ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

またまたおしらせです(2013年3月30日)

2013年03月30日 21時09分15秒 | デジタル・インターネット

 日本ビデオニュースのサイトに「ニュース・コメンタリー」という記事および動画のコーナーがあります。今日付で「一票の格差訴訟続報 選挙無効判決は裁判所の危機感の表れ」(http://www.videonews.com/news-commentary/0001_3/002714.php)が掲載されています。

 この記事および動画に、私が登場しています。御覧いただければ幸いです。

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おしらせです(2013年3月30日)

2013年03月30日 07時27分40秒 | 本と雑誌

 管理人の権限を利用して、お知らせです。

 日本評論社から、新・判例解説編集委員会編『速報判例解説 Vol. 12 新・判例解説Watch[2013年4月](法学セミナー増刊)』が発売されました。この中の「租税法3 株主会員制ゴルフ会員権の性質および譲渡所得に係る取得費の計算が争われた事例」を、私が担当しています。中身は東京地方裁判所平成23年12月13日判決の解説です。

 御一読をいただければ幸いです。

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今度は初の無効判決

2013年03月26日 09時03分10秒 | 法律学

 昨日の速報メールで知りましたが、今日の朝日新聞朝刊1面14版トップ記事、日本経済新聞朝刊1面14版トップ記事のいずれも、昨日の広島高等裁判所判決を取り上げています。

 これまで、昨年12月の衆議院議員総選挙については「一票の格差」を理由として「違憲」または「違憲状態」とする判決が相次ぎました。しかし、選挙そのものを無効とする判決は出されてこなかったのです。今月9日付でこのブログに掲載した「『一票の格差』に対する違憲判決(事情判決)」において述べたように、行政事件訴訟法第31条に規定される事情判決という手法を用いてきたのです。しかし、公職選挙法第219条と矛盾することになりますし、明文の規定を無視するような形で事情判決を「一般的な法の基本原則」とする理屈には重大な問題があります。もし、この論理が正しいのであれば、公職選挙法第219条は違憲であるということになるのでしょうか。私は、この部分に関する判例のおかしさを国会が指摘していないことに疑問を感じています。国会が判例に従わない口実(理由)にもなりうるはずです。

 今回の広島高等裁判所判決も「一般的な法の基本原則を適用し、事情判決をするのは相当でない」(以下も含め、朝日新聞朝刊37面14版の「一票の格差 広島高裁判決(要旨)」から引用します)と述べている点については「おかしい」と批判せざるをえません。「一般的な法の基本原則」とは、法学入門にも登場する条理と考えてもよいのですが、比例原則、平等原則、権利濫用の禁止、信義誠実の原則などを指すのであり、平等原則や権利濫用の禁止のように、或る意味で憲法上の原則と考えてもよいものでなければなりません。また、民法第1条第2項に明文化されている信義誠実の原則は、時に租税法律主義の原則など法治主義原則(これも憲法上の原則と考えるべきでしょう)と矛盾する場合があるとは言え、基本的人権の尊重という憲法上の原則に資するものです。これに対し、事情判決は憲法上の原則でなく、法技術的な手法に過ぎませんし、法治主義原則などと矛盾する場合が生ずるどころか基本的人権の尊重とも矛盾することがありますので「一般的な法の基本原則」の一つとはなりえません。そもそも、事情判決は、行政事件訴訟法第31条を読めばすぐにわかるように、例外的な場合にのみ行われるべきものです。原則は、たとえば行政処分が違憲または違法であれば、あくまでも、判決によって直ちに取り消されるべきなのです。

 さて、もう少し広島高等裁判所判決を見ていきましょう。

 まず、違憲状態が是正されるべき「合理的期間」についてです。既に廃止されているはずの一人別枠方式に基づく小選挙区の区割りが合理性を失っている旨を最高裁大法廷が述べたのは2011年3月23日です。従って、この日から起算するのが妥当であり、通常なら1年、「国会が国難というべき東日本大震災の対応に追われていたことを最大限に考慮しても1年半が経つ12年9月23日までに、1人別枠方式やこれを前提とした区割り規定の是正がされなかったのであれば、憲法上要求される合理的期間内に、憲法の投票価値の平等に反する状態が是正されていなかったといわざるを得ない」。その上で「判決から本件選挙の日までの国会の会期は479日に及んでおり、この間に消費増税を柱とするいわゆる社会保障・税一体改革関連法など、極めて多くの政治的課題を抱えていた法律が成立していることをみても、是正が合理的期間内になされなかったと言わざるを得ない」。

