ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

改正と廃止が混同されることがある

2023年11月23日 08時00分00秒 | 法律学

 時折、鉄道関係の専門書で鉄道敷設法という法律が取り上げられることがあります。日本国有鉄道改革法等施行法(昭和61年12月4日法律第93号)第110条第2号によって廃止された法律なのですが、現在まで尾を引く赤字ローカル線問題の原因とも言えるものであり、その一部についてはこのブログでも何度か取り上げています。

 今回は、その鉄道敷設法の内容ではなく、専門書でよく見られる誤りをここに示し、正しておきたいと考えました。

 実は、鉄道敷設法という名称の法律は二つ存在していました。専門書で取り上げられることが多いのは大正11年4月11日法律第37号(以下、大正鉄道敷設法と記します)のほうですが、もう一つ、明治25年6月21日法律第4号(以下、明治鉄道敷設法と記します)があります。

 よく見られる誤りとは、大正鉄道敷設法のほうを「改正鉄道敷設法」と記し、大正鉄道敷設法が明治鉄道敷設法の改正によって成立したと読みうる説明を行うことです。

 日本法令索引国立公文書館デジタルアーカイブを参照するとすぐにわかりますが、大正鉄道敷設法は明治鉄道敷設法の改正によって生まれたものではありません。大正鉄道敷設法の附則は次のように定めていました。

 「明治二十五年法律第四號鐵道敷設法、北海道鐵道敷設法、明治二十七年法律第十二號乃至第十五號、明治二十九年法律第七十二號乃至第七十七號、明治三十年法律第十一號、同年法律第三十二号、同年法律第三十三号及同年法律第三十五号ハ之ヲ廢止ス」

 大正鉄道敷設法が明治鉄道敷設法の改正によって成立したものでないことは一目瞭然です。両者は名称こそ同一であれ全く別の法律なのです。敢えて記すなら大正鉄道敷設法は明治鉄道敷設法を全面改正したものであるとも言えなくはないのですが、正確を期すのであれば、やはり大正鉄道敷設法によって明治鉄道敷設法が廃止されたと表現すべきです。実際に、両者を読み比べてみるとわかりますが、明治鉄道敷設法と大正鉄道敷設法は、趣旨こそ共通するものの、規定の内容がかなり異なります。改正という手法を採らなかったのも理解できるでしょう。

 鉄道敷設法について書きつつ思い出したのが、行政不服審査法です。このブログに掲載した「行政法講義ノート〔第7版〕」の「第29回 行政救済法とは何か/行政不服審査法」において、私は昭和37年9月15日法律第160号を旧行政不服審査法、平成26年6月13日法律第68号を行政不服審査法と記しています。行政不服審査法の目次の前に「行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)の全部を改正する」と書かれているからですが(日本国憲法も同様でしたので、憲法に倣ったのかもしれません)、要は行政不服審査法によって旧行政不服審査法が廃止されたのであり、そのことを示したかったからでもあります。日本法令索引は、旧行政不服審査法を「廃止法令」、行政不服審査法を「現行法令」と表現しており、多くの行政法の教科書より正確であると言えることでしょう。

 法律の改正と廃止は全く異なるものです。しかし、全面改正という言葉により、改正と廃止との区別が付きにくくなる嫌いはあります。安易であるとは言え、成文法の条文を読み、その記述に従うしかないのかもしれません。

 ※※※※※※※※※※

 前述のように、大正鉄道敷設法は日本国有鉄道改革法等施行法第110条第2号によって廃止されました。日本国有鉄道改革法等施行法第110条によって廃止された法律には、他にどのようなものがあるか。それを記しておきます。

 鉄道国有法(明治39年3月31日法律第17号)

 国有鉄道運賃法(昭和23年7月7日法律第112号)

 鉄道公安職員の職務に関する法律(昭和25年8月10日法律第241号)

 日本国有鉄道新線建設補助特別措置法(昭和36年6月7日法律第117号)

 日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(昭和55年12月27日法律第111号)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

未公布の条例を遡及適用?

2023年10月16日 00時00分00秒 | 法律学

 条例が議会で議決されて成立したにもかかわらず、1年半にわたって公布されていなかった。その場合、当該条例の効力はどうなるか。

 その答えを出すためには、地方自治法第16条を参照する必要があります。読んでみましょう。

 第16条第1項:「普通地方公共団体の議会の議長は、条例の制定又は改廃の議決があつたときは、その日から三日以内にこれを当該普通地方公共団体の長に送付しなければならない。」

 同第2項:「普通地方公共団体の長は、前項の規定により条例の送付を受けた場合は、その日から二十日以内にこれを公布しなければならない。ただし、再議その他の措置を講じた場合は、この限りでない。」

 同第3項:「条例は、条例に特別の定があるものを除く外、公布の日から起算して十日を経過した日から、これを施行する。」

 同第4項:「当該普通地方公共団体の長の署名、施行期日の特例その他条例の公布に関し必要な事項は、条例でこれを定めなければならない。」

 同第5項:「前二項の規定は、普通地方公共団体の規則並びにその機関の定める規則及びその他の規程で公表を要するものにこれを準用する。但し、法令又は条例に特別の定があるときは、この限りでない。」

 冒頭の問題に直接関係があるのは第16条第2項です。文言から明らかであるように、議決がなされて成立し、議会から送付された条例については、普通地方公共団体の長が送付の日から20日以内に公布をしなければなりません。但し、長が「再議その他の措置を講じた場合」にはこの限りでないともなっています。この「再議その他の措置を講じた場合」は地方自治法第176条に定められている措置を意味します。

 以上のように記したのは、朝日新聞社のサイトに、一昨日(2023年10月15日)の11時付で「大槌町議会、未公布条例の遡及適用案を否決」という記事(https://digital.asahi.com/articles/ASRBF75JCRBFULUC006.html)が掲載されていたためです。

 大槌町は、2020年4月から2021年9月までの間に、町議会が議決した条例46件、および町長が決裁した規則36件の公布手続を行っていました。つまり、合わせて82件が未公布のままであったということになります。

 地方自治法第16条第2項および第3項の構造からすれば、条例を施行するためには公布を行うことが要件となります。つまり、条例の公布を行わなければ、条例は効力を生じません。言い換えれば、条例は無効なのです。この点については、最三小判昭和25年10月10日民集4巻10号465頁が述べています。以下に引用しておきましょう(判決と事案とを読み比べる限りでこの最高裁判決には少々の疑問があるのですが、その点は脇に置きます)。

