ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

北神急行電鉄の市営化で合意

2019年03月30日 00時00分00秒 | 社会・経済

 2018年12月29日0時0分0秒付で「北神急行電鉄が神戸市営に?」という記事を掲載しました。今回は続報です。神戸新聞社が、昨日(2019年3月29日)の13時40分付で「北神急行が神戸市営化 阪急が譲渡へ基本合意」(https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201903/0012191954.shtml)として報じています。

 民営鉄道の公営化は、1940年代まではよく見られたのですが、日本国憲法施行下においてはほとんど例がありません。北神急行電鉄の例は、少なくとも21世紀に入ってから初めての例であるばかりでなく、今後の地域公共交通の在り方として注目すべきものとなるかもしれません。

 上記神戸新聞社記事によると、神戸市と、北神急行電鉄の親会社である阪急電鉄が、北神急行電鉄の事業を神戸市に譲渡することで基本合意をしたとのことです。時期は2020年度の上半期となったようです。

 これで、神戸市営地下鉄西神・山手線と北神急行電鉄北神線とは完全に一体化されることとなり、運賃の引き下げにもつながることとなります。例えば、谷上から三宮までの540円は半分程度になるというのです(ちなみに、谷上から新神戸まで360円です)。

 と、ここまで書いて思いだしたのですが、「北神急行電鉄が神戸市営に?」において記したように、現在の北神急行電鉄北神線は、第三種鉄道事業者が神戸高速鉄道、第二種鉄道事業者が北神急行電鉄という構成です。このことについては、神戸高速鉄道のサイトに「平成14年4月1日 北神急行線を譲受し、同線において第3種鉄道事業開始」と書かれています(http://www.kobe-kousoku.jp/company.html)。また、北神急行電鉄のサイトには「平成13年度には金融情勢の悪化により、市中金融機関からの当社への融資継続が困難となったため、地域に不可欠な輸送サービスを安定的に継続すべく、国土交通省、兵庫県、神戸市、神戸高速鉄道等の協力の下、親会社の多大な支援を得て、平成14年(2002年)4月1日より、民鉄業界初の上下分離方式を導入し、経営の健全化を計った。すなわち、当社は主要な鉄道施設を神戸高速鉄道(株)に譲渡し、その線路を使用する第2種鉄道事業者として運行を継続していくこととなった」と書かれています(http://www.hokushinkyuko.co.jp/office/enkaku.html。この他、http://www.hokushinkyuko.co.jp/office/nenpu.htmlhttp://www.hokushinkyuko.co.jp/office/gaiyou.html)。

 なお、資産などについて、北神急行電鉄の「安全報告書2018」(http://www.hokushinkyuko.co.jp/pdf/anzen2018.pdf)には次のように書かれています。

 「当社から神戸高速鉄道へ譲渡された鉄道施設は、新神戸駅部や谷上駅部を除く新神戸~ 谷上間の軌道やトンネル等の線路設備と、剛体電車線等の電路設備の一部ですが、その鉄道施設の保守及び管理は、保有する神戸高速鉄道ではなく、北神急行電鉄が行う取り決めとなっています。この取り決めに基づき、北神急行線の鉄道施設の保守及び管理は、施設譲渡以降も当社が引き続き実施しています。」

 また、神戸高速鉄道は、2009年4月1日、「神戸市が阪急阪神グループに株式の一部を譲渡」することによって「阪急阪神ホールディングス株式会社の子会社とな」っています(http://www.kobe-kousoku.jp/company.html)。

 上記神戸新聞社記事では、神戸高速鉄道の第三種鉄道事業者としての地位がどのようになるのか、詳しいことがわかりません。ただ、この記事には、北神急行電鉄に「関係する資産は計400億円に上る一方、阪急電鉄や県、同市からの借入金計約650億円の返済が残る」と書かれていますので、北神急行電鉄北神線の資産が神戸高速鉄道の保有するところであることが意識されているのかもしれません。そうなれば、資産は、直接的には神戸高速鉄道から神戸市に譲渡されるということになるのでしょう。北神急行電鉄が引き続き保有する資産が神戸市に譲渡されることとなるのは当然です。北神線について神戸市が第一種鉄道事業者となるのが最も素直なところでしょう。

 一方、北神急行電鉄の借入金ですが、こちらは神戸市に譲渡されず、阪急電鉄が引き継ぐこととなるようです。既定方針であり(http://www.city.kobe.lg.jp/information/inspection/office/kekka/img/18-1-2.pdf)、変わることはないでしょう。但し、借入金には神戸市からの分もありますので、その扱いがどのようになるかという問題は残るかもしれません。