 また、判決は、2009年8月の衆議院議員総選挙の際の一票の格差が最大で1:2.304であったのに対し、2012年12月の衆議院議員総選挙の際には最大で1:2.425に広がり、格差が2倍以上となる選挙区も45から72に増えていることを指摘して「投票価値の平等の要求に反する状態は悪化の一途をたどっている」と指摘しています。しかし、これに対しては、「地方の切り捨てを是認する形式的な論理」とか「地方間の格差を是認し、東京(あるいは首都圏)への一極集中を促進させる論理」という批判も可能であると思われます。現に、朝日新聞朝刊39面14版の記事には、高知3区の有権者のコメントとして「東京はバスも電車も本数が多くとても便利。これで高知の議員の数が減ればもっと格差が広がる。選挙区を人口だけで評価するのは納得できない」という意見が載せられています。他には、今回問題とされた広島1区・2区の有権者の意見として、多額の税金を選挙に使ったのに選挙が無効では無駄となる、という趣旨の批判も載せられています。

 ともあれ、広島高等裁判所の判決は「合理的期間」が経過したことを重視して、事情判決ではなく、選挙そのものを無効とする判断を示しました。もっとも、直ちに無効であるとは判断していません。言葉が適切なのかどうかわからないのですが「将来効判決」を主張しています。つまり、一定の猶予期間を国会に与え、その期間が経過してなおも違憲状態が是正されない場合に初めて完全に無効なものとすべきだというのです。具体的には、2012年11月26日から区割り作業の改定が行われており、今年の5月26日までに案が勧告される予定となっていることなどから、今年の11月26日を経過してから無効となる、という判断がなされています。

 ここで注意すべきなのは、選挙が無効であるという判決が出されたとしても、それは全選挙区に及ぶものではないということです。たしかに、区割りは全選挙区の問題であり、一つの選挙区だけで片付く話ではないのですが、訴訟の構造からして一選挙区における選挙のみを無効と判断せざるをえないのです(対象にならないものまで裁判所が判断を下す訳にもいきません)。ここに限界があることは認めざるをえません。

 幾つかの問題・課題があるとは言え、広島高等裁判所は踏み込んだ判決を下しました。原告、被告(広島県選挙管理委員会)の双方が上告する可能性があり、最終的には最高裁判所の判断に委ねられるでしょうが、今月に入ってから東京、札幌などの高裁で次々に違憲または違憲状態という判断が示されている以上、国会としては何らかの方策をとらざるをえません。しかし、事が議員ないし政党の利害に直接関係するだけに、そう簡単に議論が進むとも思えません。こうなったら、国会が徹底的に最高裁判所など司法への対抗策をとるという手も考えられるでしょう(それが良いか悪いかは別問題ですが)。

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東京駅八重洲口付近の桜

2013年03月25日 00時12分01秒 | まち歩き

3月22日の夕方、私は東京駅八重洲口付近を歩いていました。そこにも桜並木があります。

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高島平の桜

2013年03月24日 21時35分06秒 | まち歩き

今年の1月と2月は非常に厳しい寒さに見舞われましたが、3月に入ってから一転し、暑いと叫びたくなるような日もありました。そのせいか、桜の開花が早まりました。 

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3月22日、大東文化大学の卒業式の日、私は日比谷から三田線に乗り、西台で降りました。大学に向かう際には必ず通る遊歩道の入口でも、桜の花が美しく咲いていました。

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これまで、私はソニーのサイバーショットを4台買いました。現在愛用しているのは、ソニーのサイバーショットDSC-WX100です。

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 このカメラは撮影モードを選択できますので、何枚かの写真では「シーンセレクション」にあわせ、さらに「ソフトスナップ」を選んでみました。そうすると、一眼レフカメラで撮影したような感じに仕上がります。

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一眼レフカメラと違ってピントの位置を自由に動かすことはできませんが、顔や花を検知する機能があるので、それを利用しています。

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前白井市長の支援補助金支出専決処分は違法、という判決

2013年03月22日 22時18分15秒 | 法律学

 本日(3月22日)付で「北総線運賃認可訴訟の行方」を掲載しましたが、その最後に記した住民訴訟の判決が、今日、千葉地方裁判所から出されました。朝日新聞社が今日の20時27分付で「北総線値下げの補助金『違法』 前白井市長の専決処分」(http://www.asahi.com/national/update/0322/TKY201303220363.html)として報じています。