 ①「昭和22年から適用する青森市民税賦課方法条例中一部改正条例が、本件賦課処分に先って青森市公告式に従って適式に告示されなかったことは原判決(引用者注:仙台高判昭和24年7月8日行政裁判月報18号65頁)の認定するところである」。そして「原判決が理由中に『改正条例が効力を発生しないときでも(以下略)』として本件賦課処分の効力について説明を加えているのは、原審が本件賦課当時右改正条例は未だ効力を発生していなかったと判断していることを示すものであ」る

 ②「改正条例が効力を生じていない以上、改正前の条例はなお効力を持続しており、従って被上告人は改正前の条例によって市民税を賦課することはできたのである。被上告人(引用者注:青森市長)のした本件課税処分は改正後の即ち当時未だ効力のなかった条例によったものであることは、争のない事実であるけれども改正条例は単に市民税の税率を改めたに過ぎないものであるから、改正前の条例によると、改正後の条例によるとは、税率、賦課金額の相違を来すのみである。行政処分が法令に違背して行われたからと言って、直ちに当然にその行政処分が無効であるとは言えないのであって、本件のような違法は本件賦課処分を法律上当然に無効ならしめるものではないとするを相当とする」。

 (なお、この判決が述べているところによると、上告人は公布を怠った改正条例に基づく地方税賦課処分の取消を求めて出訴した訳でないとのことです。)

 ここからが話がおかしくなります。

 未公布の条例の中には町税や保険料の増額を内容とするものもあります。上記記事の内容からすれば、条例の公布を行っていなかったのに町税や保険料を当該条例に従って増額した上で徴収していたらしいのです。上記最高裁判所判決の趣旨によれば、課税処分や保険料徴収処分が当然に無効となる訳ではないということにはなりますが、条例や規則が公布されていないので、増額分は違法になることは当然です。改正前の条例による処分とすれば有効であるとしても、増額分まで有効になる訳ではありません。

 そこで、2021年11月までに、上記82件の条例および規則について署名および掲示(大槌町役場前での掲示。公布の方式として求められています)を終えました。これで公布がなされたことになるかという問題もあるのですが、期日が経過している以上、公布がなされたことにはならないと考えるのが妥当です。行政法学でいう瑕疵の治癒は認められないと考えるべきです。

 しかし、大槌町は、未公布の条例および規則をどうにかして公布し、施行しようと考えたようで、第三者委員会を設置しました。この委員会は、今年の6月に「『一般的な意見』として、さかのぼって条例の適用が認められるとの考え方を基本に検討すべきだ」とする答申を行ったとのことです。読んだ瞬間に「信じられない」と目を疑いました。どのような理屈を付ければこの答申のように考えられるのかがわかりません。この委員会のメンバーには弁護士も含まれているそうなので、「本当に憲法や行政法などを勉強したのか? 憲法学や行政法学以前の法学の話ではないのか?」と思いました。

 むしろ、法律家であれば、せっかく議決を行った町議会には申し訳ないものの、未公布の条例を修正の上で条例案として再度町議会に提案し、議決をしてもらって公布をやり直すのが筋と言うべきでしょう。そもそも、公布された条例や規則、さらに法律であっても、施行日よりも前の日に遡って適用することはできないのが原則です。できるとしても、それは条例に遡及適用の趣旨が定められているからですし、その趣旨が定められているからと言っても認められるかどうかが問われることとなります。刑事法であれば遡及処罰の原則がありますし、租税法でも、年度を超えての遡及(絶対的遡及とも言います)は認められないのです。

 詳細に目を通してはいないとはいえ、どう考えても無理筋と評価せざるをえない答申ですが、その答申を受けて、大槌町は、46件の条例のうちの3件については「施行日前に気がついて掲示した」ものとしてそのまま有効なものとする、残りの43件は「施行日を過ぎていた」ので「掲示日を条例の施行日とする異例の『整備条例案』を提出した」のでした。

 ここで、町議会が追認するようなことがあれば「一体何を考えているのか?」、「いかに地方議会が執行機関の追認機関になることが多いとは言え、これはあんまりだろう?」という声が飛び交うことになりますが、大槌町議会は良識を示しました。6月末に行われた町議会全員協議会では「安易に日付をさかのぼるような遡及(そきゅう)措置を取って決着させれば、全国的なあしき前例になる、などと反発」しました。さらに、町議会の定例会においても「『住民への説明が先だ』などと疑問視する声が噴出していた」とのことです。

 そして、10月13日の定例会において「整備条例案」は賛成1、反対10で否決されました。当然の結果であると評価すべきです。

 意外に思われる方もおられるかもしれませんが、法律学はよく時間を扱います。というより、法律学にとって時間は重要な要素の一つです。法律、条例などの成文法には、公布日、施行日が付き物ですし、これらは効力の発生のための基準となります。こうした基準を無視するような思考方法を、曲がりなりにも法律家と言われる人々が採るべきではありません。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

財政法にある、おかしな(?)条文

2023年04月14日 00時00分00秒 | 法律学

 講義の準備のため、e-govの法令検索を使って財政法を参照していました。そこで、おかしな条文を見つけました。

 財政法第2条は、次のとおりです。

 第1項:「収入とは、国の各般の需要を充たすための支払の財源となるべき現金の収納をいい、支出とは、国の各般の需要を充たすための現金の支払をいう。」

 第2項:「前項の現金の収納には、他の財産の処分又は新らたな債務の負担に因り生ずるものをも含み、同項の現金の支払には、他の財産の取得又は債務の減少を生ずるものをも含む。」

 第3項:「なお第一項の収入及び支出には、会計間の繰入その他国庫内において行う移換によるものを含む。」

 第4項:「歳入とは、一会計年度における一切の収入をいい、歳出とは、一会計年度における一切の支出をいう。」

 この中でおかしいのは第3項です。冒頭の「なお」は不要であるからです。管見の限りですが、文中であればともあれ、条または項の冒頭に「なお」が使われた条文は、他にありません。

 また、位置もおかしいと言えます。何故なら、第1項を読み直せば、冒頭の言葉は「収入」であり、「現金の収納」は「収入」の定義に入るからです。第2項と第3項の位置が逆になっているということになります。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

たしかに、この点において所有者不明土地法は不十分である

2023年02月21日 11時00分00秒 | 法律学

 或る事情により、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」、略して所有者不明土地法に取り組んでいますが(税理という雑誌に掲載された記事で私の論文が参照されていたのには驚きました)、この法律の意味なり目的なりが今ひとつ明確でないことが気になっていました。第208回国会で同法の改正法が成立していますが、その改正法の審議においても野党の議員から趣旨・目的について疑念が示されていました。

