ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

国民に対して尊重義務を課す憲法は、国民主権の自殺であって、まともな憲法に値しない。

2016年05月28日 00時02分58秒 | 国際・政治

 今日(5月27日)の朝日新聞朝刊4面14版に「憲法を考える 自民改憲草案 義務・下 国民にも『尊重せよ』何のため」という記事が掲載されています。

 国民主権や立憲主義などの意味を踏まえた良質の連載記事ですが、今回もその良さを認めつつ、「足りない」と思われる点を補充しておきます。

 それは、長いタイトルに示した通りです。こんなことを書いたら命(様々な意味での)に関わるかもしれませんが、書かざるをえません。自民党の改憲草案は、他の条文案の意味などを脇に置いておくとしても、第102条という一条文案の規定により、国民主権を定める憲法草案として破綻しており、無意味なものになっているのです。換言すれば、国民主権主義の憲法としては自殺しているようなものです。それこそ、日本国民が尊重するに値しない憲法の草案となってしまったことは否めません。

 国民主権とは、国家に関する最終的決定権を国民が有するということを意味します。これは、憲法改正についてとくに妥当します。国民主権主義であるからこそ、憲法改正について国民が最終決定権を持つのです。従って、国民に憲法尊重義務が課されないのは、常識以前の当たり前の話です。仮に憲法尊重義務が課されるとするならば、国民は憲法改正に関する決定権を有しないということになり、国民主権の自殺行為を明示していることとなります。何のために国民主権原理を採用するのか、全く意味がわからなくなります。

 憲法を尊重する義務を国民に課すのは、君主主権憲法のやることです。大日本憲法の前文は最後に「朕カ在廷ノ大臣ハ朕カ為ニ此ノ憲法ヲ施行スルノ責ニ任スヘク朕カ現在及将来ノ臣民ハ此ノ憲法ニ対シ永遠ニ従順ノ義務ヲ負フヘシ」と記しています(下線は引用者によります)。主君が自らの権限行使のために憲法を定めたのですから、臣下は憲法を尊重し、さらに遵守することは当然です。何しろ、憲法とは国家体制の基本的枠組みですから。

 日本国憲法第99条が「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と定めるのは、この規定に掲げられた職務の人々が国民から委任なり委託なりを受けて日本国の統治や行政などにあたるからであり、憲法違反の行為によって国民に対して不要な権利侵害などをする可能性が高いためです。とかく権力は濫用されるものであり、そうして国が破滅します。馬鹿を見るのは、いや、表現が適切でないので言い換えるならば犠牲を負うのは、国民なのです。公務員と国民を混同してはいけません。いかに国民主権であるとはいえ、国民は、直接的に権力なり権限なりを行使することができません。

 国民に対して憲法尊重義務、それどころか憲法擁護義務を負わせる憲法としては、ドイツ連邦共和国基本法があります。これは、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)の台頭を許してしまったという反省に基づいているものです。そればかりでなく、第1条の規定があるからこそ、「戦う民主主義」の意味があるのです(但し、それでも懸念が表明されることは付け加えておかなければなりません。

 第1条第1項:「人間の尊厳は不可侵である。これ(人間の尊厳)を尊重し、保護することは、全ての国家権力の義務である。」("Die Würde des Menschen ist unantastbar. Sie zu achten und zu schützen ist Verpflichtung aller staatlichen Gewalt.")

 同第2項:「ドイツ国民は、それ故に、不可侵の、かつ譲り渡すことのできない人権を、世界のあらゆる人間社会、平和および正義の根拠として認める。」("Das Deutsche Volk bekennt sich darum zu unverletzlichen und unveräußerlichen Menschenrechten als Grundlage jeder menschlichen Gemeinschaft, des Friedens und der Gerechtigkeit in der Welt.)

 同第3項:「以下に掲げる基本権は、直接に通用する権利として、立法、執行権および司法を拘束する。」(Die nachfolgenden Grundrechte binden Gesetzgebung, vollziehende Gewalt und Rechtsprechung als unmittelbar geltendes Recht)

 また、基本法第20条第2項第2文および第3項は法治主義原則を定めています。ここからわかることは、憲法尊重義務ないし憲法擁護義務は、当然のように国家権力に課されているのです。基本法の規定の構造からして、国家権力にこそ憲法尊重義務ないし憲法擁護義務が第一に課されていることがわかるのであり、ここに注意しなければなりません(そして、これこそが当たり前のことなのです!)。

 それに対し、国民の憲法擁護義務は、例えば意見表明などの自由を定める第5条の第3項、結社の自由を定める第9条の第2項など、個々の基本権規定において定められています。やや一般的な規定として、基本権喪失(Grundrechtsverwirkung)を定める第18条がありますが、この規定も包括的ではなく、濫用されることによって喪失するとされる基本権を個別的にあげています。例えば思想・良心の自由や信仰の自由を定める第4条については、憲法尊重義務も定められておりませんし、第18条においてもあげられていません。

