ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

基本的人権の分類

2020年06月30日 00時12分22秒 | 法律学

 あれこれの説がないとは言えませんが、基本的人権の分類は、意外なくらいに点数が取れない分野であるようです。何故でしょうか。

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第15回 行政行為論その5:行政行為の職権取消と撤回

2020年06月29日 00時00分00秒 | 行政法講義ノート〔第7版〕

 ★はじめに

 「第11回 行政行為論その1:行政行為の概念の冒頭において「行政行為に限らず、行政契約などを含めて行政作用を学ぶ際には、まず、民法学の法律行為論を復習していただきたい」と記した。第12回において扱った行政行為の附款は、民法の附款論と土台を共通とするし、第14回において扱った行政行為の瑕疵も、実は民法学における法律行為論の応用であることがおわかりいただけるのではないかと思う。今回取り上げる行政行為の取消も、基本となるのは法律行為論である。

 

 

 ★★本論

 

 1.裁判所(の判決)による取消と行政庁による取消

 行政行為の取消という場合、裁判所による取消と行政庁による取消とがあるが、日本の行政法学においては双方を取消と称するために、混乱を避ける意味で、この講義ノートにおいては行政庁による取消を職権取消と表わすことにした。ドイツにおいては、裁判所による取消をAufhebung、行政庁による取消をRücknahmeというのが一般的である。ちなみに、撤回はWiderrufである。

 

 2.行政行為の職権取消

 (1)職権取消の意味

 行政行為の職権取消とは、既に述べたように行政庁による取消である。

 行政行為の取消は、成立時に有効であったが違法の瑕疵または不当の瑕疵を帯びる行政行為の効力を、原則として成立時まで遡って失わせることである。また、取消は、違法または不当な法律関係を元の適法な状態に戻すということでもあるので、この点において法律による行政の原理の回復であると言いうる。

 民法第121条は「取消しの効果」として「取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす」と定める。行政行為の取消も、基本的に民法第121条に定められるところと同じ意味であると考えてよい。

 取消権を有するのは、第一に行政行為を行った行政庁である。その他、その行政庁の上級行政庁は、監督権限の行使の一環として取消権を有する。なお、行政不服審査法に基づく不服申立の結果として、不服審査庁が行政行為を取り消す場合は、ここにいう職権取消に該当しない。

 (2)職権取消の根拠

 行政行為の職権取消も、行政行為である。そのため、第11回 行政行為論その1:行政行為の概念において示した行政行為の定義などからすれば、職権取消にも法律の根拠が必要ではないかと思われるかもしれない。

 しかし、通説(・判例)は、職権取消について法律の根拠を不要と解する。問題はその理由であるが、塩野宏教授は「法治国原理の要請するところ」と主張している塩野宏『行政法I』〔第六版〕(2015年、有斐閣)189頁。取消が法律関係を瑕疵のない状態に戻すことを意味し、また取消が法律による行政の原理の回復であると理解することができるので、妥当な見解であろう。

 (3)行政行為の職権取消に制約はあるのか?

 職権取消は、行政庁が瑕疵ある行政行為の効力を失わせるものである。しかし、そのことから行政庁が職権取消を無制約になしうるという訳ではない。これについては、対象となる行政行為の性質に照らして検討をなすべきである。

 まず、賦課的行政行為の職権取消については、とくに問題はないと考えられる。但し、行政行為の相手方にとっては賦課的行政行為であっても、他の関係者など第三者にとっては授益的行政行為であるというような場合には、第三者の利益を保護する必要性から、制約があるものと考えられる。

 これに対し、授益的行政行為(許可、認可など)の職権取消は、行政手続法にいう不利益処分に該当することもあって、問題がある。私人は行政行為の存続を信頼している。そこで、信頼保護の観点からの制約、さらに法的安定性の観点からの制約が存在すると考えられるのである。学説は、一般論としてこうした制約を認めているが、具体的にいかなる場合にこうした制約が認められるか、答えることは難しい。

 (4)職権取消の効果

 既に述べたように、行政行為の取消は遡及効を有する。すなわち、行政行為の取消により、行政行為の効力は行政行為の成立時点にまで遡り、効果が失われる。但し、学説は、やはり信頼保護や法的安定性の観点から、授益的行政行為の職権取消について遡及効を持たない取消、すなわち、将来に向かってのみ効果を生ずる取消の余地を認める。

 

 3.行政行為の撤回

 (1)法律の条文に登場する「取り消し」、「取り消す」などの表現に注意!

 道路交通法第103条第1項は「免許(仮免許を除く。以下第106条までにおいて同じ。)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し(以下略)」と定める。このこともあって、一般的には運転免許の取消しなどと表現される。しかし、これを行政行為の職権取消と同じ意味として理解することはできない(特別な場合を除く)。職権取消とすると、運転免許の成立時に遡って効力が失われることとなり、成立時から取消の時点までの無免許運転に帰するというおかしな結果に至るからである。

 従って、同項の「取り消し」は行政行為の職権取消と意味が異なり、行政行為の撤回に該当する。このように、日本の法令の条文においては職権取消と撤回が区別されず、いずれも「取り消し」、「取り消す」などと表現されている。意味、効果などを考えて解釈をしなければならない。

 (2)撤回の意味

 行政行為の撤回とは、成立時には適法であった行政行為を、その後の事情によって効力を存続させるのが望ましくなくなったときに、将来に向かってその効力を失わせることである。法令上は取消しという言葉が使われるが、全く意味が違う。行政行為の撤回は、行政行為の取消と異なり、遡及効を有しない。

 法律によっては撤回に遡及効を認める場合がある。しかし、これは特殊な場合であると理解しておけばよいであろう。

 職権取消と同様に、行政庁による撤回行為も行政行為である(このように考えないと説明がつかない)。しかし、通説・判例は、撤回についても、とくに法律の根拠を必要としないとする。実はその理由が明確であると言えないのであるが、一つの考え方は公益適合性である〈田中二郎『新版行政法上巻』〔全訂第二版〕(1974年、弘文堂)155頁。塩野・前掲書192頁も参照〉。また、処分権限に法的根拠を求めることも可能であるかもしれない〈塩野・前掲書192頁も参照〉

 これに対し、授益的行政行為の撤回については法律の根拠を要するという説も有力である。もっとも、撤回については法律に明文の根拠を置く場合が多い。

 ●最二小判昭和63年6月17日判時1289号39頁(Ⅰ―89)

 事案:民法に特別養子制度の規定が追加されることになった事件である。Xは産婦人科などを開業する医師であり、医師会Yから優生保護法第14条第1項の指定を受けていた。しかし、Xは実子斡旋行為を行っており、これを公表した。こうした事実などが存在したため、Yは指定を「取り消した」。Xは指定取消処分などの取消と損害賠償を求めて出訴した。

  判旨:最高裁判所第二小法廷は、撤回によってXが不利益を受けることを考慮しても、その不利益を公益上の必要性が上回るような場合には、法令に直接の根拠がなくともYはXに対する指定を撤回することができると判断した。

 (3)撤回の権限を有する者

 行政行為の撤回の権限を有する者は、行政行為を行った行政庁に限定される。これは、行政行為を行う権限と撤回の権限とが表裏一体の関係にあるためであり、撤回の権限が当然に上級行政庁の指揮監督権の範囲に入る訳ではないためである〈塩野・前掲書195頁〉。この点も行政行為の取消と異なる。

 (4)撤回に制約はあるのか?

