ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

気になる地方法人税法案(2)

2014年02月27日 02時45分26秒 | 法律学

 さて、地方法人税法案の中身です。財務省のサイトにも簡単なまとめが掲載されており、次のように説明されています。

 納税義務者:法人税を納める義務がある法人。

 課税標準:各事業年度の所得に対する法人税の額。但し、利子配当等に係る所得税額控除等は適用しないで計算する。附帯税の額も除く。

 税率:4.4パーセント。

 その他、平成26年度税制改正大綱と同旨。

 地方法人税の導入に伴い、地方税法および地方交付税法なども改正する。地方税法については、現在の法人税住民税率を4.4パーセントだけ引き下げる(内訳は、都道府県分が1.8パーセント、市町村分が2.6パーセント)。地方交付税法については、地方税の税収の全額を交付税特別会計に入れることとする。

 ここで、法案に示されている条文の一部を見てみましょう。なお、条文の前に付けられている見出しは省略します。

第一条 この法律は、地方交付税の財源を確保するための地方法人税について、納税義務者、課税の対象、税額の計算の方法、申告及び納付の手続並びにその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めるものとする。

第四条 法人税を納める義務がある法人(以下「法人」という。)は、この法律により、地方法人税を納める義務がある。

第五条 法人の各課税事業年度の基準法人税額には、この法律により、地方法人税を課する。

第六条 この法律において「基準法人税額」とは、次の各号に掲げる法人の区分に応じ当該各号に定める金額をいう。

 一 法人税法第二条第三十一号に規定する確定申告書を提出すべき内国法人 当該内国法人の法人税の課税標準である各事業年度の所得の金額につき、同法その他の法人税の税額の計算に関する法令の規定(同法第六十八条から第七十条の二までの規定を除く。)により計算した法人税の額(附帯税の額を除く。)

 二 法人税法第二条第三十一号に規定する確定申告書を提出すべき外国法人 当該外国法人の法人税の課税標準である各事業年度の所得の金額につき、同法その他の法人税の税額の計算に関する法令の規定(同法第百四十四条の規定を除く。)により計算した法人税の額(附帯税の額を除く。)

 三 法人税法第二条第三十二号に規定する連結確定申告書を提出すべき連結親法人 当該連結親法人の法人税の課税標準である各連結事業年度の連結所得の金額につき、同法その他の法人税の税額の計算に関する法令の規定(同法第八十一条の十四から第八十一条の十七までの規定を除く。)により計算した法人税の額(附帯税の額を除く。)

 四 法人税法第二条第三十四号に規定する退職年金等積立金確定申告書を提出すべき法人 当該法人の法人税の課税標準である各事業年度の退職年金等積立金の額につき、同法その他の法人税の税額の計算に関する法令の規定により計算した法人税の額(附帯税の額を除く。)

第九条 地方法人税の課税標準は、各課税事業年度の課税標準法人税額とする。

2 各課税事業年度の課税標準法人税額は、各課税事業年度の基準法人税額とする。

第十条 地方法人税の額は、各課税事業年度の課税標準法人税額に百分の四・四の税率を乗じて計算した金額とする。

2 前項の場合において、法人の各課税事業年度の基準法人税額に法人税法第六十七条第一項又は第八十一条の十三第一項の規定により加算された金額がある場合には、前項の課税標準法人税額は、当該基準法人税額から当該加算された金額を控除した金額とする。

第十一条 内国法人が各課税事業年度において法人税法第六十七条第一項又は第八十一条の十三第一項の規定の適用を受ける場合には、第六条第一号又は第三号に定める基準法人税額に対する地方法人税の額(以下この章において「所得地方法人税額」という。)は、前条の規定にかかわらず、同条の規定により計算した所得地方法人税額に、同法第六十七条第一項又は第八十一条の十三第一項に規定する合計額に百分の四・四を乗じて計算した金額を加算した金額とする。