 ついでに記すと、日本の政治家は概して法治主義の意味について知らなさすぎます。私は、このようによく講義で言います。法治主義原則をドイツ語で記すとRechtsstaatsprinzipですが、日本語で「法(治)」と訳されているRecht(中性名詞)は、法、権利のいずれをも意味します。つまり、訳そうと思えば「権利国家原則」とも訳しうるのです。また、Rechtは正義をも意味します。権利をsubjektives Recht、法をobjektives Rechtというのは、おそらく、権利は主観的な正義、法は客観的な正義、ということなのでしょう。フランス語のdroitもRechtと同様の言葉であるそうです。

 (さらに余計なことを記しますと、日本の学界でsubjektives Rechtを「主観的権利」と訳すことが少なくありませんが、これはおかしな訳語です。「主観的権利」があるなら「客観的権利」があるはずですが、実際には「客観的権利」という言葉は使われません。そのためなのかどうかわかりませんが、objektives Rechtを「客観的法」と訳すこともあるようで、おかしさが倍増されています。「主観的法」というものがあるのでしょうか。どのようなものか教えていただきたいものです。)

 日本の改憲草案がドイツの基本法などをどこまで参照したのかはわかりませんが、仮に参考にしたとするとあまりに不十分である、という言葉では足りなさすぎます。不十分という領域にすら達していないからです。

 憲法を尊重するのは当然である、という趣旨の意見があるようです。しかし、そうであるならば、わざわざ尊重義務を課すようなことは必要ありません。国民が自発的に尊重するからです。逆に、憲法が尊重義務を国民に課すことは、国民がその憲法を尊重するに値しないからこそ、国家が尊重する義務を国民に負わせていることを意味するのです。尊重するに値するなら、義務付ける必要など全くないからです。

 さらにわかりやすく記すならば、その憲法を国民が尊重するに値しないからこそ、国民に尊重義務を課す必要があります。

 単純に、国民が選挙の際に議員を選ぶための道具にすぎない、選挙の時以外は国民は支配の対象にすぎない、というのであれば、国民の憲法尊重義務も理解できますが、これでは国民主権を謳う必要はなく、思い切って君主主義憲法に変えればよいだけのことです。その意味においても、改憲草案は不徹底に過ぎ、中途半端なものであると評価せざるをえません。

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JR北海道、特急の運転区間短縮などを提言へ

2016年05月27日 12時21分46秒 | 社会・経済

 今日は、朝刊の1面にも掲載された消費増税再延期方針の話でも取り上げるべきなのかもしれません。しかし、これは内閣総理大臣の方針ということであって、まだ内閣内で統一が取れている訳でもなく、正式な発表でもないので、別の機会に扱おうと考えています。

 そこで何となく朝日新聞デジタルを見ていたら、北海道版として「札幌ー稚内、特急の区間短縮へ 意見交換会」(http://digital.asahi.com/articles/CMTW1605270100005.html)という、今日の9時23分付の記事を見つけましたので、これを取り上げます。

 JR北海道といえば、今年3月のダイヤ改正でかなり大きな減量ダイヤ改正を行いました。札沼線の浦臼から新十津川までの区間が一日3往復から1往復に減らされましたし、石北本線の上白滝駅や旧白滝駅など、いくつかの駅も廃止されています。今年中に留萌本線の留萌から増毛までの区間が廃止されることも決まりました。北海道新幹線が開業したとは言え、青函トンネルで最高速度が制限されるために東京から新函館北斗まで4時間を切ることができず、期待されたほどの効果は出ていないようです(むしろ、不安が的中したという表現が相応しいかもしれません)。

 同社の在来線に目を転ずると、黒字路線が一つもないようです。いわゆる三島会社の一つであるJR九州も、鉄道事業は赤字ですが、篠栗線だけは黒字です。JR北海道の場合、札幌近郊の路線でも赤字です。やはり、人口、過疎化の進展、過酷な自然など、いくつかの大きな原因がある訳で、JR北海道の自助努力だけではどうにもならない部分があるでしょう(いや、その部分のほうが大きいでしょう。軽々しく自助努力という言葉を振り回すのが日本の特徴です。まずは政治家が公金にたかることなく、自助努力で、自らの資金だけで政治活動を行い、手本を見せてほしいものです)。今回のダイヤ改正も、国鉄時代から運用されている車両の老朽化と、これらを置き換えるための費用との兼ね合いなどで、営業運転の本数を減らさざるをえないという事情があります。それだけでなく、赤字路線は一つでも減らしたいというところでしょう。ただ、輸送密度が低い路線が多いだけに、一定の基準を設けて廃止に踏み切れば、残る路線はごく僅かということになりかねません。

 記事に取り上げられていたのは、まず宗谷本線です。昨日(5月26日)、名寄市でJR北海道と沿線11市町村長との意見交換会が行われました。この席上でJR北海道側が宗谷本線の特急について運転区間の短縮を打ち出したのです。勿論、JR北海道の内部ではそれなりの期間をかけて検討を続けてきたことでしょう。

