今日(2023年9月29日)の12時38分付で、朝日新聞社のサイトに「鉄道・バス事業者3割が『赤字の回復不可能』 今後2年が正念場」(https://digital.asahi.com/articles/ASR9Y3WB7R8FPPZB006.html)という記事が掲載されていました。
岡山県に地域公共交通総合研究所という機関があります。両備グループの研究機関であるとのことです。
その地域公共交通総合研究所が、今年の5月から6月にかけて調査を行いました。5回目であるそうで、鉄道事業者(機動事業者を含みます)、バス事業者および旅客船事業者の計504社を対象にアンケートを行い、111社から回答が得られたとのことです。
回答率が低いことは、どこまで交通事業者の意見なり実態なりを反映しているのかという点において気になるのですが、とりあえず進めましょう。
まず、輸送人員です。2019年度と2022年度とを比較すると、次の通りです。
「10~30%減」:68%←2020年11月の初調査時には14%であったそうです。
「30~50%減」:12%←初調査時には過半数を占めていたそうですが、何年度と何年度との比較であるのかはわかりません。
次に、累積損失額です。2023年3月末時点での額です。
「10億~50億円」:33%←初調査時は13%であったとのことです。
具体的な数値は不明ですが、COVID-19によって痛めつけられた交通事業者の「赤字は回復不可能と見立てた事業者は30%に。特に鉄軌道事業者は40%以上と高めに推移していたが、今回は52%に上った」とのことです。やはり、大量輸送機関の鉄道事業者にとって大きな打撃であったことがうかがいしれます。内訳を知りたいところですが、中小私鉄や第三セクターの鉄道会社の中には非常に深刻な状況にあるところが多いものと推察されます。とくに、COVID-19とは関係なく、高松琴平電気鉄道、弘南鉄道の例をみればわかるように、中小私鉄の場合は施設の老朽化が激しく、根本的な打開策を採るか廃止するかの2つしか選択肢がないという状況に追い込まれています。
地域公共交通総合研究所の調査に戻りましょう。続いてCOVID-19対策です。
「国や自治体から支援金や給付金を受け取った」:94%
「受給をやめたら(中略)経営が成り立たない」:68%
「補助や支援がない場合の経営維持は『24カ月以内』」:62%←「今後2年が正念場という実情がみられた」という表現は妥当です。
また、「持続可能な公共交通経営に向け、国や自治体の財源確保が「必要」としたのは96%。公設民営化や、自治体と協定を結び補助を受けて運行する「エリア一括協定運行」などの制度改革は76%が必要だとした」とのことです。
以上の結果について、地域公共交通総合研究所は、8月10日に岡山市内において「全国の公共交通8事業者の代表による会議を岡山市内で開催」しており、「持続可能な地域公共交通のあり方について国への提言をまとめ、提出した」とのことです。その提言をまだ読んでいませんが、上記朝日新聞社記事によれば「提言は『2024年問題』を見据えた人手不足への対応や、公設民営といった制度改革など6項目。公共交通を地域のインフラ整備と位置づけ、まちづくりと一体で考えるべきだとしている」そうです。
元々、地域公共交通は都市計画、地域づくりの一環として捉えられるべきものですが、これまで道路網(高速道路網を含めて)の整備にばかり目を配り、鉄道やバスなどの公共交通機関は置き去りにされてきた憾みがあります。正直なところ、地域公共交通活性化再生法が制定されたのも遅きに失したとしか思えませんし、むしろ、地域公共交通と引き換えに、自家用車の自動運転の開発を急ピッチで進めるべきなのかもしれません。ただ、高齢化が進むならば、たとえ自動運転のレヴェルが上がっても自家用車の運転を続けることのほうに問題があり(高齢者が運転するプリウスが引き起こす事故が多いことを考えてみてください)、公共交通機関をなくしてしまう訳にもいかないでしょう。難しく、厄介な問題です。