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埼玉県内の、鉄道敷設法別表に掲載された予定線

2019年03月29日 07時00分00秒 | 社会・経済

 2018年05月23日01時04分25秒付で「東京都内の、鉄道敷設法別表に掲載された予定線」という記事を掲載しました。今回はその続編です。なお、既にこのブログで触れたものもあります。

 ▲「四十三 茨城県土浦ヨリ水海道、境、埼玉県久喜、鴻巣、坂戸ヲ経テ飯能ニ至ル鉄道及水海道ヨリ分岐シテ佐貫ニ至ル鉄道並境ヨリ分岐シテ古河ニ至ル鉄道」

 第43号は茨城県および埼玉県に及ぶものです。ただ、この規定の仕方では栃木県および群馬県を通るかどうかがわかりません。

 文字通りに読むと土浦⇆水海道⇆境⇆久喜⇆鴻巣⇆坂戸⇆飯能、水海道⇆佐貫、境⇆古河となります。いずれも鉄道路線としては実現していません。地図を見ながら想像すると、土浦駅から西進しつつも南北へ大きく、Wのように動くものであり、いかなる意味がこめられたのかと不思議な気分になります。

 ただ、考え方によっては、坂戸⇆飯能の一部だけが鉄道路線として実現していると言えるかもしれません。東武越生線は、坂戸駅を出ると一本松駅、西大家駅と南西の方角に進んでおり、北西に転じて川角駅に向かうことなく南西の方角を採り続ければ日高市の北方へ向かうことになります。そこで、延長線をもう少し南のほうに向ければ高麗川駅に行くことになります。大正11年鉄道敷設法公布当時には八高線の高麗川駅および東飯能駅が開業していませんので、鉄道敷設法にいう飯能は西武池袋線(大正時代には武蔵野鉄道)の飯能駅のことでしょう。あるいは東飯能駅のことかもしれませんが、いずれにせよ、高麗川駅から東飯能駅までは第43号の一部であるとも言えます。しかし、それでは後に取り上げる第51号との関係はどうなるのかという問題が残ります。

 ▲「五十ノ二 千葉県我孫子ヨリ埼玉県大宮ニ至ル鉄道」

 「神奈川県内の、鉄道敷設法別表に掲載された予定線」で述べたように、鉄道敷設法に示された起点、終点が変更された上で実際に建設された路線があります。但し、経緯などを示した資料がなければ、こじつけと捉えかねられません。この第50号の2もそうです。

 文字通り、我孫子駅から大宮駅まで建設された路線はありません。しかし、鉄道敷設法別表には、途中の経由地が書かれているものであっても詳細は示されていません。そうすると、第50号の2に示されている起点および終点が変更された上で実際に建設された、と理解するしかありません。この辺りの事情についての資料を持っていないので何とも言えないところですが。敢えて記せば、武蔵野線の新松戸駅から南浦和駅までの区間が該当すると言えそうです。

 ▲「五十ノ三 埼玉県与野ヨリ東京府立川ニ至ル鉄道」

 「東京都内の、鉄道敷設法別表に掲載された予定線」で扱いました。

 ▲「五十ノ四 埼玉県大宮ヨリ川越ヲ経テ飯能ニ至ル鉄道」

 枝番号が付いているところが気になるところですが、私の手元にある平成30年版注解鉄道六法には改正経緯などの詳細が記されていません。

 大宮駅から川越駅へ向かう鉄道路線と言えば川越線です。つまり、第50号の4は、終点が飯能から高麗川に変わった上で川越線として実現したのです。

 ▲「五十一 東京府八王子ヨリ埼玉県飯能ヲ経テ群馬県高崎ニ至ル鉄道」

 八高線そのものです。厳密に言えば、同線の終点は高崎線の倉賀野駅ですから、高崎駅の一つ手前となります。また、同線には飯能駅ではなく、東飯能駅があります。

 なお、八王子駅から高麗川駅までの電化の後、電化区間と非電化区間は完全に系統分離がなされており、同一の路線とは思えないほどとなっています。八高線の高は高麗川のことと思っている人もいるかもしれません。似たようなことは川越線にも言えます。同線は全線電化されていますが、川越駅で系統分離がなされており、大宮駅から川越駅までは埼京線の延長のような部分であるのに対し、川越駅から高麗川駅までの区間では八高線の高麗川駅から八王子駅までの区間への直通運転がなされています。路線名と系統が合致していない訳です。