 撤回は、違法な行政行為の効力を失わせる行為ではない。敢えて言うなら公益などに照らした上で(適法ではあるが)不当な行政行為の存続を断ち切る行為である(そのために、遡及効がないとされるのである)。その上で、とくに法律の根拠が必要とされていないために、制約については職権取消以上に問題がある。学説などにおいては、職権取消と同様に、対象となる行政行為の性質に照らして議論を展開させている。

 まず、賦課的行政行為の撤回については、原則として自由であると解される。これは、適法性の問題ではなく、行政行為の相手方の利益保護という問題に由来するものであると思われる。

 これに対し、授益的行政行為の撤回については、やはり信頼保護などの問題がある。適法な行政行為の効力を失わせるのであるから、行政行為の相手方の利益保護という観点は欠かせない。他方、公益上の要請など、適法ではあっても行政行為の存続が望ましくないという場合もありうる。そのため、基本的に比較衡量的な視点に立って考察を進めなければならない。

 制約については、おおむね、次のような原則が立てられることとなるであろう。

 ①行政庁は恣意的に撤回することが許されない。

 ②公益上の理由による撤回については、既得権保護の要請を上回るものでなければならず、認められたとしても、私人の既得権益などとの調整を必要とする。

 ③授益的行政行為を受けた相手方が、その行政行為の根拠となる法律に定められた義務に違反した場合など、有責事由をなした場合には、撤回が認められる。このような場合については、明文で定めることが多い。

 ④当初は許可要件などが私人に存在したが、その後消滅した場合にも、撤回が認められる。このような場合についても、明文で定めることが多い。

 このうち、②については、期間の定めがあれば(法律の規定により、または附款により)、期間内の撤回が許されないと解することが可能である。そうでない場合には撤回をなしうるが、その際に相手方に補償をすべきか否かという問題が残る。

 ●最三小判昭和49年2月5日民集28巻1号1頁(Ⅰ―90)

 事案:Xは、レストランなどの事業を営むために東京都が所有する土地を借り受けた。この土地はXの自己負担で整地されたが、程なく一部が占領軍に接収され、一部は喫茶店の敷地として利用されたが、大部分は放置された。Y(東京都)は卸売市場の用地とするため、土地の半分強についてXに対する使用許可を「取消し」た上、喫茶店の建物を残りの土地に移転することを命じた(行政代執行で実現されている)。この事件においては、使用許可を「取り消された」部分について補償金の支払いが必要か否かが争われた。一審判決(東京地判昭和昭和39年10月5日判タ170号234頁)はXの請求を棄却したが、二審判決(東京高判昭和44年3月27日判時553号26頁)はXの請求の一部を認容した。最高裁判所第三小法廷はYの敗訴部分を破棄し、事件を東京高等裁判所に差し戻した。

 判旨:行政財産の「使用許可の取消に際して使用権者に損失が生じても、使用権者においてその損失を受忍すべきときは、右の損失は同条のいう補償を必要とする損失には当たらないと解すべき」である。また、「公有行政財産たる土地は、その所有者たる地方公共団体の行政活動の物的基礎であるから、その性質上行政財産本来の用途または目的のために利用されるべきものであつて、これにつき私人の利用を許す場合にその利用上の法律関係をいかなるものにするかは、立法政策に委ねられているところと解される。(中略)本件のような都有行政財産たる土地につき使用許可によつて与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である」。これに対する例外は「使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払いをしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られる」。

 

 ▲第7版における履歴:2020年6月29日掲載。

 ▲第6版における履歴:2015年11月30日掲載(「第13回 行政行為論その5:行政行為の職権取消と撤回」として。以下同じ)。

                                  2017年10月26日修正。

            2017年12月20日修正。

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特別定額給付金

2020年06月28日 09時51分50秒 | 日記・エッセイ・コラム

 6月5日に、川崎市から特別定額給付金の申請書が届いたことは、このブログに記しました。オンライン申請でセッションタイムアウトばかり起こして何時間やっても進まなかったのに、紙の申請書であれば10分ほどで書き終わってしまい、後は郵送するだけでした。

 6月25日に振り込まれました。翌日に決定通知書が葉書で届きました。

 こんなことを記したのは、朝日新聞社のサイトに、6月27日の21時53分付で「10万円給付、大都市で大幅遅れ 『問い合わせに忙殺』」(https://www.asahi.com/articles/ASN6W5V39N6VPTIL024.html)という記事が掲載されていたからです。

 正直なところ、この特別定額給付金の事務を市町村に行わせることが適切なのかどうか、疑問も湧きます。法定受託事務として扱われるのでしょうか。それにしても負担が大きいものと考えられます。

 上記記事によると、給付率は全国平均で6割とのことですが、6月19日から26日までの間をとると、大阪市で3%、千葉市で6%、名古屋市で9%、世田谷区で12%、川崎市で17%でした。うちは速いほうだったかもしれません。一方、札幌市で92%、神戸市で78%、福岡市で53%ということで、違いは何なのだろうと思いました。記事にも理由は書かれていないのですが、これから分析してみると面白いかもしれません。

 オンライン講義を行っていて思うことですが、電子システムには結構不具合が多く、学生からも問い合わせが来ます。課題を提出したはずだが未提出として扱われている、というようなことです。こちらで対処するのですが、提出したはずの学生は「未提出として扱われたら成績が下がるかもしれない」という不安も湧くでしょう。勿論、そうならないように私は処理します。また、先週であったか、オンライン講義の途中で回線が不安定になった旨の表示が出て、こちらも焦りました。画面や音がおかしくなることは度々です。何でもデジタル化というのも考え物だろうと思うのです。書類やデータでも、紙などであればそう簡単に消えませんが、電子ファイルでは簡単に消えます。

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こちらは新型、東急2020系

2020年06月27日 02時03分11秒 | 写真

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講義内容を公開します 酒税その2

2020年06月26日 00時00分00秒 | 法律学

 4.酒類の製造、販売に関する免許制度

 酒税法は、酒類等(酒類、酒母またはもろみ)を製造しようとする者、販売しようとする者に対し、製造場または販売場ごとに所轄税務署長の免許〈行政法学における許可に該当する〉を受けなければならない旨を規定する。この免許制度は酒税の徴収確保のためであり、「酒税の円滑な転嫁及び検査取締り上の要請等を目的として採用された」〈富川泰敬『令和元年版図解酒税』(2019年、大蔵財務協会)151頁〉

 〔1〕酒類製造免許

 酒税法第7条第1項は、「酒類を製造しようとする者は、政令で定める手続により、製造しようとする酒類の品目(第3条第7号から第23号までに掲げる酒類の区分をいう。以下同じ。)別に製造場ごとに、その製造場の所在地の所轄税務署長の免許(以下「製造免許」という。)を受けなければならない。ただし、酒類の製造免許を受けた者(以下「酒類製造者」という。)が、その製造免許を受けた製造場において当該酒類の原料とするため製造する酒類については、この限りでない」と定める。免許の効力が対象(物)および場所の面において制約を受けていることに注意されたい。

 また、同第2項は、1つの製造場における1年間の製造見込数量を、種類ごとに定めている。製造免許を受ける際には、この製造見込数量を超えることが求められる。

 酒類製造免許を受けずに酒類を製造した者には刑事罰が科される(同第54条)。

 〔2〕酒母またはもろみの製造免許

 酒母またはもろみを製造しようとする者についても、やはり製造場ごとに製造免許を受けなければならない(同第8条)。但し、酒類製造業者が製造場において酒類の製造のように供するために酒母またはもろみを製造する場合など、除外事由もある(同第1号〜第3号)。

 酒母またはもろみの製造免許を受けずに酒母またはもろみを製造した者には刑事罰が科される(同第54条)。

 〔3〕酒類販売業免許

 酒類販売業、酒類販売代理業、酒類販売媒介業のいずれかを営もうとする者は、販売場ごとにその販売場の所在地(販売場を設けない場合には住所地)を所轄する税務署長の免許を受けなければならない。但し、酒類製造業者が製造場において酒類の販売業を営む場合、および「酒場、料理店その他酒類をもつぱら自己の営業場において飲用に供する業」については酒類販売業免許が不要である(同第9条第1項。同第2項および同第3項も参照)。