 この記事によると、前白井市長は、2010年に、北総鉄道への支援補助金を支出する旨の予算案を3回も市議会に提出したのですが、市議会は否決していました。そこで、2010年10月に、前市長は支援補助金の支出を内容とする専決処分を行いました。理由は、既に千葉県および北総線沿線6市で補助金を支出することにより、北総線の運賃を平均で4.6パーセント値下げすることに合意していた、というものです。

 しかし、どうやら、前市長は3度目の予算案提出を突然、しかも議会最終日に提出したようです。これでは審議のしようがないでしょうし、瑕疵があったと言えないとしても、問題があったと言わざるをえないでしょう。また、廃案後に臨時議会の招集を求める動きがあったようですが、これにも応じていなかったということです。

 首長が専決処分をなしうる場合については、地方自治法第179条および第180条の規定が存在しますが、今回の訴訟では第179条のほうの話となります。同条は次のように規定しています。

 第1項:「普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。ただし、第百六十二条の規定による副知事又は副市町村長の選任の同意については、この限りでない。」

 第2項:「議会の決定すべき事件に関しては、前項の例による。

 第3項:「前二項の規定による処置については、普通地方公共団体の長は、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない。」

 第4項:「前項の場合において、条例の制定若しくは改廃又は予算に関する処置について承認を求める議案が否決されたときは、普通地方公共団体の長は、速やかに、当該処置に関して必要と認める措置を講ずるとともに、その旨を議会に報告しなければならない。」

 千葉地方裁判所は、前白井市長の専決処分が第179条第1項にいう「議会において議決すべき事件を議決しないとき」という要件を満たしていないと判断しました。

 あくまでも記事による限りではありますが、妥当な判決と評価すべきでしょう。

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北総線運賃認可訴訟の行方

2013年03月22日 00時33分55秒 | 法律学

 本当は21日の午後に最高裁判所から出された神奈川県臨時特例企業税訴訟の判決を取り上げたいのですが、朝日新聞の速報メールが発信されたのが13時37分で、おそらく、夕刊のデッドラインには間に合わなかったのでしょう。朝日の夕刊にも日経の夕刊にも記事が掲載されていません。そこで、21日の朝日新聞夕刊1面4版トップ記事「『定期代、高すぎる』 経営難の北総線 周辺私鉄の数倍 学生ら提訴、26日判決」を題材とすることにいたします。

 (余談ですが、神奈川県臨時特例企業税訴訟の控訴審判決について、私が短いながらも解説を書いております。法学教室366号別冊付録「判例セレクト2010〔Ⅱ〕」の12頁を御覧下さい。)

 北総鉄道の運賃の高さは有名です。私は一度も利用したことがないのですが、同社のサイトによると、初乗り(3キロメートルまで)は190円です。これでも値下げされたそうで、以前は200円だったとのことです。

 上記記事では「1区間は最大290円」と書かれていますが、これは小室から次の千葉ニュータウン中央までなど、小室~印旛日本医大の1区間の運賃で、初乗りではなく、3キロメートルを超えて5キロメートルまでの区間なら290円ということです。これには驚きました。渋谷から横浜まで東急東横線に乗っても260円です(距離は24.2キロメートルです)。290円というのは、渋谷から南町田まで田園都市線に乗った時の運賃と同じ額ですが、距離は29.2キロメートルです。もし北総線で同じ距離を利用すると仮定してもピッタリ適合しないのですが、京成高砂から千葉ニュータウン中央までが23.8キロメートルで720円、京成高砂から印西牧の原までが28.5キロメートルで750円です。

 初乗り運賃だけを比較するならば、千葉都市モノレールと同額で、東葉高速鉄道よりは10円安く、埼玉高速鉄道および京都市営地下鉄よりは20円安いということになりますから、日本で一番高いという訳でもありません。しかし、それ以外の区間について各運賃の高さには改めて驚かされます。

 千葉県と言えば、やはり運賃が高いことで有名なのが東葉高速鉄道で、西船橋から東葉勝田台までは16.2キロメートルで610円です。北総鉄道であれば、この距離で600円ですから、あまり違いがないということになります(京成高砂から西白井までが15.8キロメートルで600円)。

