どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

小津作品にみる、テラスとクモラス

2018年03月08日 19時56分00秒 | 映画
以前Blu-ray版「麦秋」鑑賞の折に、能の演出手法である「テラス」と「クモラス」を感じたことを書きましたが、昨日の鑑賞で強く感じたシーンを思い出しました。

今回の鑑賞でハッとさせられたのは中盤で北鎌倉の紀子宅に友人が遊びに来たシーン。

友人を迎え入れ、にこやかに会話してますが...。

他の友人が来ないことが判り、急激にテンションが下がってしまう紀子。

表情以上にワンカットの違いで急に老け込んだような顔つきになっているんです。

この違い、以前から感じていたはずなんですが、リマスター処理で鮮明になったお陰で、明暗の差が顕著に!

小津さんの底意地の悪さみたいなものも感じとれました。看板女優でさえ容赦ないんです(^_^;

原節子さんの特徴を活かし能面的な「テラス」と「クモラス」を演出に用いた例としては「麦秋」よりも前の作品「晩春」で有名なシーンがありますね。

お父さんと一緒に、正に能を楽しんでいたら...。

お父さんの...もしかしたら再婚相手かもしれない女性・三宅邦子さんが客席にいて、表情が見る見る内に変わり、怒り、悲しみ、そして嫉妬が綯い交ぜになって落ち込んでいく様...。

「麦秋」においては、独身女性の悲哀と、結婚適齢期(当時の感覚のね)が過ぎ去りつつ、若さも失っていきつつある自分...みたいなものを見事過ぎるほど、映像で表現しているんです(゜ロ゜)

隠された視線...今回のリマスターとスクリーン投影によって、浮き彫りにされたという感じがしました(*^o^*)