 なお、酒類販売業免許は大きく酒類小売業免許および酒類卸売業免許に大別され、さらに酒類小売業免許は3種類、酒類卸売業免許は8種類に分けられる〈富川・前掲書153頁〉

 酒類販売業免許を受けないで酒類を販売した者には刑事罰が科される(同第56条第1項第1号)。

 〔4〕上記各種免許の要件

 上記各種免許の申請者が酒税法第10条各号のいずれかに該当する場合には、税務署長は申請者に対して免許を与えないことができる。列挙事由をみると、酒税法の規定に違反したことによって免許等を「取り消され」てから一定の期間を経過していない者、滞納処分を受けてから一定の期間を経過していない者、一定の事由による刑の執行が終わってから一定の期間を経過していない者などが多いが、「正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に製造場又は販売場を設けようとする場合」(同第9号)、「酒類の製造免許又は酒類の販売業免許の申請者が破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合その他その経営の基礎が薄弱であると認められる場合」(同第10号)、「酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類の製造免許又は酒類の販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合」(同第11号)、「酒類の製造免許の申請者が酒類の製造について必要な技術的能力を備えていないと認められる場合又は製造場の設備が不十分と認められる場合」(同第12条)があげられている。

 この他、上記各種免許の「取消し」については同第12条ないし第14条を、製造場または販売場の移転の許可については同第16条を、製造業または販売業の廃止については同第17条を、販売場を設けていない酒類販売業者の住所の移転については同第18条を、酒類製造業または酒類販売業の相続については同第19条を参照していただきたい。

 〔5〕免許制度と憲法

 ●最一小判平成元年12月14日刑集43巻13号841頁(「どぶろく裁判上告審判決」)

 事案:千葉県の某町に居住するX(被告人)は、所轄税務署長から清酒製造免許を受けることなく、自宅で清酒を製造した。これが酒税法第7条に違反するとして、原料を収税官吏に差し押さえられた上、起訴された。Xは、酒類製造免許制度が酒の自己消費を規制するものであって憲法第13条に違反するなどと主張したが、千葉地判昭和61年3月26日判時1187号157頁はXを罰金刑に処す旨の判決を下し、東京高判昭和61年9月29日高刑集39巻4号357頁はXの控訴を棄却した。最高裁判所第一小法廷もXの上告を棄却した。

 判旨:酒税法第7条第1項および同第54条第1項は「自己消費を目的とする酒類製造であっても、これを放任するときは酒税収入の減少など酒税の徴収確保に支障を生じる事態が予想されるところから、国の重要な財政収入である酒税の徴収を確保するため、製造目的のいかんを問わず、酒類製造を一律に免許の対象とした上、免許を受けないで酒類を製造した者を処罰することとしたものであり」(最二小判昭和30年7月29日刑集9巻9号1972頁を参照)、「これにより自己消費目的の酒類製造の自由が制約されるとしても、そのような規制が立法府の裁量権を逸脱し、著しく不合理であることが明白であるとはいえず、憲法31条、13条に違反するものでない」(最大判昭和60年3月27日民集39巻2号247頁、最一小判昭和35年2月11日集刑132号219頁を参照)。

 ●最三小判平成4年12月15日民集46巻9号2829頁

 事案:東京都内のX株式会社は、昭和49年7月30日に所轄税務署長に対して酒類販売業免許の申請をしたが、所轄税務署長は昭和51年11月24日付で免許拒否処分を行った。これは、X株式会社が酒税法第10条第10号(「酒類の製造免許又は酒類の販売業免許の申請者が破産者で復権を得ていない場合その他その経営の基礎が薄弱であると認められる場合」)に該当することが理由とされたものである。X株式会社は免許拒否処分の取消を求めて出訴した。東京地判昭和54年4月12日税資105号46頁はX株式会社の請求を認容したが、東京高判昭和62年11月26日判時1259号30頁は所轄税務署長の控訴を容れてX株式会社の請求を棄却したため、X株式会社が上告した。最高裁判所第三小法廷は上告を棄却した。

 判旨:①「酒税が、沿革的に見て、国税全体に占める割合が高く、これを確実に徴収する必要性が高い税目であるとともに、酒類の販売代金に占める割合も高率であったことにかんがみると、酒税法が昭和13年法律第48号による改正により、酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のために、このような制度を採用したことは、当初は、その必要性と合理性があったというべきであり、酒税の納税義務者とされた酒類製造者のため、酒類の販売代金の回収を確実にさせることによって消費者への酒税の負担の円滑な転嫁を実現する目的で、これを阻害するおそれのある酒類販売業者を免許制によって酒類の流通過程から排除することとしたのも、酒税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという重要な公共の利益のために採られた合理的な措置であったということができる。その後の社会状況の変化と租税法体系の変遷に伴い、酒税の国税全体に占める割合等が相対的に低下するに至った本件処分当時の時点においてもなお、酒類販売業について免許制度を存置しておくことの必要性及び合理性については、議論の余地があることは否定できないとしても、前記のような酒税の賦課徴収に関する仕組みがいまだ合理性を失うに至っているとはいえないと考えられることに加えて、酒税は、本来、消費者にその負担が転嫁されるべき性質の税目であること、酒類の販売業免許制度によって規制されるのが、そもそも、致酔性を有する嗜好品である性質上、販売秩序維持等の観点からもその販売について何らかの規制が行われてもやむを得ないと考えられる商品である酒類の販売の自由にとどまることをも考慮すると、当時においてなお酒類販売業免許制度を存置すべきものとした立法府の判断が、前記のような政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理であるとまでは断定し難い。」

 ②酒税法第10条第10号は「免許の申請者が破産者で復権を得ていない場合その他その経営の基礎が薄弱であると認められる場合に、酒類販売業の免許を与えないことができる旨を定めるものであって、酒類製造者において酒類販売代金の回収に困難を来すおそれがあると考えられる最も典型的な場合を規定したものということができ、右基準は、酒類の販売免許制度を採用した前記のような立法目的からして合理的なものということができる。また、同号の規定が不明確で行政庁のし意的判断を許すようなものであるとも認め難い。そうすると、酒税法9条、10条10号の規定が、立法府の裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理であるということはできず、右規定が憲法22条1項に違反するものということはできない。」

 同旨の判決として、最一小判平成10年3月26日判時1639号36頁、最三小判平成14年6月4日判時1788号160頁などがある。

 

 5.酒税の課税標準および税率

 酒税の課税標準は、酒税法第22条第1項により、酒類の製造場から移出された、または保税地域から引き取られた酒類の数量であるとされる。但し、「粉末酒に係る数量の計算は、その重量を基礎として政令で定める方法により行う」(同第2項)。このことから、酒税は従量税である。

 そのため、税率も数量を単位として定められる。同第23条第1項は、酒類の種類に応じて1キロリットルあたりの税率を次のように定める。

 「一 発泡性酒類 22万円

 二 醸造酒類 14万円

 三 蒸留酒類 20万円(アルコール分が21度以上のものにあつては、20万円にアルコール分が20度を超える1度ごとに1万円を加えた金額)

 四 混成酒類 22万円(アルコール分が21度以上のものにあつては、22万円にアルコール分が20度を超える1度ごとに1万1円を加えた金額)」

 但し、同第2項は、発泡性酒類について次のように定める。

 「発泡性酒類のうち次の各号に掲げるものに係る酒税の税率は、前項の規定にかかわらず、1キロリットルにつき、当該各号に定める金額とする。

 一 発泡酒(原料中麦芽の重量が水以外の原料の重量の100分の50未満25以上のものでアルコール分が10度未満のものに限る。) 17万8千125円

 二 発泡酒(原料中麦芽の重量が水以外の原料の重量の100分の25未満のものでアルコール分が10度未満のものに限る。) 13万4千250円

 三 その他の発泡性酒類(ホップ又は財務省令で定める苦味料を原料の一部とした酒類で次に掲げるもの以外のものを除く。) 8万円

  イ 糖類、ホップ、水及び政令で定める物品を原料として発酵させたもの(エキス分が2度以上のものに限る。)

