方針」であり、「今後、バスなど新たな交通体系への移行について市と協議する」とのことです(共同通信社が今日の15時41分付で報じた「JR東日本、久留里線の一部廃線発表 久留里~上総亀山間―バスなどへ移行協議」より)。但し、あくまでも方針を発表したのであり、廃止の時期などについては明言されなかったようです。実際のところ、明確な時期を示すことは無理でしょう。

 もう一つ、私にとってはこちらのほうが驚きでもあり、実は容易に予想されたことでもありましたが、弘南鉄道の大鰐線です。東奥日報社が今日付で「弘南鉄道、大鰐線を27年度末で運行休止の意向」として報じています。速報扱いですので短いですが、今日、弘前市役所で沿線市町村側との協議会が開かれたとのことです。2027年度末で運行休止する意向の理由として「物価高騰や人員不足で、収支改善が見込めない」ことがあげられています。こちらのほうも、弘南鉄道が一方的に決めるという訳にも行かないでしょう。そのため、もしかしたら運行休止にならないかもしれませんが、現在の大鰐線の状況からすれば、せいぜい、運行休止の時期がずれるくらいでしょう。

 むしろ、よくぞここまで延命したものだと思います。元々は弘前電気鉄道という会社によって運行されていた路線ですが、1960年代に廃止の危機に見舞われ、結局、弘前電気鉄道が解散し、大鰐線は弘南鉄道の手に渡ります。救済というところでしょうか。しかし、あまり儲かる路線でもなく、乗客も少なかったのか、弘南線と比較してもあまりに古すぎて見劣りする車両ばかりが走っていたくらいで、黒字になったことは一度もなかったとのことでした。弘南線が黒字であったから続けられたという訳でしょう。もっとも、弘南鉄道は国鉄の赤字ローカル線であった黒石線を引き受けて運行していましたが、この路線を1990年代に廃止させています。内部補助の限界に達した可能性もありますし、そもそも電化線と非電化線との違いなども理由として考えられるでしょう。

 私が知る限りですが、21世紀に入ってから、まず2013年6月27日、弘南鉄道の株主総会において大鰐線廃止の方針(のようなもの)が弘南鉄道社長から発せられました。このことについては「弘南鉄道の大鰐線が廃止されるか」(2031年6月30日15時8分8秒付)において取り上げました。株主総会の議題にも入っておらず、総会の冒頭における挨拶で述べられたので、会社として正式に決定した方針ではないということにはなりますが、どう考えても会社としての検討事項が公表されたと考えるべきでしょう。ただ、2016年度末、つまり2017年3月末に廃止という方向性も示されたことが周囲の反発を受けた可能性もあります。

 その後、2020年に沿線自治体(弘前市、平川市、黒石市、田舎館村および大鰐町)が弘南鉄道に対して2019年度および2020年度における経常損益の赤字分の全額補塡を行う方針を固めたと報じられました。このことは「鉄道関係二題」(2020年2月15日11時35分0秒付)で取り上げています。弘南線は2016年度まで黒字でしたが、2017年度から赤字が続いていたのでした。なお、「弘南鉄道への財政支援/JR北海道への支援策」(2021年1月25日0時0分0秒)も御覧ください。

 そして2024年2月28日、弘前市議会で大鰐線の廃止を求める発言が相次いだと報じられました。これについては「弘南鉄道大鰐線の廃止を求める声が」(2024年3月4日20時30分0秒付)で取り上げました。その記事で私は次のように述べました。

 「大鰐線の廃止は現実的に最も大きな選択肢であると思われます。この路線は、起点の大鰐駅から義塾高校前駅までJR奥羽本線と完全に並行しており、義塾高校前駅から中央弘前駅まではJR奥羽本線から少し離れた所を走っているものの、並行路線と言えます。また、終点の弘前中央駅は大鰐線のみの駅であり、弘南線の起点でもある弘前駅から1キロメートル以上離れています。弘南鉄道の路線となる前に廃止の議論が出ており、しかもその原因の一つが弘南バスとの競争に敗れたことという歴史を考えると、存続してきたことが一つの驚異とも言えます。」

 こうした流れを見ていけば、2027年度末、つまり2028年3月末で運行休止という選択も理解できます。むしろ、もう少し早めるほうがよいとも考えられます。下手な延命では傷もふさがらず、出血が続くでしょう。

 また、運行休止という表現に引っかかる方もおられるでしょう。おそらく、弘前市および大鰐町の住民などからの反発を予想して、廃止ではなく運行休止としたのでしょう。しかし、弘前市議会での動きなどを見ると、弘前市で大鰐線の廃止に反対する声は出るとしても大きくならないでしょうし、普段利用もしない人が廃止に反対する資格などありません。はっきりと廃止と表明すべきでしょう。遅きに失したとも言いうるからです。

 休止と言えば、同じ青森県に南部縦貫鉄道の例があります。野辺地駅〜七戸駅の南部縦貫鉄道線は、1997年に運行を休止しました。直接の理由は、野辺地駅〜西千曳駅の区間の路盤でした。ここは元々が東北本線であった区間であり、千曳駅の移転に伴って南部縦貫鉄道が国鉄から借り入れていたのです。JR東日本発足後も同様でしたが、1995年12月、当時の国鉄清算事業団はこの路盤の買い取りを南部縦貫鉄道に要請しました。これが南部縦貫鉄道にとっては大きすぎる負担であるということで、1997年5月の連休明けから南部縦貫鉄道線は運行休止となりました。その後、南部縦貫鉄道線はこの路盤を購入したそうです。しかし、休止の間に南部縦貫鉄道線全線の鉄道施設が荒廃してしまったようで、復活運転をするには多額の費用がかかるということで、結局2002年8月1日に廃止されてしまいました。

 弘南鉄道大鰐線が実際に運行休止するとなると、直接の理由は南部縦貫鉄道と異なりますが、結末は同様になるでしょう。つまり、休止が始まってから何の維持管理もなされなければ鉄道施設は(おそらく短期間で)荒廃してしまう訳です。そうなったら、営業を再開するにしても莫大な費用がかかることになります。まして、大鰐線の場合、2023年8月に脱線事故が発生し、同年9月25日には線路の不具合を理由として弘南線とともに運休が始まりました。元々路盤がよくないという可能性もあります。少なくとも線路規格はJR奥羽本線よりも格段に落ちるでしょう。無期限の運行休止ということであれば、とりもなおさず廃止ということです。

 今後、事態がどのように展開するかをみていく必要がありますが、大鰐線の運行休止あるいは廃止は、時間の問題でしょう。初代東急7000系が今でも運転されているので、見に行ってみたいとは思っていますが……。

 

 最後に。時代遅れのリニア新幹線と全国新幹線整備計画は一刻も早く廃止すべきです。北陸新幹線と西九州新幹線がいつまで経っても全通の見込みがないという無様さなのに、四国新幹線だの何だのと狂気の沙汰です。北陸新幹線の敦賀駅から新大阪駅までの区間やリニア新幹線を早く建設して開通させろという鉄道ファンもいますが、「何を考えているのやら」と言いたいところです。筒井康隆さんのエッセイ集のタイトルではないけれど「狂気の沙汰も金次第」なのでしょうか。

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