 どうせのことなら、川越線の大宮駅〜川越駅と川越駅〜高麗川駅とを完全に分離し、八高線も八王子駅〜高麗川駅と高麗川駅〜倉賀野駅を完全に分離し、別路線としたらいかがでしょうか。

 川越線の大宮駅〜川越駅は埼京線の一部と化していますが、埼京線は山手線、赤羽線(正式の路線名としては生きています)および東北本線の愛称の一つに過ぎませんから、川越線でよいでしょう。

 川越線の川越駅〜高麗川駅と八高線の八王子駅〜高麗川駅は、統合して一つの路線にするほうがわかりやすいでしょう。八川線、八越線などと変えればよいのではないでしょうか。

 八高線の高麗川駅〜倉賀野駅は、上武線、武上線、高高線などとすることが考えられます。今後も非電化区間のままで残るでしょうし、八王子駅〜高麗川駅の区間との直通運転はなされないでしょうから、八高線を名乗る意味はかなり弱いものとなっています。

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おしらせです(2019年3月26日)

2019年03月26日 19時00分00秒 | 本と雑誌

 管理人の権限を利用して、おしらせです。

 地方自治総合研究所から刊行されている雑誌「自治総研」の最新号(2019年3月号。通巻485号)が刊行されました。

 この中に、私の「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年6月13日法律第49号)(地方自治関連立法動向研究27)」が掲載されています(46〜73頁)。お読みいただければ幸いです。

 また、この雑誌は、地方自治総合研究所のサイトでもPDFファイルで見ることができますので、御覧いただけば幸いです。

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JR四国の鉄道路線 本四備讃線を除く全線が赤字

2019年03月23日 09時34分35秒 | 社会・経済

 最初に読んだのはYahoo! NewsかOCNのニュース記事ですが、共同通信社のサイトで読むには面倒な手続(?)が必要なので、朝日新聞社のサイトを見たところ、昨日(2019年3月22日)の11時50分付で「瀬戸大橋渡る路線以外すべて赤字 JR四国が収支初公表」(https://www.asahi.com/articles/ASM3N5300M3NPLFA007.html)という記事が掲載されていましたので、これによりつつ、ブログを書いていきます。

 実のところ、私は一度も四国各県を訪れたことがないので、当然、JR四国(四国旅客鉄道株式会社)の各線を利用したこともありません。ただ、国鉄分割民営化の時に、四国、九州および北海道は経営基盤が弱いということがわかっており、そのために四国および北海道向けにキハ54が製造されたという話もあるほどですから、JR四国の状況は良くないであろうということも簡単に推測できました。

 しかも、上記記事の見出しにもあるように、JR四国の路線ごとの収支が初めて公表されたのです。このブログにもJR北海道かどこかに関連して記しましたが、公表の時期が遅すぎます。国鉄時代には毎年公表されていたようですが、民営化されてから、株主はともあれ、地域に示されていなかったことが問題を大きくしたと考えられるからです。ちなみに、JR四国の公式サイトを少しばかり見たところでは、区間ごとの収支に関する情報は掲載されていないようです。

 今回公表されたのは、2013年度から2017年度までの5年間の平均実績です。JR四国には9つの路線がありますが、長距離の路線についてはいくつかの区間に分割して公表されたため、9路線18区間となっています。

 ①鉄道路線全体の年間赤字額

 平均で109億円です。鉄道事業で黒字になったことは一度もありません。

 ②路線ごとの赤字額

 これも年間平均額と思われますが、最大は土讃線の琴平〜高知で17億6000万円、次に予讃線・内子線の松山〜宇和島で12億4000万円(上記記事では予讃線と内子線が区別されていません)です。予讃線の高松〜多度津でも6億2000万円となっています。

 ③黒字路線と黒字額

 瀬戸大橋を通る本四備讃線(茶屋町〜児島がJR西日本、児島〜宇多津がJR四国)のみが黒字路線で、額は5億2000万円です。

 ④営業係数

 鉄道路線の経営状況を示す数値としてよく用いられるのが営業係数です。これは、路線において100円の収入を得るために必要とされる経費の額を示します。勿論、経費の額が100円を超えれば赤字であり、額が大きければ大きいほど経営状況が悪いことを示します。

 JR四国全体の営業係数は144でした。

 次に、線区ごとに見ますと、予想通りというべきか、最も悪いのは予土線(若井〜北宇和島)の1159、次に牟岐線のうち、阿南〜海部の635となっています。この他に2つの線区で300を超えています。

 さらに詳しいデータを見る必要がありますが、上記のような端的なものでも状況の悪さがわかります。これから本格的に存続・廃止の議論が始まるでしょう。

 そう言えば、牟岐線に接続する阿佐海岸鉄道も、経営状況が悪いことで知られています。この3月のダイヤ改正で、阿佐海岸鉄道と牟岐線との直通運転が中止されました。これがどのような方向に進むか、注意を向ける必要がありそうです。

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本当にやる気なのか?