  ロ 発泡酒(政令で定めるものに限る。)にスピリッツ(政令で定めるものに限る。)を加えたもの(エキス分が2度以上のものに限る。)」

 また、同第3項は、醸造種類のうちの清酒は1キロリットルにつき12万円、果実酒は1キロリットルにつき8万円と定める。

 同第4項は、「蒸留酒類のうちウイスキー、ブランデー及びスピリッツであつてアルコール分が37度未満のものに係る酒税の税率は、第1項の規定にかかわらず、1キロリットルにつき37万円とする」と定める。

 そして、同第5項は、混成酒類のうちの合成清酒は1キロリットルにつき10万円、みりんおよび雑酒(みりんに類似するもの)は1キロリットルにつき2万円、甘味果実酒およびリキュールは1キロリットルにつき12万円(アルコール分が13度以上のものは12万円にアルコール分が12度を超える1度ごとに1万円を加えた額)、粉末酒が1キロリットルにつき39万円と定める。

 ●平成29年度税制改正による税率〈「平成29年度税制改正の大綱(平成28年12月22日閣議決定)」77頁以下による。〉

 ①発泡性酒類、醸造酒類および混成酒類の税率

種類

改正前

改正後

発泡性酒類

220,000 円/㎘

155,000 円/㎘

発泡酒(アルコール分)

(10 度未満)

( ― )

(麦芽比率25%以上50%未満)

178,125 円/㎘

(麦芽比率25%未満)

134,250 円/㎘

その他の発泡性酒類(アルコール分)

(10 度未満)

(11 度未満)

(ホップを原料の一部とした酒類で一定のもの)

80,000 円/㎘

(ホップ及び一定の苦味料を原料としない酒類)

80,000 円/㎘

100,000 円/㎘

醸造酒類

140,000 円/㎘

100,000 円/㎘

清酒

120,000 円/㎘

果実酒

80,000 円/㎘

混成酒類(アルコール分20 度)

220,000 円/㎘

200,000 円/㎘

[アルコール分1度当たりの加算額]

[11,000 円/㎘]

[10,000 円/㎘]

 発泡性酒類の税率改正 第1段階;2020年10月1日/第2段階;2023年10月1日/第3段階;2026年10月1日

 醸造種類の税率改正  第1段階;2020年10月1日/第2段階;2023年10月1日

 ②各段階ごとの税率の変更

種類

改正前

改正後

第1段階

第2段階

第3段階

発泡性酒類

220,000 円

200,000 円

181,000 円

155,000 円

発泡酒(アルコール分)

(10 度未満)

(10 度未満)

(10 度未満)

( ― )

(麦芽比率25%以上50%未満)

178,125 円

167,125 円

155,000 円

(麦芽比率25%未満)

134,250 円

134,250 円

134,250 円

(いわゆる「新ジャンル」)

134,250 円

その他の発泡性酒類

 

 

 

 

(アルコール分)

(10 度未満)

(10 度未満)

(10 度未満)

(11 度未満)

(いわゆる「新ジャンル」)

80,000 円

108,000 円

(ホップ及び一定の苦味料を原料としない酒類)

80,000 円

80,000 円

80,000 円

100,000 円

醸造酒類

140,000 円

120,000 円

100,000 円

100,000 円

清酒

120,000円

110,000円

果実酒

80,000円

90,000円

混成酒類

(アルコール分20度)

220,000円

200,000円

200,000円

200,000円

[アルコール分1度当たりの加算額]

[11,000円]

[10,000円]

[10,000円]

[10,000円]

 

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講義内容を公開します 酒税その1

2020年06月25日 01時25分40秒 | 法律学

 私が大東文化大学法学部で担当している「法学特殊講義2A(消費税)」の講義内容の一部を公開します。酒も立派な講義の対象物です。

 

 1.酒税の概要

 〈以下、説明の都合により、これまで講義で扱ってきた消費税については「消費税」と記す。〉

 酒税は国税であり、間接税の一種である消費税(消費課税)のうちの間接消費税に属する。但し、名称が示すように個別消費税であり、この点において「消費税」および地方消費税と異なる。

 課税の根拠となる法律は酒税法(昭和28年2月28日法律第6号)である。この法律も度々改正されているが、この講義の趣旨に従い、消費税法(昭和63年12月30日法律第108号)施行以後に限定して特に重要な改正について述べておく。

 まず、消費税法の施行に伴う1989(平成元)年度税制改正である。消費税法の施行により、国税・地方税を問わず、物品税など多くの税目が廃止されたが、酒税、たばこ税などは残された。酒類やたばこには「消費税」も課されるため、二重課税ではないかという疑問が根強い。

 また、1989年度税制改正における酒税法の改正の背景には、1986年7月に、酒税法に規定される税率の格差について当時のヨーロッパ共同体(EC)諸国から関税及び貿易に関する一般協定(GATT)第23条に基づく協議の要請がなされ、翌年11月10日採択のパネル報告でGATT第3条に違反すると判断された事実がある。そこで、従価税制度および級別制度の廃止など、大きな改正が行われた。但し、焼酎とその他の蒸留酒との税率の格差などの問題は残された。

 従価税とは、消費税などのように課税物件の価額を課税標準とする租税をいう。

 級別制度とは、清酒やウイスキーにおいて採用されていたもので、アルコール度数に応じて酒類を特級、一級などと分類し、その分類に応じた税率を設定するものである。

 次に2006(平成18)年度税制改正である。改正前の酒類は10種類とされていたが、改正後は4種類にまとめられた。

 そして2017(平成29)年度税制改正である。この改正においては、後に述べるように酒類間の税負担の公平という観点から税率が見直された。

 ちなみに、2020(令和2)年度税制改正においては次のような趣旨の改正が行われた。

 「酒類の製造免許に係る最低製造数量基準について、輸出するために清酒を製造しようとする者が清酒の製造免許を申請した場合には、最低製造数量基準(現行:60 ㎘)を適用しない。」〈「令和2年度税制改正の大綱(令和元年12月20日閣議決定)」(以下、令和2年度政府税制改正大綱)70頁。2021年4月1日以後の申請に係る免許につき適用される。〉

「酒類の製造免許等の承継制度について、酒類の製造免許等を承継することができる者の範囲に、事業譲渡によりその事業の全部を承継した者を加える。」〈令和2年度政府税制改正大綱70頁。2020年4月1日以後に行われる事業譲渡につき適用される。〉

「酒類の製造免許等の申請書について、住民票の写しの添付を不要とする。」〈令和2年度政府税制改正大綱70頁。2021年1月1日以後に提出される申請書につき適用される。〉

「酒類の品目等の表示義務について、一定の原料用アルコールについては、品目の表示を泡盛とすることを可能とする。」〈令和2年度政府税制改正大綱70頁。〉

 

 2.酒税法による酒類の定義

 〔1〕酒類の定義および種類

 酒税法第1条は、酒税の課税物件が酒類であることを明定する。その上で、同第2条第1項は、酒類を「アルコール分1度以上の飲料(薄めてアルコール分1度以上の飲料とすることができるもの(アルコール分が90度以上のアルコールのうち、第7条第1項の規定による酒類の製造免許を受けた者が酒類の原料として当該製造免許を受けた製造場において製造するもの以外のものを除く。)又は溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状のものを含む。)をいう」と定義する。この定義から、アルコール分が1%以上の飲料であれば酒類とされることがわかる。

 但し、アルコール分が90%以上であるものは、酒類の原料として製造されるものを除き、酒税法ではなくアルコール事業法の適用対象となる。

 また、同第2項は酒類を発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類および混成酒類に分類する。

 〔2〕四種の酒類

 (1)発泡性酒類(酒税法第3条第3号)