 JRグループは毎年ダイヤ改正を行っていますが、特急の運転区間短縮は来年(2017年)のダイヤ改正ということになるようです。現在は札幌から稚内まで、「サロベツ」が1往復、「スーパー宗谷」が2往復となっていますが、これらのうち、2往復を旭川から稚内までの区間に縮めるというのです。理由は、やはり車両の老朽化と、置き換えのための車両を導入する資金の不足があげられています。

 宗谷本線と名乗っていますが、同線は幹線でなく地方交通線と位置づけられています。現在は支線もなく、距離の面では本線という表現が相応しいかもしれませんが、輸送密度の面では本線とは名ばかりのローカル線で、とくに名寄から稚内までの2015年度の輸送密度は403人と、北海道内で6番目に低い数値となっています。この区間の途中にある音威子府駅は、特急停車駅としては最も人口の少ない村にあることが知られていますし、21世紀に入ってから下中川、上雄信内、南下沼および芦川の各駅が廃止されています。他の駅も似たような状況でしょう。

 当然、地元の自治体では反発もあることでしょう。上記記事では「宗谷線を残していく覚悟はあるのか」という声もあったようです。しかし、JR北海道としては、むしろ「廃止の覚悟があるのか」というところでしょう。地元のメンツで存続というのが、JR北海道などにとって最も迷惑な話です。また、「宗谷線がどうなるのか、地域に不安感がある」という趣旨の発言もあったようですが、各駅の利用状況を考慮に入れると、少なくとも通勤世代にとっては「あってもなくてもどうでもいい」という意見が強いかもしれません。最も懸念するのは通学客でしょう(日立電鉄の鉄道路線の存続を訴えて立ち上がったのが高校生だったという事実は象徴的です)。

 他にも、一部区間が長らく運休している日高本線も、記事に取り上げられていました。沿線の新冠町でも昨日協議会が行われたようで、こちらは第3回であったとのことです。この路線も輸送密度が低く、まさしく本線とは名ばかりのローカル線ですが、おそらくJR北海道は廃止という選択肢を念頭に置いているのでしょう。記事によれば、地元では「新駅の設置や札幌への直通列車の運行」が要望されていたようで、JR北海道がこれらについて収支想定を提示したそうです。仮に「新車両の製造費などの初期投資費用を除いても年間3億円近い赤字が出る」というのが想定の結果でした。これに対し、地元から「『試算は、非現実的。試算の再考を』などの意見が出て、JRも再検討することにした」というのですが、「非現実的」とはどういう意味なのでしょうか。この試算では赤字の額が控え目だから再検討ということであれば理解できます。赤字額が大きいから再検討ということであれば、甘いと言わざるをえません。

 また、上記記事では札沼線にも言及されていますが、石勝線の夕張支線の存廃問題が議論されたという話も取り上げられています。結論が出たのかどうかわかりませんが、このままでは、よほどのことがなければ廃止でしょう。

 JR北海道は、4月に地域交通改革部という組織を新設しました。今後、事業の縮小、路線の廃止を進めるということでしょうか。何しろ、2015年度の営業赤字は352億円、2016年度には400億円に達するという見通しも立っています。頼みの北海道新幹線も赤字となると、在来線の縮小に拍車がかかるということになるでしょうか。少なくとも、既存の駅の廃止が進められていくでしょう。

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阪神梅田駅にて

2016年05月25日 00時19分52秒 | 写真

 阪神電気鉄道の本線の起点、梅田駅(HS01)で撮影した写真を掲載します。

 

 

 

 

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平野啓一郎×山本貴志「わたしのショパン」

2016年05月22日 09時23分26秒 | 音楽

 昨日(5月21日)、青葉台のフィリアホールで「平野啓一郎x山本貴志『わたしのショパン』」を見ました。「フィリア・トーク&コンサートシリーズ」の第1回です。

 妻が平野啓一郎さんの著作を購入しており、関心があったということで、彼女がチケットを購入していました。それで行った訳です。

 実のところ、私はショパンにあまり馴染みがない、と記すと違ってしまうのですが、あまり興味がなく、これまでLPもCDもあまり買わなかったのです。しかもトークも付いてくるというので、正直なところ不安はありました。ショパンに詳しくもなければ愛着もないような人が登場してトークを繰り広げたら、テレビのヴァラエティ番組の延長に終わってしまい、ぶち壊しとなるからです。

 しかし、実際に見てみたら、ショパンを題材にして徹底的に取材をし、時間をかけて小説を書いた平野さん、ワルシャワにお住まいでショパンの作品を何度となく演奏されてきた山本さんのおかげで、楽しい内容となっていました。短時間ではありましたが、ナヴィゲーターの浦久俊彦さんが上手くお二人の持ち味などを引き出されていたという印象を受けます。要するに構成が良かった訳です。ふと、NHK教育テレビやNHK-FMでの、良質のクラシック番組を思い出しました。

 フィリアホールができてから20年以上が経ちますが、「フィリア・トーク&コンサートシリーズ」は今年になってから始まったものです。第2回は9月最初の金曜日、ジャズということで、楽しみです。

 

