穴 | |
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新潮社 |
第150回芥川賞受賞作です。
小説にも映像化しやすそうなのとそうではないのとがあって、それはどちらも小説としても面白みを持っています。これは、映像化しにくそうな作品。少しずれた世界を読者の想像にゆだねるのと、映像として表現するのは手段が違うように思えるのです。
非正規で働く主人公が夫の転勤で夫の両親の隣に住むことになり、そこで見える世界を描いています。
が、けっして主人公は「行動するもの」ではなく、巻き込まれるものであり、変えたいと願うものではなく大変受動的に、そして、淡々と物語が進んでいきます。
今あるものを1ミリ動かしたら、変わったのに気が付かない。5センチだとずれすぎ。
さじ加減が微妙。
なんだか、どこか、なぜか不気味な、不思議な作品世界。
でも、筆は確かで曖昧なようで曖昧じゃない。
ただ、主人公が受け身なだけで終わったのが私的には消化不良やけど、それはそれでええのかな。
それにしても「ああ、こういう小説が書きたかった!」ん?