 また、所有者不明土地法に目を通すと、空き家問題と重なる部分もあり、「空家等対策の推進に関する特別措置法」との関係も問われます。

 さらに、所有者不明土地法は相続・遺贈にターゲットを絞っているようにも見えるのですが、所有者不明土地は別に個人の相続・遺贈によって発生するだけのものではありません。勿論、相続・遺贈は重大な原因の一つですし、民法や不動産登記法などの改正、関連法律の制定は必要です。しかし、不十分です。例えば、登記簿において土地または建物の所有権が法人にある旨の登記がなされているが、実はその法人は既に消滅している(法人格が消滅している)場合には、所有者が存在しないことになり、結局のところ片付けようにも片付けられない問題となります。考えようによっては個人の相続・遺贈より深刻と言えるでしょう。何故なら、相続・遺贈であれば相続人などをたどればよいということにもなりますが(但し、この作業が大変なものであることを忘れてはなりません)、消滅している法人の名義となっている場合には、そもそも地方公共団体が手を付けられるようなものでもなく、破産だの何だのという話ともつながり、ただただ厄介な後始末をしなければ登記簿上の名義などを改めることができないのです。

 このように書いてきたのは、吉川祐介さんの著書『限界ニュータウン 荒廃する超郊外の分譲地』(2022年、太郎次郎社エディタス)を入手し、読み進めてきたからです。吉川さんは、YouTubeの「資産価値ZERO-限界ニュータウン探訪記-」で有名な方で(私も時折視聴させていただいております)、動画でも破産などの手続を経て法人格が消滅している法人の名義のままとなっている土地や建物に関する問題を取り上げられています。相当に深刻な問題であり、長い時間がかかっても解決しなければ、結局その場所なり地域なりの荒廃は進むだけになってしまいます。

 吉川さんの著書で、所有者不明土地法の不十分な点などが明確に指摘されている箇所があります。少し長くなりますが、引用させていただきます。

 「解散法人が所有者となっている不動産については、そもそも所有者が消滅して存在しないのだから、当然のことながら相続人などいるはずもなく、国庫へ帰属させると決められる者も存在しない。破産であれば法人の所有財産は整理されるものだし、休眠会社になるとしても、売却益が望める物件であれば放置されるケースは少ないと思う。不動産を所有したまま法人格が消滅する事態を想定していなかったのかもしれないが、それにしてもこれでは、土地の購入や管理を希望する者が現れようにも、民間レベルでは管理や取引をおこなうすべがなくなってしまう。」(前掲書144頁)

 すぐに「なるほど」と思いました。実際のところ、経営破綻を来した法人について破産手続が開始されても、費用不足による破産廃止→法人格消滅ということになり、その法人が所有していた土地や建物が他人に譲渡されることなく放置されるということが少なくないようです。吉川さんの著書や動画では主に千葉県北東部が取り上げられているのですが、程度の差はあれ、全都道府県において見られる現象でしょう。

 バブル期であったと記憶していますが、NHKなどで日本の土地問題が取り上げられており、諸外国に比して日本は土地などに対する規制が緩く、乱開発が行われやすい旨が指摘されていました。バブル崩壊後の長期低迷の下、あまりにひどい爪痕が残されて地域に暗く重い影(陰)がのしかかっていることは、例えばリゾート法に絡めて1990年代以降によく論じられましたし、私も何箇所かをこの目で見たのですが、実はdéjà vuだったとも言えます。何故なら、限界ニュータウンの問題はバブル期よりも前、高度経済成長期、列島改造論に端を発するものであるからです。その頃に住宅地や別荘地という名目で乱開発が行われており、後に実質的な放棄が行われたりしていました。こうなると、バブル期のリゾート開発などは形を変えた繰り返しであるということがわかります。

 「もしかしたら」と思うことがあります。所有者不明土地問題は、これまでの日本における土地政策の帰結であるにすぎないのではないか、と。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第210回国会の内閣提出法律案第12号「民法等の一部を改正する法律案」

2022年10月31日 00時00分00秒 | 法律学

 2022年10月15日付の朝日新聞朝刊1面14版△に「嫡出推定見直し 閣議決定 民法改正案 親の懲戒権削除も」という記事が掲載されていました。その内容が盛り込まれた「民法等の一部を改正する法律案」(以下、民法改正法案)が、10月14日、内閣から衆議院に提出されています。今回は、その内容を取り上げておきます。

 民法改正法案の第1条は、民法の第4編の諸規定を改正するものです。民法改正法案の提出「理由」は「子の権利利益を保護する観点から、嫡出の推定が及ぶ範囲の見直し及びこれに伴う女性に係る再婚禁止期間の廃止、嫡出否認をすることができる者の範囲の拡大及び出訴期間の伸長、事実に反する認知についてその効力を争うことができる期間の設置等の措置を講ずるとともに、親権者の懲戒権に係る規定を削除し、子の監護及び教育において子の人格を尊重する義務を定める等の措置を講ずる必要がある」と説明しています。ようやく、或る程度ではありますが民法が時代に追い付いてきたというところでしょう。

 まず目に付くのが、女性の再婚禁止期間を定める第733条を削除するものです。この規定の趣旨は嫡出推定の重複の回避による父子関係の紛争の防止にあるとされていますが、長らく、再婚禁止期間に合理的根拠があるかどうかの議論がなされていました。最判平成7年12月5日判時1563号81頁は、再婚禁止期間を6か月と定めていた民法第733条を合憲と評価しましたが、最大判平成27年12月16日民集69巻8号2427頁は、規定の趣旨を妥当としつつも6か月である必要はなく、100日でよいという趣旨の判断を示しました。この最高裁判所大法廷判決をきっかけとして再婚禁止期間が6か月から100日に短縮されましたが、医療技術の発展なども考慮すれば再婚禁止期間を定めること自体が問題であるという意見も強かったのです。そこで、改めて、第733条を削除するという案が出されたのでしょう。

 第733条を削除するのであれば、「再婚禁止期間内にした婚姻の取消し」という見出しの下に「第733条の規定に違反した婚姻は、前婚の解消若しくは取消しの日から起算して100日を経過し、又は女が再婚後に出産したときは、その取消しを請求することができない。」と定める第746条も不要となります(一部、漢数字を算用数字に改めています。以下も同様です)。そのため、民法改正法案は第746条を削除することも示しています。

 次に目に付くのが、「懲戒」という見出しの下に「親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。」と定める第822条の削除です。この規定も児童虐待事件との関連で以前から批判されており、2011年の改正時には第2項が削除され、2019年には「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」において見直しが明記されています〈さしあたり、松岡久和・中田邦博編『新・コンメンタール民法(家族法)」(2021年、日本評論社)186頁を参照しました〉。果たして、第822条の削除が児童虐待の防止にどれほど役に立つのか。それは未知数としか言えないでしょう。あるいは、逆にスポイルされたような児童が増えるかもしれません(私の懸念もここにあります)。

