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ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

1964年東京オリンピックが東京を壊した……

2025年01月18日 23時45分00秒 | 本と雑誌

 何年か前のこと、青葉台であったか、『エゴ 加藤和彦、『加藤和彦』を語る」という本を購入し、何度か読み返していました。或る事情で手放したのですが、昨年(2024年)、別の出版社から『あの素晴らしい日々 加藤和彦、『加藤和彦』を語る』として再出版されました。青葉台で知ったのですが、別の書籍を買わなければならなかったので見送り、今年になってから二子玉川で購入しました。

 その174頁に書かれていた、前田祥丈氏による言葉が、何故か強く印象に残りました。少し長くなりますが、引用の上で紹介しておきます。

 「はっぴいえんどが主題としていたのは、東京の戦後世代が抱く〈喪失感〉だった。彼らは、多感な思春期に東京オリンピックを体験していた。東京オリンピックは戦後復興した日本が高度成長に向かうジャンピングボードであるとともに、日本人が自信を回復したことを世界に宣言する祭典だった。

 しかし、東京の子供たちのなかには、ある日突然、遊び場だった空き地が広い道路になったり、自分の家や友達の家が取り壊されるなど、身の回りの風景が一変してしまう体験をした者も少なくなかった。彼らは、東京が未来に向かって大きく変わろうとしていることにワクワクしながらも、それまでの日常にあった風景を奪い去られてしまった喪失感を同時に痛感していた。

 人が成長するということは、子供の時代を喪失することでもあるというのは真理だけれど、東京オリンピックは、彼らにとって理不尽な通過儀礼でもあった。無理やりに子供時代の風景を奪われ、未知の世界に放り出された喪失感はトラウマとなるに十分なものであった。」

 私は東京オリンピックの4年後に生まれたので、勿論、体験などしていません。しかし、理由はわからないけれどもしっくりくるのです。昨今、東京のあちらこちらで行われている再開発を見ているからでしょう。同じことの繰り返しのようにも思えるのです。

 おそらくは前田さんが書かれたことと基本的に同じことを、まさにはっぴいえんどのメンバーであった細野晴臣さんは、もっと強い言葉で語っていました。細野晴臣・北中正和『細野晴臣インタビュー THE ENDLESS TALKING』(平凡社ライブラリー)を御覧ください(これも、残念ながら手放してしまいました)。

 だいぶ前、まだ刊行されたばかりの時であったと記憶していますが、妻が島崎今日子『安井かずみがいた時代』(集英社)を購入しました。後に集英社文庫として出版されましたが、妻が手に入れたのは、文庫ではなく単行本です。よくあることなのかどうかわかりませんが、妻の何十倍、何百倍も私が繰り返し読んでいました。加藤和彦と安井かずみが夫婦であったことは、それこそ小学生時代か中学生時代から知っていましたし、加藤和彦の音楽、安井かずみの歌詞は、至る所で聞こえてきたからです。ただ、それだけではなく、何か特別の物があったから、私は『安井かずみがいた時代』を何度も読み、所々に赤鉛筆で線を引いていたのでしょう。

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おしらせです(2024年11月29日)

2024年11月29日 00時00分00秒 | 本と雑誌

 管理人の権限を利用して、おしらせです。

 実は2024年7月に刊行されていますが、地方自治総合研究所のサイトに、公益財団法人地方自治総合研究所の「地方自治関連立法動向 第9集 第203臨時会~第207臨時会」が掲載されています。

 この中に、私が書いた次の3本の論文が掲載されています。

 「方税法等の一部を改正する法律(令和3年3月31日法律第7号

 「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年5月19日法律第37号)による個人情報保護法制度の改正

 「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律(令和3年5月19日法律第40号)

 御一読をいただければ幸いです。

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『カフカ断片集』(新潮文庫)に書かれていたこと 3

2024年06月10日 00時00分00秒 | 本と雑誌

 これはかなり痛烈な断片です。死者に追い討ちをかけるようなものですし、強く批判されていてもおかしくありません。しかし、カフカはそう考えていたということです。

 「自殺者とは、監獄の中庭に絞首台が立てられたのを見て、あれは自分のための絞首台とかんちがいして、夜中に独房から抜け出し、庭におりて、自分で首をつる囚人のようなものだ。」

 以上の言葉に対して、私は、敢えて論評や感想などを加えません。

 さて、皆様はどのように思われるでしょうか。

 