2019年03月19日 00時06分20秒 | 国際・政治

 昨日(2019年3月18日)付の朝日新聞夕刊2面4版に「プレミアム商品券 対象の0歳児 9月30日生まれまで 検討」という記事が掲載されています。

 例の消費税・地方消費税の税率引き上げに伴う経済政策なのですが、何度も懲りずに商品券を配るということです。一体、過去のデータなどをしっかりと検討してから打ち出したのか、と疑わざるをえません。

 しかも、記事を引用すれば「0~2歳児の子育て世帯への支給ではこれまで、6月2日以降に生まれた子は対象にしない方針だった」のが、9月30日までに出生した0歳児のいる世帯の全てを対象とする方向を採ろうとしているようです。どこで線引きしても不公平感は否めません。

 問題はこれだけに留まりません。

 上限の20,000円で25,000円分の商品を買うことができるというのは、一見、消費効果などに貢献すると思われるからよいことだ、ということになるでしょう。しかし、20,000円で25,000円分ということは、25%の上乗せをしているということです。税率(これがまたややこしいことになります。標準税率の10%と軽減税率の8%の二本立てです)よりも高いので、差額をどうするのかという疑問も湧きます。社会保障制度の充実や教育の無償化(その内容自体も問題ですが)に貢献しないことは間違いないでしょう。短期的な効果はあっても、中長期的な効果は期待しないほうが無難というものです。将来の伸びしろを先食いするようなものですから。

 また、子育て世帯と住民税非課税世帯に限定していることにも疑問が残ります。所得制限などは、方向を変えると我々日本人が大好きなレッテル貼りに終わってしまう可能性が高いからです。

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写真を見て「南海ラピート2世?」

2019年03月18日 23時46分45秒 | 日記・エッセイ・コラム

 たまたま、うちで切り抜きをしている時に、今月デビューした西武鉄道の新型特急電車の記事を見ました。

 写真が目に入った瞬間に、「南海のラピートか?」と思いました。

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今日で8年

2019年03月11日 06時00分00秒 | 日記・エッセイ・コラム

 今日は2019年3月11日です。つまり、東日本大震災からちょうど8年が経過した、ということになります。

 「2011年3月11日、高島平からの帰宅記」にも記しましたが、その日、私は大学の研究室で仕事をしていました。板橋校舎2号館10階には私しかいなかったはずです。

 その時の私は、17時半に大学を出て、路線バスや都電や地下鉄などを乗り継いで帰宅しました。23時半を過ぎていましたので、6時間以上もかかりました(池袋駅の周辺で夕食をとりましたが)。大学に泊まることも考えなかった訳ではないのですが、板橋校舎2号館の10階などには立入禁止となってしまいましたし、教室で一夜を過ごすのはどうなのかと思ったからです。

 しかし、今は、地震に遭った場所によっては帰宅しないという選択肢を採るしかないであろうと考えています。

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L'État, c'est moi.

2019年03月08日 19時00分20秒 | 国際・政治

 ルイ14世が「朕は国家なり」(L'État, c'est moi.)と言ったそうですが、最近も似たようなことを言った人がいるとか。

 本当のことなんでしょうか。

 先程、芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』〔第7版〕を購入したばかりの私には、信じられないことですが。

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申し訳ないのですが

2019年03月07日 05時00分00秒 | 受験・学校

 他の大学教員の方々がどのようになされているのかわかりませんが、私は、期末試験、追試験、再試験に関して、いかなる形であっても事前に問題などを漏らさないようにしています。

 と言うより、問題を作成して、提出した瞬間に、忘れてしまうのです。

 いつもこのように説明しているので、「嘘だろう」と思う学生も少なくないでしょう。

 嘘ではありません。本当です。

 まあ、うちのMacBook Proなどを使えば何時でも引っ張り出せますが、漏らさないのが職業人というものです。

 それにしても、レポートで採点した科目で再試験を行うというのも変な話ではあります。

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