 今回、訴訟の対象となっているのは定期代ですが、北総線は、とくに定期代が高いということで知られており、沿線では「財布なくしても定期なくすな」という格言があるそうです。詳しいことはわかりませんが、通学定期代は周辺の私鉄と比較して4倍以上も高いと言われています。上記記事で書かれていた例によると、千葉ニュータウン中央駅から新鎌ケ谷駅までの11.1キロメートル分の通学定期代(高校生)は6ヶ月分で55620円です。JR東日本なら同じ6ヶ月で25370円であるとのことです。

 実は、この定期代の問題は昔から指摘されていました。とくに、北総線の場合、京成線、都営浅草線への直通運転がなされていることから、あまりにも高額になるのです。

 そして、北総線の運賃については、最近になって非常に複雑な問題が現実のものとして出てきました。京成成田空港線、通称成田スカイアクセスの開業です。京成の路線とはなっていますが、実際は非常に複雑でして、鉄道営業法に照らすと、施設保有者などは次のようになっています。

 京成高砂~小室:北総鉄道(第一種鉄道事業者)

 小室~印旛日本医大:千葉ニュータウン鉄道(第三種鉄道事業者)←北総鉄道は第二種鉄道事業者

 印旛日本医大~成田空港高速鉄道線接続点(成田湯川と空港第2ビルとの間にある所):成田高速鉄道アクセス(第三種鉄道事業者)

 成田空港高速鉄道線接続点~成田空港:成田空港高速鉄道(第三種鉄道事業者)

 従って、京成はいずれの区間についても第二種鉄道事業者であり、線路等施設使用料を北総鉄道などに支払っていることになります。このことが京成の運賃とどのように関係しているかが、少し見たばかりではよくわからないのです。参考までに、運賃に関する若干の例を記しておきます。 

 1.京成上野からの普通運賃

 (1)北総線(京成成田空港線)経由で印旛日本医大まで:1030円(45キロメートル)。

 (2)京成成田空港線経由で成田湯川まで:1130円(53.4キロメートル)。

 (3)京成成田空港線経由で成田空港まで:1200円(64.1キロメートル)。

 (4)京成津田沼経由で成田空港まで:1000円(69.3キロメートル)。

 2.京成高砂からの運賃

 (1)北総線(京成成田空港線)経由で印旛日本医大まで:780円(32.3キロメートル)。

 (2)京成成田空港線経由で成田湯川まで:880円(40.7キロメートル)。

 (3)京成成田空港線経由で成田空港まで:950円(51.4キロメートル)。

 (4)京成津田沼経由で成田空港まで:890円(56.6キロメートル)。

 こうした運賃設定に対して、京成成田空港線の開業当時も、北総線沿線の住民や自治体が疑念を示していたはずです。印旛日本医大駅から成田湯川駅まで8.4キロメートルも離れていることに注意してください。今回の裁判で、原告の住民側は、京成が北総鉄道などに支払っている線路等施設使用料が不当に安いという趣旨の主張を行っています。これに対し、裁判の被告である国は、運賃の認可が鉄道利用者の個々の利益を保護するものではないという、近鉄特急事件判決において述べられた内容の主張をしています。

 行政事件訴訟法改正前であれば、今回の訴訟については原告の勝ち目はほとんどなかったでしょう。現在は第9条第2項の規定がありますので、これに沿って原告適格や訴えの利益を判断することが求められます。

 運賃の認可は言うまでもなく行政行為ですが、これが必要とされるのは、鉄道会社と乗客との間で結ばれる契約が適正な内容であることが必要であると考えられるからです。契約とは言っても個別的に結ばれるものではなく、運送約款という、鉄道会社が一方的に作成する契約文書に基づくものですから、運賃などが不当に乗客の利益を損なうようなものであってはなりません。このように考えるならば、運賃の認可が鉄道利用者の個別の利益を保護するものではないという主張は、妥当と言えないのではないかと考えられます。

 ただ、これはあくまでも私の意見です。裁判所の判決ということでは、原告敗訴の可能性のほうが高いようにも思われます。却下の可能性が半分程度、棄却と請求認容(つまり勝訴。全部も一部も含めます)が残りのうちの半々、というところでしょうか。

 上記の朝日新聞夕刊記事には、2010年に当時の白井市長が行った、およそ2300万円を北総鉄道への支援援助金として支出するという内容の専決処分についても書かれています。この処分の妥当性が住民訴訟で争われていて、その判決が22日に出るとのことです。

 北総鉄道の歴史は千葉ニュータウンの歴史と重なります。千葉ニュータウンは、開発計画が進展せず、縮小されたという経緯があります。交通もそうで、実は都営新宿線も千葉ニュータウンと関係がありました。東京都交通局の路線なのに千葉県市川市までの路線となったのは、本八幡で千葉県営鉄道と接続し、乗り入れる計画があったためです。

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西武秩父線などが廃止される? 地域の交通網はズタズタにされる?