 第11条は、法人税法第67条に規定される特定同族会社、または同第81条の13に規定される連結特定同族会社についての規定です。法人税と同様に、地方法人税についても特定同族会社に特別な加算税率が適用されることになります。

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フォンタナのニュー・ジャズ・シリーズが再発された

2014年02月25日 01時47分59秒 | 音楽

 23日(日)、注文していたCDが届きました。1960年代、オランダのフィリップスのレーベル、フォンタナから発売されていたニュー・ジャズ・シリーズで、Cool Musicというレーベルから4枚が再発されました。順不同で、次のものです。

 テッド・カーソン「アージ」(Ted Curson Quartet, Urge)

 マリオン・ブラウン「ジュバ・リー」(Marion Brown Septet, Juba-Lee)

 ジョン・チカイ-アーチー・シェップ「ルーファス」(John Tchicai-Archie Shepp-J.C. Moses-Don Moore, Rufus)

 ニューヨーク・コンテンポラリー・ファイヴ「コンシークウェンス」(New York Contemporary Five, Consequences)

 いずれも、1980年代に日本フォノグラムからLPとして発売されていました。1枚1950円でした。オランダの女性リトグラファー(と、レコードのジャケットでは紹介されています)、マルテ・レーリング(Marte Röling)が描いた絵が、このシリーズの特徴をよく表現しておりまして、当時高校生だった私は、そこにひかれたのでしょう。この中では「アージ」だけを買い、何度となく聴いていました。残りの3枚は、今回初めて聴きました。

 ニュー・ジャズとはいかなるものであるのかは、このシリーズのどれか1枚でもお聴きくださればわかります。比較的聴き易いのは「アージ」でしょう。テッド・カーソンは必ずしも前衛派とは言えない人ですが、「アージ」ではピアノのない四重奏で、モードあり(”The Leopard”)、変拍子あり("Cinq Quatre")、ブルースあり("Cinq Quatre" & "Music Sacrum")です。カーソンには、やはりこのシリーズで「ドルフィーに捧げる涙」(Tears for Dolphy)というアルバムもあり、そちらのほうが有名かもしれませんが、私は「アージ」のほうばかり聴いていました(なお、「ドルフィーに捧げる涙」は、ニュー・ジャズ・シリーズであるにもかかわらず、1980年代に何故かキングレコードから再発されていました)。

 このニュー・ジャズ・シリーズですが、1980年代にも全てが再発された訳ではありません(スイングジャーナルなどでチェックし、六本木WAVEでも確かめました)。元々は1960年代に発売されたLPですから、ジャケットで他のレコードの宣伝もなされているのですが、1980年代に再発されなかったものも確認できたのです。

 今回、ポール・ブレイ(Paul Bley)の「ブラッド」(Blood)と「タッチング」(Touching)は発売されなかったようです。あるいは、これから再発されるのでしょうか。どちらも高校時代に買い、「ブラッド」にはまっていました。

 フォンタナ、そしてテッド・カーソンと言えば、エリック・ドルフィー「ラスト・デイト」(Eric Dolphy, Last Date)と連想できます。1964年6月2日にオランダで録音された、あの名盤です。同じ月の29日に、ドルフィーはベルリンで亡くなります。今年は、ドルフィーが亡くなってからちょうど50年となります。私は、彼が亡くなってからちょうど20年経った1984年に「ラスト・デイト」のLPを秋葉原で買い、それ以来、ドルフィーのアルバムを集めるようになりました。今でも、車を運転している時などに「ラスト・デイト」を聴いています。

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気になる地方法人税法案(1)

2014年02月23日 01時50分37秒 | 法律学

 仕事の関係もあり、特に衆議院のサイトをよく見ています。現在開かれている第186回国会においては、衆議院議員提出法案(衆法)が42件(第183国会において提出されていたものが21件、第185回において提出されたものが21件)、参議院議員提出法案(参法)が1件、内閣提出法案(閣法)が37件ありますが、特に気になっているのが、閣法8号として今月4日に衆議院に提出された地方法人税法案です(同日、参議院にも予備審査議案として提出されています)。2月14日に衆議院財務金融委員会に付託されました。