 発泡性酒類はビール(同イ)、発泡酒(同ロ)、その他の発泡性酒類(アルコール分が10度未満のもの。同ハ)とされる。

 (2)醸造酒類(同第4号)

 醸造酒類は、清酒(同イ)、果実酒(同ロ)、その他の醸造酒(同ハ)とされる。

 (3)蒸留酒類(同第5号)

 蒸留酒類は、連続式蒸留焼酎(同イ)、単式蒸留焼酎(同ロ)、ウイスキー(同ハ)、ブランデー(同ニ)、原料用アルコール(同ホ)、スピリッツ(同ヘ)とされる。

 (4)混成酒類(同第6号)

 混成酒類は、合成清酒(同イ)、みりん(同ロ)、甘味果実酒(同ハ)、リキュール(同ニ)、粉末酒(同ホ)、雑種(同ヘ)とされる。

 〔3〕それぞれの品目の定義

 酒税法第3条第7号以下において定義されている(第27号は便宜上取り上げている)。

 清酒(第7号):「次に掲げる酒類でアルコール分が22度未満のものをいう。

 イ 米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの

 ロ 米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米(こうじ米を含む。)の重量の100分の50を超えないものに限る。)

 ハ 清酒に清酒かすを加えて、こしたもの」

 合成清酒(第8号):「アルコール(次号の規定(アルコール分に関する規定を除く。)に該当する酒類(水以外の物品を加えたものを除く。)でアルコール分が36度以上45度以下のものを含む。第15号ハ及び第16号ロ並びに第8条第3号を除き、以下同じ。)、焼酎(連続式蒸留焼酎又は単式蒸留焼酎をいい、水以外の物品を加えたものを除く。第11号において同じ。)又は清酒とぶどう糖その他政令で定める物品を原料として製造した酒類(当該酒類の原料として米又は米を原料の全部若しくは一部として製造した物品を使用したものについては、米(米を原料の全部又は一部として製造した物品の原料となつた米を含む。)の重量の合計が、アルコール分20度に換算した場合の当該酒類の重量の100分の5を超えないものに限る。)で、その香味、色沢その他の性状が清酒に類似するもの(アルコール分が16度未満でエキス分が5度以上であることその他の政令で定める要件を満たすものに限る。)をいう。」

 連続式蒸留焼酎(第9号):「アルコール含有物を連続式蒸留機(連続して供給されるアルコール含有物を蒸留しつつ、フーゼル油、アルデヒドその他の不純物を取り除くことができる蒸留機をいう。次号イ及び第43条第6項において同じ。)により蒸留した酒類(これに水を加えたもの及び政令で定めるところにより砂糖(政令で定めるものに限る。)その他の政令で定める物品を加えたもの(エキス分が2度未満のものに限る。)を含み、次に掲げるものを除く。)で、アルコール分が36度未満のものをいう。

 イ 発芽させた穀類又は果実(果実を乾燥させ若しくは煮つめたもの又は濃縮させた果汁を含み、なつめやしの実その他政令で定めるものを除く。以下この条において同じ。)を原料の全部又は一部としたもの 〈製法によってウイスキー、スピリッツ、ブランデーのいずれかに分類される。〉

 ロ しらかばの炭その他政令で定めるものでこしたもの 〈スピリッツに分類されるウォッカ〉

 ハ 含糖質物(政令で定める砂糖を除く。)を原料の全部又は一部としたもので、そのアルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のもの 〈スピリッツに分類されるラム酒やテキーラが該当する。〉

 ニ アルコール含有物を蒸留する際、発生するアルコールに他の物品の成分を浸出させたもの 〈スピリッツに分類されるジン〉

 単式蒸留焼酎(第10号):「次に掲げる酒類(これらに水を加えたものを含み、前号イからニまでに掲げるものに該当するものを除く。)でアルコール分が45度以下のものをいう。

 イ 穀類又は芋類、これらのこうじ及び水を原料として発酵させたアルコール含有物を連続式蒸留機以外の蒸留機(以下この号及び第43条第7項において「単式蒸留機」という。)により蒸留したもの 〈芋焼酎、麦焼酎、米焼酎。〉

 ロ 穀類のこうじ及び水を原料として発酵させたアルコール含有物を単式蒸留機により蒸留したもの 〈泡盛〉

 ハ 清酒かす及び水若しくは清酒かす、米、米こうじ及び水を原料として発酵させたアルコール含有物又は清酒かすを単式蒸留機により蒸留したもの

 ニ 砂糖(政令で定めるものに限る。)、米こうじ及び水を原料として発酵させたアルコール含有物を単式蒸留機により蒸留したもの 〈黒糖焼酎〉

 ホ 穀類又は芋類、これらのこうじ、水及び政令で定める物品を原料として発酵させたアルコール含有物を単式蒸留機により蒸留したもの(その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が穀類又は芋類(これらのこうじを含む。)の重量を超えないものに限る。) 〈ごま焼酎、しそ焼酎。〉

 ヘ イからホまでに掲げる酒類以外の酒類でアルコール含有物を単式蒸留機により蒸留したもの(これに政令で定めるところにより砂糖(政令で定めるものに限る。)その他の政令で定める物品を加えたもの(エキス分が2度未満のものに限る。)を含む。)」

 みりん(第11号):「次に掲げる酒類でアルコール分が15度未満のもの(エキス分が40度以上であることその他の政令で定める要件を満たすものに限る。)をいう。

 イ 米及び米こうじに焼酎又はアルコールを加えて、こしたもの

 ロ 米、米こうじ及び焼酎又はアルコールにみりんその他政令で定める物品を加えて、こしたもの

 ハ みりんに焼酎又はアルコールを加えたもの

 ニ みりんにみりんかすを加えて、こしたもの」

 ビール(第12号):「次に掲げる酒類でアルコール分が20度未満のものをいう。

 イ 麦芽、ホップ及び水を原料として発酵させたもの

 ロ 麦芽、ホップ、水及び麦その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもの(その原料中麦芽の重量がホップ及び水以外の原料の重量の合計の100分の50以上のものであり、かつ、その原料中政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の100分の5を超えないものに限る。)

 ハ イ又はロに掲げる酒類にホップ又は政令で定める物品を加えて発酵させたもの(その原料中麦芽の重量がホップ及び水以外の原料の重量の合計の100分の50以上のものであり、かつ、その原料中政令で定める物品の重量の合計が麦芽の重量の100分の5を超えないものに限る。)」

 果実酒(第13号):「次に掲げる酒類でアルコール分が20度未満のもの(ロからニまでに掲げるものについては、アルコール分が15度以上のものその他政令で定めるものを除く。)をいう。

 イ 果実又は果実及び水を原料として発酵させたもの 〈ワイン〉

 ロ 果実又は果実及び水に糖類(政令で定めるものに限る。ハ及びニにおいて同じ。)を加えて発酵させたもの

 ハ イ又はロに掲げる酒類に糖類を加えて発酵させたもの

 ニ イからハまでに掲げる酒類にブランデー、アルコール若しくは政令で定めるスピリッツ(以下この号並びに次号ハ及びニにおいて「ブランデー等」という。)又は糖類、香味料若しくは水を加えたもの(ブランデー等を加えたものについては、当該ブランデー等のアルコール分の総量(既に加えたブランデー等があるときは、そのブランデー等のアルコール分の総量を加えた数量。同号ハにおいて同じ。)が当該ブランデー等を加えた後の酒類のアルコール分の総量の100分の10を超えないものに限る。)