2013年03月20日 13時48分43秒 | 社会・経済

 3月16日に開始された東急東横線と東京メトロ副都心線との相互乗り入れにより、首都圏の交通網は再び大きく塗り替えられました。とくに、副都心線を介してであるとは言え、西武池袋線・西武有楽町線と東急東横線との直通運転には、一種の感慨を覚えます。何と言っても東急対西武という長年の構図があまりに有名であったからです。昨年、練馬高野台駅の近くを車で走った時に、池袋線を東急の車両が走っているのを見て「完全に時代は変わった」と思ったのでした。

 さて、その西武ですが、現在、大手私鉄では唯一の非上場会社となっています(経営統合した阪急と阪神、帝都高速度交通営団から転換した東京メトロは除外しています)。サーベラスが西武HDに敵対的TOBを仕掛ける事態にまで発展したことにより、大変な問題が発生しています。

 まず、朝日新聞朝刊9面14版に掲載されている「西武HD、TOBに反対へ サーベラスの路線廃止案に反発」という記事を参照してみます。サーベラスは、西武HDに対し、西武秩父線、山口線、多摩川線などの廃止を求めています。「など」の具体的な内容はわかりませんので、他の路線の一部区間の廃止が含まれている可能性もありますが、とりあえず、全線廃止が求められている3線に話を絞ることとします。

 驚いたのは多摩川線の廃止が求められていることです。中央本線の武蔵境から府中市内の是政までの路線で、一時期は多摩ニュータウンへの連絡路線として延長も検討されていたほどの路線です。西武の他の路線と連絡しない孤立路線で、たしかに利便性はあまり高くないでしょう。京王線とは交差するものの直接の連絡駅がありませんし(一応は白糸台があげられていますが)、終点の是政の近くにはJR南武線が通っていますが全く連絡していません(南多摩駅まで徒歩連絡ということらしいのですが、あまり現実的なものとも思えません)。しかし、武蔵野市、小金井市、府中市を通り、通勤通学需要も低くはないものと考えられます。今後の大きな発展は望みにくいものの、改善の余地はあるのではないでしょうか。

 次に西武秩父線です(「秩父線」ではなく「西武秩父線」が正式名称です)。正式には吾野~西武秩父の路線ですが、池袋線の運行系統が池袋~飯能と飯能~吾野に分割されていることもあって、西武秩父線の実質的な区間は飯能~西武秩父となっています(西武池袋線の延長路線という経緯があるからです)。貨物輸送が建設目的の一つとなっていて、1969年から1996年までは貨物列車も運行されていました。もう一つの建設目的が沿線の観光開発で、西武秩父線の開業により、初めての有料特急が走ったのでした。

 この路線には話題が多く、そもそも建設に際しては武州鉄道との競合という事件がありました。また、正丸トンネルは、1975年に近鉄大阪線の新青山トンネルが開通するまで私鉄最長のトンネルでした。そして、一時期は、西武グループが熱心に開発を進めていた軽井沢までの延長も検討されたほどです。しかし、最近は完全なローカル線で、乗降客は減少し続けています。池袋からの直通列車は、有料特急を除けば、休日に数本の快速急行があるだけで、あとは飯能~西武秩父の各駅停車しか走っていません。

 乗降客数だけから判断すれば、少なくとも、まさに投資会社にはうってつけの短期的な視野(長期的展望を苦手とする、あるいはそもそも無視するのが投資会社です)に立てば廃止が妥当ということになるかもしれません。過疎化が進んでいることは否めないからです。しかし、秩父地域には大きな打撃になります。この点については、産経新聞社が今日の6時44分付で「【サーベラスVS西武HD】秩父線、廃止対象に 地元に戸惑いと反発」(http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130320/biz13032006460014-n1.htm)として報じていますが、地元では東急東横線沿線(など)からの観光客を呼ぼうとする動きを封じられかねないという懸念が生じています。しかも、この地域のバス路線を運行していた国際興業が撤退の方針を固めているとのことで、危機感が募るのも当然のことです。