 その上で、現在の第821条(子の居所に関する規定)を第822条に移し、新たに「子の人格の尊重等」という見出しの下に「親権を行う者は、前条の規定による監護及び教育をするに当たっては、子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」とする第821条を追加します。おそらく、政治的立場などによって見解が分かれうる規定であり、国会の内外であれこれの議論があることでしょう。

 この他の改正点は、次のとおりです(色を付けた部分が改正部分)。

 ①「婚姻の届出の受理」を定ける第740条を「婚姻の届出は、その婚姻が第731条、第732条、第734条から第736条まで及び前条第2項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。」とする。

 ②第743条を「婚姻は、次条、第745条及び第747条の規定によらなければ、取り消すことができない。」と改める。

 ③第744条第1項を「第731条、第732条及び第734条から第736条までの規定に違反した婚姻は、各当事者、その親族又は検察官から、その取消しを家庭裁判所に請求することができる。ただし、検察官は、当事者の一方が死亡した後は、これを請求することができない。」と改める。

 ④第744条第2項を「第732条又は第733条の規定に違反した婚姻については、当事者の配偶者又は前配偶者前婚の配偶者も、その取消しを請求することができる。」と改める。

 ⑤第772条第1項を「妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする。」と改める。

 ⑥第772条第2項を「前項の場合において、婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定し、婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」に改める。

 ⑦第772条に「第1項の場合において、女が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に2以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定する。」という第3項を加える。

 ⑧第772条に「前3項の規定により父が定められた子について、第774条の規定によりその父の嫡出であることが否認された場合における前項の規定の適用については、同項中『直近の婚姻』とあるのは、『直近の婚姻(第774条の規定により子がその嫡出であることが否認された夫との間の婚姻を除く。)』とする。」という第4項を加える。

 ⑨第773条を「第733条第1項第772条の規定に違反して再婚婚姻をした女が出産した場合において、前条の規定によりその子の父を定めることができないときは、裁判所が、これを定める。」と改める。

 ⑩第774条を「第772条の規定により子の父が定められる場合において、父又は子は、子が嫡出であることを否認することができる。」と改める。

 ⑪第774条に「前項の規定による子の否認権は、親権を行う母、親権を行う養親又は未成年後見人が、子のために行使することができる。」という第2項を加える。

 ⑫第774条に「第1項に規定する場合において、母は、子が嫡出であることを否認することができる。ただし、その否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。」という第3項を加える。

 ⑬第774条に「第772条第3項の規定により子の父が定められる場合において、子の懐胎の時から出生の時までの間に母と婚姻していた者であって、子の父以外のもの(以下「前夫」という。)は、子が嫡出であることを否認することができる。ただし、その否認権の行使が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。」という第4項を加える。

 ⑭第774条に「前項の規定による否認権を行使し、第772条第4項の規定により読み替えられた同条第3項の規定により新たに子の父と定められた者は、第1項の規定にかかわらず、子が自らの嫡出であることを否認することができない。」という第5項を加える。

 ⑮第775条を「前条の規定による次の各号に掲げる否認権は、子又は親権を行う母それぞれ当該各号に定める者対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。

 一 父の否認権 子又は親権を行う母

 二 子の否認権 父

 三 母の否認権 父

 四 前夫の否認権 父及び子又は親権を行う母

 ⑯第775条に「前項第1号又は第4号に掲げる否認権を親権を行う母に対し行使しようとする場合において、親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。」という第2項を加える。

 ⑰第776条を「父又は母は、子の出生後において、その嫡出であることを承認したときは、それぞれその否認権を失う。」

 ⑫第777条を、次のように改める。

 「嫡出否認次の各号に掲げる否認権の行使に係る嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知ったそれぞれ当該各号に定める時から一年三年以内に提起しなければならない。

 一 父の否認権 父が子の出生を知った時

 二 子の否認権 その出生の時

 三 母の否認権 子の出生の時

 四 前夫の否認権 前夫が子の出生を知った時

 ⑬「夫が成年被後見人であるときは、前条の期間は、後見開始の審判の取消しがあった後夫が子の出生を知った時から起算する。」と定める第778条を、次のように改める。

 「第772条第3項の規定により父が定められた子について第774条の規定により嫡出であることが否認されたときは、次の各号に掲げる否認権の行使に係る嫡出否認の訴えは、前条の規定にかかわらず、それぞれ当該各号に定める時から1年以内に提起しなければならない。

 一 第772条第4項の規定により読み替えられた同条第3項の規定により新たに子の父と定められた者の否認権 新たに子の父と定められた者が当該子に係る嫡出否認の裁判が確定したことを知った時

 二 子の否認権 子が前号の裁判が確定したことを知った時

 三 母の否認権 母が第1号の裁判が確定したことを知った時

 四 前夫の否認権 前夫が第1号の裁判が確定したことを知った時

 ⑭第778条の2を加える。規定は、次のとおりです。

 第1項:「第777条(第2号に係る部分に限る。)又は前条(第2号に係る部分に限る。)の期間の満了前6箇月以内の間に親権を行う母、親権を行う養親及び未成年後見人がないときは、子は、母若しくは養親の親権停止の期間が満了し、親権喪失若しくは親権停止の審判の取消しの審判が確定し、若しくは親権が回復された時、新たに養子縁組が成立した時又は未成年後見人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、嫡出否認の訴えを提起することができる。

 第2項:「子は、その父と継続して同居した期間(当該期間が2以上あるときは、そのうち最も長い期間)が3年を下回るときは、第777条(第2号に係る部分に限る。)及び前条(第2号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、21歳に達するまでの間、嫡出否認の訴えを提起することができる。ただし、子の否認権の行使が父による養育の状況に照らして父の利益を著しく害するときは、この限りでない。

 第3項:「第774条第2項の規定は、前項の場合には、適用しない。

 第4項:「第777条(第4号に係る部分に限る。)及び前条(第4号に係る部分に限る。)に掲げる否認権の行使に係る嫡出否認の訴えは、子が成年に達した後は、提起することができない。

 ⑭第778条の3を追加する。この規定の見出しは「子の監護に要した費用の償還の制限」であり、条文は「第774条の規定により嫡出であることが否認された場合であっても、子は、父であった者が支出した子の監護に要した費用を償還する義務を負わない。」というものです。

 ⑮第778条の4を追加する。この規定の見出しは「相続の開始後に新たに子と推定された者の価額の支払請求権」であり、条文は「相続の開始後、第774条の規定により否認権が行使され、第772条第4項の規定により読み替えられた同条第3項の規定により新たに被相続人がその父と定められた者が相続人として遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしていたときは、当該相続人の遺産分割の請求は、価額のみによる支払の請求により行うものとする。」というものです。