 ホ イからニまでに掲げる酒類に政令で定める植物を浸してその成分を浸出させたもの」

 甘味果実酒(第14号):「次に掲げる酒類で果実酒以外のものをいう。 〈ベルモット、ポートワイン、シェリー酒など。〉

 イ 果実又は果実及び水に糖類を加えて発酵させたもの

 ロ 前号イ若しくはロに掲げる酒類又はイに掲げる酒類に糖類を加えて発酵させたもの

 ハ 前号イからハまでに掲げる酒類又はイ若しくはロに掲げる酒類にブランデー等又は糖類、香味料、色素若しくは水を加えたもの(ブランデー等を加えたものについては、当該ブランデー等のアルコール分の総量が当該ブランデー等を加えた後の酒類のアルコール分の総量の100分の90を超えないものに限る。ニにおいて同じ。)

 ニ 果実酒又はイからハまでに掲げる酒類に植物を浸してその成分を浸出させたもの若しくは薬剤を加えたもの又はこれらの酒類にブランデー等、糖類、香味料、色素若しくは水を加えたもの」

 ウイスキー(第15号):「次に掲げる酒類(イ又はロに掲げるものについては、第9号ロからニまでに掲げるものに該当するものを除く。)をいう。

 イ 発芽させた穀類及び水を原料として糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの(当該アルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のものに限る。) 〈モルトウイスキー〉

 ロ 発芽させた穀類及び水によつて穀類を糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの(当該アルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のものに限る。) 〈グレーンウイスキー〉

 ハ イ又はロに掲げる酒類にアルコール、スピリッツ、香味料、色素又は水を加えたもの(イ又はロに掲げる酒類のアルコール分の総量がアルコール、スピリッツ又は香味料を加えた後の酒類のアルコール分の総量の100分の10以上のものに限る。)」

 ブランデー(第16号):「次に掲げる酒類(イに掲げるものについては、第9号ロからニまでに掲げるものに該当するものを除く。)をいう。

 イ 果実若しくは果実及び水を原料として発酵させたアルコール含有物又は果実酒(果実酒かすを含む。)を蒸留したもの(当該アルコール含有物又は果実酒の蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のものに限る。)

 ロ イに掲げる酒類にアルコール、スピリッツ、香味料、色素又は水を加えたもの(イに掲げる酒類のアルコール分の総量がアルコール、スピリッツ又は香味料を加えた後の酒類のアルコール分の総量の100分の10以上のものに限る。)」

 原料用アルコール(第17号):「第9号又は第10号の規定(アルコール分に関する規定を除く。)に該当する酒類(水以外の物品を加えたものを除く。)でアルコール分が45度を超えるものをいう。」

 発泡酒(第18号。2023年9月30日までの定義):「麦芽又は麦を原料の一部とした酒類(第7号から前号までに掲げる酒類及び麦芽又は麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留したものを原料の一部としたものを除く。)で発泡性を有するもの(アルコール分が20度未満のものに限る。)をいう。」

 〈製法はビールと同様であるが、麦芽の重量の比率が50%未満であるか、果実や香味料の使用量が麦芽の重量の5%を超えると発泡酒となる。輸入品の「ビール」の中には、日本の酒税法に照らせば発泡酒として扱われるものも少なくない(とくにベルギーから輸入された「ビール」に多い)。〉

 発泡酒(第18号。2023年10月1日からの定義):「次に掲げる酒類(第7号から前号までに掲げる酒類を除く。)で発泡性を有するもの(アルコール分が20度未満のものに限る。)をいう。

 イ 麦芽又は麦を原料の一部とした酒類(麦芽又は麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留したものを原料の一部としたものを除く。)

 ロ イに掲げる酒類以外の酒類で、ホップ又は財務省令で定める苦味料を原料の一部としたもの

 ハ イ又はロに掲げる酒類以外の酒類で、香味、色沢その他の性状がビールに類似するものとして政令で定めるもの」

 【★イは従来通りであり、ロとハが新たに加えられた。これにより、「新ジャンル」は、2023年9月30日まではその他の醸造酒またはリキュールとして扱われるが、2023年10月1日からは発泡酒として扱われることとなる。】

 その他の醸造酒(第19号):「穀類、糖類その他の物品を原料として発酵させた酒類(第7号から前号までに掲げる酒類その他政令で定めるものを除く。)でアルコール分が20度未満のもの(エキス分が2度以上のものに限る。)をいう。」 〈どぶろく、マッコリなど。〉

 スピリッツ(第20号)「第7号から前号までに掲げる酒類以外の酒類でエキス分が2度未満のものをいう。」

 リキュール(第21号):「酒類と糖類その他の物品(酒類を含む。)を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの(第7号から第19号までに掲げる酒類、前条第1項に規定する溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状のもの及びその性状がみりんに類似する酒類として政令で定めるものを除く。)をいう。」 〈梅酒はリキュールに分類される。〉

 粉末酒(第22号):「前条第1項に規定する溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状の酒類をいう。」

 雑酒(第23号):「第7号から前号までに掲げる酒類以外の酒類をいう。」

 酒母(第24号):「酵母で含糖質物を発酵させることができるもの及び酵母を培養したもので含糖質物を発酵させることができるもの並びにこれらにこうじを混和したもの(製薬用、製パン用、しようゆ製造用その他酒税の保全上支障がないものとして財務省令で定める用途に供せられるものを除く。)をいう。」

 もろみ(第25号):「酒類の原料となる物品に発酵させる手段を講じたもの(酒類の製造の用に供することができるものに限る。)で、こし又は蒸留する前のもの(こさない又は蒸留しない酒類に係るものについては、主発酵が終わる前のもの)をいう。」

 こうじ(第26号):「でん粉質物その他政令で定める物品にかび類を繁殖させたもの(当該繁殖させたものから分離させた胞子又は浸出させた酵素を含む。)で、でん粉質物を糖化させることができるものをいう。」

 保税地域(第27号):「関税法(昭和29年法律第61号)第29条(保税地域の種類)に規定する保税地域をいう。」

 

 3.酒税の納税義務者

 酒税の納税義務者は、国内で製造された酒類、輸入酒類のいずれに該当するかに応じて異なる。

 国内で製造された酒類については、酒類の製造者が納税義務者である。納税義務の成立時期は、製造者が酒類を製造場から「移出」した時点である(酒税法第6条第1項、国税通則法第15条第2項第7号)。「移出」は、酒類を流通過程に置くために製造場から他の場所へ移すことを意味するので、売買、贈与、交換、占有移転などの別を問わない〈判例とともに、金子宏『租税法』〔第二十三版〕(2019年、弘文堂)830頁を参照〉

 一方、国外で製造された輸入酒類については、酒類引取者(酒類を保税地域から引き取る者)が納税義務者である。納税義務の成立時期は、保税地域から引き取る時点である(酒税法第6条第2項、国税通則法第15条第2項第7号)。

 この他、酒税の納税義務については、注意しなければならない規定が存在する。

 まず、酒税法第6条の3第1項は、酒類等の移出が行われたものとみなす場合を定める。例えば、酒類が製造場において引用されたとき(同第1号)、酒類等製造免許が取り消された場合などにおいて酒類が製造場に現存するとき(同第2号。同第3号も参照)、酒類が滞納処分や強制執行などの手続により換価されたとき(同第4号)である(以上については同第4項も参照)。また、同第3項は「酒類等が保税地域において飲用される場合には、その飲用者が飲用の時に当該酒類等をその保税地域から引き取るものとみなす」と定める。

 次に、同第6条の4は収去酒類について非課税とする旨を定める。

 そして、最も注意しなければならない規定ともいえるのが、次に示す同第43条である。

 「(みなし製造)

 第43条 酒類に水以外の物品(当該酒類と同一の品目の酒類を除く。)を混和した場合において、混和後のものが酒類であるときは、新たに酒類を製造したものとみなす。ただし、次に掲げる場合については、この限りでない。

 一 清酒の製造免許を受けた者が、政令で定めるところにより、清酒にアルコールその他政令で定める物品を加えたとき。

 二 清酒又は合成清酒の製造免許を受けた者が、当該製造場において清酒と合成清酒とを混和したとき。

 三 連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎との混和をしたとき。

 四 ウイスキーとブランデーとの混和をしたとき。

 五 酒類製造者が、政令で定めるところにより、その製造免許を受けた品目の酒類(政令で定める品目の酒類に限る。)と糖類その他の政令で定める物品との混和をしたとき(前各号に該当する場合を除く。)。