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骨太の方針2016 気になる中身

2016年05月20日 12時44分49秒 | 国際・政治

 ここ数年、日本の国家政策の基本というべきものとなっているのが、俗に「骨太の方針」という、牛乳みたいな名前のものです。正式には「経済財政運営と改革の基本方針」といい、経済財政諮問会議がまとめています。そのメンバー構成といい、中身といい、非常に気になるのですが、5月18日に同会議は「骨太の方針2016」の素案をまとめました。

 まだ素案の段階ですので、正式な発表はまだ先の話(31日に閣議決定される方向)ですが、既に報じられています。私は19日付の朝日新聞朝刊7面14版「成長戦略『分配』が目玉 『骨太の方針』素案 財源あいまい」と、同じ面の「『骨太の方針』素案(要旨)」を読みました。同じ面には「1億総活躍プラン(要旨)」も掲載されており、ますます気になるところです。

 18日13時39分には、日本経済新聞社が「骨太方針に『消費増税』盛らず 民間議員提言へ」(http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS18H1I_Y6A510C1MM0000/)として報じており、同社は5月14日の朝刊1面14版トップ記事で「首相、消費増税先送り 地震対応・景気に配慮 サミット後に表明へ」として報じているだけに、消費税・地方消費税の税率引き上げを再度先送りする可能性が高いと考えられる訳ですが、最近の傾向からすれば、「骨太の方針」における提言がそのまま翌年度の税制改正大綱に結びつくことが多いのです。その例が法人実効税率の引き下げで、「骨太の方針」で大まかながら引き下げの方向性が示されると、税制改正大綱取りまとめ時までに具体的な内容がまとめられるという訳です。

 上記記事「1億総活躍プラン(要旨)」より、気になる点を引用しておきます。

 まずは「【現下の日本経済の課題と考え方】」から、「雇用・所得環境は大きく改善しているが、世界経済の不透明感が増している」です。これが基本認識でしょうが、アベノミクスが成功したのか失敗したのかという話につながるはずです。おそらく、評価は「成功」とするか回避するかでしょう。

 次に「【成長と分配の好循環の実現】」から。「ツッコミどころ」満載かもしれません。以下、あくまでも暫定的に。

 「生産性革命に向け、人材育成、研究開発投資の促進などに取り組む。」

 この中身が気になります。私が自治総研2015年6月号の「2015(平成27)年度税制改正の概要と論点~地方税制の重要問題を中心に~」で強調したように、法人実効税率の引き下げなどについては「法人税改革」という言葉を用いて、単に税率引き下げに留まらず外形標準課税の強化など、まさしく「構造改革」を提言した訳ですが、「骨太の方針2016」は「革命」という激しい言葉を使いました。雇用や税制に直結するだけに、「革命」とはいきなり、ラディカルにこれまでの仕組みなどを変えてしまうということでしょうか。もっとも、世界史における「革命」に成功したものがどれだけあるのか、よくわからないところです。産業革命くらいでしょうか。

 「建築物の維持管理を行うメンテナンス産業の育成、拡大を図る。」

 これ自体は妥当なところでしょう。闇雲に新しい箱物を作ってみても、それを維持し、管理することまで視野に入れていたかどうかが疑わしいからです。インフラの老朽化は喫緊の課題であるとも言われています(水道管などを考えればよいでしょう)。問題は、メインテナンスの話題を出したからにはそれに専念する、とまでは言わないまでも「改主建従」の基本方針を打ち出し、貫くことができるか否かです。「建主改従」では国鉄の赤字ローカル線問題と同じような帰結を繰り返すだけです。ただでさえ、日本人は失敗を繰り返すこと、二の舞が好きな民族ですから。

 「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の早期発効や参加国・地域の拡大に取り組む。」

 アメリカ合衆国の大統領選挙の行く末によっては、どうなるかわからないことです。そればかりでなく、TPPが日本にとって、世界にとって本当によいものであるのかどうか、という疑問は残るでしょうか。

 「国は交付金や税制を活用して地方創生を支援する。」

 ふるさと納税制度を活用することも含まれるのでしょうか。地方税制を歪めに歪める制度を活用するのですから、地方創生も歪んだものになるかもしれません。

 そして「【経済・財政一体改革の着実な推進】」です。ここもおそらく「ツッコミどころ」満載でしょうが、次の一点のみにしておきます。

 「・20年度の財政健全化目標の達成をめざす。」

 まだ本文が公表された訳でもなく、項目が記事に掲載されただけのような状態ですから、何とも言えません。しかし、到達は不可能である、とまでは言えなくとも、かなり難しいとは言えます。そこで、「政策効果が乏しい歳出を徹底して削減し、政策効果の高い歳出に転換する」ということになるのですが、既得権益、利権などが絡み、よほど強靱な内閣でなければ転換は難しいでしょう。昔、誰が書いたのか忘れましたが、革命より改革のほうがはるかに難しいという言葉を目にした記憶があります。

 歳出の見直しは当然として、歳入の問題も忘れてはなりません。現在、所得税制などの改革によって経済格差を縮小することを目指す税制への変化を望むべきであるとしても、経済財政諮問会議には望むべくもないので、おそらくは消費税・地方消費税の方向性が当面の問題となるでしょうが、これが今の段階では不明確です。準備の面から考えると、早い決断が必要とされるところでしょう。

 本日もただの雑感を記しました。

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修士論文が原稿用紙4枚? 本当の話なのか?