 秩父市には秩父鉄道秩父本線が通っています(西武秩父線からの直通電車も何本かあります)が、東武伊勢崎線の羽生から熊谷を通り、東武東上線との乗換駅である寄居を通って三峰口に至る路線で、東京方面に直通する形となっていません。かつては東上線からの直通電車も走っていましたが、2001年を最後に運行されていません。現在は東上線の運行経路が小川町で分割されていますので、東京などから秩父方面に乗客を呼び込むには不利な状況が続いています。

 このため、西武秩父線が廃止されると、この地域の観光政策などはズタズタにされるのです。

 気になるのは、既に記した「など」です。前述の通り、西武秩父線は、正式には吾野~西武秩父ですが、実質的には飯能~西武秩父です。つまり、「など」には池袋線の一部区間である飯能~吾野も含められているのではないかと思われるのです。この区間にある武蔵横手駅は、西武線の中で正丸、芦ヶ久保および西吾野(いずれも西武秩父線の駅)に次いで利用客が少ないとのことで、一日の平均乗降客数が500人を割っています。飯能~高麗の利用客数はそこそこ多いようなので、高麗~吾野の少なさが目立つのです。

 さて、最後に山口線をとりあげましょう。JRにも山口線があり、SLの復活運転で有名になりましたが、西武山口線のほうが復活運転は早かったのでした。元々がおとぎ線という遊戯施設扱いの路線でしたが、1952年に普通の鉄道に転換しました。それでも他の路線とは全く性質が異なり、軌間は762ミリメートルの軽便鉄道で、遊園地前~ユネスコ村、西武園ゆうえんちなどの利用客のための遊戯施設的な鉄道であるという性格を維持していました。頸城鉄道や井笠鉄道の蒸気機関車が走ったことも、観光路線にして非通勤通学路線であるという性格を物語っています。

 1984年に一旦廃止(あるいは休止)され、新交通システムに変更され、多摩湖線の終点である西武遊園地前から狭山線の終点である西武球場前までの路線となりました。観光路線としての性格は変わっておらず、西武球場へのアクセス路線の一つという性格も帯びています。

 実際に廃止して、通勤通学などの影響が最も少ないのが山口線でしょう。しかし、この路線を廃止するということは、西武園ゆうえんちなども見直しの対象とすることを意味するのでしょうか。

 今後、さらに具体的な話が出てくる可能性もあります。そうなると、影響はさらに広がることも考えられます。

 (ちなみに、西武HDの話については日本経済新聞の朝刊にも記事が掲載されていますが、上記の朝日や産経に比べてあまり詳しくなく、路線の廃止が地域に及ぼす影響を考えるに際して、全く参考になりません。)

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三岐鉄道北勢線に乗る(その3)

2013年03月20日 00時14分06秒 | 写真

三岐鉄道北勢線に乗り、終点の阿下喜駅に到着しました。もう少し、駅の様子を見ましょう。

 転車台の周りをミニ電車が走ります。「ホクさん」という名前が付けられているようです。運転日ではなかったので実物を見ることはできなかったのですが、三岐鉄道270系をモデルとした車両です。

 阿下喜駅はいなべ市にあります。かつての北勢町の部分です。

 「いなべ」を漢字で記すならば員弁で、かつて員弁郡が置かれていました。同郡の北勢町、員弁町、大安町、東員町および藤原町が合併を検討し始めたのは1998年でした。2001年、任意合併協議会が設置されます。いなべ市の公式サイトに「いなべ市合併の経緯」という文書が掲載されており、概略を知ることができますが、東員町がいつの段階で脱退したのかは書かれていません。2002年に発足した法定合併協議会には、北勢町、員弁町、大安町および藤原町が参加しました。これに対し、東員町は自立の道を選びます。4町の合併によっていなべ市が成立したのは2003年12月1日のことです。

 阿下喜駅の駅舎です。ローカル線の終点にしては立派な建物ですが、これは三岐鉄道に移管されてから建てられたそうです。以前はもう少し線路が手前のほうに伸びており、現在のロータリーの辺りに駅舎があったということです。また、近鉄時代に無人化されましたが、現在は、時間帯こそ限られているものの、駅員が配置されています。自動券売機はもとより、自動改札機もあります。