 ⑯第783条第2項を第3項に移し、新たに「前項の子が出生した場合において、第772条の規定によりその子の父が定められるときは、同項の規定による認知は、その効力を生じない。」という第2項を加える。

 ⑰「子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができる。」と定める第786条を、次のように改める。

 見出し:「認知に対する反対の事実の主張」→ 「認知の無効の訴え

 第1項:「次の各号に掲げる者は、それぞれ当該各号に定める時(第783条第1項の規定による認知がされた場合にあっては、子の出生の時)から7年以内に限り、認知について反対の事実があることを理由として、認知の無効の訴えを提起することができる。ただし、第3号に掲げる者について、その認知の無効の主張が子の利益を害することが明らかなときは、この限りでない。

 一 子又はその法定代理人 子又はその法定代理人が認知を知った時

 二 認知をした者 認知の時

 三 子の母 子の母が認知を知った時

 第2項:「子は、その子を認知した者と認知後に継続して同居した期間(当該期間が2以上あるときは、そのうち最も長い期間)が3年を下回るときは、前項(第1号に係る部分に限る。)の規定にかかわらず、21歳に達するまでの間、認知の無効の訴えを提起することができる。ただし、子による認知の無効の主張が認知をした者による養育の状況に照らして認知をした者の利益を著しく害するときは、この限りでない。

 第3項:「前項の規定は、同項に規定する子の法定代理人が第1項の認知の無効の訴えを提起する場合には、適用しない。

 第4項:「第1項及び第2項の規定により認知が無効とされた場合であっても、子は、認知をした者が支出した子の監護に要した費用を償還する義務を負わない。

 次に、民法改正法案第2条です。これは児童福祉法の一部を改正する旨の規定であり、次のとおりとなっています。

 ①児童福祉法第33条の2第2項を「児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒及び教育に関し、その児童の福祉のため必要な措置を採るとることができる。ただし、体罰を加えることはできない。この場合において、児童相談所長は、児童の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」と改める。

 ②第47条第3項を「児童福祉施設の長、その住居において養育を行う第6条の3第8項に規定する厚生労働省令で定める者又は里親(以下この項において「施設長等」という。)は、入所中又は受託中の児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護、教育及び懲戒及び教育に関し、その児童の福祉のため必要な措置をとることができる。ただし、体罰を加えることはできない。この場合において、施設長等は、児童の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」と改める。

 続いて、民法改正法案第3条です。これは国籍法の一部を改正する旨の規定であり、「認知された子の国籍の取得」に関する第3条に「前二項の規定は、認知について反対の事実があるときは、適用しない。」という第3項を加えるものとなっています。

 まだ続きます。民法改正法案第4条は児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)の一部を改正する旨の規定であり、次のとおりとなっています。

 ①第14条の見出しを「親権の行使に関する配慮等」から「児童の人格の尊重等」に改める。

 ②「児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、体罰を加えることその他民法(明治29年法律第89号)第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超える行為により当該児童を懲戒してはならず、当該児童の親権の適切な行使に配慮しなければならない。」と定める第14条第1項を、「児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、児童の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」と改める。

 ③第15条を「民法(明治29年法律第89号)に規定する親権の喪失の制度は、児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護の観点からも、適切に運用されなければならない。」と改める。

 まだまだ続きます。民法改正法案第5条は人事訴訟法の一部を改正する旨の規定です。次のとおりとなっています。

 ①目次のうち第3章を「実親子関係訴訟の特例(第41条−第43条第45条)」、第4章を「養子縁組関係訴訟の特例(第44条第46条)」と改める。

 ②第27条第2項を「離婚、嫡出否認(父を被告とする場合を除く。)又は離縁を目的とする人事訴訟の係属中に被告が死亡した場合には、当該人事訴訟は、前条第2項の規定にかかわらず、当然に終了する。」と改める。

 ③第41条第1項を「夫が父が子の出生前に死亡したとき又は民法第777条(第一号に係る部分に限る。)若しくは第七百七十八条(第一号に係る部分に限る。)に定める期間内に嫡出否認の訴えを提起しないで死亡したときは、その子のために相続権を害される者その他夫その他父の三親等内の血族は、父の死亡の日から一年以内に限り、嫡出否認の訴えを提起することができる。この場合においては、夫の死亡の日から1年以内にその訴えを提起しなければならない。」と改める。

 ②第41条第2項を「が嫡出否認の訴えを提起した後に死亡した場合には、前項の規定により嫡出否認の訴えを提起することができる者は、の死亡の日から6月以内に訴訟手続を受け継ぐことができる。この場合においては、民事訴訟法第124条第1項後段の規定は、適用しない。」と改める。

 ③第41条に「民法第774条第4項に規定する前夫は、同法第775条第1項(第4号に係る部分に限る。)の規定により嫡出否認の訴えを提起する場合において、子の懐胎の時から出生の時までの間に、当該前夫との婚姻の解消又は取消しの後に母と婚姻していた者(父を除く。)がいるときは、その嫡出否認の訴えに併合してそれらの者を被告とする嫡出否認の訴えを提起しなければならない。」という第3項を加える。

 ④第41条に「前項の規定により併合して提起された嫡出否認の訴えの弁論及び裁判は、それぞれ分離しないでしなければならない。」という第4項を加える。

 ⑤現行の第44条を第46条に移す。

 ⑥現行の第43条を第45条に移し、その第1項を「子、母、母の配偶者又はその前配偶者前婚の配偶者又はその後婚の配偶者は、民法第773条の規定により父を定めることを目的とする訴えを提起することができる。」に改める。

 ⑦第45条(現行の第43条)第2項第1号を「子又は母 母の配偶者及びその前配偶者前婚の配偶者及びその後婚の配偶者(その一方が死亡した後は、他の一方)」に改める。

 ⑧第45条(現行の第43条)第2項第2号を「母の配偶者 母の前配偶者」から「母の前婚の配偶者 母の後婚の配偶者」に改める。

 ⑨第45条(現行の第43条)第2項第3号を「母の前配偶者 母の配偶者」から「母の後婚の配偶者 母の前婚の配偶者」に改める。

 ⑩現行の第42条を第44条とする。

 ⑪新たに第42条を追加する。この規定の見出しは「嫡出否認の判決の通知」であり、条文は「裁判所は、民法第772条第3項の規定により父が定められる子について嫡出否認の判決が確定したときは、同法第774条第4項に規定する前夫(訴訟記録上その氏名及び住所又は居所が判明しているものに限る。)に対し、当該判決の内容を通知するものとする。」というものです。