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『カフカ断片集』(新潮文庫)に書かれていたこと 2

2024年06月05日 00時00分00秒 | 本と雑誌

 ドイツ語の原文で読んでみたいと思いました。

 現代でも、いや今後もますます妥当することでしょうか。

 「抑圧されている者たちに対して、特権を持つ者たちは、その責任を果たすと言って配慮してみせるが、しかしその配慮こそ、特権を維持するためのものにほかならないのだ。」

 同じことを記している人は他にもいたように記憶しています。それだけ、厳然たる真実なのでしょう。

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『カフカ断片集』(新潮文庫)に書かれていたこと

2024年06月02日 00時00分00秒 | 本と雑誌

 気になるページに付箋を貼りながら読んでいました。

 これは、「或る意味でそうだ」と納得するとともに、「こうであってはならない」とも思うものです。

 「そう、あらゆる教育は、おそらく2種類に分けられる。

 ひとつは、まだ何も知らない子どもたちが、真実に向かって猛烈に突進していくのを防ぐこと。

 もうひとつは、骨抜きにされた子どもたちを、そっと、気づかれないように徐々に、虚偽へと導いていくことだ。」

 世に様々な教育論が溢れていますが、端的に、しかし見事に、実態を言い当てているのではないでしょうか。

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おしらせです(2024年4月18日)

2024年04月18日 09時00分00秒 | 本と雑誌

 管理人の権限を利用して、おしらせです。

 清文社から、石村耕治編「税金のすべてがわかる現代税法入門塾」、通称「現税塾」の第12版が発売されました。

 私は、この本の第7版から執筆者の一員に加わっています。勿論、この第12版も、です。

 御一読をいただければ幸いです。

 なお、「現税塾」は、私が担当する講義「税法A」(前期、火曜日)、「税法B」(後期、火曜日)、「法学特殊講義2A」(前期、木曜日)および「法学特殊講義2B」(後期、木曜日)の教科書としております。

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お知らせです(2024年4月2日)

2024年04月02日 10時30分00秒 | 本と雑誌

 管理人の権限を利用して、お知らせです。

 ぎょうせいから、月刊誌の「税」2024年4月号(第79巻第4号)が刊行されました(3月29日に、ぎょうせいのサイトで紹介されています)。

 この中の「巻頭言」として、私の「森林環境税の賦課徴収が始まる」が掲載されました。

 一読をいただければ幸いです。

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面白いフレーズ 4

2023年08月07日 22時39分30秒 | 本と雑誌

 ライナスが安心毛布を二つに裂き、一つをチャーリー・ブラウンに分けて言うのが次のセリフです。

 Happiness should be shared!

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榎本博明『教育現場は困ってる 薄っぺらな大人をつくる実学志向』(平凡社新書)

2023年08月02日 00時00分00秒 | 本と雑誌

 タイトルに示したのは、先日、地元で購入した本です。私も大学の教育現場におりますので「そうだよなあ」と思いつつ読んでいました。

 この本で強調されているのが日本語の読解力不足であり、会話偏重の英語の授業です。私は第二外国語の非必修化も懸念すべき事柄であると考えていますが、読解力不足は常に感じており、とくに期末試験の採点の時期に頭痛と腹痛が同時に発生しかねないほどに痛感するのです。アクティブ・ラーニングなどと言われますが、基本が根付いていないのにアクティブ・ラーニングなど無理だと思っているのです。それだけに、榎本氏が「まずは多様な知識の吸収に徹することが大切だ。体系化など考えずに、バラバラでもいいから吸収する。バラバラな方が、後で自由自在に結びつけることができる」と書かれていることには同感せざるをえません。このことは、演習(ゼミ)をやるとすぐにわかります。報告の大前提である知識の吸収ができていないので、演習の報告ができていない訳です。いや、書き方が悪いかもしれませんが、演習(ゼミ)が成立しない場合が少なくありません。

 今回取り上げた榎本氏の本を読んでいて思い出したのが、J.S.ミルの講演です。まともな教育関係者なら、この講演を読んで日本の現状について憂慮せざるをえないはずです。私は、「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の就学及び就業の促進に関する法律(平成30年6月1日法律第37号)」という論文において、次のように記しました(原文の脚注は本文に組み込みました)。

 