 まだ開かれていないのか、第186回における衆議院財務金融委員会の会議録は公開されていませんが、議案は公表されています。これから詳しい分析をしなければならないのですが、かなりの時間をかける必要がありますので、今回は「さしあたり」のところを記しておきます。

 地方法人税法案は、平成26年度税制改正の一環として提出されています。しかし、突然現われた訳でも何でもなく、前史はかなり長いものとなります。

 地方公共団体による法人への課税として、法人住民税(道府県および市町村。地方税法は道府県について定め、都については特例を定めるという形をとります)、法人事業税などがありますが、これらはとくに都道府県の主要な財源であるとともに、国税たる法人税との関係などもあり、常に課税のあり方が問われてきました。とくに、ここ何年(何十年?)と続いている法人税率の引き下げの議論は、地方税を合わせた実効法人税率の引き下げの議論にもつながっています。議論というよりは圧力になっていることも、報道などで言われていることです。

 他方、法人課税は、都道府県(および市町村)の主要な財源であるとともに、税源の偏在性が度々指摘されています。東京都、神奈川県、愛知県および大阪府に税源が集中する傾向にあるからです(もっとも、一貫して地方交付税の不交付団体であるのは東京都だけですが)。財源の不均衡にはやむをえない部分もありますが、多少とも是正する必要があることも否めません。

 そのために、様々な場で議論がなされました。詳しいことは記しませんが、最近の動きの例として、地方財政審議会に「地方法人課税のあり方等に関する検討会」が設置され、平成24年9月20日から翌年10月30日まで16回の会合が開かれ、11月6日に「報告書」が出されています。この検討会は、総務省のサイトで「地方法人特別税等に関する暫定措置法第1条、平成21年税制改正法附則第104条、税制抜本改革法及び税制抜本改革法案提出に伴う閣議決定(平成24年3月30日)を踏まえ」て「地方財政審議会に」設置され、「地方法人特別税の抜本的見直しに向けて検討を行うとともに、地域間の税源偏在の是正に向け地方法人課税のあり方等について幅広い検討を進めてきた」と説明されています。

 「報告書」(以下、出典の頁表示は省略)においては、「地方法人所得課税については、今回の地方消費税の税率引上げのように他の偏在性の小さい安定した地方税を充実していくことを前提に、法人の事業活動規模等に即した外形的な基準による課税への移行や、国税化による地方交付税原資化を図ることを検討すべきである」、「法人所得の本来の帰属等の議論等を踏まえれば、法人所得に地方行政の受益に関する一定の負担を求めるとしても、法人税収を帰属させる課税団体については、より広域的な団体の方が望ましいこととなり、また、それでもなお偏在性が大きいことを踏まえれば、偏在性の小さい地方税の強化を図りつつ、税源偏在と財政力格差の是正を図るため、地方法人所得課税の一部を国税化し、交付税原資としていくことが考えられる」と述べられています。

 そして、次のように見解がまとめられています。

 「当検討会としては、平成20 年度税制改正において創設された地方法人特別税・譲与税制度が、消費税1%相当額と地方法人課税の税源交換を将来的に行うことを前提に、税源交換が実施されるまでの間の暫定措置として創設されたものと位置づけて考えるべきであること、さらに、地方交付税原資化に最もふさわしい税は偏在度の高い法人住民税法人税割であることから、消費税に係る地方交付税法定率分を地方消費税とし、法人住民税法人税割を地方交付税原資とする税源交換を、基本的な目標とすべきであると考える。その際には、現在の地方法人特別税・譲与税は廃止し、法人事業税に復元することが基本となるが、その場合に、法人の事業活動に地方団体が提供する行政サービスの受益に応じた負担を求めるという観点を踏まえて、地方法人特別税の所得割分を法人事業税所得割にそのまま戻すのでなく、法人事業税の付加価値割を拡大すること等を検討する必要があろう。」