 右側に写っているのは、楚原から乗ってきた小学生たちです。引率の教員もいましたので、社会科見学などでしょうか。

 近鉄の路線であった北勢線が廃止の候補となり、おそらくは紆余曲折の末に、員弁川の対岸付近に路線を持つ三岐鉄道に移管されてから、駅の統廃合が行われました。移管直前の全駅を阿下喜側から順に記すと、阿下喜→六石→麻生田→上笠田→楚原→長宮→大泉東→北大社→六把野→穴太→七和→坂井橋→在良→蓮花寺→西別所→馬道→西桑名となっていましたが、移管後、順次、次のようになりました。

 六石:2004年に廃止。

 上笠田:2006年に廃止。

 長宮および大泉東:2004年に統合され、移転して大泉となる。

 北大社および六把野:2005年に統合され、移転して東員となる。なお、北大社に車庫があるため、信号場としての機能は維持している。

 坂井橋:2006年に廃止され、移転の上で星川となる。

 従って、現在の北勢線の全駅を阿下喜側から記すと、次のようになります。

 阿下喜→麻生田→楚原→大泉→東員→穴太→七和→星川→在良→蓮花寺→西別所→馬道→西桑名

 駅前のロータリーから、いなべ市福祉バスが発着します。コミュニティバスで、運賃は無料です(そのためもあって、路線バスなのに白ナンバーなのでしょう。通常であれば緑ナンバーで、しかも「か」であるのが普通です)。幾つかの系統に分かれており、上の写真にあるバスは中里線を走るようです。同線は阿下喜駅からいなべ総合病院、または下野尻、中里小学校前を経由して翠明院へ向かいます。

 三岐鉄道三岐線の西藤原駅か伊勢治田駅のほうへ走るバスもあります。その便を利用したかったのですが、本数が少なく、かなり長い時間をここでつぶさなければなりません。迷った末、伊勢治田駅までタクシーを利用することとしました。

 幅があまり広くない道路ですが、ここから南へ走れば員弁川で、さらに進めば三岐線の伊勢治田駅に行くことができます。駅は阿下喜地区の南方にあるので、いなべ市役所北勢庁舎(旧北勢町役場)などへ行くには逆の方向へ進まなければなりません。

 道路を奥のほうへ進めば、いなべ市役所北勢庁舎やいなべ市立阿下喜小学校などへ行くことができます。

 駅前に三重交通のバスターミナルがあります。ここから桑名駅前までの21-2系統が走っています。北勢線と競合しますが、北勢線が三岐鉄道に移管されてから減便されたそうです。

 実は北勢線も三重交通の一員でした。三重県内の私鉄路線は、近鉄名古屋線、三岐鉄道三岐線、および第二次世界大戦中に休止・廃止された路線を除き、全て統合されて三重交通の路線となっていました。三重交通は、1964年に鉄道路線を分社化しており、翌年に近鉄へ譲渡しました(三重交通は近鉄グループの一員です)。

(2013年2月14日から21日まで、「待合室」に第513回として掲載。)

追記(2014年8月28日)

阿下喜駅で撮影した動画を追加しておきます。


YouTube: 三岐鉄道北勢線クモハ273+クハ142+サハ136+クハ141(2)

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さとり世代

2013年03月19日 12時06分01秒 | 社会・経済

 昨日の朝日新聞朝刊39面14版に「さとり世代浸透中 車乗らない 恋愛は淡泊… 若者気質、ネットが造語」という記事が掲載されていました。大学に勤める私は18歳以上の若者と触れ合う機会の多い仕事に就いている訳で、気にはなるので読んでみました。

 私自身は、いわゆる若者論や世代論に対して批判的な態度をとるほうです。基本的に私的印象論に過ぎないものが多く、単に論者(これが相応しい表現であるかどうかも疑問ですが)が若者世代を理解できないことによる言いがかり的なものも目立ちます。老人の繰言というやつです。これを最近では中年が口にしたりするようで、進歩がないので面白くもなく、むしろ不愉快さすら感じられることがあります。

