唯一無二
これは、我家の長女1才時代の相棒「スピカ」である。
昭和52年10月29日から昭和53年5月27日まで放映された
アニメ「牧場の少女シャルロット」の中で、主人公シャルロットの
ペットとして登場したのが、このハムスターの「スピカ」なのだ。
このアニメは、あまり人気が無かったらしく、すぐに終わってしまい
主人公のシャルロットは忘れ去られたが、この「スピカ」はその5年後
までも人気を保ち、スピカのお父さん、お母さん、赤ちゃん・・続々と
家族が誕生し、売れ続けたという大ヒットぬいぐるみなのである。
小さくて、フワフワしていて、くるんと丸い瞳で、
小さい女の子たちのハートを射止めたのだろう。
当時、我家にはテレビが無くて、そのアニメのことは知らなかったが、
長女が1才の時に、東京の叔母さんによって我家に到来したのであった。
それからは、寝ても覚めても長女はスピカと一緒に過ごした。
その頃、この日本中にどれだけのスピカが、少女たちのもとにいたかは
知らないが、我家のスピカは、長女の涙と鼻水とよだれが染みついた
唯一無二のスピカなのである。
スピカちゃんマンマよ
ある時はお母さんのように「スピカちゃんマンマよォ」と言って
自分のスプーンで食べ物を口に押し付け、外に出れば「トコトコお散歩よォ」
と地面に鼻をズリズリし、長女のスピカはすぐにドロドロに、はたまた
真っ黒になるのであった。
時々お風呂にも入れてやったが、染みついたものはそのまま残ってしまった。
今となっては、その汚れはスピカの「勲章」である。
胸に付けていた星のペンダントは、どこかで無くしてしまった。
夜空に帰ってしまったのか・・・
春の夜空に、ひと際輝くスピカ。
地上に降りて長女と私達家族に夢と幸せを運んできてくれた。
そして、長女のスピカは我家の重要文化財として、ガラスのケースの中で
今でも光り輝いているのである。