 「当検討会としては、税制抜本改革法第7条第5号ロの規定(「税制の抜本的な改革による地方消費税の充実と併せて、地方法人課税の在り方を見直すことにより税源の偏在性を是正する方策を講ずることとし、その際には、国と地方の税制全体を通じて幅広く検討する」)に基づき、関係者の理解が得られる範囲内で、地方消費税の税率引上げに併せて、都道府県及び市町村の法人住民税法人税割の一部について交付税原資化を図ることを検討すべきであると考える。また、これにより同号イの規定(「地方法人特別税及び地方法人特別譲与税について、税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の措置であることを踏まえ、税制の抜本的な改革に併せて抜本的に見直しを行う」)の趣旨を踏まえ、地方法人特別税・譲与税制度の抜本的な見直しを進めることになる。この場合、法人住民税法人税割の一部は国税化することとなるが、地方固有の財源である地方交付税の原資に国税化された額の全額を繰り入れることにより、地方団体の貴重な税財源であるという性格が失われることはないことに留意する必要がある。また、地方法人特別税・譲与税制度創設に伴い平成20 年度地方財政計画に計上された『地方再生対策費』のような、偏在是正により生じる財源を活用した地方財政計画への歳出の計上についても検討すべきである。」

 詳しい経過についてはこれから検討しようと考えていますが、平成25年12月24日に閣議決定された平成26年度税制改正大綱にも「地方法人課税の偏在是正」という項目の下に「地方法人税(国税)(仮称)の創設」が表明されています。概要を記しておきましょう。

 納税義務者:法人税の納税義務を負う者。従って「人格のない社団等」や「法人課税信託の引受けを行う個人」も含まれる。

 税額の計算:地方法人税の税額は、各課税事業年度の基準法人税額を課税標準とした上で、これに4.4%の税率を乗じて得られた額である(都合上、基準法人税額の意味については省略します)。

 地方法人税の申告および納付:法人税と同様に、国(税務署)に対して行う。申告書の提出期限も、法人税の申告書の提出期限と同じである。

 質問検査権、罰則など:「法人税と同様と」する。

 施行:平成26年10月1日以後に開始する事業年度からとする。

 以上を踏まえる形で法律案がまとめられ、提出されました。提出理由は、次のように示されています。

 「平成二十六年度の税制改正の一環として、法人の道府県民税及び市町村民税の法人税割の税率の引下げにあわせて地方団体の税源の偏在性を是正しその財源の均衡化を図ることを目的として地方交付税の財源を確保するための地方法人税を創設するため、その課税標準、税率等税額の計算方法を定めるとともに、地方法人税の申告及び納付の手続その他納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。」

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北総線運賃認可訴訟の行方(続)

2014年02月20日 09時40分36秒 | 法律学

 昨年(2013年)3月22日付で「北総線運賃認可訴訟の行方」という記事を載せました。今回はその続編です。

 今日(2014年2月20日)付の朝日新聞朝刊37面14版に「運賃訴訟 二審も敗訴 北総線 原告適格は認定」という記事が掲載されています。昨日、東京高等裁判所で二審判決が出されました。

 上記記事は短いものなので、判決についてあまり詳しく書かれていませんが、おおよそ次のようなものです。

 (1)原告適格

 鉄道運賃に関する訴訟の代表例として、近鉄特急訴訟があります。近鉄特急を通勤などのために利用する乗客が、近鉄に対して特急料金の値上げを認可した大阪陸運局長を相手取って認可の取消を求めました。この事件について、最一小判平成元年4月13日判時1313号121頁は、そもそも乗客にこの種の訴訟を起こす資格がないという趣旨の判断を示しました。