2016年05月14日 14時07分21秒 | 社会・経済

 たまたま、インターネットのNEWSポストセブンというサイトで、タイトルに示したような趣旨のニュース(敢えて記事の見出しは掲げないこととしておきます。http://www.news-postseven.com/archives/20160510_410037.html)を見たのですが、この話は本当なのでしょうか。

 ちなみに、この記事の見出しでは「ペラ4枚」と書かれていましたが、400字詰め原稿用紙のことだそうです。私は、植草甚一氏の日記や筒井康隆氏の「あなたも流行作家になれる」などを読んでいたので、ペラとは200字詰め原稿用紙のことと覚えていました。違うのでしょうか。

 また、この記事に掲載されている某教授のコメントには「私が指導教官なら通さない」とあるのですが、そもそも修士論文としての提出そのものを認めないのが筋でしょう。通す、通さないの問題ではなく、まさしく「問題外の外」であるからです。

 いずれにしても、本当か嘘かわからない話ですが、本当であるならとんでもないことです。

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武庫川駅にて阪神本線の車両を

2016年05月14日 13時12分40秒 | 写真

阪神なんば線、本線、武庫川線と乗り継いで阪神の営業路線全線利用完了となり、武庫川駅で本線の電車を撮影しました。

 まずは、通称をジェットカーとも青胴車ともいう普通列車用の系列の一つである5500系です。梅田側が5501、元町側が5502の4両編成で、普通高速神戸行きとして運用されていました。

 5500系は阪神で最初のVVVF制御車で、1995年に登場しました。兵庫県南部地震で大きな損害を被った同社が、被災車両の代替などとしてデビューさせた系列ですが、実際には震災以前から導入の計画がありました。

 なお、現在はどの大手私鉄でも見かけるVVVF制御車ですが、最も導入が遅かったのは阪神です。逆に早かった例としては、営業用車両に限定すれば東急の初代6000系(但し、一部編成の改造)、近鉄1250系(1編成のみ。現在は1420系)、東急9000系(15編成。現在は大井町線の主力)などがあります。

 次は特急・急行用の赤胴車の一つ、8000系です。1984年に登場しており、現在も特急や急行などとして運用されます。この編成の塗装は、上がオレンジ色、下がクリーム色なので、赤胴車というには相応しくないようにも思えるのですが、元々は上がクリーム色、下が赤という塗装でした。

 撮影したのは、急行西宮行きとして運用されていた編成です。

 普通梅田行きの5500系です。普通列車用の車両は青胴車といわれますが、5001形などは上がクリーム色、下が濃い青となっているのに対し、5500系は上が水色、下が白となっています。

 なお、ジェットカーという愛称(?)は、初代の5001形の起動加速度が4.5km/h/sと非常に高いことから名付けられたものです。ここまで高いものは他に例がないと表現してもよいでしょう。5500系の起動加速度は4.0km/h/sと少し下げられていますが、これでも高いことに変わりはなく、他の鉄道に類例はあまりありません。このような車両が開発され、現在まで運行され続けている理由は、阪神本線の平均的な駅間距離が短いこと(つまり、駅の数が多いということ)、特急や急行の運行頻度が高いこと、などです。

 

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「川崎高津公法研究室」の更新を再開します

2016年05月11日 11時22分29秒 | デジタル・インターネット

 Windows 10に変更してから、サイトの更新の仕方がわからなくなりましたが、ようやく、作業ができる状態にまでもっていくことができました。

 今日から再開です。

 http://kraft.cside3.jp/も御覧くださいませ。

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2006年9月4日、博多南駅周辺を歩く

2016年05月07日 11時23分11秒 | 旅行記

 今回は、2007年12月17日から12月22日まで、「待合室」第243回として掲載した記事の再掲です。但し、一部を修正しています。写真をクリックすると拡大します。

 度々記していることなので申し訳ないのですが、私は、1997年4月、当時の大分大学教育学部に就職するまで、九州に足を踏み入れたことがなかったのでした(当時、私は28歳でした)。福岡市へ初めて行ったのも1997年4月のことです。しかし、それからというもの、私は7年間、大分市に住み、福岡市も、主に天神界隈に何度となく遊びに行ったりしたのです。程なくして、九州島内の全県をまわり、島内の県庁所在地、福岡市、佐賀市、長崎市、熊本市、大分市、宮崎市、鹿児島市の全てに行きました(この中で宿泊したことがないのは佐賀市だけです)。とくに、居住していた大分市を別としても、福岡市と熊本市には何度となく行き、いわば「はまって」いきました。福岡では天神が好きで、どういう訳かよくわからないのですが、天神にはまっていきました。東京にはない何か、 独特の雰囲気、個性があるからです。少なくとも私は、福岡に強い個性を感じます。大分時代は、気が向くと天神に行き、IMSを中心にあちらこちらを歩き回りました。ちなみに、現在所有しているシンセサイザー(コルグのMS-2000、ヤマハのMOTIF 7)は福岡で買ったものです。