 六 政令で定める手続により、所轄税務署長の承認を受け、酒類の保存のため、酒類にアルコールその他政令で定める物品を混和したとき(前各号に該当する場合を除く。)。

 2 前項の場合において、酒類に炭酸ガス(炭酸水を含む。)の混和をした酒類の品目は、この法律で別に定める場合を除き、当該混和前の酒類の品目とする。

 3 第1項第1号の規定の適用を受けて、清酒にアルコールその他の物品を加えた酒類は、清酒とみなす。

 4 第1項第6号の規定の適用を受けて、酒類にアルコールその他の物品の混和をした酒類は、当該混和前の品目の酒類とみなす。

 5 第1項の規定にかかわらず、酒類の製造場以外の場所で酒類と水との混和をしたとき(政令で定める場合を除く。)は、新たに酒類を製造したものとみなす。この場合において、当該混和後の酒類の品目は、この法律で別に定める場合を除き、当該混和前の酒類の品目とする。

 6 連続式蒸留機によつて蒸留された原料用アルコールと連続式蒸留焼酎との混和をしてアルコール分が36度未満の酒類としたときは、新たに連続式蒸留焼酎を製造したものとみなす。

 7 単式蒸留機によつて蒸留された原料用アルコールと単式蒸留焼酎との混和をしてアルコール分が45度以下の酒類としたときは、新たに単式蒸留焼酎を製造したものとみなす。

 8 第1項、第2項及び第5項の規定にかかわらず、リキュールと水又は炭酸水との混和をしてエキス分2度未満の酒類としたときは、新たにスピリッツを製造したものとみなす。

 9 前各項に規定する場合を除くほか、酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和に関し、必要な事項は、政令で定める。

 10 前各項の規定は、消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない。

 11 前各項の規定は、政令で定めるところにより、酒類の消費者が自ら消費するため酒類と他の物品(酒類を除く。)との混和をする場合(前項の規定に該当する場合を除く。)については、適用しない。

 12 前項の規定の適用を受けた酒類は、販売してはならない。」

 例えば、自宅で梅酒を作るとする。梅酒は焼酎に梅などを混和して作るものであるから、焼酎からリキュールに変わることとなり、「新たに酒類を製造した」とみなされることとなるはずであるが、同第11項および酒税法施行令第50条第14項により、自宅で梅酒を作る場合には「新たに酒類を製造した」とみなされない。但し、あくまでも自家消費に留まらなければならず、他人に販売してはならない(酒税法第43条第12項、同第56条第1項第4号)。同様のことは料理店などの経営者が営業場において提供する梅酒についても妥当する(同第10項、租税特別措置法第87条の8)。

 次に、自宅でハイボールを作るとする。ハイボールはウイスキーに炭酸水を混和して作るものであるから、酒税法第43条第2項によってウイスキーとして扱われることとなるが、「新たに酒類を製造した」とみなされることとなるはずである。しかし、この場合も同第11項によって「新たに酒類を製造した」とみなされない。自家消費に留まらなければならないことは梅酒の場合と同様である。また、カクテルの種類によっては酒税法第43条および酒税法施行令第50条第14項に違反するおそれもあるので、注意されたい。自家消費であるから何でもよいという訳ではないのである。

 一方、ショットバーで提供されるハイボールを店員が作り、客に提供した場合は、酒税法第43条第10項および酒税法施行令第50条第13項が適用されるため、「新たに酒類を製造した」とみなされない。カクテルについても同様である。但し、あくまでも「酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場において飲用に供することを業とする者がその営業場において消費者の求めに応じ、又は酒類の消費者が自ら消費するため、当該混和をするとき」に限られる。

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東急8500系の完全引退は近い

2020年06月24日 00時00分00秒 | 写真

 1975年にデビューし、東急では最大となる400両が製造された8500系の完全引退が近づいています。既に、このブログでも何度か取り上げた、唯一の方向幕車にして7700系の引退後は最古参であった8606Fが引退しており、この他にも何編成かが引退しています。

 現在残されている編成も、2020系の増備が進めば順次廃車となります。乗車の機会や写真撮影の機会が多かった8500系ですが、最後まで追っていければ、と思っています。

 元々は新玉川線(現在の田園都市線渋谷〜二子玉川)用として、また帝都高速度交通営団半蔵門線直通運転用として製造された8500系は、田園都市線にデビューし、1976年にローレル賞(鉄道友の会)を受賞しています(この年に東横線でも運用開始されています)。1977年に新玉川線が開業し、本来の運用が始められました。1979年に半蔵門線の渋谷〜青山一丁目が開業した際には、営団の車両がまだ製造されていなかったこともあり、この8500系だけが運用されていました。1980年代には田園都市線および新玉川線で運用される編成の10両編成化が進み、1990年代には東横線での運用がなくなって田園都市線および新玉川線に集結します。なお、8638F、8639F、8640Fおよび8641Fは5両編成で、当初は10両編成として田園都市線で運用されたものの、すぐに大井町線に移りました。

 2002年に5000系(2代目)が登場したことに伴い、初期の何編成かが廃車となりました。その一部が長野電鉄、秩父鉄道、伊豆急行、そしてインドネシアのJabodetabek鉄道に譲渡されています。ただ、東急に残った編成は5000系の増備後も活躍を続けるとともに、8606Fと8642F以外の10両編成は東武伊勢崎線・日光線にも直通運転するようになっています。

 しかし、2017年から2020系が製造され(営業運転は2018年から)、増備されるにつれて、8500系は数を減らしています。将来的には完全に2020系に置き換えられます。また、大井町線の5両編成4本も2019年までに引退しました。これは、2020系の増備とともに、東武伊勢崎線・日光線に乗り入れることができない2000系が5両編成化されて9020系となり、大井町線に転属したことによるものです。

 私が小学校1年生であった年にデビューし、何かと乗る機会が多かった8500系には、やはり一種の特別な思い入れがあります。

 当初は東横線で乗ることが多かったのですが、新玉川線開業直後、半蔵門線開業直後にも乗りました。とくに、1989年、半蔵門線の半蔵門〜三越前が開業し、神保町を通るようになってから、非常に便利な路線となった田園都市線・新玉川線・半蔵門線を利用する機会が大幅に増え、8500系にも乗る機会が増えました。そして、1992年4月から1997年3月までの大学院生時代に、通学のために田園都市線・新玉川線・半蔵門線を利用していたため、毎日のように、という言葉が大げさでも何でもないほどに8500系に乗りました。勿論、2000系、営団8000系にも乗りましたし、2000系が一番の楽しみでしたが、編成数からして8500系に乗る機会が多かった訳です。

 5000系のデビュー後も乗車機会は多かったのですが、2020年に入ってから見る機会も減っています。

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蓮根の氷川神社

2020年06月23日 00時01分10秒 | まち歩き

 別に「健康のため」という訳でもないのですが、時々、最寄り駅より一つか二つ手前の駅で降りて歩くことがあります(逆に、一つか二つ先の駅で降りることもあります)。何となく、歩いてみたいと思うからです。私が研究室に行く場合には、最寄り駅は都営三田線の西台なのですが、一つ手前の蓮根、二つ手前の志村三丁目、あるいは一つ先の高島平で降り、大学まで歩くのです。気分が変わってよいからかもしれません。

 或る日、志村三丁目で用事を済ませ、蓮根を通って大学まで歩きました。蓮根二丁目は、蓮根駅からも西台駅からも近いという場所で、大東文化大学板橋校舎からでも近いのですが、私の通勤経路から外れるので、歩いたことはほとんどありません。