 ただ、消費活動、つまり経済活動につながるとなれば、話は少しばかり変わってきます。

 上の朝日新聞記事に登場するのが山岡拓『欲しがらない若者たち』(日経プレミアシリーズ)ですが、私は読んだことがありません。同じようなテーマの本である松田久一『「嫌消費」世代の研究』(東洋経済新報社)のほうなら、確か発売されたばかりの時に「クルマ買うなんてバカじゃないの?」という言葉が書かれた帯にひかれて買いました。「嫌消費」という言葉がどこまで当てはまっているのか、疑問もあるのですが、たしかにクールな感じはします。それどころか、バブル世代の連中よりもよほど賢いのではないか、とも思えてきます。

 私が20歳となったのが1988年で、その翌年がバブル経済最高潮期ですので、私はバブル世代の一人と言えます。実のところ、そんな私は、今の「さとり世代」を見ていて「利口だな」と思い、うらやましく感ずることも多いのです。

 朝日新聞記事に戻りますと、「さとり世代」は「ゆとり教育」を受けた世代とほぼ重なるそうですが、次のような特徴があるそうです。

 ①「車やブランド品に興味がない」

 ②「必要以上に稼ぐ意欲はない」

 ③「パチンコなど賭け事をしない」

 ④「海外旅行への興味が薄い」

 ⑤「地元志向が強い」

 ⑥「恋愛に淡泊」

 ⑦「過程より結果を重視」

 ⑧「主な情報源はインターネット」

 ⑨「読書も好きで物知り」

 いずれも記事に書かれていたことですが、他には「酒は飲まない(飲み会にもいかない)」などという点もあげられるでしょうか。私の学生時代には、酒は飲むのが当たり前だというような風潮があり、一気飲みも当たり前だったという状況ですが、こんな馬鹿なことをやっていた世代だと思うと恥ずかしくなります。今の若い人たちのほうがよほど利口です。

 勿論、世代と一括りにすること自体に問題はあり、10代から20代前半(ということは、今の高校生から大学生にかけてということです)の全員がこうした特徴を持っている訳ではないでしょう。全部に該当する者は何割いるか、という程度のはずです。

 しかも、上の①~⑨をよく見ると、当たり前のこともあります。例えば⑧ですが、これは「さとり世代」に限られた話ではありません。世代に関係なく、「主な情報源はインターネット」という人は多いのではないでしょうか。但し、何でもインターネットによって知識なり知恵なりを得られる訳ではないので、④および⑤とつながるならば困った話にはなります。体験、経験を軽視するという帰結に至るからです。

 また、⑦も、今の高校生や大学生が生きてきた環境を考えれば当然のことです。経済、雇用などの情勢を見ていれば、結果重視にならざるをえないでしょう。そもそも、企業の業績などについて、短期的に結果重視を広めてきたのは誰なのでしょうか、と問いたいところです。

 一見すると⑦とつながらないかもしれませんが、⑥も根底で⑦と結びつきます。今後がどうなるかわからないのに恋愛なんて…、という部分はあるはずです。

 ①も、バブル世代の多くの人には理解できないでしょうが、私の学生時代にはこの傾向がありました。あの頃を思い出すと、ブランド物だの何だのと、やたら高級志向だったという側面もあり(グルメもこの頃あたりからでしょうか)、「馬鹿か?」と思っていたものです。①については、私も共感を覚えるのです。

 ③も、我々の世代からは理解できないかもしれませんが、当然でしょう。この点も「さとり世代」に当てはまる人は優れている、と思えます。勝てないことがわかっているならば、やらないのが一番であるからです。パチンコや競馬などで身を滅ぼした人の話を何度も聞けば、手を出さないに決まっています。⑦の変形といえるかもしれません。

 記事には旅行者数の減少、自動車販売台数の減少も書かれています。自動車会社の人のコメントに「車を持つことがステータスだった時代は終わった」という言葉もあります。但し、記事には「20代の人口は減り続けているし、若者の所得も下落傾向だ」という(おそらくは)正当な指摘もあります。これを忘れてはいけないのです。

 人口もそうですが、所得も問題です。所得が低いのに気概も覇気も生まれるのか。よく「今時の若者には覇気がない」と言われますが、過程よりも結果が重視され、失敗すれば大きな責任を、しかもトカゲの尻尾切りのような形で負わされることがわかっていて、合理的な思考を持つ者のうちの誰が上を目指そうとするでしょうか。

 若い人たちを見れば、今の社会の問題がわかる。あるいは、今に至るまで抱え続け、膨らみ続けた問題がわかる。

 このように言えないのでしょうか。

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