 ⑫新たに第43条を追加する。この規定は、次のとおりとなっています。

 見出し:「認知の無効の訴えの当事者等

 第1項:「第41条第1項及び第2項の規定は、民法第786条に規定する認知の無効の訴えについて準用する。この場合において、第41条第1項及び第2項中『父』とあるのは『認知をした者』と、同条第1項中『第777条(第1号に係る部分に限る。)若しくは第778条(第1号』とあるのは『第786条第1項(第2号』と読み替えるものとする。

 第2項:「子が民法第786条第1項(第1号に係る部分に限る。)に定める期間内に認知の無効の訴えを提起しないで死亡したときは、子の直系卑属又はその法定代理人は、認知の無効の訴えを提起することができる。この場合においては、子の死亡の日から1年以内にその訴えを提起しなければならない。

 第3項:「子が民法第786条第1項(第1号に係る部分に限る。)に定める期間内に認知の無効の訴えを提起した後に死亡した場合には、前項の規定により認知の無効の訴えを提起することができる者は、子の死亡の日から6月以内に訴訟手続を受け継ぐことができる。この場合においては、民事訴訟法第124条第1項後段の規定は、適用しない。

 さらに続きます。民法改正法案第6条は家事事件手続法の一部を改正する旨の規定です。次のとおりとなっています。

 ①目次のうち第3編第2章を「合意に相当する審判(第277条−第283条第283条の3)」に改める。

 ②第159条第2項を「第118条の規定は、嫡出否認の訴えの特別代理人の選任の審判事件における父及び民法第774条第4項に規定する前夫について準用する。」に改める。

 ③第283条を「が嫡出否認についての調停の申立てをした後に死亡した場合において、当該申立てに係る子のために相続権を害される者その他三親等内の血族がの死亡の日から一年以内に嫡出否認の訴えを提起したときは、がした調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。」と改める。

 ④新たに第283条の2を追加する。この規定の見出しは「嫡出否認の審判の通知」であり、条文は「家庭裁判所は、民法第772条第3項の規定により父が定められる子の嫡出否認についての合意に相当する審判が確定したときは、同法第774条第4項に規定する前夫(事件の記録上その氏名及び住所又は居所が判明しているものに限る。)に対し、当該合意に相当する審判の内容を通知するものとする。」というものです。

 ⑤新たに第283条の3を追加する。この規定の見出しは「認知の無効についての調停の申立ての特則」であり、条文は次のとおりとなっています。

 第1項:「認知をした者が認知について反対の事実があることを理由とする認知の無効についての調停の申立てをした後に死亡した場合において、当該申立てに係る子のために相続権を害される者その他認知をした者の三親等内の血族が認知をした者の死亡の日から1年以内に認知について反対の事実があることを理由とする認知の無効の訴えを提起したときは、認知をした者がした調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。

 第2項:「子が認知について反対の事実があることを理由とする認知の無効についての調停の申立てをした後に死亡した場合において、子の直系卑属又はその法定代理人が子の死亡の日から1年以内に認知について反対の事実があることを理由とする認知の無効の訴えを提起したときは、子がした調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。

 ⑥別表第一の59の項における第775条を第775条第2項に改める。

 そして、民法改正法案第7条は「生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」の一部を改正する旨の規定です。次のとおりとなっています。

 ①第10条の見出しを「他人の精子を用いる生殖補助医療に同意をした夫による嫡出の否認の禁止より出生した子についての嫡出否認の特則」に改める。

 ②第10条を「妻が、夫の同意を得て、夫以外の男性の精子(その精子に由来する胚を含む。)を用いた生殖補助医療により懐胎した子については、夫は夫、子又は妻は民法第774条第774条第1項及び第3項の規定にかかわらず、その子が嫡出であることを否認することができない。」

 以上が民法改正法案の本則です。附則は、施行期日を定める第1条のみを紹介しておきましょう。次のとおりです。

 「この法律は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第1条中民法第822条を削り、同法第821条を同法第822条とし、同法第820条の次に一条を加える改正規定並びに第2条及び第4条の規定は、公布の日から施行する。」

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

執行停止が決定された訴訟の判決が出された

2022年10月29日 21時15分00秒 | 法律学

 2021年11月30日23時21分30秒付で掲載した「宮崎地方裁判所が執行停止を決定」の続報と言うべき内容となります。

 宮崎日日新聞社が報じたところによると「西都市の橋田和実市長が西都児湯医療センター理事長に対して行った解任処分は、地方独立行政法人法が定める裁量権を逸脱・濫用しているとして、濱砂重仁理事長が市を相手取り、処分取り消しを求めた訴訟の判決で、宮崎地裁(後藤誠裁判長)は26日、濱砂理事長側の請求を認め、処分を取り消した」とのことです。

 以上は2022年10月27日付の「西都児湯医療センター理事長解任取り消し 宮崎地裁判決」という記事によるものですが、同社のサイトには全文が掲載されていないので、詳細はわかりません(朝刊か携帯サイトならわかるようです)。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第208回国会に衆議院議員提出法律案第53号として出された「民法の一部を改正する法律案」

2022年09月26日 07時00分00秒 | 法律学

 夫婦の氏をどのようにするかは、ここ何十年か議論され続けています。国の法制審議会も、1996年2月26日に決定した「民法の一部を改正する法律案要綱」(以下、法律案要綱)において選択的夫婦別姓制度の採用を打ち出しています。次のとおりです。

 「第三 夫婦の氏

 一 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。

 二 夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとする。

 第四 子の氏

 一 嫡出である子の氏

 嫡出である子は、父母の氏(子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏)又は父母が第三、二により子が称する氏として定めた父若しくは母の氏を称するものとする。

 二 養子の氏

 1 養子は、養親の氏(氏を異にする夫婦が共に養子をするときは、養親が第三、二により子が称する氏として定めた氏)を称するものとする。

 2 氏を異にする夫婦の一方が配偶者の嫡出である子を養子とするときは、養子は、1にかかわらず、養親とその配偶者が第三、二により子が称する氏として定めた氏を称するものとする。

 3 養子が婚姻によって氏を改めた者であるときは、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、1、2を適用しないものとする。

 三 子の氏の変更

 1 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができるものとする。ただし、子の父母が氏を異にする夫婦であって子が未成年であるときは、父母の婚姻中は、特別の事情があるときでなければ、これをすることができないものとする。

 2 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、1にかかわらず、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏又はその父若しくは母の氏を称することができるものとする。

 3 子の出生後に婚姻をした父母が氏を異にする夫婦である場合において、子が第三、二によって子が称する氏として定められた父又は母の氏と異なる氏を称するときは、子は、父母の婚姻中に限り、1にかかわらず、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができるものとする。ただし、父母の婚姻後に子がその氏を改めたときは、この限りでないものとする。

 4 子が15歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、1から3までの行為をすることができるものとする。