 ジョン・ステュアート・ミル(John Stuart Mill, 1806-73)は、1867年2月1日のセン ト・アンドリューズ大学名誉学長就任演説において「大学は職業教育の場ではありません。大学は、生計を得るためのある特定の手段に人々を適応させるのに必要な知識を教えることを目的とはしていないのです。大学の目的は、熟練した法律家、医師、または技術者を養成することではなく、有能で教養ある人間を育成することにあります」と述べている〈ジョン・ステュアート・ミル(竹内一誠訳)『大学教育について』(岩波文庫、2011年)12頁〉。

 学校教育を受けたことがなく、大学教員としての経歴もない彼が大学の役割をこのように理解し、表明したことは、彼が幼少時に受けた英才教育、『論理学体系』(A System of Logic, Ratiocinative and Inductive, 1843)、『経済学原理』(Principle of Political Economy, 1848)、『自由論』(On Liberty, 1859)などの古典を著してきたという経歴に由来するものであるにしても、驚嘆すべき事実であり、その慧眼に感嘆せざるをえない。かように高邁な思想は、現代の世界ではもはや通用しないのかもしれないが、こと日本においてはそれが顕著である。竹内洋氏は「いまや大学改革のキーワードが『アカウンタビリティ』(説明責任)や『ステークホルダー』(利害関係者)などの市場経済用語になっているように、大学時代がビジネス文化に侵食されはじめている。覆いつくさんばかりの『商業精神』(ビジネス文明)の自浄作用を担うのは教養教育をおいてほかにないはずである」と指摘する〈ミル(竹内訳)・前掲書173頁〔竹内洋氏による「【解説】教養ある公共知識人の体現者J.S.ミル」〕〉。

 

 榎本氏も実学偏重に危機感を示しています。これは榎本氏に限らず、大学の講義や演習を担当したことのある者の多くにも共有されていることでしょう。「法律学は実学だろう?」と言われるかもしれませんが、実際に学んでみると、例えば社会科であれば政治、経済はもとより、倫理、地理、歴史についての知識も必要であることがすぐにわかります。分野によっては他の知識も必要になります。教養がなければ薄っぺらい、いや、使い物にならない実学にしかなりません。このように書くのは、私自身が、これまでに身につけてきた教養の薄さを悟っているからです。

 このことは、COVID-19で明らかになったのではないでしょうか。日本の製薬会社は、結局、2020年にワクチンを作り出すことができなかったのです。勿論、歴史的経緯があることを否定する訳ではありませんが、理系の分野でも実学偏重があり、基礎科学が疎かにされてきたためでもあります(そのほうが重いでしょう)。私の前掲論文から引用させていただくならば「大学が高等教育機関としての使命を果たすことよりも、時の政権や経済界の意向に振り回され、産業競争力の強化のための駒に堕するようでは(科学)研究力が低下するのも当然である」のです。

 もう一つだけ記せば、「失われた30年」などと言われ、ITについては後進国ともなることとなった日本の長期低落傾向は、このブログで何度か記し、安藤忠雄氏も口にした成功は失敗のもと」を実証しているように思われます。記憶が定かではありませんが、たしか、野村克也氏は、成功に必然はなく、失敗に偶然はないという意味のことを言われていました。これも、「失敗は成功のもと」よりも「成功は失敗のもと」のほうが妥当性が強いことを示していないでしょうか。野村氏はそのことを理解されていたように思われます。

 私が「成功は失敗のもと」と繰り返しているのは、20世紀後半の高度経済成長の最中に生まれ、1980年代後半のバブル景気とバブル崩壊、そして1990年代以降の「夢をもう一度」を体験しているからです。高度経済成長は、日本を豊かにしましたが、同時に日本の謙虚さなどを失わせたりしたのです。歴史を紐解くと、国の最盛期と言われる時代に衰退の原因の多くがつくられていることもわかります。平家物語の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。奢れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ」は、その直後に中国史の現実が端的に指摘されていることにより、名文であり名言である訳であるのでしょう。

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おしらせです(2023年4月13日)

2023年04月13日 10時00分00秒 | 本と雑誌

 管理人の権限を利用して、お知らせです。

 有斐閣から、ジュリスト1583号・令和4年度重要判例解説が本日刊行されました。

 この中の「行政法4 懲戒処分により停職期間中の公務員が行った同僚等への働き掛けを理由とする停職6月の懲戒処分の適法性」が、私の担当部分です。

 お読みいただければ幸いです。

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