まあ!なんと!このアクロバッティックな食事風景。
藤の花が終わり、残りの房にしがみついて、むしゃむしゃと花の蕾を
かじっているこの幼虫はいったい何なのだ?
アゲハ蝶の幼虫に、ところどころ白い模様が入っているのは知っている。
その白い模様は、鳥の糞に似させているのだとか、、
それにしても、この幼虫のデザインはあまりに見事なのだ。
白と緑が均等に入っていて、ふとい縞模様のようになっているのである。
この模様から想像すると、同じアゲハ蝶でもよほど美しくなるに違いない。
こんなこと思っていると、まるで「虫愛づる姫君」ではないか。
ちょっと触ると、まるで「だるまさんが転んだ」状態になって、じっと
固まってしまった。そし何時間もそのままでいるのであった。
この幼虫は必死で気配を消しているのだろう。
こんな時、姫は「幼虫が何かを考えているようなところって、すごく
惹かれるわねぇ」と言うのだろう。
本当に、幼虫だって考えているように見えるのである。
蕾もむしゃむしゃ、花もむしゃむしゃ、すごい食欲だ。
見ていると、ほとんど一日中食べている。
疲れると丸くなって、気配を消し「お休みタイム」だ。
蝶は、卵から成虫になるまで三年かかるそうだ。
幼虫でいる期間は四か月、蛹(さなぎ)になって冬を越し、三年目の6月
にようやく羽ばたけるのである。
「世間の人達は、綺麗なものばかりを大切に思うけど、それは違うと思うの、
人間はきちんと物事の本質を知ろうとすることこそ、いかにも趣きがあるって
ものじゃないかしら」と姫は言う。
そして「毛虫が蝶になることは素晴らしいこと、毛虫を見ないで蝶しか見ない
のは子供のすること」と言い放っているのである。
平安時代にこんな面白い姫がいたとは、、、
ただの物語だとすれば、この時代に今で言う「理系女」を描くなんて・・・・
そして、千年後の今でも通用する姫の言葉、語らせている作者も中々の
人物だったのではなかろうか。タイムマシンに乗った気分である