 5 1から4までによって氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができるものとする。」

 しかし、20世紀に提案されたにもかかわらず、現在に至るまで実現していません。

 法律案要綱の中には、21世紀に入ってから民法の改正として実現した部分もあり、例えば、相続分における嫡出子と非嫡出子との差別を撤廃する部分もあり、これは2013年の最高裁判所大法廷決定を経て民法第900条第4号ただし書きの削除として実現しています。その意味において、選択的夫婦別姓制度の採用は残された課題であり続けた訳です。

 このところ、毎年のように改正されている民法ですが、所有者不明土地問題を睨んだ改正は政府・与党の側から積極的に進められるのに対し、親族法の改正はあまり進まないように見受けられます。民法第900条や第733条の場合は最高裁判所大法廷の判決または決定を受ける形での改正が行われましたが、夫婦同姓を定める第750条については最高裁判所大法廷が合憲とする決定を下しています。

 こういう状況にしびれを切らしたということでしょうか、選択式夫婦別姓に関する法律改正案が内閣提出法律案として実現しないからか、第208回国会において、野党側(会派は立憲民主党・無所属、国民民主党・無所属クラブ、日本共産党、れいわ新選組)から衆議院議員提出法律案第53号として「民法の一部を改正する法律案」が提出されました。

 法律案は、次のようなものです(なお、衆議院のサイトから引用したことをお断りしておきます。また、漢数字は原則として算用数字に改めています)。

 

 民法(明治29年法律第89号)の一部を次のように改正する。

 第749条中「第790第1項ただし書」を「第790条第1項(子の出生前に父母が離婚したときに係る部分に限る。)」に改める。

 第750条中「夫又は妻の氏」を「夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏」に改める。

 第790条第1項中「、父母の氏」の下に「(子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏)又はその出生の際に父母の協議で定める父若しくは母の氏」を加え、同項ただし書を削り、同条第2項を同条第5項とし、同条第1項の次に次の3項を加える。

 2 前項の協議が調わないとき又は同項の協議をすることができないとき(次項及び第四項の場合を除く。)は、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。

 3 子が称する氏を第一項の協議で定める場合において、父母の一方が死亡し又はその意思を表示することができないときは、子は、他の一方が定める父又は母の氏を称する。

 4 子が称する氏を第一項の協議で定める場合において、父母の双方が死亡し又はその意思を表示することができないときは、家庭裁判所は、子の親族その他の利害関係人の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。

 第791条第2項中「父母と」を「父母の双方と」に、「許可を得ないで」を「規定にかかわらず」に改め、「父母の氏」の下に「又はその父若しくは母の氏」を加え、同条第4項中「前3項」を「前各項」に改め、同項を同条第5項とし、同条第3項中「前2項」を「前3項」に改め、同項を同条第4項とし、同条第2項の次に次の一項を加える。

 3 子の出生後に婚姻をした父母が氏を異にする夫婦である場合には、子は、父母の婚姻中に限り、第1項の規定にかかわらず、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。ただし、父母の婚姻後に子がその氏を改めたときは、この限りでない。

 第810条を次のように改める。

 (養子の氏)

 第810条 養子は、養親の氏(氏を異にする夫婦が共に養子をする場合において、養子が15歳未満であるときは、養親の協議で定めた養親の一方の氏、養子が15歳以上であるときは、当事者の協議で定めた養親の一方の氏)を称する。

 2 氏を異にする夫婦の一方が配偶者の嫡出である子を養子とする場合において、養子は、前項の規定にかかわらず、養子が15歳未満であるときは、養親とその配偶者の協議で定めた養親又はその配偶者の氏(配偶者がその意思を表示することができないときは、養親が定めた養親又はその配偶者の氏)、養子が15歳以上であるときは、当事者の協議で定めた養親又はその配偶者の氏(配偶者がその意思を表示することができないときは、養親と養子の協議で定めた養親又はその配偶者の氏)を称する。

 3 養子が婚姻によって氏を改めた者であるときは、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、前2項の規定を適用しない。

   附 則

 (施行期日)

 第1条 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次条の規定は、公布の日から施行する。

 (法制の整備等)

 第2条 政府は、この法律の施行の日までに、この法律を施行するために必要な法制の整備その他の措置を講ずるものとする。

 (経過措置)

 第3条 この法律の施行前に婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、婚姻中に限り、配偶者との合意に基づき、この法律の施行の日から2年以内に、別に法律で定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏に復することができる。

 2 前項の規定により父又は母が婚姻前の氏に復した場合には、子は、父母の婚姻中に限り、父母が同項の届出をした日から3月以内に、別に法律で定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏に復した父又は母の氏を称することができる。この場合においては、この法律による改正後の民法第791条第4項及び第5項の規定を準用する。

 [注:上の「3月」は英語のMarchの意味ではなく、3か月のことです。

     理 由

 最近における国民の価値観の多様化及びこれを反映した世論の動向等に鑑み、個人の尊重と男女の対等な関係の構築等の観点から、選択的夫婦別氏制を導入する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

 

 内容は法律案要綱とほぼ同一と考えてよいでしょう。しかし、与党側で行われている事前審査(何日か前の朝日新聞朝刊においても取り上げられています)のために、選択式夫婦別姓制度は、少なくとも現在の衆議院議員の任期が終了するまで、実現することはないものと思われます。「選択的」という言葉が付されているように、夫婦が同姓にするか別姓にするかはその夫婦が決めればよいだけの話です。

 世界を見渡せば姓(あるいは氏、名字)がないところもありますので(例、アイスランド、ミャンマー、モンゴル)、こうしたところからすれば夫婦同姓か夫婦別姓かなどという議論は馬鹿らしいものと思われるかもしれません(但し、父称などの存在を見落としてはなりませんが)。日本の歴史を見れば、姓を名乗ることができなかった身分があった時代もありますし、天皇から新たに姓を与えられたという事例も少なくありません。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自治事務と法定受託事務との区別について、気になる記述

2022年08月18日 00時00分00秒 | 法律学

 公表された時期が時期なので今更という感じは拭えませんが、自治実務セミナー2021年1月号に掲載されている「私と地方自治—松本英昭氏に聞く」という記事に、自治事務と法定受託事務との区別に関して気になる記述がありました。

 聞き手の鎌田司氏が「自治事務と法定受託事務という仕分けは地方自治法(昭和22年法律67号)の別表に書かれていますが、今後見直しが必要になっていくでしょうか。(中略)地方の側から見れば、自由度の拡大という面について考えてみても、思い描いたとおりになっていないところがあるのではないでしょうか。あれから20年たちますが、この法定受託事務を自治事務に変えるとか、自由度を拡大するという議論は、あまりない様子ですが」と問います。