 蓮根二丁目の氷川神社です。以前、渋谷の氷川神社を取り上げましたが、大東文化大学の近所にも氷川神社があるというのは、恥ずかしながら、この写真の撮影日(2007年3月9日)になって知りました。 大東文化大学板橋校舎の正門まで、徒歩で10分もかからない所にあるのですが、通勤経路から外れているために、知らないままであったのです。電車通勤ですと、どうしてもこういうことが起こります。自家用車通勤の場合ですと、渋滞を避けるため、何かの用事のため、普段と異なる経路を選ぶことも多いのです(少なくとも、私が大分大学に勤務していた頃はそうでした)。

 

 都営三田線には、本蓮沼、蓮根と、蓮の字が使われる駅名が二つあります。本蓮沼駅は板橋区蓮沼にあるのですが、おそらく東急池上線の蓮沼駅と区別するために本蓮沼としたのでしょう。これに対し、蓮根という駅名は、いかにもオリジナルの名前に見えるのですが、実は市町村合併の産物だったというのを、やはり撮影日になって初めて知りました。上の写真の案内板にあるように、上蓮沼村と根葉村が合併し、両方の一字ずつを取って蓮根としたのです。

 最近の市町村合併では、おかしな新自治体名などがたくさん生まれました。歴史に根差している訳でないもの、平仮名書きにしているために経緯などがわかりにくいもの(さいたま市、東かがわ市など)、他の市町村名とよく似ていて紛らわしいもの(例として伊豆市と伊豆の国市)などがあります。

 その中で、昔からの常套手段を取った所もあります。福岡県にある福津市がその代表で、合併前の福間市と津屋崎町とが合併する際、両方の頭の漢字を取ってきたのです。このように、合併する市町村の名称の字を一つずつとって新しい市町村の名称を作るという例は非常に多 いようで、東京都では大田区がその典型例です。大田区の「大」は旧「大森区」を、「田」は旧「蒲田区」を意味します。大田という地名があった訳ではないのです。 この大田区と同じようにして名前が作られたのが蓮根村でした。現在は、都営三田線の蓮根駅から西台駅にかけてのあたりを指す地名となっています(西台駅は高島平9丁目にありますが、ダイエー西台店などは蓮根3丁目にあります)。

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渋谷の氷川神社

2020年06月22日 00時00分00秒 | まち歩き

 幼い頃から、何かと言えば渋谷駅周辺へ行きました。2004年6月からは国学院大学法学部の兼任講師(非常勤講師)として講義を持っていますので、渋谷区が職場の一つにもなっています。しかし、4月から渋谷区に踏み入れたことがありません。

 そこで、という訳でもないのですが、今回は、渋谷の風景の一つとして、国学院大学のすぐそばにある氷川神社(渋谷区東2丁目)を取り上げます。なお、写真撮影日は2007年1月27日です。

 現在、渋谷に行く時には東急田園都市線を使っていますが、この写真の撮影時には東急東横線を使っていました。その東横線の渋谷駅から、東横線に沿うように明治通りを歩くと並木橋に到着します。

 戦前、東横線には並木橋駅がありました。今もあれば便利だろうとは思うのですが 渋谷駅からの距離が短すぎるので、廃止もやむをえなかったでしょう。並木橋をさらに恵比寿側まで歩き、都バスの渋谷車庫に近い交差点をさらに直進して少し歩いたところを左折すると、氷川神社に着きます。

 このように、平沼騏一郎の名前が見えます。第35代の内閣総理大臣であるとともに、日本大学の第2代総長、そして大東文化学院の初代総長でもあり、A級戦犯でもあります。大東文化学院は、現在の私の勤務校である大東文化大学の前身です。

 ちなみに、日本大学の前身は日本法律学校なのですが、この学校が、元々、飯田橋にあった皇典講究所(現在の國學院大學。後に渋谷に移転)に設置されていたことは、意外に知られていません。そして、現在の國學院大學の敷地は御料地だったとのことです。

 国学院大学で仕事をする時には渋谷駅と国学院大学を往復することになります。都営バスの学03を使うこともありますが、徒歩で往復することが多いのです。時折、氷川神社のこの道を通り抜けています。 

 相撲の土俵があります。ここは、江戸郊外三大相撲の一つである金王(こんのう)相撲が行われた場所であるとのことで、現在も跡地として保存されています。

 金王と言えば、渋谷三丁目には金王神社があります(渋谷城址に建てられたそうです)。但し、歴史的には氷川神社のほうが古いようで、日本武尊の東征の際に建てられたという記録があるそうです。また、渋谷駅東口から永田町に向かう国道246号には金王坂があります。

 渋谷区には、かつて、金王町、常盤松町という、由緒ある地名がありました。住居表示の実施に伴う町名変更により、渋谷、東などとなってしまいましたが、町内会・自治会などの名称として残っているようです(金王町のほうはよくわかりませんが、常盤松のほうは、町内会や小学校の名称として現在も残っています)。

 

  後のほうに國學院大學の建物が見えます。

 

 

 

乃木希典の書によるという「明治卅七八年戦役」(明治二十七八年戦争。日清戦争のこと)の「紀念碑」です。ここにあるとは知りませんでした。 

 

 

 

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2003年6月1日、豊後国分駅付近の風景

2020年06月21日 11時24分15秒 | 旅行記

 かつて、私の「川崎高津公法研究室」には「待合室」というコーナーを設けていました。その第55回として2003年6月28日から7月4日まで掲載した記事「豊後国分駅付近の風景」を改題の上で再掲します。但し、文章は少し修正しました。

 今回は、福岡県の久留米駅から大分県の大分駅までの鉄道路線、久大本線の豊後国分駅付近です。近くに大分市歴史記念館があります。終点の大分駅から久大本線に乗ると、大分市内では最後の駅となります。

 大分市には意外なほどに麦畑が多い、ということに気がついたのは、今年になってからのことです。豊肥本線の中判田駅から竹中方面に向かうと、その麦畑が点在していました。道が細いために車を停めておけず、撮影をあきらめましたが、いつかは写真におさめたいと思っていました。

 2003年の6月1日、大分大学の開放イベント(開学祭と同時開催)が終わり、私は、何となく、大分医科大学(現在は大分大学医学部)のほうへ向かいました。これと言った目的はなかったのですが、開放イベントでは福祉科学研究センターの運営委員として写真撮影などを行っていたため、カメラを持っていました。大分医科大学から別府大学大分キャンパスのほうに出ると、すぐに野田に出ます。この辺りは畑が広がっています。大分市は中核市なのですが、面積が広いためか、農村や山村と言うべき場所が多く、この野田の周辺、机張原(きちょうばる)、竹中、端登(竹中駅の所在地)、吉野、大分大学の裏の住床などが代表的な所です。

 野田からさらに進むと、久大本線の豊後国分駅に出ます。名前の通り、国分寺があったところと推測されますが、駅は無人で、周囲も畑などが広がっています。 

 畑の麦穂を拡大して撮影してみました。御覧のように、実っています。この麦が刈り取られてからどのような製品に加工されるのかはわかりませんが、大分県といえば麦焼酎ですから、焼酎の原材料になるのかもしれません。あるいは、食パンなどでしょうか。

 上の2枚の写真とほぼ同じ地点から撮影したものです。写真ではわかりませんが、撮影者、つまり私の背中のほうに大分市歴史資料館があります。写真の右側に「豊後国分駅」という表示があります。駅を撮影したつもりなのですが、ホームはかなり左のほうにあり、ほとんど写っていません。奥に見える丘の上は住宅地で、国分台団地です。

 今度は、道路を挟んで反対側、大分市歴史資料館の真横にある麦畑を撮影しました。御覧のように、民家が点在してはいますが、緑に囲まれた地帯です。奥のほうに進むと賀来に出ます。左奥に見える丘は国分台団地につながります。また、大分医科大学、東野台などにもつながっています。

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