 北総線運賃認可訴訟においても、原告適格が争点となったようです。昨年3月26日の東京地裁判決は、上記記事からの引用をお許し願うならば「通勤や通学のための日常的な利用者には重大な損害が生じかねない」という理由により、沿線住民の原告適格を認めました。昨日の東京高等裁判所も同様の判断を示しています。

 (2)認可取消の請求は認められるか

 原告適格は訴訟を提起する要件なり資格なりがあるか否かの判断であって、中身の問題ではありません。そのため、中身に立ち入ることなく、要件や資格がないと判断する判決を却下判決といいます。さしあたり、民事訴訟でいう訴訟判決と同じように考えてよいでしょう。

 要件、資格が認められたら、中身(本案)に入ります。東京地裁も東京高裁も、中身については原告の請求を認めていません。請求を棄却した訳です。

 原告は、北総線の高額な運賃が鉄道事業法第16条第5項第1号にいう「特定の旅客に対し不当な差別的取扱い」に該当すると主張していました。これに対し、東京高裁は(おそらく東京地裁の判決を引用する形ではないかと思われますが)「運賃はすべての利用者に適用されており、不当な差別ではない」と判断しました。

 判決文そのものを手近に見ている訳ではないので、詳しく検討できないのですが、話を普通運賃に限定するという前提で記事を読めば、その限りでは妥当な判断ではないかと思われます(少なくとも「やむをえない」とは言えるでしょう)。北総線の運賃が、沿線住民とそれ以外の者とを区別し、前者には初乗り運賃が190円で後者には150円であるとするならば、これは間違いなく鉄道事業法第16条第5項第1号に該当します。しかし、このような差別的な取り扱いが存在する訳ではないため、妥当とせざるをえないのです。

 ただ、この訴訟で主眼となっているのは定期運賃です。とくに通学定期の高さは有名です。定期運賃となれば、当然、実際の利用者の範囲は普通運賃に比べて狭まります。かなりの程度で沿線住民に限定されてくることでしょう。とくに通学定期の場合、沿線住民か、沿線の学校に通う学生・生徒に限定されます。こうなると、東京地裁や東京高裁の判断が妥当であるかどうか、疑わしくなってきます。

 この訴訟が最高裁に係属するか否かは、現時点においてわかりません。上告の可能性はありますが、最高裁が東京高裁判決を破棄する可能性は低いでしょう。司法の場では、結局、北総線の運賃は普通運賃であれ定期運賃であれ問題はなく、認可に違法性はないという結論でまとめられるはずです。しかし、問題の解決にはなっていません。

 このことを見越した上での話であるのか、沿線住民が北総線を利用しないという選択肢の下に社会実験を行っていました。

 朝日新聞2014年2月7日(金)付夕刊1面4版には、「北総線 乗らない選択 『運賃高すぎる』 住民らバス運行」という興味深い記事が掲載されています(しかもトップ記事です)。一種の社会実験が取り上げられているのですが、その内容は、別の鉄道との乗換駅までバスを走らせるというもので、4月からは定期路線バスが運行されるということです。

 千葉ニュータウン中央駅から、新京成線との乗換駅である新鎌ケ谷駅までの運賃は、北総線ですと540円です(およそ11キロメートル)。これに対し、同じ区間を走る社会実験バスでは300円としていました。1日6便で、北総線なら10分ほどであるのに対してバスでは25分かかるそうです。それでもバスを利用するという人が少なくないようです。

 この話を読んで、かつて小牧市を走っていたピーチライナーを思い出しました。やはりニュータウンに建設された鉄道ですが、バスの利便性に勝てなかったという事例です。運賃が高額であったという点も似ていますし、沿線住民が立ち上がって桃花台からJR春日井駅までの会員制バスを走らせたという話は、北総線沿線の住民の動きに影響を与えたものと思われます。