 2004年3月に大分大学を離れ、4月から大東文化大学法学部に勤務していますが、その2004年度以来、2012年度まで、夏休みの後半になると福岡市に行き、西南学院大学法学部の集中講義「税法」を担当させていただきました。また、2007年、2009年および2011年度の8月には福岡大学法学部の集中講義「財政法」を担当させていただきました。普段は東京都板橋区、渋谷区、そして埼玉県東松山市で仕事をしているだけに、福岡市での仕事は、(私が好きな季節ということもあるのかもしれませんが)気分も変わり、何かを見つけ、楽しみながら行っているような気がします。また、仕事の合間を見つけては、あちらこちらをまわるという楽しみもあります。何と言っても西鉄天神大牟田線やJR九州のローカル線を乗りまわるのが面白いのです。

 また、福岡県内を歩き回ることは、大都市の問題、過疎地の問題などを考えるための題材などを頭の中などに入れるという作業でもあります。とくに、福岡県を初めとして、九州各地における中心街空洞化現象の深刻さは、関東地方、とくに京浜地区ではわかりにくい部分もあります。実際に生じている問題を知るためにも、様々なところを歩くのは重要なことです。

  あれこれと書いてきましたが、今回は、集中講義のために福岡入りした時の写真です。なお、撮影したのは2006年9月4日(同年度の集中講義開始の前日)です。

 2006年9月は、大分大学時代のゼミ生たちと会うという約束もあったことから、少し早めに福岡に入りました。3日に宮地岳線に乗って津屋崎へ行き(2007年3月に西鉄新宮~津屋崎が廃止され、現在は貝塚線となっています)、いったん博多に戻って山陽新幹線に乗って小倉へ行き、そこから日田彦山線と後藤寺線と筑豊本線に乗り、飯塚などをまわりました。 計算してみると、福岡県内だけなのに200キロメートルを超える移動距離でした。

 そして4日、またどこかへ行きたくなったので、西鉄天神大牟田線に乗って大橋へ行き、そこから西鉄バスに乗って博多南駅へ行きました。

 バスを降りて少し歩くと、博多南駅に隣接する形の建物が見えてきます。上の写真がそれです。博多南駅ビルですが、那賀川町営の施設で、具体的にどのような施設であったかは忘れてしまいました。ただ、人があまり入っていないようで、少しばかりの店舗などはあったかもしれませんが、空間が目立っていました。 日記にも「閑散としている」と書いています。なお、博多南駅はこの奥にあります。

 おそらくは何の変哲もない、いかにも郊外の新興住宅地などにありそうな光景です。博多南駅前交差点です。

 駅名は博多南となっていて、いかにも福岡市博多区にありそうな印象を受けますが、この交差点は(駅は、ではありません)、福岡市博多区ではなく、那珂川町にあります。紛らわしいような気もしますが、駅名と地名とにずれが存在するというのはよくある話です。 東京都内で言えば、品川駅は品川区ではなくて港区にあり(そのため、京浜急行の北品川駅が品川駅より南にあるのです)、目黒駅は目黒区ではなくて品川区にあります。小田急小田原線の南新宿駅は渋谷区にありますし、東武東上線の東武練馬駅は練馬区ではなくて板橋区にあり、志木駅は志木市ではなく新座市にあります。また、新宿駅南口にある高島屋新宿店と東急ハンズ新宿店は、新宿区ではなく渋谷区にあります。こんな例をあげていったらきりがないでしょう。

 これは、おそらく、博多南駅から西のほうへ歩いた所です。那珂川町は、その名が示すように市ではなく、筑紫郡に属する町です(但し、現在、筑紫郡の地方自治体は那珂川町だけです)。しかし、福岡市に隣接することもあって、人口は増えているようです。 福岡市、春日市などのほうに、西鉄バスの路線がいくつか通っているようです。また、駅の付近を東西に走る道路は交通量が多いようで、私が訪れた時にも、渋滞というほどではなかったのですが何台もの自動車が列を作っていました。

 上の写真を見ていると、とても郡部の様子とは思えません。福岡市の城南区か早良区の様子にも見えてきます。マンションも結構多く、まさに福岡市のベッドタウンとなっていることがわかります。

 そして、駅から少し西のほうへ歩いたりするとわかるのですが、駅前から少し離れた道路沿いに多くの店舗が集中しています。大分市の森町あたりを連想させるような街並みでした。

 駅の近くに、関東地方ではおなじみのスーパーマーケット、西友がありました。そこに入って少しばかりの買い物をして、駅のほうに行ってみました。新幹線の車両基地(博多総合車両所)が見えます。山陽新幹線の車両基地ですので、JR西日本の車両が配属されている訳です。なお、手前は九州新幹線の工事現場です。

 博多南駅は、博多駅から伸びる博多南線の終点の駅です。実は、博多南線は、博多駅からこの車両基地までの回送線をJR西日本が旅客線化したものです。春日市や那珂川町が住宅地として発展し、人口が急増したため、バスが渋滞に巻き込まれるなどという事情があったようです。実際、私も西鉄大橋駅から博多南駅までバスに乗ったのですが、距離の割には時間がかかりました。この地域の通勤・通学事情などを改善するために、博多南線ができたということです。

