私的美遊空間

美しく愛しいものたちへのつぶやき

ろうけつ染の帯で遊ぶ

2014年05月20日 | 着物の楽しみ


             ろうけつ染の帯

                これは私の大好きな帯である。

             
                母は私が小さい頃、淡い色の上品な色柄を好んで着せたがっていたが、
                父はと言えば、ショッキングピンクに白いウサギが描かれたスカートを買って来て
                「こんなの下品」と反対する母と喧嘩しながらも私に着せる有様だった。
                父ははっきりした色柄でないと「子供らしくない」と言う考えのようだった。

                高校の時だが、私が買ってきたベージュのワンピースを見るなり、父は言った。
                「こんなぼんやりした色はダメだ。返して来なさい!」と。
                「いまさら恥ずかしくて返せないよ!」すると「お父さんが返して来る」と言って
                本当に返して来てしまった。

                そして代わりに、緑と若緑と白の流水模様のような柄のワンピースを買って来て
                「これを着なさい」と手渡すのであった。仕方なく着てみたら意外と似合っていた。
                父は「お父さんは、お前に似合うのがわかるんだ」と嬉しそうに笑ったのであった。
                そんな父のDNAと影響を受けて、今の私の好みが作り上げられたようである。

                父は亡くなってもういないが、この帯を見せたら何と言うのだろうか、、、
                父と着物談議をしたいものだ。


             手挽き 玉繭紬

                高校の時に買ってもらった緑のワンピースが似合っていたことから、それ以来私は
                緑のものに目が行くようになった。
                結婚が決まった時に、叔母までが緑の着物を贈ってくれるほどだった。
                今までどれほど緑の服を着たか、、子供達からも「お母さんは緑のおばさん」と
                からかわれるほど、、

                そして今回も、性懲りもなく緑の着物である。
                この着物は、玉繭(たままゆ)と言って、二匹以上の蚕(かいこ)が一緒になって
                一つの繭を作ったもので、この繭から手で糸を引き出した{手挽き}糸で織られている。

                この玉繭から取った糸で織られたこの着物には、所どころ節があり独特の味わいがある。
                そして市松と鱗の二種類の織りを入れて、緑の濃淡で引き染めをしている。
                地味ながら、とても手の込んだ着物だといえるだろう。

                地味な着物にカラフルな帯、帯揚げはクッキリと黄色。
                そして、仕上げの帯締めは「帯の中の一色」と無難にしないで、ここでも緑、赤、白の
                三色で、賑やかさの上に賑やかさで遊んでみた。

                着物の楽しみって、本当に無限だと思う。
                人それぞれに似合う色や柄があって、それがその人の個性と魅力を引き出してくれる。
                何時ぞやは「着物は日本の文化」と通りすがりのおじ様に言われたことがある。
                ウイーンフイルのニューイヤーコンサートの会場で、時々着物姿が映されることがある。
                喜ばしいことだ。存分に着物の魅力を発信して来て頂きたいものである。
             
コメント
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