 但し、北総線と事情が異なる部分もあります。ピーチライナーの場合は名古屋市の中心部へ出るのに不便でした。ピーチライナーの起点は小牧駅で、ここで名鉄小牧線と接続するのですが、同線の起点は上飯田駅であり、2003年3月26日まで他の路線との連絡がなかったのです。そのため、桃花台ニュータウンの住民の多くはJR春日井駅に出て中央線を利用していました。名鉄が1964年に岩倉支線を廃止していなければ、名古屋市中心部へのアクセスは良好であったはずです。

 バスとの競合という点では、神戸電鉄を忘れる訳にはいきません。存続問題ということで粟生線がとくに注目されていますが、有馬線・三田線でも同様で、神戸市中心部の三宮に出るにはバスのほうが安くて便利であるという話を聞きます。

 北総線に話を戻すと、社会実験から発展した定期路線バスが成功し、増便ということになれば、鉄道路線はいっそうの苦境に陥ることとなります。北総鉄道の2013年9月中間決算によると、累積赤字は216億2900万円です。同社の資本金は249億円ですから、比率としてはかなり高いことがわかります。しかも、同社の有利子負債は800億円を超えています。2000年度から黒字であるそうですが、それまでの赤字の期間が長かったことから、累積赤字の解消は難しいでしょう。

 また、2010年度から、北総線沿線の6市と千葉県は、毎年、北総鉄道に3億円の補助金を出しており、これによって北総鉄道は平均で4.9パーセントの運賃値下げを実施しました。しかし、こうした補助も2015年度で終了することとなっています。

 北総線の全線は、成田スカイアクセス(京成成田空港線)と重複しています。成田スカイアクセスの場合、京成が第二種鉄道事業者で、北総鉄道、千葉ニュータウン鉄道、成田高速鉄道アクセスおよび成田空港高速鉄道から施設を借りて運行しているのです。成田空港の将来に左右される可能性が高いとは言え、空港連絡という機能を果たす限りにおいて、存廃問題に揺れることはないでしょう。ただ、北総鉄道の将来となると話は別です。

 かつて、千葉急行電鉄の経営が破綻した際に京成電鉄が事業を引き継ぎました。同じようなことが起こるかもしれませんし、本来的に望ましいのは、北総鉄道、千葉ニュータウン鉄道および成田高速鉄道アクセスを完全に京成電鉄のものとし、京成が第一種鉄道事業者となることでしょう(成田空港高速鉄道については不可能です。JR東日本も第二種鉄道事業者であるためです)。このようにすれば、運賃問題も解決の方向に向かうかもしれません。しかし、その可能性は低いでしょう。

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大学でbe動詞の授業~~しかし、実態は、少なからずこのようなもの~~

2014年02月12日 23時50分48秒 | 受験・学校

 先程、読売新聞社のサイトを見たら、今日の21時49分付で「大学でbe動詞教える授業、文科省が改善要求」として報じてました。

 記事によると、文部科学省は、2013年度に新設された大学、または学部などの運営状況を調査しており(対象は528校)、12日、つまり今日、結果を公表しました。それにより、「中学校レベルの英語の授業で単位認定を行っていたり、教員数が大学設置基準を満たしていなかったりした266校に改善を要求した」とのことです。

 「にわかには信じられない」とお思いの方もおられることでしょう。決して少なくないはずです。しかし、大学教育に少しでも関係したことがあるという方であれば、この話にはすぐに納得がいくはずです。

 嘘のような話ですが、be動詞の基礎ができていない、現在形と過去形の違いがわからない、などという例が見られます。動詞の三人称現在単数形(通称「三単形」)の語尾に付くs、haveの過去形であるhadなども、意外なくらいに理解されていない例です。また、doの三単形であるdoes、あるいは過去形のdidを理解していないという例もありました。中学、高校と何を勉強してきたのだろうと思いますし、大学でもこういう内容の授業を行わざるをえない場合がある、ということは言えます。