 但し、博多南線がどこまで通勤・通学路線として役に立っているかはわかりません。周囲を歩いていると、完全に車社会であるように思えます。駅ビルの1階にあるバスターミナルには、西鉄バスが何本もやってきますし、乗客も多いようです。しかし、博多南線の本数はかなり少ないのです。また、この線は、本来は在来線なのですが全ての車両が新幹線用のものであるために特急列車しか来ず、そのために特急料金(全席自由席)も払わなければなりません。さらに言うならば、博多南線には途中駅がありませんので、この点においても通勤・通学路線としてどの程度の意味があるのかは疑問です。

 正直に記しますと、政令指定都市なのに新幹線の駅がないという川崎市に生まれ育った私は、新幹線にはあまり興味がありません。趣味的な関心が全く湧かないのです(JRの特急全般にもあまり興味がないのですが)。車両を見ても系列がよくわからなかったりします。

 新幹線は、移動手段の利便性が高いとは思います。東京から京阪神地区へ行く時は、自家用車を運転するのでなければ必ず新幹線を使います(飛行機を利用したことはありません)。大分市に住んでいた時も、京阪神地区へ行く時には新幹線(または寝台特急)を使っていました。しかし、東京と九州各地を往復するには、やはり飛行機を使います。移動時間と空港での手続および待ち時間などをあわせて比較した結果です。

 こんなことを書いていたら、愛車(当時は5代目ゴルフGLi)を運転して神戸あたりまで走りたくなってきました。いつかは川崎から福岡まで運転してみたいと思っているのですが、時間もお金もかかります。ましてや、このところの原油高によるガソリンの価格上昇です。私の現在の愛車はハイオクガソリン仕様なのです。

 新幹線にはあまり興味がないと記しましたが、九州新幹線の工事現場には目が行きます。博多から新八代までが開通すれば、鹿児島まで行くのも楽にはなります。1999年8月に鹿児島へ行きましたが、また行ってみたいと思っていたのです。東京から飛行機で行けばよい、と言われそうですが、鹿児島空港から鹿児島市内まで結構な距離がありますし、やはり陸路で行ってみたいという思いもあります。大分に住んでいた時に、787系の特急つばめ号で鹿児島本線の熊本~西鹿児島を乗っておくべきであった、と悔やんでいます。天草などを見ながら旅を楽しめたからです。九州新幹線はトンネルばかりだとのことです(数年後に乗ってみたら、本当にトンネルばかりでした)。

 駅ビルから那珂川町の様子を撮影してみました。いかにも、新幹線の駅前によくある光景とも言えます。規模の大小などを無視すれば、新横浜駅付近にも似ているような気がします。新横浜駅も、ホームから山々が見えるからです。手前にはマンションなどが立ち並んでいます。

 奥に見える山の向こうは、福岡市の城南区か早良区でしょうか。そういえば、早良区は南部で佐賀県にも接しています。大分市に住んでいた時、当時の愛車ウイングロードを運転して天神から西新に出て、そこから野芥を通り、南下して佐賀市まで走ったことがありました。

 博多南駅ビルにある、那珂川町の絵地図です。かなりおおまかですが、大体の様子はわかるようになっています。私が今立っている場所は、那珂川町の北東部で、隣は春日市です。南のほうに行くと山々に囲まれたような所で、小さな湖などもあるようです。そして、佐賀県と接していることもわかります。

 西鉄大橋駅に向かう道路なども描かれていますが、私が乗ってきたバスは、井尻付近から新幹線に沿って走っていたのに、途中から外れて団地の中をまわるようなルートで、どこをどのように走っているのかがよくわからないものでした。多分、上の地図には載せられていないような道路を通ったのでしょう。そして、おそらく、春日市をまわっているはずです。

 さて、 博多南駅です。JR西日本の駅です(但し、当時はJR九州に委託されていました。2010年4月からJR西日本の直営駅となったそうです)。

 この駅の辺りは少々複雑です。上の写真には「祝  博多南駅ビルグランドオープン1周年イベント  那珂川町制施行50周年記念」という横断幕が写っていますので、駅も那珂川町にあるものとばかり思っていました。ところが、駅ビルとは言いながら、ここの場合は駅ビルと駅とが少し離れています。東京駅、川崎駅、横浜駅などを引き合いに出すまでもなく、普通、駅ビルと言えばそのビルの中に駅があるものですが、博多南駅は違うのです。ビルと駅との間に道路があり、その上に橋があります。写真の真ん中の通路がその橋です。これを渡って駅に入るのですが、駅ビルは那珂川町にあるのに、駅は春日市にあるのです。どうやら、橋下の道路が市町の境界になるようです。写真を撮影した日には、このようなことを全く知らなかったのですが、後に地図を見て理解しました。

