このこけしは、伝統的な形式に則り作られた「伝統こけし」である。
「伝統こけし」と言うのは、江戸時代の末頃から、東北地方の温泉地
で湯治に来る客に土産物として売られていたものだ。
作られる土地によって10の系統に分かれているが、
このこけしは、遠刈田系で宮城県 青根温泉 佐藤菊治70歳の時の
作品である。(明治28年~昭和45年)
大きい頭と細い胴に「にやりの眼」が特徴である。
頭頂に赤い放射状の飾りを描き、さらに額から頬にかけて八の字の
赤い飾りを描き、胴は菊を重ねて描いている。
こけしの背中には、爽やかに菖蒲が描かれ、年齢と名前が書かれていた。
最晩年の作品らしいことがうかがわれる
高さは43cmある。
木肌は古色がつき、大きさのせいもあり堂々たる風格である。
このこけしは、義母から受け継いだ。
もう30年前のこと、「もう少ししたらあなたにあげるからね」と約束
してくれたこけしなのだ。そして、ようやく決心して私に預けたのである。
思い出の詰まった大事なこけし。
これからは私が大事に思い出を詰めていこう。