 文部科学省は「大学教育にふさわしい水準に改めるよう」当該大学に求めたそうですが、担当教員に大学教員としての資格があるならば(そのようなことは設立時の資格審査で十分に評価などがなされているはずです)、be動詞の基礎などを教えざるをえないという実態がある訳です。つまり、「改善」を求められたとしても「改善」しようがない、ということです。be動詞もわからないのに英語を理解できるという人はいないでしょう。様々な事情がありますし、私も簡単な記事を読んだだけで詳しい実情などを知りませんが、一概に責められない、と記すべきでしょう。

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こんな第三セクターもあるのか

2014年02月11日 10時04分46秒 | 社会・経済

 今日の3時付で、朝日新聞社が「北海道)幌延町、風力発電所の株を110倍で売却」として報じています(http://www.asahi.com/articles/ASG105J0DG10IIPE01Z.html)。珍しい話であると思われるので、取り上げておきましょう。

 話の概要は記事の見出しで明らかなくらいですが、第三セクターといえば、高い金で何かを導入して失敗し、安値で手放すというのが相場であると決まっているようなものでした。「でかした!」という言葉も聞こえてきそうです。

 北海道の最北にある稚内市より南のほうに、幌延町があります。この町が、風力発電書を運営する「幌延風力発電」という第三セクターを、JFEエンジニアリング、および伊藤忠商事とともに設立しました。幌延町は筆頭株主で、発行済み株式総数の51%(102株)を保有していました。資本金は1000万円で、1株が5万円です。

 幌延町は、この「幌延風力発電」の株式のうち、96株をJFEエンジニアリングに売却することとなりました(残る6株は株主総会招集請求権などを維持するために保有し続けます)。1株あたりの売却価格は550万円です。つまり、110倍で売ることができる、という訳です。総額は5億2800万円となります。

 この第三セクターは、幌延町内に28基の風車を立てて発電しており、北海道電力に売っています。2012年度の売り上げはおよそ5億3700万円で、1年間の発電量はおよそ5000万キロワット/時です。幌延などの道北日本海側は風力発電に向いている土地柄なのかも知れません。

 株の売却によって得られた収入を、幌延町は「再生可能エネルギー施策の充実にあてる」方針であるとのことです。

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誤報か嘘であって欲しい報道

2014年02月04日 12時54分20秒 | 受験・学校

 今朝の8時35分付で、朝日新聞社が「9―3÷1/3+1=? 新入社員の正答率4割」(http://www.asahi.com/articles/ASG235FPJG23OIPE024.html?iref=comtop_list_biz_n03)として報じています(なお、「1/3」は「3分の1」のことです)。

 これを読んだ瞬間に「嘘だろう?」と思いました。少なくとも、誤報であって欲しいところです(そのような考えを起こさせる報道も滅多にないものです)。

 四則計算は、小学生で学ぶはずです。上の見出しにあるような式の場合、かっこがありませんので、掛け算・割り算を先に行います。それから足し算・引き算を行います。

 従って、上の式の場合、まずは3÷1/3を先に計算します。この式は3×3/1=3×3という意味ですから、答えは9です。

 そうすると、9―3÷1/3+1=9-9+1=0+1=1ということになります。

 上記記事によると「ある大手自動車部品メーカーが、高卒と大卒の技術者の新入社員をテストしたところ、正答率は4割にとどまった」とのことです。中部経済連合会が発表したそうですが、技術者でこの体たらくとは、にわかに信じられません。ちなみに、1980年代の正答率は9割程であったそうです。

 口で言われて暗算するのであれば、計算間違いもありうるところですが、テストであれば紙に計算式を書くでしょうから、この程度の長さの式であれば誤りようがないと思うのです。

 『分数のできない大学生』という本が話題になったのは、もう10年以上も前のことですが、嘘ではないということでしょうか。

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