 駅ビルから駅まで架かっている橋を渡っています。那珂川町から春日市に入りました。

 九州新幹線の工事が着々と進んでいることがわかります。少し高くなった高架橋が九州新幹線のものでしょう。開業はもう少し先のことでした(2011年、博多から新八代までが開業し、九州新幹線は全通しました)。

 2011年3月のダイヤ改正で、九州新幹線の博多~新八代が開業し、全通しました。それでは、博多南駅はどうなったのでしょうか。新幹線としては、博多駅と博多南駅との間が近すぎます。9キロメートル弱しかなく、10分程度で到着してしまいます。どうやら、九州新幹線は博多南駅には停車しないようです。

 実は、そもそも博多南線は、本来、在来線として扱われるべき路線です。この辺りは法的にややこしいところですが、これについては機会を改めることとして、今回は新幹線の車両が走る在来線という位置づけである、と記しておきましょう。同様の例として、上越新幹線の電車が走る越後湯沢駅からガーラ湯沢駅までの区間があります(この区間も、正式には在来線である上越線の支線ということになります)。

 13時31分発の博多行がやってきました。もっとも、博多に到着するとそのまま岡山行のこだま号になります。博多南線のほとんどの列車はこのパターンです。私はこの列車に乗りました。何とも中途半端な速度でしたが、たしかに、バスなどより速く博多駅に到着します(バスであれば1時間ほどかかるかもしれません)。

 それにしても、いかに本来は在来線とはいえ、新幹線の電車が停車する駅としてはかなり貧相です。ホームは一本しかありません。乗客はどれくらいいたでしょうか。それほど多くなかったような気がします。

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阪神武庫川線

2016年05月04日 09時11分34秒 | 写真

 相模鉄道が大手私鉄の仲間入りを果たすまで、大手私鉄で最も営業キロが短かったのが阪神電気鉄道です。この会社は阪神タイガースの親会社などとして有名ですが、関東地方の人間にとって、阪急や近鉄よりは縁が薄いということも否定できないでしょう。このように記す私も、学部生時代に一度、阪神本線および神戸高速線(神戸高速鉄道東西線)を利用したことがあるだけで、なんば線(かつての西大阪線)と武庫川線を利用したことは一度もなかったのでした。大学の教員になってから、学会などで京阪神地区の大学に行くことがありますが、その際には阪急電鉄や大阪市営地下鉄を利用することが多かったのでした。

 たまたま、阪神なんば線および武庫川線を利用する機会に恵まれたので、大阪難波駅から尼崎行きに乗り、尼崎駅で本線の各駅停車に乗り換え、武庫川駅に着きました。ここが、阪神で唯一の単線路線にしてワンマン運転を行う路線である武庫川線の起点です。

 武庫川駅の本線のホームは、武庫川を渡る橋に設置されています。つまり、川の上にホームがあり、電車が停まるのです。これは日本でもあまり例を見ないもので、私がすぐに思いついたのは都営新宿線の東大島駅です。武庫川駅と東大島駅の共通点は、川の上にホームがあることのみならず、その川が市区町村の境界をなしていることです。武庫川駅の場合は尼崎市(東側)と西宮市(西側)に跨がっており、東大島駅の場合は江東区(西側)と江戸川区(東側)に跨がっています。さらに、通過列車があることも両駅の共通点です。

 武庫川駅の駅舎は尼崎市、西宮市の双方にありますが、武庫川線に乗り換えるためには西宮市の側に向かいます。武庫川を渡り終え、階段を下ると駅舎があり、正面と右側に自動改札機が置かれています。右側を通れば駅の外へ出るのですが、正面は武庫川線のホームにつながっています。同じ会社の路線なのに改札を抜けなければならないので、違和感が残りますが、武庫川線の東鳴尾駅と洲先駅には(ICカード用を除いて)自動券売機も設置されていないので、中間改札の必要があるのです。この点は東武大師線の起点駅である西新井に似ています。

 ホームには2両編成の7890+7990が停まっていました。武庫川線専用で、3801形と3901形を改造して7890形と7990形にしたものです。また、7861形+7961形も運行されています。いずれも、本線の特急や急行としておなじみであった赤胴車ですが、普通列車として運行されています。そもそも、本線では(回送を除いて)もうこの塗装を見ることはできません。

 武庫川駅を発車すると、武庫川に沿ってゆっくり走ります。本線とのギャップが大きすぎるくらいの速度です。朝であったためか、東鳴尾駅で列車交換をして、かつての終点であった洲先駅を出て少し走れば、終点の武庫川団地駅です。起終点を合わせて4駅もありながら、わずか1.7キロメートルという短い路線です。武庫川団地駅には比較的大きな駅舎もあり、自動改札機も自動券売機もありますが、無人駅であるとのことです。横にスーパーマーケットがあり、南側には団地が広がっています。なお、初代の洲先駅が現在の武庫川団地駅の場所にあったらしいのですが、武庫川団地駅としての開業は1984年です。

 武庫川線は、元々軍需路線として建設されました。沿線に軍需工場が多かったためで、国鉄東海道本線とも接続していました。阪神と国鉄とでは軌間が異なるため(阪神が1435mm、国鉄が1067mm)、三線軌条の区間も存在したそうです。

 

 

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