 これに対し、松本英昭氏は、おそらくは自治事務次官を務められた経験に由来するものと思われますが、次のように答えています。

 「それはあっていいと思います。(中略)役割分担原則というものをつくっていかないと、逆に吸い上げられてしまうのですよ。地方の自由度を拡大しようと思っても、それだけでは、なかなか進まないのです。」

 「私は自治事務も法定受託事務も、どちらも合わせて自治事務でよい、という考えなのです。自治事務の中で、性格の違ったものがあるから、全体的な視点からの役割分担原則が必要という考えです。」

 「やはり全体を自治事務にして、その中に性格の違うものがあるという形で整理した方がよいのではないか、と思いますね。自治事務というのは、”自治体事務”ですからね。」

 ここで、自治事務および法定受託事務について記しておきましょう。

 まず、自治事務とは、地方自治法第2条第8項によって法定受託事務でない事務と定義されるものです。

 これに対し、法定受託事務とは、同第9項により、第1号法定受託事務(法律またはこれに基づく政令によって地方公共団体が処理すべきものとされているが、本来は国が果たすべき役割に係るものであって、国においてその適正な処理をとくに確保する必要があるとして、とくに法律またはこれに基づく政令に定められるもの。別表第一に列挙される)と、第2号法定受託事務(法律またはこれに基づく政令によって市町村または特別区が処理すべきものとされているが、本来は都道府県が果たすべき役割に係るものであって、都道府県においてその適正な処理をとくに確保する必要があるとして、とくに法律またはこれに基づく政令に定められるもの。別表第二に列挙される)とに分けられています。

 両者の区別は、国または都道府県による都道府県または市町村への関与の仕方などによるものと考えていただければよいでしょう。しかし、基準の曖昧さもあってか、両者の相違は今ひとつわかりにくく、それが法定受託事務の拡大につながっているというような指摘を生むことにもなるのでしょう。

 国と地方との役割分担については、地方自治法第1条の2に明示されています。これについて、松本氏は、この規定に示されるところが「確かに大原則としてありますが、それだと、広すぎますよね。その中身を、性質や目的に鑑みて整理する必要があるということです」と述べます。これを受けて鎌田氏が「これは本来は、第二次地方分権改革で検討されるべきことだったのかな、と思いますけれども」と発言すると、松本氏は「そうですね、私も期待していたのですが、第二次地方分権改革では残念ながら、その議論が深まらなかったようですね」と受けます。

 なるほど、と思いました。地方分権改革推進委員会の勧告を読み返しても、役割分担原則の十分な深化が見られる訳でもなく、むしろ或る段階から地方公共団体間の格差(とくに財源なり財政力なりについての)が強調されるようになり、地方分権改革は中途半端な形で実質的に終了させられたと考えられるのです。

 まだ十分な検証をした訳でもないのですが、地方自治総合研究所の地方自治立法動向研究会において地方税財政法を見続けている私は、地方分権と地方創生との間に一種の断絶を目にせざるをえないという実感を得ています。役割分担原則の深化がなかったために、例えば地方法人税法や森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律に見られるように、国から地方への税源移譲ではなく、地方から国への税源移譲(これを逆移譲ということがあります)が行われたとも考えられるのです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

直接消費税と間接消費税との区別を、直接税と間接税との区別と勘違いした?

2022年08月03日 11時05分00秒 | 法律学

 私が担当している講義「法学特殊講義2A」のレポート課題で、直接消費税と間接消費税との区別について出題しました。

 指定した教科書[石村耕治編『税金のすべてがわかる現代税法入門塾』〔第11版〕(2022年、清文社)]、その他の租税法や財政学の教科書を読めばすぐにわかると思うのですが、誤答が続出しました。

 誤答の多くは、タイトルに示したように、直接消費税と間接消費税との区別を、直接税と間接税との区別と勘違いしたものでした。そのため、直接消費税として所得税、法人税、相続税があげられる始末です。所得税、法人税、相続税が消費税に分類される訳がありませんので、直接税と勘違いしたのでしょう。実際、直接税と間接税との区別について書いていたレポートが少なくないのです。

 ここで説明をしておきましょう。

 直接消費税は、直接的に消費行為を課税対象とするものをいいます。代表例はゴルフ場利用税や入湯税です。過去に存在した古都文化観光税(奈良県。奈良地判昭和43年7月17日行集19巻7号1221頁も参照してください)や古都保存協力税(京都市。京都地判昭和59年行集35巻3号353頁も参照してください)も、直接消費税の一種です。直接消費税の納税義務者は消費行為を行った者ですが、物品またはサーヴィスの提供者が徴収納付義務者として、課税主体に代わって徴収を行い(料金と一緒に)、その徴収した税を課税主体に納付するのです。

 一方、間接消費税は、直接的に消費行為を課税対象とするのではなく、資産の譲渡などを課税の対象とするものであり、税負担が最終的に消費者に転嫁されることが予定されている税をいいます。代表例が消費税法に規定される消費税や地方消費税、酒税、たばこ税です。消費行為を行った者、つまり消費者が納税義務者とならない点において、直接消費税と異なります(但し、輸入取引の消費税の場合は別です)。間接消費税の納税義務者は、税目によって異なりますが、話を物品に限りますと物品の製造者、引取者または販売者となります。

 教科書などはしっかりと読みましょう。その上で、レポートを書く際には、予め、メモを取るなり何なりをしておきましょう。

 消費税ということで言えば、ややこしい言葉遣いがあるのも事実です。その代表が不課税取引と非課税取引です。講義の場でも「不」と「非」とは違うと言いました。不課税取引のことを課税対象外取引とも言いますので、不課税取引という言葉を使わないほうがよいのかもしれませんが、何故かよく使われるのです。

 念のために説明しておきますと、不課税取引(課税対象外取引)は当初より消費税の課税対象から外されている取引のことを言います。これに対し、非課税取引は、本来なら課税対象取引であるもののうち、消費税法第6条に規定されるもの(第1項:別表第一、第2項:別表第二)のことです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

森林環境税は国税なのですが

2022年07月16日 00時00分00秒 | 法律学

 私が「国税としての森林環境税」(大東法学71号掲載)および「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律(平成31年3月29日法律第3号)」(地方自治関連立法動向第7集掲載)で記したように、森林環境税は国税です。

 しかし、ぎょうせいから刊行されている『税務六法』においては、地方税の編において扱われています。

 最初に見た時には頭の中に疑問符が浮かびましたが、実質的には個人住民税の均等割の上乗せであり、賦課徴収の事務を市町村が行うこととなっていますから、地方税として扱われてもおかしくありません。また、不服審査、犯則事件などについても地方税法の規定が適用されることになっているので、編別として地方税としたのでしょう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする